【どう見るこの相場】悪材料の株高持続性の次のカギは企業業績?!マイナスをプラス転換の木材関連株の決算発表日を要マーク

どう見るこの相場

 相場アノマリーは、「安値で出る悪材料は買い、高値で出る好材料は売り」と教えている。米国市場は、まさにこのアノマリー通りのようである。FRB(米国連邦準備制度理事会)が、7月27日まで開催のFOMC(公開市場委員会)で政策金利を0.75%引き上げ金融引締策を強化し、続いて28日に発表された2022年4~6月期の実質国内総生産(GDP)が、年率0.9%減少となり、2四半期連続のマイナス成長となり、テクニカル・リセンション(景気後退)入りとなった。ところがダウ工業株30種平均(NYダウ)は、週末の29日までの3日間で647ドル高し、7月月間の上昇利率は6.7%と昨年11月以来の大きさとなった。相次ぐ悪材料に買い向かったことになる。

 ただしNYダウが、安値かどうかは問題含みである。というのは、今年6月中旬の3万ドル台割れから2000ドル超持ち直したところで、そこから8カ月ぶりの大きさとなる7月月間の上昇率が加わることになって、今度は、もう一つのアノマリーの「高値で出る好材料は売り」か心配させられる側面も出てくるからだ。FOMC開催、GDP発表の2つのビッグ・イベントを通過し、この株高持続性のカギを握っているのは、もちろん折から発表が続いている企業業績になる。企業業績が上方修正か、下方修正か、市場予想超えか以下かなどさまざまだが、今度は、個別の銘柄篇として2つの相場アノマリーのいずれに該当するか株価判断されることになるはずである。

 しかし、この先行きを見通すのは「言うは易く行うは難し」となかなか難物である。例えば東京市場でも、決算発表シーズン入りとともに業績上方修正銘柄が続出したが、この初動反応が、ポジティブ、ネガティブと明暗マチマチとなっているのである。7月25日に業績を上方修正した日東電工<6988>(東証プライム)、シマノ<7309>(東証プライム)、キヤノン<7751>(東証プライム)は、揃って株価が急落した。また27日には24銘柄が、業績を上方修正したが、この勝ち(株高)・負け(株安)は、13勝11敗で勝率は54%の過半にとどまったケースも続いた。

 勝ち組・負け組の明暗が、今後にどう影響、波及するか要注目で、これからの決算発表スケジュールからは目が離せない。そこで決算プレーとして試してみたいセクターが浮上する。木材関連株である。木材関連株は、小型株が中心の脇役銘柄だが、昨年春に米国の住宅価格の高騰、木材不足に端を発した「ウッドショック」や、今年2月のロシアのウクライナ侵攻に伴う経済制裁、ロシア産木材の輸入停止などで木材価格が急騰し、業績上方修正の常連株となった。相次ぐマイナスをプラス転換したことになる。木材価格そのものは、米国の政策金利引き上げや住宅価格の高騰で住宅関連指標が悪化し下落観測があるものの、なお相対的には高値水準にある。「ウッドショック」そのものが、米国の住宅バブルによるものではなく、ミレニアル世代による持ち家志向の実需に裏付けられ、米国金利上昇が打ち止めとなれば住宅不足が再び顕在化するとの見方もあるためだ。

 こうしたバックグラウンドを窺わせたのが、すでに決算を発表した木材関連2社の相反する株価動向である。ノダ<7879>(東証スタンダード)は、今年7月13日に世界の木材需給が、秋口以降に調整局面入りが予想されるなか原材料確保に万全を期したとして今11月期業績の上方修正と増配を発表し、純利益は、10年ぶりに過去最高を大幅に更新すると見込んだ。一方、シー・エス・ランバー<CSランバー、7808>(東証スタンダード)は、今年7月15日の5月期決算発表時に、木材価格はこれ以上は上昇しない段階となりプレカットの販売価格に下押し圧力になるとして今2023年5月期業績の減益転換を予想し、株価は500円超幅も急落し、ノダの株価もツレ安してしまった。CSランバーは、前期業績を第2四半期業績を含めて3回も上方修正しただけに反動も大きかった。

 木材関連株は、両社株を含めて多くがPER評価は1ケタ台、PBRは1倍割れ、年間配当利回りは大建工業<7905>(東証プライム)の5.1%を筆頭に市場平均を大きく上回っており、逆にいえば市場人気圏外の安値・割り負け水準に放置されていることになる。ここで今・来週に予定されている決算発表で仮に業績の上方修正・下方修正があるとすれば、「安値で出るなら悪材料も好材料も買い」となる可能性もある。関連する林業機械・木工機械株と並んで決算発表日をマークするところだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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