鹿島は消失が危惧される固有の大型海藻類を年間を通じて生産できる技術を開発

■藻場の形成に欠かせない大型海藻類を、いつでも大量培養できる技術を確立

 鹿島建設<1812>(東証プライム)は7月5日、近年、全国の沿岸域で深刻な問題となっている藻場衰退の解決に向け、各地域に生育する固有の大型海藻類を、年間を通じて生産できる技術を開発したと発表。同技術は、消失が危惧される藻場に生育する大型海藻類の母藻(胞子を放出できる成熟した海藻のこと)を予め採取し、当該母藻が放出する胞子のオスとメスを配偶体として少量の保存液に長期間保存、随時、浮遊状態にして大量培養できる技術である。同社技術研究所の葉山水域環境実験場(神奈川県三浦郡葉山町)では、人工漁礁に大量培養した配偶体由来の海藻の幼芽を取り付けた現地試験で、海藻の順調な生長を確認した。

 同社は今後も、生物多様性やブルーカーボン(海藻などの海中植物が吸収・貯蔵した炭素のことで、CO2吸収源のひとつ)に寄与する海洋生態保全に関する様々な研究・開発技術を通じて、社会活動におけるネイチャーポジティブ(生物多様性の減少傾向を食い止め、回復に向かわせること)と脱炭素社会の実現に貢献していく。

■開発の背景

 沿岸域では、多様な海藻類が生育した「海中林」と呼ばれる藻場が、魚介類の餌場や産卵場、稚仔魚の育成場などとなり、良好な漁場を作っている。しかしながら、近年は地球温暖化による海水温の上昇や食害生物の増加などにより藻場の衰退・消失が全国各地で進行し、深刻な問題となっている。

 藻場の再生にあたっては、藻場の面積の大半を占める大型海藻類の再生が重要となる。これに対し、従来は地域の大型海藻類の母藻の移植や海藻胞子の散布を中心とする手法が採り入れられてきたが、近年では地域固有の大型海藻類が消失してしまい、海藻種の入手が困難なケースもあった。また、従来の大型海藻類の種苗生産では、母藻を大型水槽に入れて、自然に放出された胞子を種糸などに付着させる方法が採られていたが、母藻の入手時期が限られることも課題だった。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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