アルコニックスは反発の動き、23年3月期減益予想だが保守的

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 アルコニックス<3036>(東証プライム)は非鉄金属、電子材料、金属加工部品などを取り扱う商社で、商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指している。23年3月期は原材料の供給不足などにより生産・出荷の一時的な落ち込みを想定して減益予想としている。ただし保守的な印象が強い。会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は減益予想を嫌気する動きが優勢だったが、その後は目先的な売りが一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。

■商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」

 非鉄金属、電子材料、金属加工部品などを取り扱う商社である。商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指し、M&Aも積極活用して、非鉄金属の周辺分野も含めた川上(製造)~川中(流通)~川下(問屋)を網羅するビジネス展開を推進している。

■製造が利益柱に成長

 報告セグメント区分は、商社流通の電子機能材事業(化合物半導体、電子材料、チタン製品、ニッケル製品、レアメタルなど)、商社流通のアルミ銅事業(アルミニウム製品、伸銅品、非鉄スクラップ、各種配管機材など)、製造の装置材料事業(非破壊検査装置、マーキング装置、カシュー樹脂、カーボンブラシなど)、製造の金属加工事業(精密機構部品、精密研削加工部品、精密金属プレス部品、金属加工部品など)としている。

 22年3月期のセグメント別売上高構成比は商社流通60%(電子機能材22%、アルミ銅38%)で製造40%(装置材料22%、金属加工17%)だが、経常利益構成比は商社流通57%(電子機能材39%、アルミ銅18%)で製造43%(装置材料11%、金属加工31%)だった。レアメタル・レアアースの取り扱いが特徴とされているが、M&Aも積極活用して「非鉄金属の総合企業」を目指す成長戦略により、利益面では製造の金属加工が柱に成長している。

■高水準の投資を継続

 中期経営計画(23年3月期~25年3月期、1年ごとに見直すローリング方式)では、25年3月期の目標値に売上高2100億円、営業利益131億円超、経常利益130億円超、当期純利益100億円超、EBITDA175億円超、ROE(株主資本利益率)15%超、ROIC(投下資本利益率)7%以上、DOE(株主資本配当率)3.0%以上を掲げた。セグメント別経常利益は、商社流通が52億円(電子材料37億円、アルミ銅15億円)で製造が78億円(装置材料24億円、金属加工54億円)としている。製造が全体の60%を占める計画だ。

 商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指し、財務体質の強化、人的資源の強化、ガバナンスの強化、ESG・SDGsへの取り組み強化を推進し、高水準の投資も継続する方針だ。

 18年12月摩擦調整材カシューパーティクル製造販売の東北化工を子会社化してブレーキ関連市場に参入、19年2月カーボンブラシ製造販売の富士カーボン製造所を子会社化、19年7月メキシコFUJI ALCONIXがメキシコFNA社の自動車部品用精密金属プレス部品事業を譲り受け、19年10月香港でリチウムイオン電池材料事業の合弁会社を設立、19年11月中国で建設用仮設資材の輸入・製造・販売の合弁会社を設立した。

 20年3月子会社の平和金属を完全子会社化、20年8月子会社のアドバンストマテリアルジャパン(AMJ社)がタングステン化合物メーカーの台湾・Lianyou Metals社に出資、20年12月空調機器向け配管部品製造販売の富士根産業を子会社化、21年3月メキシコFUJI ALCONIXがメキシコFNA社から工場用地・建物を取得した。

 21年12月には、精密コネクタ金属端子部品のプレス加工などを展開する電子部品材料メーカーのジュピター工業(岩手県宮古市)を子会社化すると発表した。株式取得および連結子会社化は22年4月20日予定である。

 また21年12月には投資事業(アルコニックスグローバルイノベーション投資事業有限責任組合、21年8月設立の子会社アルコニックスベンチャーズが運用)を開始した。先端材料・高成長事業および素材・モノづくりに関連のあるベンチャー企業または事業を投資先として成長支援し、投資先が生み出すアイデアや技術を取り込んで新規事業開拓と更なる業容拡大を目指す。

 22年4月には、商社流通セグメントに所属する国内関係子会社(平和金属、林金属、アルコニックス・三高、アルミ銅センター)の財務、経理、総務、労務等の管理業務を集約して行うシェアードサービスの子会社ACメタルズを設立した。

 また22年4月には、金属加工メーカーでリチウムイオン電池用機構部品の製造に強みを持つソーデナガノを子会社化(22年11月予定)すると発表した。EV用バッテリー向けの需要拡大が期待されるほか、グループ内のプレス専業子会社と「総合プレス加工グループ」を形成して多種多様な顧客ニーズに対応する戦略だ。

■23年3月期減益予想だが保守的、上振れの可能性

 22年3月期の連結業績(収益認識会計基準適用で前期比増減率は非記載)は、売上高が1562億86百万円、営業利益が110億20百万円、経常利益が110億09百万円、親会社株主帰属当期純利益が75億07百万円だった。配当は21年3月期比10円増配の52円(第2四半期末24円、期末28円)とした。

 収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高と売上原価がそれぞれ1537億33百万円減少しているが、利益への影響はなかった。売上高は21年3月期を新基準に組み替えた数値(1056億87百万円)との比較で47.9%増収、各利益は21年3月期実績値との比較で営業利益が96.0%増益、経常利益が92.5%増益、親会社株主帰属当期純利益が162.4%増益となる。好調な半導体・電子部品および自動車関連需要を取り込んで大幅増収増益だった。

 セグメント別利益(経常利益)は、商社流通合計が184.9%増の63億06百万円(電子機能材が172.6%増の42億73百万円、アルミ銅が214.9%増の20億32百万円)で、製造合計が34.4%増の46億95百万円(装置材料が273.6%増の12億45百万円、金属加工が9.2%増の34億49百万円)だった。

 電子機能材は電子部品および二次電池材料の好調が継続し、レアメタル・レアアースの自動車関連需要が回復基調となった。アルミ銅は自動車のEV化・軽量化需要などでアルミ圧延品・伸銅品が増加し、チタン・新素材の輸出増加なども寄与した。装置材料は米国および中国の拠点でめっき材料の出荷が大幅に増加し、カーボンブラシが自動車関連の需要増加で業績回復した。金属加工は精密研削加工部品がやや低調だったが、半導体製造装置向け精密切削加工部品が好調に推移した。

 四半期別に見ると。第1四半期は売上高369億44百万円、営業利益30億46百万円、経常利益34億87百万円、第2四半期は売上高376億28百万円、営業利益は25億75百万円、経常利益25億73百万円、第3四半期は売上高396億04百万円、営業利益28億09百万円、経常利益27億45百万円、第4四半期は売上高421億10百万円、営業利益25億90百万円、経常利益22億04百万円だった。

 23年3月期の連結業績予想は、売上高が22年3月期比8.7%増の1700億円、営業利益が17.4%減の91億円、経常利益が18.3%減の90億円、親会社株主帰属当期純利益が9.4%減の68億円としている。配当予想は22年3月期と同額の52円(第2四半期末26円、期末26円)としている。

 なおセグメント別利益(経常利益)の計画は、商社流通合計が36.6%減の40億円(電子機能材が34.5%減の28億円、アルミ銅が41.0%減の12億円)で、製造合計が6.5%増の50億円(装置材料が3.7%減の12億円、金属加工が10.2%増の38億円)としている。電子機能材はグローバルな半導体不足によるIT機器や自動車の生産調整の影響で減益、アルミ銅は前期の市況価格上昇の影響が剥落して減益、装置材料は原材料高の影響で減益、金属加工は半導体製造装置向けを中心とする出荷増で増益の見込みとしている。

 23年3月期はコロナ過や地政学リスクに起因する物流の混乱、原材料の供給不足などにより生産・出荷の一時的な落ち込みを想定して減益予想としている。ただし保守的な印象が強い。会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は3月末の株主対象

 株主優待制度は、毎年3月末時点の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じて優待商品を贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は反発の動き

 株価は減益予想を嫌気する動きが優勢だったが、その後は目先的な売りが一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。6月7日の終値は1338円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS226円14銭で算出)は約6倍、今期予想配当利回り(会社予想の52円で算出)は約3.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1889円53銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約414億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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