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インテージホールディングスは上値試す、23年6月期2桁増益予想で収益拡大基調
- 2022/8/29 09:18
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インテージホールディングス<4326>(東証プライム)は、市場調査事業を主力としてシステムソリューション分野や医薬情報分野にも展開し、積極的な成長投資を継続している。22年6月期は小幅ながら増収・営業増益だった。パネル調査やカスタムリサーチが好調に推移し、成長投資を吸収した。23年6月期はマーケティング支援(消費財・サービス)が牽引して2桁増益・連続増配予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は7月の年初来安値圏で底打ちして戻り歩調だ。基調転換を確認した形であり、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■国内首位の市場調査が主力
子会社インテージのSCI(全国個人消費者パネル調査)やi-SSP(インテージシングルソースパネル)など、国内首位・世界10位(GRBN 2018 Global Top25 Report)の市場調査事業を主力として、システムソリューション分野や医薬情報分野にも展開している。
セグメント区分は消費財・サービス分野のマーケティング支援、ヘルスケア分野のマーケティング支援、ITソリューション分野のビジネスインテリジェンスとしている。22年6月期のセグメント別構成比は売上高が消費財・サービス分野のマーケティング支援64%、ヘルスケア分野のマーケティング支援24%、ビジネスインテリジェンス12%、営業利益が消費財・サービス分野のマーケティング支援49%、ヘルスケア分野のマーケティング支援47%、ビジネスインテリジェンス3%だった。
消費財・サービス分野のマーケティング支援では、データサービスやカスタムリサーチなどを展開している。独自収集した各種パネル調査やカスタムリサーチから得られたデータを基に、高度なリサーチ技術やデータ解析力を駆使して、消費財メーカーを中心に企業のマーケティング活動をトータルサポートしている。主な事業会社はインテージ、インテージリサーチ、海外子会社などである。
21年5月にはリサーチ・アンド・イノベーション(RNI)を子会社化、21年7月にはインテージがIXTを吸収合併、21年8月にはインテージ・ベトナムがベトナム国家大学ハノイ校日越大学(ハノイ)と産学連携の基本協定を締結した。
21年10月には、アジア地域で展開する海外インターネット調査パネル「Asian Panel」が、21年8月に新たな対象エリアとしてインドを追加し、11の国・地域を対象としてモニター数が1100万人を突破して業界最大級になったと発表している。
21年11月には、子会社インテージとインティメート・マージャー<7072>の業務提携(21年10月)を強固にすることを目的として、インティメート・マージャーと資本提携(インティメート・マージャーの普通株式の一部を既存株主から取得予定)すると発表した。
ヘルスケア分野のマーケティング支援では、一般用医薬品・医療用医薬品の市場調査、製薬企業からの委託によるデータマネジメント・解析業務、医薬品開発をサポートするCRO業務などを展開している。事業会社はインテージヘルスケアの直下に協和企画、インテージリアルワールド(医療情報総合研究所が21年7月1日付で社名変更)、プラメド、Plamed Koreaの4社を置く体制としている。
ビジネスインテリジェンスでは、ソフトウェア開発やシステム構築・運用などを展開している。事業会社はインテージテクノスフィア、ビルドシステム、エヌ・エス・ケイなどである。
■次世代SRIサービス「SRI+」を核に総合力向上
第13次中期経営計画では目標値に23年6月期売上高625億円、営業利益50億円、営業利益率8.0%を掲げている。目指すべき姿を「データを核として、顧客ビジネス課題解決や意思決定に深く関与・伴走し、ビジネス創造と変革に寄与できる存在」として、次世代成長ドライバー確立などグループ間の連携による対応領域の創造と拡張を推進している。またデジタル環境の変化に対応するため、積極的な事業投資やM&Aも継続して実施する方針だ。
資本政策については、資本効率を重視し、最終利益を全額、成長投資と株主還元に振り向ける方針としている。配当は連結配当性向40%、DOE(自己資本配当率)4.5%以上を目標としている。自己株式取得も機動的に対応する。
消費財・サービス分野のマーケティング支援では、次世代SRI(全国小売店パネル調査)サービスの「SRI+」(ECデータ含む)を21年1月にリリースした。今後は「SRI+」を核としてソリューションおよびパートナー連携による総合力向上を図り、収益拡大につなげる方針だ。また定量的な行動観察を可能にした動画解析プラットフォーム「Label Note(仮)」のリリースに向けて準備中である。
SBIインベストメントと共同設立のINTAGE Open Innovation Fundは、パーソナルAI「al+」開発のオルツ、WEBリサーチのリサーチ・アンド・イノベーション、IoTデータ流通プラットフォームの米EverySense、訪日外国人向けショッピングサポートアプリ「Payke」のPaykeなどに投資している。22年1月現在の投資実績は23社、合計約24.8億円となっている。
また、ESG経営・SDGsへの取り組みの一例として、日本赤十字社の「ACTION!防災・減災プロジェクト」に参画している。さらに、経済産業省と日本健康会議が主催する健康経営優良法人認定制度において「健康経営優良法人2022(中小規模法人部門)」に認定された。
■22年6月期営業増益・増配、23年6月期2桁増益・連続増配予想
22年6月期の連結業績(収益認識会計基準適用だが影響軽微)は、売上高が21年6月期比4.6%増の602億32百万円、営業利益が5.2%増の46億49百万円、経常利益が2.5%減の49億52百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が1.4%増の34億18百万円だった。配当は期末3円上方修正して21年6月期比3円増配の38円(期末一括)とした。
小幅ながら増収・営業増益だった。マーケティング支援(消費財・サービス)事業において主力のパネル調査やカスタムリサーチが好調に推移し、マーケティング支援(ヘルスケア)事業およびビジネスインテリジェンス事業の減収影響や、先行投資に伴う費用増加をカバーした。
マーケティング支援(消費財・サービス)事業は、売上高が8.2%増の385億03百万円、営業利益が20.4%増の23億00百万円だった。主力のパネル調査やカスタムリサーチが好調に推移した。リモート環境にシフトした営業活動やサービス展開も定着した。海外もオンライン調査を主業務とするデータスプリング社が好調だった。
マーケティング支援(ヘルスケア)事業は、売上高が1.1%減の145億52百万円、営業利益が2.9%減の21億97百万円だった。主力のリサーチ事業が投資活動に伴うリソース再配置の影響などで前年を下回った。CRO(医薬品開発業務受託機関)の製造販売後調査は抜本的な改善の取り組みで収益性が改善した。データサイエンス事業は臨床開発業務の稼働率が高水準で推移した。
ビジネスインテリジェンス事業は、売上高が1.3%減の71億77百万円、営業利益が38.6%減の1億51百万円だった。インテージテクノスフィアにおいて、コロナ禍の影響が大きい既存業界向けソリューションが苦戦した。利益面では不採算案件の発生も影響した。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が138億04百万円で営業利益が8億82百万円、第2四半期は売上高が153億27百万円で営業利益が17億52百万円、第3四半期は売上高が178億89百万円で営業利益が24億18百万円、第4四半期は売上高が132億12百万円で営業利益が4億03百万円の赤字だった。第4四半期は後倒しとなっていた成長投資を計画通りに実行した。
23年6月期連結業績予想は、売上高が22年6月期比6.3%増の640億円、営業利益が11.8%増の52億円、経常利益が13.1%増の56億円、親会社株主帰属当期純利益が17.0%増の40億円としている。配当予想は22年6月期比4円増配の42円(期末一括)としている。連続増配予想である。
マーケティング支援(消費財・サービス)が牽引して2桁増益・連続増配予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。環境変化に柔軟かつスピーディーに対応しながら、データ利活用サービスやソリューションの開発、人材育成・強化などに取り組むとしている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待は毎年12月末の株主対象
株主優待制度は、毎年12月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象として実施(詳細は会社HP参照)している。
■株価は上値試す
8月5日付で自己株式取得を発表した。上限160万株・20億円で、取得期間は22年8月8日~23年2月28日としている。
株価は7月の年初来安値圏で底打ちして戻り歩調だ。週足チャートで見ると26週移動平均線を一気に突破し、さらに13週移動平均線が上向きに転じた。基調転換を確認した形であり、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。8月26日の終値は1620円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS101円93銭で算出)は約16倍、今期予想配当利回り(会社予想の42円で算出)は約2.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS776円32銭で算出)は約2.1倍、時価総額は約655億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)