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バルクホールディングスは調整一巡、23年3月期1Q赤字だが通期大幅増収増益予想で収益拡大基調
- 2022/8/29 09:19
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
バルクホールディングス<2467>(名証ネクスト)はセキュリティ事業およびマーケティング事業を展開し、サイバーセキュリティトレーニングのサイバーセキュリティ分野を強化している。23年3月期第1四半期は採用コストや人件費の増加など先行投資の影響で赤字だったが、概ね計画水準だった。そして通期の大幅増収増益予想を据え置いている。サイバーセキュリティ分野が大型商談も寄与して順調に拡大する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は安値圏でモミ合う展開が続いているが、調整一巡して出直りを期待したい。
■セキュリティ事業とマーケティング事業を展開
セキュリティ事業およびマーケティング事業を展開する純粋持株会社である。新規事業としてサイバーセキュリティトレーニングのサイバーセキュリティ分野を強化している。
セキュリティ事業は、情報セキュリティ規格コンサルティング(プライバシーマーク認定取得支援、ISO27001(ISMS)認証取得支援、および運用支援)分野、および新規事業のサイバーセキュリティ分野を展開している。
マーケティング事業は、マーケティングリサーチ(大手メーカーの新製品開発時モニター調査)分野、およびセールスプロモーション(スーパーなど食品流通事業者のフリーペーパー、食品・飲料メーカーのSPツール・ノベルティの制作)分野を展開している。またアトラス・コンサルティングを持分法適用関連会社としている。
22年6月には、子会社のマーケティング・システム・サービス(22年7月に商号をMSSに変更)がSDGs関連ソリューションとして、JobRainbowと提携してダイバーシティソリューションの提供を開始した。22年8月には、日本におけるSDGs研究の第一人者である蟹江憲史氏(慶応義塾大学教授)が、MSSのSDGs事業のエグゼクティブアドバイザーに就任した。
22年3月期セグメント別構成比は、売上高(セグメント間取引調整前)がセキュリティ事業51%、マーケティング事業49%、利益(全社費用等調整前営業利益)がセキュリティ事業53%、マーケティング事業47%だった。なお収益は第4四半期に偏重する傾向がある。
なお、効率化やグループシナジー効果創出を目指し、東京都内に点在していたグループ拠点を21年12月に移転・統合した。また22年6月には、第三者割当による新株式、行使価額固定型第11回新株予約権および第12回新株予約権を発行し、資金調達によって財務基盤を強化した。
■サイバーセキュリティ分野を強化
サイバーセキュリティ分野は18年1月にイスラエルのサイバージム社と共同で米国SCH社を設立して参入した。日本と米国において、サイバージムが開発した実践型サイバーセキュリティトレーニングアリーナを運営し、電力や金融など重要インフラストラクチャーセクターの民間企業・政府機関等に対して、サイバーセキュリティトレーニング等のサービスやソリューションを提供している
18年7月米国ニューヨークにコマーシャルアリーナ(フルパッケージサービスを提供する大型トレーニング施設)のCyberGym NYCを開設、18年8月ハイブリッドアリーナ(小型トレーニング施設)のCyberGym Tokyoを開設、18年8月サイバージム社に出資、18年9月サイバーセキュリティコンサルティングの子会社CELを設立した。
なおサイバージム社との共同事業の枠組みを見直して、21年3月に米国SCH社が米国でのセキュリティトレーニング事業展開のために保有するライセンス・設備(NYコマーシャルアリーナ)一式をサイバージム社に譲渡した。これによって米国SCH社の固定費が大幅に削減された。今後のグローバル戦略として、日本国内および近隣のアジア地域では当社グループ、米国ではサイバージム社が主導して展開する。
国内のサイバーアリーナの展開は、19年8月CYBERGYM新宿アリーナ(運営主体はインターネット総合研究所)を開設、20年11月CYBERGYM八重洲アリーナ(クロスポイントソリューションとの合弁会社クロスポイントセキュリティジムが運営、持分法適用関連会社)を開設した。
21年6月にはATマーケティングとサイバーアリーナにかかる提供・運用サポート・ライセンス契約を締結し、21年7月にCYBERGYM名古屋を開設した。なおCYBERGYM大阪については運営主体を変更し、DXHR社が主体となって運営会社サイバーコマンドを設立して21年7月に開設した。
21年10月には子会社のサイバージムジャパン(CGJ)がアクトと協業し、札幌市内および福岡市内にサイバーセキュリティ教育施設を開設(22年3月予定)することについて基本合意した。そして21年12月には両サイバーアリーナ(CYBERGYM札幌、CYBERGYM福岡)の開設予定地が決定した。
22年7月にはサイバージムジャパンが、業務提携先の公益財団法人防衛基盤整備協会が防衛装備庁から受託した令和4年度「防衛装備品製造過程等におけるサイバーセキュリティ対策強化事業」を支援すると発表した。
22年8月には、サイバージムジャパンがオープンストリームとクラウドセキュリティ領域で業務提携し、パブリッククラウド特化型SRA(セキュリティリファレンスアーキテクチャ)の提供を開始すると発表した。またサイバージムジャパンが東芝エネルギーシステムズと、エネルギー事業者向けサイバーセキュリティ訓練サービスに関して協業した。
■23年3月期1Q赤字だが通期大幅増収増益予想で収益拡大基調
23年3月期の連結業績予想は売上高が22年3月期比24.2%増の24億円、営業利益が14.2%増の80百万円、経常利益が29.9%増の65百万円、親会社株主帰属当期純利益が11.6%増の43百万円の黒字としている。
セキュリティ事業はセキュリティトレーニング、脆弱性診断等ソリューション・コンサルティングサービスを中心に、引き続き好調な推移を見込む。マーケティング事業も既存事業を中心に、引き続き好調な推移を見込む。なお海外については、多額の先行投資や固定費の計上を回避しつつ、アジアを中心に高い経済成長の取り込みを目指す方針としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比1.4%減の4億21百万円、営業利益が71百万円の赤字(前年同期は27百万円の黒字)、経常利益が74百万円の赤字(同24百万円の黒字)、親会社株主帰属四半期純利益が78百万円の赤字(同13百万円の黒字)だった。
一部においてコロナ禍の影響が継続したため小幅減収となり、採用コストや人件費の増加など先行投資の影響で赤字だったが、概ね計画水準だったとしている。
セキュリティ事業は売上高が6.7%増の2億33百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が2百万円の赤字(同53百万円の黒字)だった。セキュリティトレーニング部門はアリーナ販売がない中でも、業界内での地位確立・向上に伴う顧客獲得率・層および受注金額の拡大で伸長した。セキュリティソリューション・コンサルティング部門では、セキュリティ対策ニーズの高まりを背景にAI脆弱性診断などが伸長した。
マーケティング事業は売上高が7.2%減の1億97百万円、利益が20百万円の赤字(同21百万円の黒字)だった。一部においてコロナ禍の影響が継続したが、マーケティングリサーチ部門ではリサーチ業務の主要顧客からの複数案件化や、非対面リサーチが成長した。セールスプロモーション部門では主要顧客の大手スーパーや大手食品メーカーからの受注が堅調に推移した。さらにデジタルマーケティング関連の売上が拡大するなど、新規事業への足掛かりを構築した。
通期の大幅増収増益予想を据え置いている。第1四半期は小幅減収・赤字だが概ね計画水準だった。さらに収益は第4四半期に偏重する傾向があり、サイバーセキュリティ分野が大型商談も寄与して順調に拡大する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は調整一巡
株価は安値圏でモミ合う展開が続いているが、調整一巡して出直りを期待したい。8月26日の終値は253円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS3円23銭で算出)は約78倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS30円34銭で算出)は約8.3倍、そして時価総額は約31億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)