【アナリスト水田雅展の銘柄分析】綿半ホールディングスはIPO直後の高値に接近、中期成長力を評価して上値追い

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 綿半ホールディングス<3199>(東2)はホームセンター事業や建設事業などを展開するグループの持株会社である。株価は7月23日に909円まで急伸して14年12月IPO直後の高値929円に接近した。1桁台の予想PER、1倍割れの実績PBRと指標面の割安感は強い。16年3月期業績の会社予想は増額含みであり、中期成長力を評価して上値追いの展開だろう。なお7月29日に第1四半期(4月~6月)の業績発表を予定している。

■ホームセンター事業や建設事業などを展開するグループ持株会社

 1949年設立(綿半銅鉄金物店、現綿半ホールディングス)で、03年に綿半鋼機(旧)が持株会社の綿半ホールディングスに移行し、14年12月東証2部市場に新規上場した。1598年(慶長3年)に初代・綿屋半三郎が長野県飯田市で創業した綿商いから400年以上の歴史を有している。

 現在は事業会社の綿半ホームエイドが長野県中心にチェーン展開するホームセンター事業、綿半鋼機(新)および綿半テクノスが展開する建設事業を主力として、10年に子会社化したミツバ貿易が医薬品原料などを輸入販売する貿易事業も展開している。

 15年3月期の売上構成比は、ホームセンター事業が54.7%、建設事業が40.5%(内訳は内外装工事が43.9%、立体駐車場が14.9%、鉄構分野が21.2%、建設資材販売が13.0%など)、貿易事業が4.5%、その他(不動産賃貸事業)が0.3%である。

■ホームセンター事業は長野県中心にスーパーセンター業態を積極展開

 綿半ホームエイドがチェーン展開するホームセンター事業は、1977年にホームセンター業態1号店(長池店)をオープンし、07年からは生鮮食品や惣菜など食品の品揃えを強化したスーパーセンター業態の出店を開始して積極展開している。

 15年3月期末の店舗数はスーパーセンター業態8店舗、ホームセンター業態8店舗の合計16店舗(長野県15店舗、愛知県1店舗)で、15年5月にスーパーセンター豊科店をオープンして合計店舗数は17店舗となった。さらに15年11月頃に18店舗目となるスーパーセンター塩尻店のオープンを予定している。

 長野県内で唯一生鮮食品を扱うホームセンターであり、NB商品を中心に地域特性に合わせた豊富な品揃え、価格競争力、ブルーカード(長野県内の主要な小売業やサービス業が加盟するポイントカード)による顧客囲い込みなど、ELP戦略を武器とした個店競争力の高さを強みとしている。サービス面ではカーピットを併設してカー用品取り付け・タイヤ交換やメンテナンスを行っていることも特徴だ。

 なお品目別売上構成比を見ると、09年2月期は食品が30.2%、非食品が69.8%だったが、15年3月期は食品が50.3%、非食品が49.7%となり、食品が非食品を上回った。スーパーセンター業態の新規出店によって食品の売上構成比が上昇している。

■建設事業は長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事に強み

 綿半鋼機(新)と綿半テクノスは、建築・土木・住宅リフォーム工事および鉄骨・鋼構造物の加工・製造などを展開している。長尺屋根工事などの外装改修工事、および自走式立体駐車場工事などに強みを持つ。

 長尺屋根工事では、工場の操業を止めずに老朽化した屋根の改修工事を行うWKカバー工法で特許を取得し、企業の工場・倉庫・物流センター、商業施設、駅舎関連などに豊富な工事実績を誇っている。自走式立体駐車場工事では、柱の少ない認定品「ステージダブル」など国土交通省の認定を多数有していることが強みであり、大型SCの立体駐車場などの工事実績が豊富である。

■貿易事業はジェネリック医薬品向け天然原料などを輸入販売

 10年に子会社化したミツバ貿易は、医薬品・化成品向け天然原料の輸入専門商社で、ジェネリック医薬品向けアセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)や、メキシコ特産でヘアワックス・口紅などに使用するキャンデリラワックス(取り扱い数量国内1位)など、特定分野に強みを持っている。

 また製造部門も有しており、医薬品分野ではHMG(ヒト尿由来の排卵障害治療薬)原薬を製造して医薬品メーカーに販売している。メキシコではキャンデリラワックスの精製工場を保有している。宝飾品部門は15年3月に撤退した。

■16年3月期連結業績は営業増益予想、さらに増額含み

 前期(15年3月期)は、消費増税に伴う駆け込み需要の反動影響、夏場の天候不順の影響、御嶽山噴火や白馬地震など自然災害の影響、ホームセンター事業における人件費の増加、営業外での上場関連費用発生などで、14年3月期比減収、営業減益、経常減益だった。純利益は繰延税金資産の増加が寄与して増益だった。ROEは同1.6ポイント上昇して15.4%、自己資本比率は同4.5ポイント上昇して15.4%となり、配当性向は9.6%だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月14日公表)は売上高が前期比5.4%増の881億01百万円、営業利益が同11.2%増の11億32百万円、経常利益が同10.0%増の12億52百万円、純利益が同13.9%減の11億48百万円としている。配当予想は前期と同額の年間15円(期末一括)で予想配当性向は12.9%となる。

 純利益は繰延税金資産計上効果が減少(15年3月期は6億円計上、16年3月期は2億円計上予定)して減益見込みだが、ホームセンター事業と建設事業が好調に推移して増収、営業増益、経常増益予想だ。なおホームセンター事業の新規出店はスーパーセンター業態2店舗(5月の綿半スーパーセンター豊科店、11月頃の綿半スーパーセンター塩尻店)の計画だ。

 売上面では、ホームセンター事業で消費増税や天候不順の影響が一巡して既存店が好調に推移する。15年5月オープンした綿半スーパーセンター豊科店も寄与する。利益面ではホームセンター事業の出店コストが増加するが、ホームセンター事業の増収効果に加えて、採算重視の受注を進めている建設事業の売上総利益率向上も寄与する。なお15年11月頃オープン予定のスーパーセンター塩尻店は来期(17年3月期)に本格寄与する。

 セグメント別(全社費用等調整前)の計画を見ると、ホームセンター事業は売上高が同10.5%増の504億84百万円、営業利益が同15.3%増の3億47百万円、建設事業は売上高が同0.2%増の339億37百万円、営業利益が同13.6%増の13億43百万円、貿易事業は売上高が同9.4%減の34億19百万円、営業利益が同12.1%減の3億35百万円としている。

 ホームセンター事業の月次売上状況(前年同月比、速報値)を見ると、15年6月は全店が104.2%、既存店が98.5%、15年4月~6月累計は全店が108.8%、既存店が106.1%だった。6月の既存店は天候不順の影響で3ヶ月ぶりの前年割れだったが、7月は一転して猛暑となっているため好調な推移が期待される。

 建設事業は第4四半期(1月~3月)の構成比が高い収益構造だが、ホームセンター事業の好調が牽引して第1四半期(4月~6月)業績は順調に推移しているようだ。またホームセンター事業においては、既存店の売上好調に加えて、食品ロス管理徹底の効果などで売上総利益率も計画以上に上昇しているようだ。通期業績の会社予想は増額含みだろう。

■景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を目指す

 中期ビジョンでは基本方針に「時代の変化に対応し、景気に左右されない安定・成長性のある事業構造を創り上げる」を掲げ、多様性のある経営人財の育成、IT化推進による経営改革、M&A推進のための財務体質強化、長期を見据えた海外展開の準備に取り組んでいる。

 ホームセンター事業では、近隣県への進出も含めて本格的な多店舗展開(当面の目標100店舗体制)に向けた体制作りの期間として、出店スピード加速のための体制整備や新フォーマット店舗の開発に取り組んでいる。

 体制整備では、店舗オペレーションの効率化、パートナーのプロ化(パートのスキルアップ)、発注精度の向上、物流ネットワークの整備・強化、本部バックアップ体制の整備などを推進する。

 新フォーマット店舗の開発では、限られた売場面積の中で地域特性に合わせた品揃えを強化するため、小型スーパーセンター業態や超小型店業態の開発を推進している。15年4月にはホームセンター業態の綿半ホームエイド川中島店(売場面積2000㎡)に生鮮食品を加えて、小型スーパーセンター業態としてリニューアルオープンした。

 また商品面では、長野ブランド(健康・自然)を活かした商品政策(健康を意識した商品政策、長野県ブランドを活かした商品開発)にも取り組む。

 建設事業では、デザインセンターを活用した提案営業や施主に対する直接営業の強化、技術ノウハウを活かした新製品の継続的開発や付加価値の提供などで、採算を重視しながら受注拡大に繋げる。また遠隔地の案件に対しては、施工代理店方式(当社が開発した冶具・ノウハウを提供)も活用して、エリア・顧客基盤の拡大に取り組む方針だ。

 リニア新幹線の停車駅となる長野県飯田市を発祥とする老舗企業であり、高い信用力を背景として、リニア新幹線・駅舎および周辺関連工事の受注も期待される。

 貿易事業では、利益率の高い医薬品分野を中心として、ニッチ市場における新商品の開発を強化する。

 中期経営計画は未策定だが、中長期ビジョンとして売上高1000億円、経常利益20億円程度を当面の目標としてイメージしているようだ。政府の「地方創生戦略」なども追い風であり、ホームセンター事業における新フォーマット開発や多店舗展開が牽引して、中期的に収益拡大基調だろう。

■株価はIPO直後の高値に接近、中期成長力を評価して上値追い

 なお株主優待制度については今後検討するとしている。配当についてはグループの業績や内部留保の充実などを勘案したうえで、安定的な配当を継続して実施することを基本方針としている。

 株価の動きを見ると、14年12月IPO直後の高値929円から一旦反落したが、初値680円水準まで下押すことなく、目先的な売りが一巡して下値切り上げの動きが続いている。

 また7月9日に全般地合い悪化の影響で751円まで調整する場面があったが、素早く切り返した。そして23日には909円まで急伸し、14年12月高値929円に接近した。16年3月期営業増益予想を評価する動きだろう。

 7月23日の終値887円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS116円42銭で算出)は7~8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間15円で算出)は1.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1009円63銭で算出)は0.9倍近辺である。

 日足チャートで見ると、地合い悪化で一旦割り込んだ25日移動平均線を素早く回復し、850円近辺のフシを突破した。また週足チャートで見ると、地合い悪化局面も13週移動平均線近辺で下ヒゲをつけて切り返した。サポートラインを確認した形だ。また26週移動平均線も上向きに転じている。

 1桁台の予想PER、1倍割れ水準の実績PBRと指標面の割安感は強い。16年3月期業績の会社予想は増額含みであり、中期成長力を評価して上値追いの展開だろう。

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