JFEシステムズは上値試す、23年3月期小幅増益予想、さらに上振れの可能性

 JFEシステムズ<4832>(東証スタンダード)はJFEグループの情報システム会社である。鉄鋼向けを主力として、一般顧客向け複合ソリューション事業も強化している。中期経営計画では、強みとする商品力・技術力・人材力およびDX事業の更なる強化に向けて、積極投資を実行する方針としている。23年3月期は小幅増益予想としている。ただし保守的だろう。第1四半期が2桁増益と順調であり、通期会社予想は上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は6月の直近安値圏から切り返して戻り歩調だ。好業績を評価して上値を試す展開を期待したい。

■JFEグループの情報システム会社

 JFEグループの情報システム会社である。鉄鋼向け情報システム構築事業を主力として、ERPと自社開発ソリューションを組み合わせた一般顧客向け複合ソリューション事業、自社開発のプロダクト・ソリューション事業も強化している。なお親会社のJFEスチールが22年3月に発表した本社基幹システムのオープン環境への完全移行にも参画している。

 22年3月期の事業別売上高は鉄鋼が230億円、一般顧客が164億円、基盤が69億円、子会社(JFEコムサービス、IAFC)が41億円だった。収益面では情報システム関連のため、年度末にあたる第4四半期の構成比が高い特性がある。

 ダイバーシティを推進し、女性の活躍推進の取り組みが優れた企業を厚生労働大臣が認定する「えるぼし」や、働き易い職場環境整備・意識啓発に取り組む企業を東京都が登録する「心のバリアフリーサポート企業」など、働き方・企業風土に関する各種認証を取得している。20年7月には厚生労働大臣から子育てサポート企業として「プラチナくるみん」認定を受けた。

 21年12月には「ダイバーシティ推進基本方針」「ダイバーシティ推進キャッチフレーズ」および「2030年度女性役員・管理職(部長・課長級)達成目標」を新たに策定した。2030年度までに女性役員・管理職比率12%の達成(21年度実績5.7%から倍増)を目指す。22年3月には健康経営優良法人2022(大規模法人部門)に5年連続で選定された。

■電子帳票パッケージは14年連続国内シェア1位

 電子帳票パッケージなど自社開発ソリューションの拡大に注力している。21年4月には食品業界のDX推進を支援する原料情報管理・原材料表示作製クラウドサービス「MerQurius(メルクリウス)クラウド」の提供を開始した。

 21年7月には、DataDeliveryが公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の認証する電子取引ソフト法的要件認証制度および電子書類ソフト法的要件認証制度の2つのJIIMA認証を同時取得した。21年9月には、自社開発の電子帳票パッケージFiBridgeシリーズが、富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2021年版」電子帳票パッケージ(運用・保存システム)分野20年度市場占有率調査(販売パッケージベース)で、14年連続で国内製品シェア1位(数量シェア25.2%、金額シェア25.3%)を獲得したと発表している。利用企業数は4000社を超えている。

 21年10月にはSAP S/4HANA向けに自社開発したプロジェクト管理業務テンプレート「SIDEROS PS TEMPLATE for S/4HANA」の最新版の販売を開始した。21年11月には電子帳簿保存法に対応した電子証跡システム「DateDeliveryクラウド」の提供を開始した。22年6月にはアマノ<6436>がWeb購買システム「Enterprise Commerce」を導入したと発表している。

■中期経営計画

 22年4月に策定・公表した中期経営計画では、キャッチフレーズに「Accelerate innovation」を掲げ、目標数値は最終年度25年3月期の売上高570億円、経常利益66億円、ROS11.6%、親会社株主帰属当期純利益43.7億円、ROE15%程度の水準維持、配当性向35%程度(現行は30%)としている。なお23年3月期から中間配当を実施する。

 サステナビリティ活動を意識した経営を追求し、強みとする商品力・技術力・人材力およびDX事業の更なる強化に向けて、3ヶ年で150億円規模の積極投資(商品開発投資20億円、サービス提供型ビジネス向け投資50億円、研究開発投資、既存事業の強化と事業領域の拡大を狙ったM&Aなど)を実行しながら、並行して増収増益を目指すとしている。なお人材投資については、採用・育成費や社員報酬水準向上などの増分として約20億円を見込んでいる。

 事業別戦略としては、鉄鋼では製鉄所システムリフレッシュ本格化への対応やDX案件への積極対応、ソリューション・プロダクトでは商品機能拡充やクラウド対応によるITベンダーとしての商品力・提案力強化、ビジネスシステムでは新技術・ノウハウの蓄積によるSoRビジネスからSoEビジネスへの転換、基盤ではJFEグループ以外の顧客開拓やクラウド・セキュリティ事業の強化・拡大、DX関連ではオフィスソリューションや製造現場ソリューションなどDX新規ビジネスの拡大などを推進する。

■23年3月期小幅増益予想、さらに上振れの可能性

 23年3月期の連結業績予想は売上高が22年3月期比7.2%増の540億円、営業利益が1.1%増の56億70百万円、経常利益が1.0%増の57億円、親会社株主帰属当期純利益が0.4%増の37億40百万円としている。配当予想は10円増配の85円(第2四半期末40円、期末45円)としている。連続増配予想である。なお23年3月期から中間配当を実施する。

 事業別売上高の計画は、鉄鋼が製鉄所システムリフレッシュの更なる進展で31億円増加の261億円、一般顧客が大型案件の減少で4億円減少の160億円、基盤がJFEスチール向けの増加で3億円増加の72億円、子会社がITインフラの増加で6億円増加の47億円としている。

 JFEスチール向け製鉄所システムリフレッシュプロジェクトが順調に進展し、増収増益で連続増配予想としている。経常利益の増減分析(見込み)は増益要因が売上増加で8.2億円、減益要因が利益率低下・販管費等増加で7.6億円としている。

 第1四半期は、売上高が前年同期比13.5%増の135億26百万円、営業利益が17.4%増の12億23百万円、経常利益が18.0%増の12億45百万円、親会社株主帰属四半期純利益が19.5%増の7億98百万円だった。

 JFEスチール向け製鉄所システムリフレッシュプロジェクトの本格化が牽引して2桁増収増益と順調だった。売上総利益は8.7%増加、売上総利益率は20.7%で0.9ポイント低下、販管費は2.9%増加、販管費比率は11.6%で1.2ポイント低下した。

 通期予想は据え置いている。IT人材確保に向けた処遇改善費用や研究開発費用の増加など、先行投資の影響で小幅増益にとどまる予想としている。ただし保守的だろう。第1四半期が2桁増益と順調であり、通期会社予想は上振れの可能性がありそうだ。JFEスチール向け製鉄所システムリフレッシュプロジェクトは26年頃まで継続する見込みであり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

 株価は6月の直近安値圏から切り返して戻り歩調の形だ。そして週足チャートで見ると13週移動平均線が上向きに転じてきた。好業績を評価して上値を試す展開を期待したい。9月2日の終値は2306円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS238円14銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の85円で算出)は約3.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1469円63銭で算出)は約1.6倍、時価総額は362億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■シスルナ経済圏構築に向け、グローバルなパートナーシップを強化  ispace(アイスペース)<9…
  2. 【先人の教えを格言で解説!】 (犬丸正寛=株式評論家・平成28年:2016年)没・享年72歳。生前に…
  3. ■物価高・人手不足が直撃、倒産件数29カ月連続で増加  帝国データバンクの調査によると、倒産件数が…
2024年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

ピックアップ記事

  1. ■化粧品大手は業績下方修正も、電鉄各社は上方修正で活況  トランプ次期大統領の影響を受けない純内需…
  2. どう見るこの相場
    ■金利敏感株の次は円安メリット株?!インバウンド関連株に「トランプ・トレード」ローテーション  米…
  3. ■金利上昇追い風に地銀株が躍進、政策期待も後押し  金利上昇の影響を受けて銀行株、特に地方銀行株の…
  4. ■トリプルセット行、ダブルセット行も相次ぐ地銀銀株は決算プレイで「トランプトレード」へキャッチアップ…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る