星光PMCは下値固め完了、22年12月期減益予想だが上振れ余地

 星光PMC<4963>(東証プライム)は製紙用薬品事業、印刷インキ用・記録材料用樹脂事業、化成品事業を展開し、次世代素材セルロースナノファイバー(CNF)などの拡販も推進している。22年12月期は需要堅調だが、原燃料価格高騰や成長投資費用増加などで減益予想としている。ただし第1四半期の利益進捗率が高水準だったため、通期利益予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で中期的に収益拡大基調だろう。株価は反発力が鈍く年初来安値圏だが、下値固め完了感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。

■製紙用薬品、印刷インキ用・記録材料用樹脂、化成品を展開

 DIC<4631>の連結子会社で、製紙用薬品事業、樹脂事業(印刷インキ用樹脂、記録材料用樹脂、次世代素材CNF、および台湾・新綜工業の粘着剤)、化成品事業(子会社KJケミカルズの機能性モノマー)を展開している。なお22年1月には台湾・新綜工業の株式を追加取得して出資比率を92.80%に引き上げた。先進精密産業において需要拡大基調の粘着剤事業の海外展開を推進し、連結経営の強化を図る。

 21年12月期のセグメント別売上高構成比は製紙用薬品事業が57%、樹脂事業が26%、化成品事業が17%で、セグメント別利益(全社費用等調整前営業利益)構成比は製紙用薬品事業が36%、樹脂事業が24%、化成品事業が40%だった。

■中期経営計画「OPEN 2024」

 22年2月に、長期ビジョン「VISION 2030」を達成するためのアクションプランとして、新中期経営計画「OPEN 2024」を発表した。

 目標数値として、最終年度24年12月期売上高390億円、営業利益37.5億円、営業利益率9.6%、EBITDA(営業利益+減価償却費)57.5億円、ROE8.4%、海外売上高比率40%以上、New Green Index130以上を掲げた。

 セグメント別は、製紙用薬品事業の売上高が210億円でセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が15億円、樹脂事業の売上高が110億円で利益が17.5億円、化成品事業の売上高が70億円で利益が9億円としている。

 基本方針として、製品/事業地域/事業領域の全てにおけるポートフォリオ変革推進による稼ぐ力の強化、ESG経営(GHG排出量削減、環境戦略製品の拡販)、人財育成・組織づくり、DXを推進する。

 製紙用薬品事業では国内シェア拡大、アジア地域での製造・販売拡大、バイオフィルムコントロール剤等の新事業、樹脂事業では製品ポートフォリオ変革、UV硬化型粘着剤拡販、アジア地域での市場拡大、CNFの用途拡大・採用拡大、AgNW(銀ナノワイヤインク)の新規採用、化成品事業では生産キャパ拡充、海外販路・市場開拓パートナーの拡充、機能性溶剤の拡販を推進する。

 サステナビリティに関する取り組みでは、22年2月にはサステナビリティ委員会を設置するとともに、サステナビリティ基本方針を策定した。22年5月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明するとともに、同提言に賛同する企業・金融機関等で構成されるTCFDコンソーシアムに加入した。

 なお長期ビジョン「VISION 2030」における戦略投資枠としては、22年~30年の9年間合計300億円を設定している。内訳は成長投資枠150億円、協業やM&A等による事業規模拡大を図るための投資枠150億円としている。

■CNF複合材料や脱プラ製品の拡販を推進

 次世代素材CNFは、すべての植物の植物細胞壁の骨格成分であるセルロースをナノサイズまで細かくほぐすことによって得られる繊維である。鋼鉄の5分の1の軽さで5倍以上強く、熱による変形が少ないなどの特徴がある。樹脂の補強材として機能させることで、自動車用樹脂の強度向上や金属部材からの置き換え、家電・モバイル機器の軽量化などでの需要が期待されている。

 18年1月CNF複合材料「STARCEL」ブランドでの商業生産・製品出荷を開始した。18年6月には世界初のCNF強化樹脂応用製品の商品化として、アシックス<7936>の高機能ランニングシューズ製品のミッドソール部材の原材料に「STARCEL」が採用され、全世界で累計500万足以上販売されている。19年10月には環境省NCV(Nano Cellulose Vehicle)プロジェクト製作のコンセプトカーに採用された。

 20年8月にはNEDO助成事業の「革新的CNF製造プロセス技術の開発」の助成先に採択された。事業期間は20年度~24年度である。さらに自動車用部材への採用を目指して検討を継続している。

 この他の新製品・注目製品として、脱プラスチック・包装材料の紙化を推進する紙塗工用耐水・耐油オールアクリルエマルション、造水膜などに発生するバイオフィルムの形成を抑えるバイオフィルムコントロール剤などの拡販も推進している。紙の包装に耐水性、耐油性、バリア性、シール性を持たせる機能性コート剤「SEIKOATシリーズ」については、食品包装材用として生産ライン試験が進んでおり、食品包装材用途やカップ用途などで23年3月期中の実績化を目指している。

■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書

 22年4月に移行した東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示している。新中期経営計画「OPEN 2024」の着実な遂行による業績の向上、IR・ガバナンス機能の強化などで企業価値の向上に取り組むとともに、取引先等の事業会社との株式保有関係解消などを通じて流通株式比率の向上、流通株式時価総額の増大を図り、24年12月期末までにプライム市場の上場維持基準適合を目指すとしている。

■22年12月期減益予想だが上振れ余地

 22年12月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用だが影響軽微)は、売上高が21年12月期比7.8%増の334億60百万円だが、営業利益が28.9%減の20億40百万円、経常利益が31.2%減の21億60百万円、親会社株主帰属当期純利益が29.4%減の14億70百万円としている。配当予想は21年12月期と同額の16円(第2四半期末8円、期末8円)としている。

 需要が堅調に推移し、国内外における拡販で増収を見込むが、原燃料価格の高騰や成長投資費用の増加(年央に予定しているベトナム工場稼働など国内外の設備投資に伴う減価償却費の増加)などで減益予想としている。なお営業利益8億27百万円減益の要因別分析見通しは、増益が数量・品目構成で7億22百万円、減益が製品・原料価格差で7億93百万円、製造経費で5億29百万円、販管費で2億26百万円としている。設備投資額は10億35百万円増加の39億20百万円、減価償却費は3億75百万円増加の16億67百万円、研究開発費は75百万円増加の19億13百万円の計画である。

 セグメント別の計画は、製紙用薬品事業の売上高が10.8%増の194億52百万円で営業利益が42.2%減の6億90百万円、樹脂事業の売上高が6.3%増の85億95百万円で営業利益が17.2%増の9億41百万円、化成品事業の売上高が0.4%増の54億13百万円で営業利益が38.2%減の8億11百万円としている。製紙用薬品事業は原燃料価格の高騰やベトナム新工場立ち上げ費用の発生などで一時的に減益、樹脂事業は環境負荷軽減に貢献する高付加価値製品の販売拡大で原燃料価格高騰の影響を吸収して増益、化成品事業は原燃料価格高騰や設備増強投資に伴う償却費の増加で一時的に減益の見込みとしている。

 第1四半期は、売上高が前年同期比0.2%増の75億30百万円だが、営業利益が39.7%減の5億81百万円、経常利益が19.5%減の8億49百万円、親会社株主帰属四半期純利益が11.2%減の6億21百万円だった。原材料価格高騰や成長投資費用増加などで減益だった。なお収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が45百万円減少、売上原価が44百万円減少、営業利益が1百万円減少しているが、経常利益、税金等調整前四半期純利益への影響はなかった。

 製紙用薬品事業は売上高が5.6%増の42億71百万円で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が53.4%減の1億91百万円だった。需要は堅調だったが、原材料価格高騰の影響を受けた。樹脂事業は売上高が17.3%減の17億円で、利益が65.5%減の1億09百万円だった。粘着剤、印刷インキ用樹脂・記録材料用樹脂の売上が減少した。化成品事業は売上高が10.6%増の15億58百万円で、利益が0.0%減の4億04百万円だった。売上面では主力製品の輸出売上が増加したが、利益面は原材料価格高騰の影響を受けた。

 通期予想は据え置いている。22年12月期は原燃料価格の高騰や成長投資費用の増加などで一時的に利益成長が減速する形だ。ただし第1四半期の進捗率は売上高が22.5%、営業利益が28.5%、経常利益が39.3%、親会社株主帰属当期純利益が42.2%だった。利益進捗率が高水準だったため、通期利益予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は下値固め完了

 株価は反発力が鈍く年初来安値圏だが、下値固め完了感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。6月21日の終値は556円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS48円48銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の16円で算出)は約2.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS979円59銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約169億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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