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エスプールは戻り試す、22年11月期2Q累計が計画超の大幅増益で通期上振れ余地
- 2022/8/24 09:07
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
エスプール<2471>(東証プライム)は障がい者雇用支援やコールセンター向け派遣などの人材サービス事業を主力として、新たな収益柱構築に向けて環境経営支援サービスや広域行政BPOサービスなどの新規事業にも積極展開している。22年11月期は主力事業が好調に推移して大幅増収増益予想としている。さらに上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は7月の直近安値圏から切り返しの動きを強めている。好業績を評価して戻りを試す展開を期待したい。
■人材サービス事業を展開
ビジネスソリューション事業(障がい者雇用支援サービス、ロジスティクスアウトソーシング、セールスサポート、採用支援、新規事業)、および人材ソリューション事業(コールセンター向け派遣、販売・営業スタッフ派遣、人材紹介)を展開している。さらに新たな収益柱構築に向けた新規事業として、環境経営支援サービスおよび広域行政BPOサービスを開始している。エスプール本体で新規事業開発を行い、事業規模や収益化に応じて、子会社として分社化する戦略としている。
21年11月期のセグメント別(調整前)構成比は、売上高がビジネスソリューション事業31%、人材ソリューション事業69%、営業利益がビジネスソリューション事業53%、人材ソリューション事業47%だった。
21年10月には子会社エスプールリンクが、女性の活躍推進に関する取り組みが優れている企業に対して厚生労働大臣が認定する「えるぼし」の最高位となる「3段階目」を取得した。グループにおける「えるぼし」取得はエスプール、エスプールヒューマンソリューションズ、エスプールプラスに続く4社目である。22年2月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明した。22年3月には経済産業省と日本健康会議が認定する健康経営優良法人2022に3年連続で選定された。
■ビジネスソリューションは障がい者雇用支援が主力
ビジネスソリューション事業は、障がい者雇用支援サービスを主力として、ロジスティクスアウトソーシングサービス(EC通販発送代行サービス、物流センター運営代行)、対面型会員獲得・販売促進のセールスサポートサービス、アルバイト・パート求人応募受付代行の採用支援サービス「OMUSUBI」なども展開している。
障がい者雇用支援サービスの「わーくはぴねす農園」は、障がい者雇用を希望する企業に対して農園を貸し出し、企業が主に知的障がい者を直接雇用する。障がい者の職業的自立および社会参加の支援を通じてノーマライゼーション社会の実現に貢献する事業である。
20年8月には東京都板橋区に初の屋内型農園を開設した。従来型の農園はビニールハウス型で概ね3000坪を超える敷地を必要としていたが、台風など自然災害の影響を踏まえ、屋外作業に適さない方にも就労機会を提供することを目的として屋内型を開設した。屋内型は倉庫や建物の活用を前提としているため立地面において柔軟性が高い。
21年11月期は7施設(屋外4施設、屋内3施設)を新規開設し、21年11月期末時点の施設数は30施設、顧客数は417社、管理区画数は4951区画、就業者数は2475名となった。関西エリア(大阪府枚方市と摂津市)にも進出した。なお22年4月に神奈川県横浜市と埼玉県川越市に開設、22年6月に大阪府大阪市に屋内型を開設、22年8月に埼玉県さいたま市に屋外型を開設して合計34施設となった。
さらに、障がい者の個性やキャリアを活かした雇用環境を構築し、それぞれのフィールドで活躍するパラスペシャリストの支援に取り組んでいる。21年12月には障がいのある芸術家(パラアーティスト)が制作活動を行う組織「COLORS」を立ち上げた。障がい者の個性を活かしたキャリア支援は「パラアスリート」に続き2事例目となる。さらに22年5月には共同印刷と連携し、パラアーティストの認知度向上と理解促進に向けて、パラアーティスト組織「COLORS」に所属する障がいのある芸術家の作品をモチーフにした商品の販売を開始すると発表した。
ロジスティクスアウトソーシングでは、巣ごもり消費を背景としてEC通販発送代行サービスが拡大している。21年12月に浦安センターを開設し、品川センター、つくばセンターとの3センター体制とした。
なおネット通販発送代行サービスを展開する子会社のエスプールロジスティクスは21年8月、環境省が策定する日本独自の環境マネジメントシステム「エコアクション21」の認証を取得した。21年9月には越境ECサービス支援のアジアンブリッジと資本業務提携した。ASEAN諸国への越境ECサービスを通じて既存顧客との取引拡大や新規顧客の獲得を推進する。
採用支援サービスのOMUSUBIは飲食・小売業を中心に求人応募受付業務を行っている。20年3月には採用支援サービスのZENKIGENに出資、健康経営支援サービスのメンタルヘルステクノロジーズに出資、20年5月にはZENKIGEN、ワークスタイルテック、およびイレブンと4社合同で、企業間が期間限定で従業員をシェアし合うプラットフォーム「超企業 従業員プラットフォーム」を開設した。
20年9月には適性診断サービス「Talentgram」を開始、20年11月にはWEB面接代行サービス「Faceview」を開始、21年2月にはオンライン接客サービス開発・提供に向けてピアズと業務提携、サービス業を中心に人材の過不足解消を目的とした人材紹介サービスを開始、21年5月にはアルバイト・パートの入退職手続代行サービスを開始した。
プロフェッショナル人材バンク(顧問派遣サービス)では21年12月に、企業とプロ人材をマッチングするスマートフォンアプリ「PivottA(ピボッタ)」β版の提供を発表した。
■人材ソリューション事業はコールセンター派遣が主力
人材ソリューション事業はコールセンター業務の派遣を主力として、販売支援業務や介護系業務の派遣・紹介なども展開している。22年5月には子会社エスプールヒューマンソリューションズが、人材派遣サービスの更なる拡大を目指し、東京エリア5拠点目となる丸の内支店を開設した。全国では19の支店ネットワークとなる。
■新規事業
新たな収益柱構築に向けた新規事業としては、環境経営支援サービス、広域行政BPOサービスなどを積極展開している。
環境経営支援サービスについては、市場拡大が期待できる環境ビジネス分野での新たな収益柱の構築を目指し、20年6月にエコノス<3136>からカーボンオフセット事業を展開するブルードットグリーンの株式を取得して子会社化(22年4月に株式追加取得して完全子会社化)した。CO2排出量算定支援から、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)関連の排出量削減コンサルティング、クレジット仲介支援まで、ワンストップサービスの展開を推進する。22年7月には、ブルードットグリーンが宝印刷と環境情報開示支援サービスに関して業務提携したと発表している。
広域行政BPOサービス(21年12月にBPO事業を新設の子会社エスプールグローカルに承継)については、人口10万人以下の地方都市を中心に隣接する複数の自治体業務を受託する地方自治体向けシェアード型BPOサービスを全国展開する。シェアード型BPOセンターは北海道北見市、秋田県大仙市、青森県弘前市に続き、22年2月には香川県三豊市、大分県中津市、22年4月には石川県かほく市、青森県むつ市、22年5月には山口県岩国市に開設して全国8拠点となった。22年11月末までに10拠点体制、中期的には全国30拠点体制の早期実現を目指すとしている。なお22年7月には子会社エスプールグローカルが情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格ISO27001の認証を取得した。
その他分野では、21年10月に宮崎県日南市およびココホレジャパン(岡山県岡山市)と3者包括連携協定を締結し、日南市内の後継者不在事業者の調査、移住者とのマッチング、事業再生支援等による後継者課題解決に取り組むと発表した。第一弾として、ココホレジャパンが運営するプラットフォームを活用した「宮崎県日南市継業バンク」を開設して地域の維持活性化を図る。また22年7月には、宮崎県日南市とゼロカーボンシティ推進に向けた包括的連携協定を締結した。
■25年11月期営業利益50億円目標
中期経営計画(ローリング形式で21年1月公表、好調な障がい者雇用支援サービスの売上を増額、既存事業の計画を保守的に見直し)では、目標値に25年11月期売上高410億円(人材アウトソーシングサービス252億円、障がい者雇用支援サービス81億円、その他既存サービス43億40百万円、新規事業35億円、内部取引▲1億40百万円)、営業利益50億円、連結配当性向30%以上、高水準のROE維持を掲げている。
基本戦略として、既存事業の深掘りによるオーガニック成長、新たな事業領域における成長機会の獲得、ESGを軸とした経営基盤の強化を推進する。
オーガニック成長としては、人材派遣サービスではコールセンター派遣におけるトップシェアの獲得、新たな派遣領域の発掘、障がい者雇用支援サービスでは農園サービスにおける圧倒的NO.1の確立、障がい者の個性に合わせた多様な働き方メニューの開発、ロジスティクスアウトソーシングではEC通販を軸とした事業拡大、日本発のゼロ・エミッションを実現した自社センターの開設、採用支援サービスのOMUSUBIではアルバイト・パート採用支援業務でのトップシェア獲得、採用から定着化までの総合的サービスの提供を推進する。
新たな事業領域における成長機会の獲得としては、ベンチャー投資も活用して、CO2削減を中心とする環境ビジネス領域、企業の「持たざる経営」へのシフトを支援するBPOビジネス領域への展開を加速する方針だ。
なお22年7月には、ESG投資指数「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」構成銘柄に初選定されたと発表している。
■22年11月期2Q累計が計画超の大幅増益で通期上振れ余地
22年11月期連結業績予想(収益認識基準適用だが損益への影響なし)は、売上高が21年11月期比15.7%増の287億70百万円、営業利益が19.9%増の32億円、経常利益が18.8%増の31億76百万円、親会社株主帰属当期純利益が13.4%増の21億33百万円としている。配当予想は21年11月期比2円増配の8円(期末一括)としている。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比17.4%増の136億65百万円、営業利益が32.1%増の15億65百万円、経常利益が31.0%増の15億68百万円、親会社株主帰属四半期純利益が32.1%増の10億30百万円だった。
障がい者雇用支援サービスやコールセンター業務などの主力事業が好調に推移し、新規事業も寄与して計画(売上高135億22百万円、営業利益13億85百万円、経常利益13億73百万円、親会社株主帰属四半期純利益9億43百万円)を上回る大幅増益と順調だった。利益率の高い障がい者雇用支援サービスや新規事業が大幅伸長して売上総利益率は2.1ポイント上昇した。
ビジネスソリューション事業は売上高が35.4%増の46億81百万円でセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が50.8%増の13億28百万円だった。障がい者雇用支援サービスの売上高は34.2%増の26億77百万円だった。設備販売、管理収入とも大幅に伸長した。農園は2施設を新設して32施設となった。企業ニーズが高水準に推移し、設備販売は計画400~450区画に対して438区画と順調だった。顧客数は459社、管理区画数は5567区画、就業者数は2783名となった。ロジスティクスアウトソーシングサービスの売上高は6.9%増の6億40百万円だった。小幅増収にとどまったが、収益管理を徹底して利益率の目標を維持した。採用支援サービスOMUSUBIの売上高は20.3%減の2億73百万円だった。コロナ禍の影響で減収だが、第2四半期は行動制限の緩和とともに飲食業の求人が回復傾向を強めている。
なおビジネスソリューション事業に含まれる新規事業の売上高は、広域行政BPOサービスが3億68百万円、環境経営支援サービス(ブルードットグリーン)が2億91百万円だった。広域行政BPOサービスは3センターを開設して全8拠点となった。環境経営支援サービスはコンサルティング業務が急拡大して計画を大幅に上回った。
人材ソリューション事業は売上高が10.2%増の90億42百万円で営業利益が7.1%増の9億97百万円だった。販売支援の売上高は携帯販売業務の回復遅れで33.7%減の6億34百万円だったが、コールセンター業務の売上高がスポット案件の一部延長も寄与して18.4%増の79億59百万円と大幅伸長した。
四半期別に見ると、第1四半期売上高が65億20百万円で営業利益が6億71百万円、第2四半期は売上高が71億45百万円で営業利益が8億94百万円だった。第2四半期は売上高、営業利益とも過去最高だった。
通期予想は据え置いている。主力事業が好調に推移して、売上高は10期連続、営業利益は7期連続で過去最高更新を目指すとしている。
ビジネスソリューション事業は売上高が25.4%増の96億50百万円で営業利益が22.2%増の25億92百万円の計画としている。売上高の内訳は、障がい者雇用支援サービスが20.1%増の55億円、ロジスティクス分野が13.1%増の14億27百万円、採用支援サービス「OMUSUBI」が4.0%増の6億41百万円、新規事業の広域行政BPOサービスが6億65百万円、環境経営支援サービスが3億84百万円としている。
障がい者雇用支援サービスは、通期ベースの新規開設が8農園(屋外5、屋内3)で、設備販売は1250区画の計画としている。さらなる経営資源投下によって計画上振れを目指す。ロジスティクス分野では再成長に向けた事業基盤構築を推進し、小型低採算案件の整理に着手する。採用支援サービス「OMUSUBI」では業務量回復を見据えて応募受付システムを一新し、生産性向上を図る。広域行政BPOサービスと環境経営支援サービスは、来期に向けて営業強化・案件積み上げに注力する。
人材ソリューション事業は売上高が11.6%増の192億40百万円で営業利益が11.9%増の21億37百万円の計画としている。売上高の内訳は、コールセンター業務が13.3%増の164億50百万円、販売支援が9.6%増の18億30百万円、その他が9.2%減の9億60百万円としている。コールセンター業務におけるスポット案件の一巡で第3四半期はやや苦戦の見込みとしているが、継続的成長に向けた体制整備に注力する。
第2四半期累計の進捗率は売上高が47.5%、営業利益が48.9%、経常利益が49.4%、親会社株主帰属当期純利益が48.3%だった。期初時点で下期偏重の計画(売上高は上期135億22百万円で下期152億47百万円、営業利益は上期13億85百万円で下期18億14百万円)であることを勘案すれば概ね順調な進捗である。第2四半期累計が計画を上回る大幅増益だったことを勘案すれば、通期予想にも上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は戻り試す
株価は7月の直近安値圏から切り返しの動きを強めている。好業績を評価して戻りを試す展開を期待したい。8月23日の終値は1074円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS27円01銭で算出)は約40倍、今期予想配当利回り(会社予想の8円で算出)は約0.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS76円94銭で算出)は約14倍、時価総額は約849億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)