イトーキは上値試す、22年12月期2Q累計大幅増益で通期予想を上方修正

 イトーキ<7972>(東証プライム)はオフィス家具の大手で、物流機器などの設備機器関連も展開している。中期経営計画に基づいた構造改革プロジェクトを推進し、新製品・新ソリューションの投入などを推進している。22年12月期第2四半期累計は需要が好調に推移し、構造改革プロジェクトの推進も寄与して大幅増益だった。そして通期予想を上方修正して増収増益幅が拡大する見込みとした。ワークプレイス事業においてオフィスのリニューアル商談が増加傾向であり、設備機器・パブリック事業では大型案件が寄与する。体質改善効果も継続する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は上方修正を好感して年初来高値を更新した。その後は利益確定売りが優勢になったが、指標面の割安感も評価材料であり、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。

■オフィス家具の大手で物流機器関連も展開

 オフィス家具の大手で、パーティションや物流機器などの設備機器関連も展開している。製販一貫体制が特徴である。21年5月には、公共空間へのアート導入を展開するアートプレイスを子会社化してアート関連事業を開始した。

 21年12月期のセグメント別(21年12月期から区分変更)売上高構成比はワークプレイス事業が70%、設備機器・パブリック事業が29%、IT・シェアリング事業が2%、セグメント利益(営業利益)構成比はワークプレイス事業が77%、設備機器・パブリック事業が38%、IT・シェアリング事業が▲15%だった。収益はオフィス移転シーズンにあたる上半期偏重の特性がある。

 ワークプレイス事業は、従来のオフィス関連事業のオフィス家具・営繕・FMPMコンサル、および設備機器関連事業の内装・建材、その他事業の家庭用家具で構成する。設備機器・パブリック事業は、従来の設備機器関連事業の内装・建材以外、およびオフィス関連事業の公共施設関連で構成する。IT・シェアリング事業は、従来のオフィス関連事業の什器レンタル・オフィスシェア関連サービス、メンバーシップ事業、およびソフトウェア開発関連サービスで構成する。

 本社オフィスのITOKI TOKYO XORK(イトーキ・トウキョウ・ゾーク)を活用して、ワークスタイルの多様化や働き方改革に対応したオフィス空間の提案を推進している。20年10月にはITOKI TOKYO XORKを改装し、withコロナの「働く場の基準」に基づいた感染防止対策を取り入れた。

 なお米国のパートナー企業との協業で17年7月に設立した連結子会社GlobalTreehouseについては22年3月に解散した。

 海外は20年6月に中国の地域統括会社として伊藤喜を設立し、拠点再編、人員体制適正化、直接販売強化など収益構造改革を推進している。

■ポストコロナの働く環境づくりをリード

 中期経営計画「RISE ITOKI 2023」では、目指す姿を「ポストコロナの働く環境づくりをリードする」「強靭な体質の高収益企業になる」として、重点方針を構造改革プロジェクトの実行、新たな価値の創出と提供、不採算事業の早期黒字化達成、人材の育成、ESG経営の実践としている。

 目標値には、23年12月期売上高1330億円(オフィス関連709億円、設備機器関連590億円、その他31億円)、営業利益60億円(オフィス関連35億50百万円、設備機器関連23億円、その他1億50百万円)、営業利益率4.5%、経常利益59億円、ROE7.0%以上を掲げている。

 基本戦略としては、オフィス市場では構造改革による高収益化、全ての空間を市場とする新たな価値提供、DXを活用した新しい営業スタイルの実行・展開、設備機器市場では自社保有技術の確立と社会インフラ発展への寄与、急増する物流施設商談に対応するための生産能力増強、グループ内連携によるシナジー効果発揮、海外市場では中国市場での販売体制拡充、コストを勘案したボトムライン経営の徹底による強靭な収益体質の構築、その他(ECビジネス市場)ではテレワーク家具の販売機会創出、新たな顧客層獲得に向けた新規チャネル立ち上げなどを推進する。

 21年12月には、木の温もりが実感できる独自開発の新素材を活用した大型テーブル「silta(シルタ)」を発売した。東北地方の森林産地や木材市場と協働することにより、国産材活用やカーボンニュートラルの促進に貢献する。22年1月には「暮らしに寄り添い、日々の生活をアップデートする」をコンセプトに、新ブランド「ITOKI HOME」ブランドを立ち上げた。

 22年4月にはグループ会社のエフエム・スタッフが栃木県矢板市と「矢板SLOW WORK推進コンソーシアム」を設立し、地域共創型シェアオフィス「スローワーク矢板」を開設した。また、NTTコミュニケーションズおよびNTTドコモと共同で、ニューノーマル時代の新たなコミュニケーションサービス「office surf」の実証実験を開始した。

 また22年4月には、新商品開発およびAIによるデータ分析・活用の領域における取り組みを強化するため、Google CloudとのJBP(ジョイントビジネスプラン)に合意した。DXの更なる加速を目指す。

 22年5月にはCrossa(クロッサチェア)とpulizea(プリーゼア)が「レッドドット・デザイン賞2022」を受賞した。またAkimiru(アキミル)とCrossa(クロッサチェア)が「iFデザインアワード2022」を受賞した。

 22年6月には「働く人」を中心とするDXの実現に向けて、オンライン共創ラボ「ITOKI Open―DX Lab」ウェブサイトをオープンした。22年7月には、多様化する新しい時代の働き方に寄り添い、クリエイティブを触発するオフィス家具「common furniture」を発売した。

■構造改革プロジェクトを推進して企業価値向上と持続的成長を図る

 20年7月にアドバンテッジアドバイザーズと提携し、アドバンテッジアドバイザーズがサービス提供するファンドを割当先とする第1回新株予約権を発行した。営業体制改革、保有資産の効率的活用、オフィス家具以外の事業セグメントの高収益化などに関連した構造改革プロジェクトを推進し、アドバンテッジアドバイザーズの支援も受けながら企業価値向上と持続的成長を図る方針だ。

 なお、テレワークの導入・活用を進めて実績を積んだ企業として総務省が実施する令和3年度テレワーク先駆者百選に選定されている。さらに、経済産業省と日本健康会議が共同で選定する健康経営優良法人2022大規模法人部門(ホワイト500)に認定されている。オフィス家具事業を展開する企業としては初の6年連続認定である。22年7月にはテレワーク勤務制度を改定し、従来の在宅勤務に加えて、自宅以外で従業員が準備・選択した「マイプレイス」でのテレワーク勤務も可能とした。

 また22年7月には、サステナビリティ経営の実現に向けてマテリアリティを刷新した「統合報告書2022」を発行し、2050年カーボンニュートラル目標を表明した。

■22年12月期2Q累計大幅増益で通期予想を上方修正

 22年12月期連結業績予想(収益認識会計基準適用だが損益への影響軽微、8月8日付で上方修正)は売上高が21年12月期比6.1%増の1230億円、営業利益が56.2%増の40億円、経常利益が64.1%増の40億円、親会社株主帰属当期純利益が131.4%増の27億円としている。配当予想は21年12月期と同額の15円(期末一括)としている。

 第2四半期累計は売上高が前年同期比3.4%増の637億56百万円、営業利益が47.0%増の43億71百万円、経常利益が56.0%増の44億16百万円、親会社株主帰属四半期純利益が60.5%増の36億76百万円だった。なお収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が8億48百万円増加、売上原価が6億69百万円増加、営業利益、経常利益、および税金等調整前四半期純利益がそれぞれ1億79百万円増加している。

 需要が好調に推移し、構造改革の推進、販売価格適正化、カタログ価格改定、物流コストや販管費の圧縮なども寄与して大幅増益だった。特別利益では固定資産売却益が減少(前年同期は11億77百万円計上、今期は1億39百万円計上)したが、子会社Global Treehouseの解散に伴う債務免除益7億79百万円を計上した。特別損失では前期計上の減損損失3億71百万円が剥落した。

 ワークプレイス事業は売上高が1.8%増の447億78百万円、セグメント利益(営業利益)が22.2%増の26億71百万円だった。ニューノーマル時代の新しい働き方にあわせた大型のオフィス移転やリニューアル案件を中心に需要が好調だった。利益面は、原材料価格の高騰やオルガテック出展等の戦略的支出の影響があったが、構造改革の成果で吸収した。

 設備機器・パブリック事業は売上高が8.6%増の181億76百万円、営業利益が43.7%増の14億67百万円だった。子会社ダルトンにおけるサイエンスパークなどの大型商談受注が牽引し、物流設備の需要も好調だった。

 IT・シェアリング事業は売上高が8.1%減の7億64百万円、営業利益が2億07百万円の黒字(前年同期は2億70百万円の赤字)だった。赤字だったGlobalTreehouseの解散で減収だが利益は黒字転換した。またシステム開発事業、システム検証事業、オフィス空間シェア事業が堅調に推移した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が353億45百万円で営業利益が39億64百万円、第2四半期は売上高が284億11百万円で営業利益が4億07百万円だった。なお収益はオフィス移転シーズンにあたる上期(特に第1四半期)偏重の特性がある。

 第2四半期累計が好調だったため通期予想を上方修正した。前回予想に対して売上高を30億円、営業利益を10億円、経常利益を11億円、親会社株主帰属当期純利益を13億円それぞれ上方修正し、増収増益幅が拡大する見込みとした。ワークプレイス事業においてオフィスのリニューアル商談が増加傾向であり、設備機器・パブリック事業では大型案件が寄与する。体質改善効果も継続する見込みだ。

 重点施策として、ワークプレイス事業では構造改革実行による高収益化、Smart Officeコンセプトに基づく新たな価値の提供、海外(中国・ASEAN)におけるコストを踏まえたボトムラインを意識した経営の徹底、次なる成長に向けた新収益源の掘り起こし、設備機器・パブリック事業では物流施設関連における戦略的投資による商品力・サービスの強化、公共施設関連における営業・設計・業務・生産の効率化、サイネージ関連におけるインバウンド需要復活を視野に入れた製品の機能向上、特殊扉関連における供給体制の拡大、研究施設関連における営業力・商品力・供給力・アフタービジネスの強化、IT・シェアリング事業ではIT関連におけるビジネス発展に役立つ商品・サービスの提供、シェアリング関連における環境や社会と価値を共有するシェアビジネスによる新たな市場の醸成を推進する。

 コロナ禍で感染リスクの少ないワークプレイスの確保、テレワーク化によるオフィス縮小、メインオフィス以外のワークプレイスの活用など、オフィス関連事業を取り巻く環境が大きく変化している。働き方改革による企業の職場環境改善の流れなども追い風である。中期経営計画に基づいた構造改革プロジェクトを推進して収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

 株価は上方修正を好感して年初来高値を更新した。その後は利益確定売りが優勢になったが、指標面の割安感も評価材料であり、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。8月19日の終値は404円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS59円63銭で算出)は約7倍、今期予想配当利回り(会社予想の15円で算出)は約3.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS992円89銭で算出)は約0.4倍、そして時価総額は約184億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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