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綿半ホールディングスはボックスレンジから上放れて年初来高値更新、23年3月期増益予想
- 2022/7/26 10:17
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
綿半ホールディングス<3199>(東証プライム)は、ホームセンター中心の小売事業、および建設事業、貿易事業を展開している。中期経営計画では新たな経営方針に「地域に寄り添い地域と共に新しい価値を創造する」を掲げている。23年3月期は小売事業が堅調に推移し、受注好調な建設事業の業績も回復して増収増益・連続増配予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価はボックスレンジから上放れて年初来高値更新の展開となった。上値を試す展開を期待したい。基調転換して上げ足を速める可能性もありそうだ。なお7月29日に23年3月期第1四半期決算発表を予定している。
■小売事業、建設事業、貿易事業を展開
ホームセンター中心の小売事業、および建設事業、貿易事業を展開している。22年3月期のセグメント別売上高構成比は小売事業が67%、建設事業が28%、貿易事業が5%、その他(不動産事業等)が0%、利益構成比(全社費用等調整前営業利益)は小売事業が52%、建設事業が24%、貿易事業が20%、その他が4%だった。なお小売事業に含まれていた木造住宅分野を22年3月期から建設事業に変更した。
■小売事業はEDLP×EDLC戦略を推進
小売事業は、綿半ホームエイドが長野県を中心にスーパーセンター業態とホームセンター業態、綿半フレッシュマーケットが愛知県を中心に食品スーパー業態、綿半Jマートが関東甲信越エリアにホームセンター業態を展開している。スーパーセンターは10万点を超える豊富な品揃えに加えて、生鮮食品を加えることで主婦層を取り込み、平日・土日の平準化を図っていることが特徴である。22年には綿半スーパーセンター権堂店(長野市)を出店予定である。中心市街地型店舗開発を推進しており、生鮮食品、ホームセンター商品、医薬品、各種テナントを含めた複合型店舗として初の出店となる。
基本戦略として、M&Aも活用したエリア拡大と売場面積拡大、EDLP(エブリデー・ロー・プライス)×EDLC(エブリデー・ロー・コスト)戦略、子会社の綿半パートナーズによるグループ商品仕入原価低減とPB商品共同開発・相互供給、全社を一本化する新基幹システムの導入と物流改革、ネット通販の拡大などを推進している。
M&Aでは、18年12月に家電・パソコン通販サイト「PCボンバー」運営のアベルネット(現:綿半ドットコム)を子会社化、19年4月に長野県内で「お茶元みはら胡蝶庵」を展開する丸三三原商店(現:綿半三原商店)を子会社化、20年10月に家具・インテリア販売や空間デザイン事業を展開するリグナ(東京都)を子会社化、20年11月に調剤薬局併設ドラッグストアを展開するほしまん(長野県)を子会社化、21年3月に組立家具「Shelfit」製造販売の大洋(静岡県)を子会社化、21年11月にヴィンテージスタイルの家具・インテリアショップ「藤越 FUGGICOSI」を展開する藤越(静岡県)を子会社化した。
22年4月には建物管理・不動産売買のAIC(東京都新宿区)を子会社化した。不動産情報の集約、物件管理機能の強化を図る。また、綿半パートナーズの子会社である藤越とリグナを合併(新社名リグナ)した。家具・インテリアの仕入機能やネット通販のノウハウを融合し、家具販売事業の効率化と収益性向上を図る。
なお22年7月には、綿半パートナーズがネットショップ立ち上げに必要な機能をワンパッケージで提供する「PayTouch」をオープンした。また綿半ドットコムが「買取けんさく君、広島支店」をオープンし、国内全域をカバーする体制となった。創業24年の老舗で業界最大手である「買取けんさく君」は21年の買取件数が過去最高を記録している。
また物価が高騰するなか、地域のお客様の暮らしを応援するため、22年6月には綿半ホームエイドの一部の店舗において最大300品の緊急値下げを実施、22年7月には綿半スーパーセンターおよび綿半ホームエイド全店舗において400品の緊急値下げを実施、綿半フレッシュマート5店舗において200品の緊急値下げを実施した。
小売事業の月次売上(速報値)を見ると22年6月は全店が99.0%、既存店が100.1%だった。既存店売上は小幅ながら3ヶ月ぶりに前年同月比プラスに転じた。外出需要の高まりで食品が低調だったが、記録的な猛暑を背景としてレジャー用品、飲料やエアコン等の季節商品が好調だった。なお22年4月~6月累計は全店が97.9%、既存店が98.9%となった。
■建設事業は長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事に強み
建設事業は、綿半ソリューションズが建築・土木・住宅リフォーム工事、鉄骨・鋼構造物の加工・製造などを展開し、長尺屋根工事および自走式立体駐車場工事を強みとしている。長尺屋根工事は、工場の操業を止めずに老朽化した屋根の改修工事を行う「WKカバー工法」で特許を取得している。自走式立体駐車場工事は、柱が少なく利用者が使いやすい「ステージW」など、多数の国土交通省認定を有して国内トップシェアを誇っている。
21年2月に引き渡し完了したSUBARU矢島工場従業員専用立体駐車場の建設工事、および工場と駐車場を繋ぐ連絡橋工事では、駐車場屋上階に自走式駐車場発電設備として日本最大級規模の太陽光発電システムを設置した。21年7月には、新宿駅東口「クロス新宿ビジョン」が設置されているクロス新宿ビルに、自社オリジナル製品の超大型大開口サッシ「GLAMO」が採用されて竣工した。21年11月には(仮称)門真市松生町商業施設計画に併設される大型立体駐車場2棟の建設工事を受注し着工した。
なお19年8月に戸建木造住宅FC事業を展開するサイエンスホーム(静岡県)を子会社化、21年8月に戸建木造住宅販売・加盟店運営の夢ハウス(新潟県)を子会社化した。木造住宅分野を第4の柱として注力する。
■貿易事業はジェネリック医薬品向け天然原料などを販売
貿易事業は、医薬品・化成品向け天然原料輸入専門商社の綿半トレーディングが展開している。
ジェネリック医薬品向けアセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)や、メキシコ特産でヘアワックス・口紅などに使用するキャンデリラワックス(取り扱い数量国内1位)など特定分野に強みを持ち、製造部門はHMG(ヒト尿由来の排卵障害治療薬)原薬を製造して医薬品メーカーに販売している。
21年12月には、海外市場への販売拡大に向けてAlibaba.comに自社サイトを掲載し、自社原料商品の取引を開始した。22年7月には、100%天然植物由来の動物飼料添加物「Nutrafito Plus」の販売を開始した。
■新・中期経営計画
22年5月に発表した新・中期経営計画(23年3月期~25年3月期)では、新たな経営方針に「地域に寄り添い地域と共に新しい価値を創造する」を掲げ、目標数値は25年3月期売上高1350億円、経常利益40億円、経常利益率3%としている。
地域との繋がりを大切にしながら、地域の発展に尽くすとともに、目標数値達成に向けて諸施策を実践し、企業価値向上を図るとしている。なお20年6月には長野県SDGs推進企業に登録されている。
■23年3月期増収増益・連続増配予想
23年3月期の連結業績予想は、売上高が22年3月期比9.2%増の1250億円、営業利益が22.8%増の29億50百万円、経常利益が14.1%増の33億50百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が2.1%増の22億50百万円としている。配当予想は22年3月期比1円増配の22円(期末一括)としている。連続増配予想である。
セグメント別の計画は、小売事業の売上高が1.9%増の780億円でセグメント利益が0.6%増の18億26百万円、建設事業の売上高が25.9%増の400億85百万円で利益が71.5%増の14億53百万円、貿易事業の売上高が1.7%増の59億15百万円で利益が0.3%増の7億円としている。小売事業が堅調に推移し、受注好調な建設事業の業績が回復する見込みだ。
重点施策として、小売事業では店舗改装・新規出店(綿半スーパーセンター上田店オープン予定)の継続的な推進、流通網の拡大(仕入・販売網の拡大、物流拠点の整備)、新業態の開発(綿半スーパーセンター権堂店オープン予定)を推進する。建設事業では鉄骨分野のFA化加速(加工能力の向上と効率化による収益性の向上)、木の加工・流通網の構築(地場産の木材の加工・流通)、木を使った商品開発(木製倉庫等の開発)を推進する。貿易事業では食品分野への進出(中南米の果物輸入・小売各店での販売)、肥料・飼料分野の拡大(天然肥料・飼料の拡大)を推進する。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は毎年9月末の継続保有株主対象
株主優待制度は、毎年9月30日現在で1単元(100株)以上を継続的に保有している株主を対象として、信州特産品や綿半ホームエイドPB商品詰め合わせなどを贈呈している。なお21年9月末対象から300株以上の優待区分も新設(詳細は会社HP参照)している。
■株価はボックスレンジから上放れて年初来高値更新の展開
株価はボックスレンジから上放れて年初来高値更新の展開となった。上値を試す展開を期待したい。週足チャートで見ると13週移動平均線、26週移動平均線に続いて52週移動平均線も上向きに転じて基調転換を確認した形であり、上げ足を速める可能性もありそうだ。7月25日の終値は1465円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS113円31銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の22円で算出)は約1.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS974円25銭で算出)は約1.5倍、そして時価総額は約291億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)