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インテージホールディングスは売られ過ぎ感、23年6月期も収益拡大基調
- 2022/6/20 10:12
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インテージホールディングス<4326>(東証プライム)は、市場調査事業を主力としてシステムソリューション分野や医薬情報分野にも展開し、積極的な成長投資を継続している。22年6月期は主力のパネル調査が好調に推移して増益予想としている。第3四半期累計は2桁営業増益で通期予想を超過達成した。先行投資の一部が第4四半期に後倒しとなったため通期予想は据え置いているが、成長投資を吸収して再上振れの可能性がありそうだ。さらに23年6月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は年初来安値を更新する軟調展開だが売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。
■国内首位の市場調査が主力
子会社インテージのSCI(全国個人消費者パネル調査)やi-SSP(インテージシングルソースパネル)など、国内首位・世界10位(GRBN 2018 Global Top25 Report)の市場調査事業を主力として、システムソリューション分野や医薬情報分野にも展開している。
セグメント区分は消費財・サービス分野のマーケティング支援、ヘルスケア分野のマーケティング支援、ITソリューション分野のビジネスインテリジェンスとしている。
21年6月期のセグメント別構成比は、売上高が消費財・サービス分野のマーケティング支援62%、ヘルスケア分野のマーケティング支援26%、ビジネスインテリジェンス13%、営業利益が消費財・サービス分野のマーケティング支援43%、ヘルスケア分野のマーケティング支援51%、ビジネスインテリジェンス6%だった。
消費財・サービス分野のマーケティング支援では、データサービスやカスタムリサーチなどを展開している。独自収集した各種パネル調査やカスタムリサーチから得られたデータを基に、高度なリサーチ技術やデータ解析力を駆使して、消費財メーカーを中心に企業のマーケティング活動をトータルサポートしている。主な事業会社はインテージ、インテージリサーチ、海外子会社などである。
21年5月にはリサーチ・アンド・イノベーション(RNI)を子会社化、21年7月にはインテージがIXTを吸収合併、21年8月にはインテージ・ベトナムがベトナム国家大学ハノイ校日越大学(ハノイ)と産学連携の基本協定を締結した。
21年10月には、アジア地域で展開する海外インターネット調査パネル「Asian Panel」が、21年8月に新たな対象エリアとしてインドを追加し、11の国・地域を対象としてモニター数が1100万人を突破して業界最大級になったと発表している。
21年11月には、子会社インテージとインティメート・マージャー<7072>の業務提携(21年10月)を強固にすることを目的として、インティメート・マージャーと資本提携(インティメート・マージャーの普通株式の一部を既存株主から取得予定)すると発表した。
ヘルスケア分野のマーケティング支援では、一般用医薬品・医療用医薬品の市場調査、製薬企業からの委託によるデータマネジメント・解析業務、医薬品開発をサポートするCRO業務などを展開している。事業会社はインテージヘルスケアの直下に協和企画、インテージリアルワールド(医療情報総合研究所が21年7月1日付で社名変更)、プラメド、Plamed Koreaの4社を置く体制としている。
ビジネスインテリジェンスでは、ソフトウェア開発やシステム構築・運用などを展開している。事業会社はインテージテクノスフィア、ビルドシステム、エヌ・エス・ケイなどである。
■次世代SRIサービス「SRI+」を核に総合力向上
第13次中期経営計画では目標値に23年6月期売上高625億円、営業利益50億円、営業利益率8.0%を掲げている。目指すべき姿を「データを核として、顧客ビジネス課題解決や意思決定に深く関与・伴走し、ビジネス創造と変革に寄与できる存在」として、次世代成長ドライバー確立などグループ間の連携による対応領域の創造と拡張を推進している。またデジタル環境の変化に対応するため、積極的な事業投資やM&Aも継続して実施する方針だ。
資本政策については、資本効率を重視し、最終利益を全額、成長投資と株主還元に振り向ける方針としている。配当は連結配当性向40%、DOE(自己資本配当率)4.5%以上を目標としている。自己株式取得も機動的に対応する。
消費財・サービス分野のマーケティング支援では、次世代SRI(全国小売店パネル調査)サービスの「SRI+」(ECデータ含む)を21年1月にリリースした。今後は「SRI+」を核としてソリューションおよびパートナー連携による総合力向上を図り、収益拡大につなげる方針だ。また定量的な行動観察を可能にした動画解析プラットフォーム「Label Note(仮)」のリリースに向けて準備中である。
SBIインベストメントと共同設立のINTAGE Open Innovation Fundは、パーソナルAI「al+」開発のオルツ、WEBリサーチのリサーチ・アンド・イノベーション、IoTデータ流通プラットフォームの米EverySense、訪日外国人向けショッピングサポートアプリ「Payke」のPaykeなどに投資している。22年1月現在の投資実績は23社、合計約24.8億円となっている。
また、ESG経営・SDGsへの取り組みの一例として、日本赤十字社の「ACTION!防災・減災プロジェクト」に参画している。さらに、経済産業省と日本健康会議が主催する健康経営優良法人認定制度において「健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)」に認定された。
なお22年5月30日付のリリースで、英投資ファンドNAVFからMBO・非公開化に関する書簡を複数回受領したこと、NAVFと面談したことは事実だが、MBO・非公開化の検討は行っていないと表明している。
■22年6月期は再上振れの可能性、23年6月期も収益拡大基調
22年6月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用だが損益への影響軽微、2月7日に上方修正)は、売上高が21年6月期比5.6%増の608億円、営業利益が4.0%増の46億円、経常利益が2.3%増の52億円、親会社株主帰属当期純利益が6.8%増の36億円としている。配当予想は21年6月期と同額の35円(期末一括)としている。
マーケティング支援(消費財・サービス)事業は売上高が7.7%増の383億円で営業利益が4.7%増の20億円、マーケティング支援(ヘルスケア)事業は売上高が1,9%増の150億円で営業利益が2.8%減の22億円、ビジネスインテリジェンス事業は売上高が3.1%増の75億円で営業利益が63.3%増の4億円の計画としている。
第3四半期累計は売上高が前年同期比4.2%増の470億20百万円、営業利益が13.7%増の50億52百万円、経常利益が2.0%増の52億72百万円、親会社株主帰属四半期純利益が1.9%減の37億01百万円だった。なお収益認識基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が11百万円増加、売上原価が2百万円増加、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ9百万円増加している。
増収・2桁営業増益だった。主力のマーケティング支援(消費財・サービス)事業においてパネル調査が好調に推移し、マーケティング支援(ヘルスケア)事業およびビジネスインテリジェンス事業の減収をカバーした。利益面では先行投資の一部が第4四半期に後倒しとなったことも寄与した。
マーケティング支援(消費財・サービス)事業は、売上高が9.0%増の302億62百万円で、営業利益が41.0%増の27億24百万円だった。国内では主力のパネル調査が好調に推移し、CR(カスタムリサーチ)も伸長した。リモート環境にシフトした営業活動やサービスが定着した。海外もオンライン調査を主業務とするデータスプリング社が好調だった。
マーケティング支援(ヘルスケア)事業は、売上高が1.9%減の113億74百万円で、営業利益が5.8%減の20億16百万円だった。主力のリサーチ事業が人材教育強化やリソース再配置の影響で前年を下回った。CROの製造販売後調査は抜本的な改善の取り組みで収益性が改善傾向である。データサイエンス事業は臨床開発業務の稼働率が高水準で推移した。
ビジネスインテリジェンス事業は、売上高が6.5%減の53億84百万円で、営業利益が15.8%減の3億11百万円だった。インテージテクノスフィアでコロナ禍の影響が大きい旅行業界向けのソリューションが苦戦した。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が138億04百万円で営業利益が8億82百万円、第2四半期は売上高が153億27百万円で営業利益が17億52百万円、第3四半期は売上高が178億89百万円で営業利益が24億18百万円だった。
通期予想は据え置いている。第3四半期累計の各利益は通期予想を超過達成しているが、先行投資の一部が第4四半期に後倒しとなったためとしている。ただし成長投資を吸収して再上振れの可能性がありそうだ。さらに23年6月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待は毎年12月末の株主対象
株主優待制度は、毎年12月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象として実施(詳細は会社HP参照)している。
■株価は売られ過ぎ感
株価は年初来安値を更新する軟調展開だが売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。6月17日の終値は1349円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS90円88銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の35円で算出)は約2.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS750円50銭で算出)は約1.8倍、そして時価総額は約545億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)