【アナリスト水田雅展の銘柄分析】エイジアは急騰後の調整局面だが、16年3月期増収増益・連続増配予想を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 エイジア<2352>(東マ)はメール配信システムの大手で、eコマースのマーケティングソリューションを提供している。株価は6月下旬急騰後の日柄調整局面のようだ。ただし強基調へ転換した形であり、16年3月期増収増益・連続増配予想を評価して水準切り上げの展開だろう。なお7月31日に第1四半期(4月~6月)の業績発表を予定している。

■メール配信システム「WEBCAS」のアプリケーション事業が主力

 自社開発のメールマーケティング・プラットフォーム「WEBCAS」シリーズを提供するアプリケーション事業を主力として、システム受託開発やマーケティングコンサルティングなどのサービスソリューション事業も展開している。

 01年に発売した自社開発のメール配信システム「WEBCAS e-mail」は、顧客の嗜好、属性、購買履歴などに基づいたOne to Oneメールを、世界トップレベルの最高300万通/時で送信することが可能な超高速性が強みである。総合通販企業、メーカー、生命保険、情報サービス会社など多様な業界の企業や官公庁に導入され、国内メール配信パッケージ市場でのシェアは1位である。

 メールマーケティングシステム「WEBCAS」シリーズは、メール配信システム「WEBCAS e-mail」を中心に、アンケートシステム「WEBCAS formulator」やメール共有システム「WEBCAS mailcenter」などをラインナップに抱えるe-CRMアプリケーションシリーズである。

 なお15年5月にはメールマーケティングシステム「WEBCAS」シリーズの導入企業が2500社を突破した。トヨタ自動車<7203>のメール配信システム導入事例、三井物産<8031>の社会貢献活動「サス学」アカデミーメルマガ配信システム導入事例、陸上自衛隊のアンケートシステム・メール配信システムの導入事例などを公開している。

■M&A・アライアンスも活用してeコマース関連分野を拡大

 中期成長戦略として「メールアプリケーションソフトのエイジア」から、販売促進・マーケティング支援分野に事業領域を拡大して「eコマースの売上UPソリューションを世界に提供するエイジア」への発展を目指し、クラウドサービス(ASP、SaaS)の強化、新製品・サービス開発の推進、サービスソリューション事業の拡大に取り組んでいる。

 M&A・アライアンス戦略では、12年4月ECサイト構築・運営事業拡大に向けてシステムインテグレータ<3826>と資本・業務提携、12年12月メールマーケティングコンサルティング事業拡大に向けてメールマガジン制作・運用支援のグリーゼと資本・業務提携、13年10月メールマガジン戦略立案・企画・制作・分析サービスのFUCAを連結子会社化、14年1月Webサイトソーシャル化支援サービスのフィードフォース社と業務提携した。

 14年6月にはデータベース作成システム「WEBCAS DB creator」を発売し、ジェイモードエンタープライズと共同開発した電子レシートメール送信サービス「レシートメール」も発売した。15年5月にはSMS配信システム「WEBCAS SMS」の販売を開始した。マイナンバー関連などの需要を見込んでいる。さらにカンタンCRM「WEBCAS CRM」の販売も開始した。

 15年5月にはソフトフロントやホオバルなど異業種各社と協業して、女性の起業をサポートする「コロコニ・プロジェクト」を発足した。女性の起業家に対して技術サポートおよびサービスの提供を共同で行っていく。

 7月17日には「WEBCAS」シリーズとWebコンテンツ制作をセットにしたWebキャンペーン運営支援サービス「WEBCASキャンペーン支援パック」の発売を開始し、VOYAGE MARKETINGのデジタルギフトサービス「ギフビー」とも連携した。

 7月21日には、新製品のBtoC企業向けマーケティングオートメーションツール「WEBCASマーケティングオートメーション(仮称)」を16年3月に発売すると発表した。複雑化したデジタルマーケティングを簡単に実現して効果を高めるためのBtoC企業向けマーケティング・プラットフォームである。マーケティング活動を自動化するマーケティングオートメーション市場は米国を中心に急速に拡大し、日本でも市場拡大が期待されている。

■16年3月期は増収増益・連続増配予想

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)2億22百万円、第2四半期(7月~9月)2億65百万円、第3四半期(10月~12月)2億67百万円、第4四半期(1月~3月)2億77百万円で、営業利益は第1四半期14百万円、第2四半期51百万円、第3四半期54百万円、第4四半期59百万円だった。

 また15年3月期の配当性向は26.6%だった。ROEは14年3月期比4.7ポイント低下して12.4%、自己資本比率は同0.6ポイント上昇して79.0%だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月11日公表)は、売上高が前期比9.6%増の11億30百万円、営業利益が同23.2%増の2億20百万円、経常利益が同21.5%増の2億20百万円、純利益が同28.6%増の1億40百万円としている。配当予想は同2円増配の年間17円(期末一括)で予想配当性向は23.7%となる。

 セグメント別売上高の計画は、アプリケーション事業が同15.7%増の9億90百万円、サービスソリューション事業が同20.0%減の1億40百万円としている。アプリケーション事業はクラウド関連やライセンス販売が好調に推移する。サービスソリューション事業は開発要員をアプリケーション事業の「WEBCASマーケティングオートメーション(仮称)」の開発に投入するため保守的な計画としている。

 重点戦略として、アプリケーション事業では、マーケティング担当者が抱える課題を解決する新製品「WEBCASマーケティングオートメーション(仮称)」の開発に注力するとともに、利益率の高いクラウドサービスのマーケティング戦略を見直す方針だ。またサービスソリューション事業では、子会社FUCAおよびグリーゼとの連携を強化する。増収効果に加えて、開発の効率化や生産性の向上も寄与して増収増益基調だろう。

■株価は6月下旬急騰後の日柄調整局面

 株主優待制度については15年2月に新設を発表した。毎年3月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対してクオカード1000円分を贈呈する。15年3月期末から実施した。

 なお7月3日付の大量保有報告書の提出に基づいて筆頭株主の異動を発表した。フュージョンパートナー<4845>が議決権数に対して30.43%を保有する筆頭株主となった。

 株価の動きを見ると、安値圏の1000円近辺でモミ合う展開だったが、6月下旬に動意づいて7月1日の1813円まで急騰した。14年1月1989円以来の高値水準だ。その後は大量保有報告書でフュージョンパートナーが筆頭株主となったことを材料視してやや乱高下する場面もあり、急騰後の日柄調整局面のようだ。

 7月24日の終値1390円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS71円58銭で算出)は19~20倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間17円で算出)は1.2%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS472円09銭で算出)は2.9倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線が接近して過熱感が解消し、下値を切り上げている。また週足チャートで見るとやや過熱感を残しているが、13週移動平均線が26週移動平均線を上抜くゴールデンクロスを示現して先高感を強めている。強基調への転換を確認した形であり、16年3月期増収増益・連続増配予想を評価して水準切り上げの展開だろう。

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