【アナリスト水田雅展の銘柄分析】JPホールディングスの16年3月期は2桁営業増益・増配予想、中期成長力を見直して反発局面

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 JPホールディングス<2749>(東1)は保育所運営の最大手で、子育て支援事業を主力に事業展開するグループ持株会社である。株価は調整局面が続いたが、地合い悪化も影響した7月9日の年初来安値303円から切り返しの動きを強めている。調整がほぼ一巡したようだ。16年3月期は2桁営業増益・増配予想であり、中期成長力を見直して反発局面だろう。

■保育所運営の最大手で子育て支援事業を展開

 04年持株会社に移行し、保育所・学童クラブ・児童館などを運営する子育て支援事業(日本保育サービス、四国保育サービス)を主力として、保育所向け給食請負事業(ジェイキッチン)、英語・体操・リトミック教室請負事業(ジェイキャスト)、保育関連用品の物品販売事業(ジェイ・プランニング販売)、研究・研修・コンサルティング事業(日本保育総合研究所)を展開している。

 15年3月期末の子育て支援施設数は、首都圏中心に認可園・公設民営14施設、認可園・民設民営102施設、東京都認証保育所26施設、認可外(市認定)4施設、学童クラブ46施設、児童館8施設の合計200施設(14年3月期比18施設増加)である。保育所運営の売上規模で競合他社を大きく引き離す業界最大手だ。

 当社の保育所は保育理念を「生きる力を育む」として、オートロックや緊急通報機器など徹底した安全・セキュリティ管理、食物アレルギーや感染症などの各種マニュアル整備、保育用品一括購入によるコスト管理、ジェイキャストや日本保育総合研究所など独自の幼児教育プログラム活動、ジェイキッチンによる安全な給食、日本保育総合研究所の発育支援などに強みを持ち、グループ総合力を活かした総合子育て支援カンパニーである。

 また従来の月極保育だけでなく、女性の社会進出というニーズに対応した一時保育、延長保育、年中無休に重点を置いた新しい形の保育所を特徴としている。今後の展開として、風邪や発熱など病気の時に子供を預かる病児保育も実施する方針だ。

 人材活用面では、配偶者の転勤への対応や時短勤務などそれぞれのライフイベントに添った勤務体系、福利厚生・研修制度の充実、男女を問わず産休・育休取得の推進などに取り組んでいる。こうした取り組みが認められて15年3月には、女性活躍推進企業として東京証券取引所と経済産業省の共同企画である「なでしこ銘柄」に選定された。

 また7月3日に16年春の新卒採用方針を発表した。保育士資格を有する学生230名を即戦力に近い人材として採用するとともに、別の新規採用枠として保育士資格を持たない新卒を多数(50名以上目標)採用する。そして入社内定後の秋口に社内で業界初の「保育士養成講座」を開設し、16年4月の保育士試験にチャレンジさせる。保育士を目指す意欲のある一般学生に保育士資格取得のサポートを行う業界初の試みで、教材などの費用は会社が負担する。

■16年3月期は2桁営業増益で連続増配予想

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)42億29百万円、第2四半期(4月~6月)44億09百万円、第3四半期(7月~9月)45億93百万円、第4四半期(10月~12月)46億37百万円、営業利益は第1四半期2億19百万円、第2四半期3億29百万円、第3四半期5億69百万円、第4四半期3億14百万円、経常利益は第1四半期2億55百万円、第2四半期3億56百万円、第3四半期5億86百万円、第4四半期4億39百万円だった。

 毎年4月に新規施設の開園が集中して開園準備費用負担が先行するため、営業利益は第1四半期(4月~6月)および第4四半期(1月~3月)がやや低水準となりやすい。また経常利益は営業外での補助金収入の増減も影響する収益構造だ。

 15年3月期の新規開設は保育所17施設、学童クラブ4施設の合計21施設だった。また閉鎖は保育所3施設(認可保育所へ移転新設のため)、学童クラブ3施設(契約期間満了により撤退)だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月8日公表)は、売上高が前期比14.2%増の204億11百万円、営業利益が同21.5%増の17億40百万円、経常利益が同6.3%増の17億40百万円、純利益が同26.5%増の12億70百万円としている。

 配当予想は前期比1円増配の年間5円(期末一括)としている。予想配当性向は32.9%となる。配当については配当性向30%前後の業績連動型配当の継続実施を基本方針としている。

 新規施設開設による増収効果で、新規施設開設費用および保育士募集採用費や人件費の増加などを吸収する。新規開園は保育所17施設、学童クラブ12施設、児童館2施設の合計31施設の計画(学童クラブ1施設を除く30施設が15年4月に運営開始)で、新たに名古屋市に参入する。

■中期経営計画で18年3月期経常利益21億円目指す

 15年5月に発表した新中期経営計画では基本方針として、総合子育て支援企業のリーディングカンパニーとして待機児童問題の解消に寄与するため、良質な子育て支援サービス提供の拡充を加速するとともに、子育て支援事業に次ぐ第2の柱となる事業の育成を図るとしている。

 また重点目標を、保育サービスの量的・質的向上、人材獲得に向けた採用活動の強化、第2の収益源の創設、経営管理の高度化、コンプライアンスの徹底およびコーポレートガバナンスの強化とした。

 目標数値には18年3月期の売上高246億円、経常利益21億円を掲げている。3期間合計の開設数は保育所47施設、学童クラブ・児童館28施設、合計75施設の見込みだ。

■子育て支援や待機児童解消など国の重点政策を背景に中期成長

 全国の保育所利用児童数は増加基調で、待機児童数は緩やかに減少傾向となっているが依然として解消せず、潜在需要も顕在化して首都圏や地方主要都市など、都市部を中心に保育サービスの需要は高水準である。

 そしてアベノミクス成長戦略では「女性活用推進」を重点分野に位置付け、17年度の待機児童解消を目指して15年4月に新「子ども・子育て新支援制度」がスタートした。15年度~17年度を「取組加速期間」として約40万人分の保育の受け皿を確保する方針だ。

 保育士の確保が課題だが、国家戦略特区における保育士試験の年2回実施など規制緩和、制度面での支援、運営補助金拡大などの動きが活発化している。また収益構造の改善に向けた取り組みとして、体育講師や英語教師の派遣、物販の充実、給食の請負なども推進している。国の重点政策を背景とする中期成長シナリオに変化はないだろう。

■株価は調整一巡感、中期成長力を見直して反発局面

 株価の動きを見ると、350円~400円近辺のボックスレンジから下放れて調整局面が続いた。ただし全般地合い悪化も影響した7月9日の年初来安値303円から切り返しの動きを強めている。24日には336円まで戻した。調整がほぼ一巡したようだ。

 7月24日の終値333円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS15円22銭で算出)は21~22倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間配当5円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS69円14銭で算出)は4.8倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線が戻りを押さえる形だが、地合い悪化の影響を受けた7月9日の年初来安値で下ヒゲをつけて調整一巡感を強めている。16年3月期は2桁営業増益・増配予想であり、中期成長力を見直して反発局面だろう。

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