マルマエは売られ過ぎ感、22年8月期大幅増収増益予想で収益拡大基調

 マルマエ<6264>(東証プライム)は半導体・FPD製造装置向け真空部品などの精密切削加工を展開し、新・中期事業計画「Innovatuin2025」では、消耗品拡大による受注安定化、市場シェア拡大に向けた能力増強投資、ESG経営の推進を打ち出した。22年8月期(4月15日に上方修正)は受注が好調に推移して大幅増収増益・過去最高更新予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して年初来安値圏だが売られ過ぎ感を強めている。好業績を再評価して出直りを期待したい。なお6月30日に22年8月期第3四半期決算発表を予定している。

■半導体・FPD製造装置向けの精密切削加工およびEBWを展開

 半導体・FPD(フラットパネルディスプレー)製造装置に使用される真空部品や電極などの精密切削加工、および電子ビーム溶接(EBW)を展開している。22年8月期第2四半期累計の売上高構成比は半導体分野が76%、FPD分野が20%、その他分野(半導体製造装置分野など)が2%だった。

 また、作業補助・介護ロボットの開発(鹿児島大学と共同研究)では、18年7月第二種医療機器製造販売業の許可を取得し、医療機器製造業の登録を行った。

■ESG経営を推進

 新・中期事業計画「Innovatuin2025」では、成長戦略として消耗品拡大による受注安定化、市場シェア拡大に向けた能力増強投資、ESG経営の推進を打ち出した。数値目標は25年8月期売上高140億円、営業利益42億円、資産ベースROIC23%、負債ベースROIC19%、配当性向35%以上、年間最低配当額20円(最終損益が赤字となる場合は見直し)を掲げている。設備投資の計画(CFベース)は、増産投資およびカーボンニュートラルに向けた太陽光発電投資を中心に、23年8月期20億円、24年8月期20億円、25年8月期12億円としている。

 売上拡大戦略として、22年8月期実績見込(全社売上高83億円)に対して、半導体分野は既存顧客からの受注拡大で+29.5億円、新規顧客からの量産受注拡大で+20億円、FPD分野・その他分野は+7.5億円を目指す。半導体分野は引き続き需要が拡大基調である。FPD分野は23年末までテレビ向け液晶G10.5関連の設備投資が停滞する見込みだが、EBW活用によるシェア拡大や有機ELのパネル大型化が寄与する見込みだ。なお消耗品の売上構成比は22年8月期上期実績で半導体分野が68.6%、FPD分野が17.3%となっている。更なる消耗品受注の拡大で受注安定化を狙う方針だ。

 また中長期的な取り組みとしてESG経営を推進する。自社の再生可能エネルギー活用によってCO2削減を推進し、2030年に50%削減、2050年に100%削減を目指す。さらに人材力最大化に向けて、6つの向上施策(多様化の推進、人材戦略の推進、誰もが働ける職場環境の整備、人事制度改善、育成プラン作成、育成計画推進)を推進する方針だ。

 21年12月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同を表明した。また22年3月には統合報告書を発表している。

■22年8月期大幅増収増益予想

 22年8月期の業績予想(非連結、収益認識会計基準適用だが影響軽微、前期比増減率は適用前の21年8月期実績との単純比較、4月15日に上方修正)は、売上高が21年8月期比54.6%増の83億円、営業利益が90.6%増の23億円、経常利益が90.5%増の22億86百万円、当期純利益が84.8%増の16億67百万円としている。配当予想(2月9日に第2四半期末4円、期末4円、合計8円上方修正)は21年8月期比20円増配の44円(第2四半期末22円、期末22円)としている。

 受注が好調に推移して大幅増収増益・過去最高更新予想である。分野別売上高の計画は、半導体分野が43.6%増の60億60百万円、FPD分野が79.0%増の15億円、その他分野が4.4倍の7億40百万円としている。利益面では、受注が生産能力を超過するため外注費が増加するが、増収効果や工場稼働率向上による製造原価率低減が寄与する見込みだ。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比72.3%増の39億62百万円、営業利益が2.8倍の11億75百万円、経常利益が2.8倍の11億71百万円、四半期純利益が2.8倍の8億37百万円だった。受注が好調に推移して大幅増収増益だった。収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高と売上原価がそれぞれ27百万円減少したが、損益への影響は軽微である。

 全社ベースの受注高は前年同期比93.7%増の48億93百万円(分野別には半導体分野が87.7%増の37億31百万円、FPD分野が2.6倍の10億14百万円、その他分野が2.6%増の1億47百万円)だった。分野別売上高は半導体分野が60.2%増の29億96百万円、FPD分野が2.8倍の7億81百万円、その他分野が22.6%減の73百万円だった。半導体分野は良好な市場環境が継続している。FPD分野は市場環境改善とシェア拡大が牽引した。その他分野は太陽電池製造装置部品の受注が増加した。

 コスト面では、材料費、外注加工費、労務費、減価償却費、研究開発費などが増加し、第2四半期に受注損失引当金が増加したが、増収効果や稼働率上昇効果で吸収した。売上総利益率は39.1%で8.2ポイント上昇した。販管費は30.5%増加したが、販管費比率は9.4%で3.1ポイント低下した。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が19億38百万円で営業利益が5億95百万円、第2四半期は売上高が20億24百万円で営業利益が5億81百万円だった。

 受注残高は過去最高を更新して拡大基調である。22年1月には22年8月期の設備投資計画の増額を発表している。急増する受注への対応や、さらなる市場シェア拡大に向けて、合計月産7億円を超える生産キャパシティの実現を実行する方針だ。通期予想は再上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。なお月次受注残高の開示は22年4月分で終了している。

■株主優待制度は毎年8月末時点で6ヶ月以上継続保有株主対象

 株主優待制度は、毎年8月末日現在で6ヶ月以上継続1単元(100株)以上保有株主を対象として、クオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)する。

■株価は売られ過ぎ感

 株価は地合い悪化も影響して年初来安値圏でやや軟調だが、売られ過ぎ感を強めている。好業績を再評価して出直りを期待したい。6月24日の終値は1910円、今期予想PER(会社予想のEPS130円17銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想44円で算出)は約2.3%、前期実績PBR(前期実績のBPS494円20銭で算出)は約3.9倍、時価総額は約249億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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