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ピックルスコーポレーションは下値固め完了、23年2月期減益予想だが1Q進捗率順調
- 2022/7/27 09:09
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ピックルスコーポレーション<2925>(東証プライム)は漬物・キムチ製品の最大手である。主力の「ご飯がススム キムチ」のブランド力が向上し、さらに「野菜」「発酵」「健康」の総合メーカーを目指してEC・外食・小売・農業領域への展開も推進している。なお22年9月1日付で持株会社ピックルスホールディングスを設立して持株会社が新規上場予定である。23年2月期は個人消費の不透明感や原燃料高の影響などを考慮して減益予想としている。ただし保守的だろう。第1四半期は減益だったが、進捗率は順調だった。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は第1四半期業績を嫌気して年初来安値を更新したが、売り一巡して下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。
■22年9月1日付で持株会社が新規上場予定
22年9月1日付で持株会社ピックルスホールディングスを設立し、持株会社が新規上場(現在のピックルスコーポレーションは22年8月30日付で上場廃止)予定である。グループ経営の戦略立案機能を強化し、グループ内における経営資源の配分を最適化する。
■漬物製品の最大手で「ご飯がススム キムチ」ブランド力向上
漬物・キムチ製品の最大手である。主力の「ご飯がススム キムチ」シリーズのブランド力が向上し、さらに「野菜」「発酵」「健康」の総合メーカーを目指してEC・外食・小売・農業領域への展開も推進している。
22年2月期の品目別売上構成比は製品65.8%(浅漬・キムチ41.9%、惣菜22.8%、ふる漬1.1%)および商品(漬物、調味料、その他)34.2%、販路別売上構成比は量販店・問屋等74.5%、コンビニ16.7%、外食・その他8.8%だった。セブン&アイ・ホールディングス<3382>など大手量販店・コンビニが主要取引先である。
収益面の特性としては、天候不順などによる野菜(特に胡瓜と白菜)価格の影響を受ける傾向がある。
■成長戦略として新規事業も推進
中期経営目標値(収益認識会計基準適用後)として、25年2月期売上高420億円(浅漬・キムチ176億63百万円、惣菜101億21百万円、ふる漬4億87百万円、商品137億28百万円)、営業利益26億円、経常利益27億30百万円、親会社株主帰属当期純利益18億30百万円を掲げている。設備投資は23年2月期からの3年間で合計60億円を計画している。24年2月期には関東でのキムチ専用工場、25年2月期には関西での工場新築を検討している。
成長戦略として、製品開発の強化(キムチ製品、惣菜、ドライ商品、調味料)、販売エリアの拡大(特に西日本エリアでの販売拡大)、販売先の拡大(ドラッグストア、量販店、配食事業など)、新規事業(ECサイト、ピーネコーポレーション、BtoC事業、農業事業など)を推進している。
製品開発の強化では、主力の「ご飯がススム キムチ」シリーズの新製品、成長分野である惣菜製品の開発に注力する。販売エリアの拡大では全国ネットワークを活かした営業戦略を推進し、特に西日本エリアでの販売拡大に注力する。販売先の拡大では既存分野以外の売場への商品展開を推進する。
新規事業のECサイトについては18年4月に、ピーネ12乳酸菌活用した商品のECサイト「Piene」と、国産・化学調味料不使用にこだわった漬物のECサイト「八幡屋」を開設した。19年4月にはピーネ関連製品を製造する新工場が完成した。さらに22年夏頃を目途に「Piene」と「八幡屋」を統合してECサイトをリニューアル予定である。
またグループ商品を活用してBtoC領域の外食・小売事業に参入し、20年10月に運営子会社OHが、埼玉県飯能市に複合型観光施設として、発酵のテーマパーク「OH!!!~発酵、健康、食の魔法!!!~」を開業した。日本の伝統的な食文化「発酵」を発信していく。
20年9月には地球環境に配慮し、浅漬用に植物由来原料の容器を導入して軽量化と省資源化を図ると発表した。21年1月には浅漬製品のブランドリニューアルを発表した。パッケージデザインを刷新するとともに、包装パッケージに使用するインキを植物性バイオマスインキに順次切り替えて環境負荷低減も推進する。22年2月には「ご飯がススム キムチ」シリーズの「ご飯がススム辛口キムチ」と「ご飯がススムカクテキ」をリニューアル発売し、包装パッケージ印刷に使用するインキも植物性バイオマスインキに切り替えた。
さらに22年3月には子会社ピックルスファームを設立し、埼玉県内で農業事業を開始した。所沢工場向けの小松菜や「OH!!!」向けのさつまいもを生産する。野菜の生産に関わることで安全・安心な原料野菜を継続的に調達するとともに、農業を通じた雇用創出や地域活性化にも貢献することを目指す。
■23年2月期減益予想だが保守的、1Q進捗率順調
23年2月期の連結業績予想は、売上高が407億円(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非記載、適用前の22年2月期実績は450億06百万円)で、営業利益が22年2月期比15.0%減の25億円、経常利益が14.3%減の26億30百万円、親会社株主帰属当期純利益が17.3%減の17億60百万円としている。配当予想は22年2月期と同額の20円(期末一括)としている。
売上面は、全国ネットワークを活用した積極的な営業活動、惣菜製品等における幅広い製品開発などを推進するが、巣ごもり需要の反動減や乳酸菌ブームの一巡などを考慮し、収益認識会計基準適用の影響を除くベースでは実質4%減収の見込みとしている。新基準での品目別売上高は製品が273億45百万円(浅漬・キムチが172億83百万円、惣菜が95億75百万円、ふる漬が4億85百万円)、商品(漬物、調味料、その他)が133億54百万円、販路別の売上高は量販店・問屋等が305億99百万円、コンビニが66億39百万円、外食・その他が34億60百万円の計画としている。
営業利益は減収影響で減益予想としている。原料価格は例年の価格を見込み、売上原価率は22年2月期比4.1ポイント上昇、販管費比率は3.8ポイント低下の計画としている。販管費は会計基準変更で物流費が減少する。
第1四半期は売上高が105億17百万円、営業利益が前年同期比49.3%減の6億72百万円、経常利益が48.6%減の6億99百万円、親会社株主帰属四半期純利益が48.6%減の4億76百万円だった。収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が6億13百万円減少、売上原価が12百万円増加、販管費が6億43百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ17百万円増加している。
売上高は、従来方法に換算すると111億30百万円となり、前年同期の120億67百万円に対して7.8%減収となった。コロナ禍に伴う巣ごもり需要が落ち着いたことによる反動減に加えて、食料品の相次ぐ値上げによって消費者の節約志向が高まったことも影響した。コスト面では原料の野菜価格が安定的に推移し、生産効率向上も推進したが、減収影響をカバーできず大幅減益だった。
通期予想は据え置いている。収益認識会計基準適用の影響や巣ごもり需要の反動減などを考慮して減益予想としている。ただし保守的だろう。第1四半期は減益だったが、通期予想に対する進捗率は売上高が25.8%、営業利益が26.9%、経常利益が26.6%、親会社株主帰属当期純利益が27.0%と順調だった。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。
■株主優待制度は毎年2月末の株主が対象
株主優待制度は毎年2月末時点の100株(1単元)以上保有株主を対象として、商品詰め合わせセットなど(数種類から1点選択、詳細は会社HP参照)を贈呈する。なお21年9月1日付け株式2分割後も100株(1単元)以上を対象として実施しているため、実質的に株主優待制度の大幅拡充となっている。
■株価は下値固め完了
株価は第1四半期業績を嫌気して年初来安値を更新したが、売り一巡して下値固め完了感を強めている。出直りを期待したい。7月26日の終値は1163円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS136円93銭で算出)は約8倍、今期予想配当利回り(会社予想の20円で算出)は約1.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1288円57銭で算出)は約0.9倍、そして時価総額は約150億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)