NECは衛星SARとAIを活用して橋の崩落につながる重大損傷を発見する技術を開発

■異常なたわみを検知することで事故防止に寄与

 日本電気<6701>(東証プライム)は7月6日、衛星SARを用いたリモートセンシングとAI技術を組み合わせることで、国土交通省が定める橋の点検項目のうち、従来発見が困難であった「異常なたわみ」をミリ単位の精度で検知し、橋の崩落につながる重大損傷を発見する技術を開発したと発表。

 同技術は、衛星を利用したリモートセンシングで得られた変位データと橋の構造や気温の変化を独自AIに学習させることで、橋の変位予測モデルを作成する。そのモデルを用いて、点検期間にリモートセンシングで得られる変位データを分析することで、重大事故に繋がる可能性のある垂れ下がりなどの異常なたわみを発見することができる。

 現在、国内では経年劣化が進行する橋など道路構造物において、5年に1度の定期点検が義務化されている。しかし、全国72万の橋を点検する必要があるため、担当する専門家の人員が不足しており、点検の効率化や代替手段となる新技術が求められている。

 同技術では、リモートセンシングとAIを組み合わせることで、目視では気付きにくい程度の異常なたわみを複数の橋に対してまとめて検知することが可能になり、近接での目視点検が困難な河川・海・谷などに架かる橋の点検業務の効率化に貢献する。

 また、定期点検の期間外において、橋の異常なたわみの有無を継続的に遠隔から確認し、異常なたわみがある橋を優先的に点検することを可能にする。

■技術の特長

 橋は構造や温度などによる影響を受けて変化するため、従来は異常性を見つけるための閾値を設定することが困難だった。同技術は、リモートセンシングで得られる変位データをNECの独自AIが解析し、橋の変位予測モデルを作成することで、”いつもの状態”を理解し、予測から大きく外れる変位がある場合にいつもと違う異常なたわみがあると見なする。変位予測モデルは、橋の長手方向の位置によって異なる変位値をまとめて扱うことで、橋全体に対する異常なたわみの閾値を簡単に設定することが可能になる。

■評価事例:崩落事故の予兆と考えられる水管橋の異常変位を検知

 2021年10月3日に和歌山県紀の川六十谷水管橋が崩落したことを受けて、六十谷水管橋を撮影した崩落前2年間の衛星SAR画像を入手し、同技術を使って崩落前の六十谷水管橋の変位を過去にさかのぼり評価した(評価を2021年12月から2022年3月に実施)。その結果、崩落個所において崩落1年前から他径間と比較して1.5倍程度の大きさの崩落の前兆現象と考えられる変位が継続して観測されることが分かった。これにより、橋の崩落がわかる。

 NECはこの解析技術を強化し、2025年度を目標に、橋の管理者や点検従事者向けの製品化を図るとともに、橋を含むインフラ施設管理全般のDX推進に取り組んでいくとしている。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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