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ケンコーマヨネーズは下値切り上げ、23年3月期予想未定だが収益回復基調
- 2022/6/3 09:55
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ケンコーマヨネーズ<2915>(東証プライム)はマヨネーズ・ドレッシング分野からタマゴ加工品やサラダ・総菜分野へと事業領域を拡大している。さらに中期経営計画では、基本方針として4つのテーマ(BtoBtoC、イノベーション、構造改革、グローバル)に取り組んでいる。22年3月期は原料価格高騰の影響で減益だったが、前回予想に対しては上振れ着地した。そして配当も上方修正した。23年3月期の連結業績・配当予想については、経済情勢や原材料価格の不透明感が強いため未定としている。ただし、外食向けの需要回復、販売価格改定、生産効率改善、全社的な経費削減への取り組みなどで収益回復基調だろう。株価は反発力の鈍い展開だが徐々に下値を切り上げている。底固め完了して出直りを期待したい。
■マヨネーズ・ドレッシング類、ロングライフサラダの大手
サラダ・総菜類、タマゴ加工品、マヨネーズ・ドレッシング類の調味料・加工食品事業、フレッシュ総菜(日配サラダ、総菜)およびグループ内生産受託の総菜関連事業等、その他(ショップ事業など)を展開している。ロングライフサラダは国内1位、マヨネーズ・ドレッシング類は国内2位の市場シェアである。ショップ事業のサラダ専門店Salad Cafe(サラダカフェ)は百貨店などに出店し、主に女性をターゲットにした顧客拡大戦略を推進している。
22年3月期の売上高構成比は、調味料・加工食品事業が76%(マヨネーズ・ドレッシング類が26%、タマゴ加工品が26%、サラダ・総菜類が23%、その他が1%)で、総菜関連事業が23%、その他が1%だった。セグメント利益(調整前経常利益)は調味料・加工食品事業が67%、総菜関連事業が35%、その他が▲2%だった。販路別売上高構成比は量販店が29%、CVSが26%、外食が25%、パンが13%、給食が4%、その他が4%だった。22年3月期はコロナ禍の影響で量販店向けが上昇、CVS向けが低下、外食向けが回復傾向となった。
収益面では、食用油、鶏卵、野菜などの原材料価格が変動要因となりやすく、プロダクトミックス、工場操業度、原燃料コストなどの影響を受ける。利益還元については連結ベースでの配当性向20%を意識し、配当の継続性に配慮しつつ、今後の成長と発展にあわせて安定配当水準を高めていくことを基本方針としている。
■事業環境変化に対応して変革推進
中期経営計画KENKO Transformation Plan(21年度~23年度)では、目標数値に24年3月期売上高800億円、経常利益40億円を掲げている。基本方針として4つのテーマ(BtoBtoC、イノベーション、構造改革、グローバル)およびサステナビリティ方針に取り組んでいる。事業環境変化に対応し、企業価値向上と持続的な成長へ向けた変革を推進する。
BtoBtoCでは消費者へのブランド認知度向上、新しい生活様式・ライフスタイル多様化に対応した小容量商品の拡充、サラダカフェのブランド創出・駅近店舗戦略、WEB・オンライン活用、イノベーションではSDGsを意識したメニュー・商品開発(賞味期限延長など)、地方再生につながる郷土料理の商品化、ロス削減、生産面でのカーボンニュートラルの実現、構造改革では業務プロセス改善、働きやすい職場環境づくり、人事制度改革、基幹システム再構築、コーポレート・ガバナンスの強化、グローバルでは輸出販売の強化などを推進する。
サステナビリティへの取り組みも強化している。21年7月には「食を通じて世の中に貢献する」という企業理念に基づいてサステナビリティ方針を公開した。加工ロス削減による廃棄物削減などの目標を設定した。21年9月には「国連食料システムサミット2021」への支持表明とコミットメント提出を発表した。21年10月には静岡富士山工場が障害者雇用優良事業所として静岡県知事褒賞を受賞した。
さらに地方創生に向けた活動も開始している。22年3月には、鮮魚販売や水産食料品製造販売を行う鮮冷(宮城県女川町)、およびコンサルティング業務を行うくりや(北海道上川郡)と、地方創生に向けた活動を協働していくことで合意した。地域の食材を活かした商品・メニュー開発、食を通じた地域経済活性化など地域密着型の取り組みを推進する。そして22年4月には、第1弾として共同開発した海鮮丼3品を道の駅「おながわ」で発売開始した。
■23年3月期予想未定だが収益回復基調
22年3月期の連結業績(収益認識会計基準適用だが損益への影響なし)は、売上高が21年3月期比10.4%増の756億47百万円、営業利益が18.2%減の16億16百万円、経常利益が20.9%減の16億22百万円、親会社株主帰属当期純利益が16.9%減の12億11百万円だった。なお配当は期末2円上方修正して21年3月期比3円減配の17円(第2四半期末7円、期末10円)とした。
ファストフード向けの好調などで増収だった。売上高は過去最高だった。利益面は原料価格高騰の影響などで減益だった。ただし、前回予想(売上高732億円、営業利益14億30百万円、経常利益15億円、親会社株主帰属当期純利益10億50百万円)に対して上振れ着地した。
なお21年3月期比経常利益4億28百万円減益の要因分析は、増収(価格改定含む)効果で+18億96百万円、生産効率改善効果で+11億74百万円、固定費削減効果で+26百万円、原材料価格高騰で▲35億24百万円だったとしている。
調味料・加工食品事業は売上高が11.5%増の575億52百万円、セグメント利益(調整前経常利益)が16.7%増の18億87百万円(グループ会社からの配当金収入11億61百万円を含む)だった。売上面ではファストフード向けの好調、外食向けの回復に加えて、21年7月から進めているマヨネーズ類の価格改定効果なども寄与した。
総菜関連事業等は売上高が7.3%増の172億32百万円、利益が81.6%増の9億84百万円だった。中食需要も背景として、ダイエットクック白老および関東ダイエットクック神奈川工場の売上が順調に拡大し、稼働率向上で利益も拡大した。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が182億82百万円、営業利益が4億03百万円、経常利益が4億15百万円、第2四半期は売上高が192億05百万円、営業利益が2億97百万円、経常利益が2億84百万円、第3四半期は売上高が200億93百万円、営業利益が6億39百万円、経常利益が6億29百万円、第4四半期は売上高が180億67百万円、営業利益が2億77百万円、経常利益が2億94百万円だった。
23年3月期の連結業績・配当予想については、経済情勢、食用油をはじめとした原材料価格、さらにエネルギー価格などの不透明感が強いため、未定としている。ただし、外食向けの需要回復、販売価格改定、生産効率改善、全社的な経費削減への取り組みなどで収益回復基調だろう。
■株主優待制度は毎年3月末の株主対象
株主優待制度は毎年3月末日現在の株主を対象として、保有株式数に応じて当社商品を贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は下値切り上げ
株価は反発力の鈍い展開だが徐々に下値を切り上げている。底固め完了して出直りを期待したい。6月2日の終値は1375円、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2245円07銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約227億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)