ネオジャパンは下値固め完了、23年1月期1Qが2桁営業増益で通期上振れの可能性

 ネオジャパン<3921>(東証プライム)は自社開発グループウェアのクラウドサービスを主力として、製品ラインアップ拡充による市場シェア拡大戦略、アライアンス戦略、東南アジア市場開拓戦略などを推進している。23年1月期は先行投資負担を考慮して小幅営業増益予想としている。ただし保守的だろう。第1四半期が2桁営業増益と順調であり、クラウドサービスが牽引して通期上振れの可能性がありそうだ。さらにDXの流れも背景として、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。なお配当政策を変更し、23年1月期配当予想を上方修正している。株価は地合い悪化も影響して年初来安値圏でモミ合う形だが下値固め完了感を強めている。好業績を評価して出直りを期待したい。

■自社開発グループウェアのクラウドサービスが主力

 ビジネス・ITコミュニケーションツール開発企業である。自社開発グループウェアdesknet‘s NEOのクラウドサービス(月額課金収入)を主力として、大企業向け中心のプロダクト(パッケージソフト販売のライセンス収入およびサポートサービス収入)も展開している。19年8月にはシステム開発のPro-Spireを子会社化した。

 海外展開は19年6月米国子会社DELCUIを設立、19年12月マレーシアに合弁会社NEOREKA ASIAを設立、21年2月タイに子会社Neo Thai Asiaを設立した。当面は投資が先行する見込みだが、ASEAN全域においてグループウェアdesknet‘s NEOブランドの確立を目指す。

 22年1月期(連結調整前)の売上構成比は、グループウェアを中心とするビジネスICTツールのソフトウェア事業が66%(クラウドサービスが41%、プロダクトが24%、技術開発が1%)、子会社Pro-Spireのシステム開発サービス事業が34%、海外事業が0%、営業利益構成比はソフトウェア事業が93%、システム開発サービス事業が10%、海外事業が▲4%だった。ソフトウェア事業のストック型売上比率は73.1%(21年1月期は72.5%)だった。なお収益面では下期(特に第4四半期)の構成比が高い傾向がある。

 22年2月には営業活動強化に向けて福岡営業所を開設した。22年3月には経済産業省と日本健康会議が進める健康経営優良法人認定制度「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)」に3年連続で選定された。22年4月にはバスケットボール女子日本リーグ(Wリーグ)に所属する東京羽田ヴィッキーズとスポンサーシップ契約を締結した。

■グループウェアdesknet‘s NEOは使いやすさが強み

 グループウェアdesknet‘s NEOは、ローカライゼーション(日本語、日本の商習慣やビジネス習慣など)に対応した27の基本機能を備え、多機能・使いやすさ・高品質・低価格を強みとしている。22年3月には新バージョン7.0をリリースした。グループウェア上で組織内のテレワーク状況を可視化する新機能「プレゼンス」を搭載した。

 業種・業態・規模を問わず幅広く企業・官公庁・自治体に採用され、1000以上の自治体・政府機関・都道府県庁の3分の1以上に導入されている。21年7月にはカー用品専門店チェーンのイエローハット<9882>に、グループが運営する全国740店舗の従業員・スタッフをつなぐ情報共有基盤として、グループウェアdesknet‘s NEO大規模パッケージ版(3000ライセンス)が採用された。

 22年1月期末時点でグループウェアdesknet‘s NEOの累計ユーザー数(クラウド版契約ユーザー数とパッケージ版販売ユーザー数の合計)は、前年同期比24.2万ユーザー増加の462.6万ユーザーとなっている。1000以上の自治体・政府機関(都道府県庁17を含めて自治体536、政府機関526)に導入されている。中長期的には累計ユーザー数1000万ユーザーを目指すとしている。なおクラウドユーザー数は前年同期比7.1万人増加の45.2万人となった。解約率は概ね0.2%~0.5%程度で推移している。

 なおアイティクラウド社が運営するIT製品比較・レビューサイト「ITreview」の「ITreview Grid Awaed 2022 Spring」において、desknet‘s NEOがグループウェア部門とワークフロー部門のLeaderを受賞、ChatLuckがビジネスチャット部門のHigh Performerを受賞した。desknet‘s NEOは13期連続、ChatLuckは7期連続での受賞となった。また22年3月にはdesknet‘s NEOが「ITトレンド Good Product バッジ」を受賞した。

■製品ラインアップ拡充で市場シェア拡大を推進

 中期成長戦略として、グループウェアdesknet‘s NEOを核とするエンタープライズ向け製品の市場シェア拡大戦略、シナジーが見込めるアライアンスへの戦略投資、マレーシアの合弁会社を拠点とするクラウドサービスの東南アジア市場開拓戦略などを推進している。

 製品ラインアップの拡充では、カスタムメイド型業務アプリ作成ツールAppSuite、新しいコミュニケーションツールとしてのビジネスチャットChatLuckを提供し、グループウェアdesknet‘s NEOとの連携も強化している。21年12月にはビジネスチャットChatLuck新バージョン4.5の提供を開始した。外部システムとの連携をさらに強化した。

 21年3月には横浜商工会議所が開設したデジタル化相談窓口に協力会社として参加した。デジタル化支援コンソーシアム協力事業者として中小企業のDX推進をサポートする。21年6月には、アイネット<9600>が提供する教育現場でのDX推進のための学校保護者間あんしん連絡サービスChatLuck SCを開発提供した。ビジネスチャットChatLuckをベースとして開発した。2社の共同事業として全国の国公立小中学校に販売する。

 21年8月にはDX推進のスピードアップや製品開発のプロセス強化などを目的としてプロセス改革部を新設した。21年4月に新設したカスタマーサクセス部と連携してユーザーの長期的な成功にコミットする。

 21年12月には、茨城県つくば市のワクチン配送におけるDX化実現のために、desknet‘s NEOとAppSuiteで作成したアプリケーション「つくば市新型コロナワクチン配送システム」および「ワクチン数量管理表」を開発して提供した。また22年1月には、つくば市で導入されたワクチン配送システムのテンプレートを、同じ課題を持つ自治体に向けて無償提供開始すると発表している。

 22年3月には、東京都多摩市が実施した「令和3年度多摩市民間提案制度」において、desknet‘s NEOとAppSuiteで作成した「ワクチン接種記録等の効率化と工数削減に向けた管理向上」事業が採用候補に認定された。ワクチン関連の行政の業務効率化において採用された事例としては、茨城県つくば市「つくば市新型コロナワクチン配送システム」に続く2例目となる。

 22年5月には、中小企業のDXを支援するAppSuiteアプリ集「ネコの手アプリ」シリーズを提供するシステムアプローチ(愛知県名古屋市)と、AppSuiteアプリの開発・販売活動で連携した。

■23年1月期1Qが2桁営業増益で通期上振れの可能性

 23年1月期連結業績予想(収益認識会計基準適用だが損益への影響軽微)は、売上高が22年1月期比5.9%増の62億71百万円、営業利益が1.9%増の12億71百万円、経常利益が0.1%減の13億59百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が6.3%増の9億20百万円としている。配当予想(配当性向の目標を従来の20%以上から30%以上に変更し、22年6月10日付で期末3円上方修正)は、22年1月期比5円増配の19円(期末一括)としている。7期連続増配で予想配当性向は30.8%となる。

 第1四半期(2月~4月)は、売上高が前年同期比9.8%増の14億96百万円で、営業利益が12.2%増の3億09百万円、経常利益が6.3%減の3億27百万円、親会社株主帰属四半期純利益が6.8%減の2億21百万円だった。営業外収益で前年同期に計上した保険解約返戻金60百万円が剥落して経常・最終小幅減益だが、主力製品が好調に推移して増収、2桁営業増益だった。

 ソフトウェア事業は売上高が19.1%増の10億48百万円で、セグメント利益(調整前営業利益)が19.4%増の3億22百万円だった。売上面はクラウドサービスが利用ユーザー数の増加で12.4%増の6億43百万円(主力のグループウェアdesknet‘s NEOクラウドが12.0%増の5億39百万円)と好調に推移した。プロダクトは大規模ユーザー向けグループウェアdesknet‘s NEOエンタープライズの好調で30.7%増の3億85百万円(内訳はライセンス売上が57.8%増の1億05百万円、サポートサービスが11.6%増の1億94百万円など)だった。

 システム開発サービス事業は主要顧客の体制縮小の影響で、売上高が7.2%減の4億54百万円、セグメント利益が64.4%減の7百万円だった。海外事業は売上高が25.6%増の0.8百万円でセグメント利益が21百万円の赤字(前年同期は16百万円の赤字)だった。

 通期予想は据え置いて11期連続増収・営業増益予想としている。売上見込みは、ソフトウェア事業のクラウドサービスが利用者数増加などで15%程度増収、ライセンス売上が官公庁や大企業向け中心に前期と同水準、カスタマイズ等の役務作業が前期の反動で減収、システム開発サービス事業が数%程度増収、海外売上が46百万円程度としている。

 利益面では売上総利益率の若干の改善を想定するが、人員強化に伴う人件費の増加など先行投資を考慮して営業利益は小幅増益予想としている。ただし保守的だろう。第1四半期が2桁営業増益と順調であり、クラウドサービスが牽引して通期上振れの可能性がありそうだ。さらにDXの流れも背景として、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待は1月末と7月末の年2回

 株主優待は年2回、毎年1月末と7月末の株主を対象として、保有株式数に応じてQUOカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。

■株価は下値固め完了

 株価は地合い悪化も影響して年初来安値圏でモミ合う形だが下値固め完了感を強めている。好業績を評価して出直りを期待したい。6月27日の終値は1114円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS61円77銭で算出)は約18倍、今期予想配当利回り(会社予想の19円で算出)は約1.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS345円53銭で算出)は約3.2倍、そして時価総額は約166億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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