ミロク情報サービスは上値試す、23年3月期営業・経常横ばい予想だが上振れの可能性

 ミロク情報サービス<9928>(東証プライム)は財務・会計ソフトを主力として、ERPソリューションとデジタルマーケティングを融合した統合型DXプラットフォームの構築を目指している。23年3月期はソフトウェアの提供形態を売り切り型からサブスクリプション型へ移行する影響や先行投資などを考慮して営業・経常利益横ばい予想としている。ただし第1四半期が大幅増益だったことを勘案すれば通期会社予想は上振れの可能性が高く、クラウドサービスの伸長や積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は戻り一服となったが、自律調整が一巡して上値を試す展開を期待したい。

■財務・会計ソフトの開発・販売およびサービス

 会計事務所(税理士・公認会計士事務所)と、その顧問先企業である中堅・中小企業向けに、財務・会計ソフトなどの業務用アプリケーションソフト開発・販売、汎用サーバ・パソコン・サプライ用品販売、運用支援・保守サービス、経営情報・コンサルティングサービスなどを展開している。

 会計事務所が抱えている課題を解決することで中堅・中小企業の支援にも繋がるトータルソリューションを強みとして、全国約8400の会計事務所ユーザー、および約10万社の中堅・中小企業ユーザーを有している。中堅・中小企業向けERP「MJSLINKシリーズ」は、矢野経済研究所「2021ERP市場の実態と展望」において09年から12年連続売上高シェアNo.1、およびデロイト トーマツ ミック経済研究所「基幹業務パッケージソフトの市場展望2021年度版」の中規模企業向けERPシステム部門で売上高シェアNo.1となり、ダブルでNo.1を獲得している。

 21年3月に中堅・中小企業向けクラウド型ERPシステム「MJSLINK DX」を提供開始、21年9月にクラウド型ワークフローサービス「MJS DX Workflow」を提供開始、22年4月に中堅企業向け新ERPシステム「Galileopt DX」を提供開始、22年6月にクラウド型電子契約サービス「MJS e-ドキュメントCloudサイン」を提供開始した。

 22年3月期売上高構成比は、フロー型のシステム導入契約売上高が55%(システム導入契約時のハードウェアが9%、ソフトウェアが34%、システム導入支援サービスなどのユースウェアが13%)、ストック型のサービス収入が36%(会計事務所向け総合保守サービスTVSが7%、ソフト使用料が8%、企業向けソフトウェア運用支援サービスが15%、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入が4%、サプライ・オフィス用品が2%)、その他が9%だった。

 収益はソフト保守サービス契約率上昇などでサービス収入が拡大するストック型収益構造である。なおシステム導入契約売上高の販売先別売上高構成比は、企業向けが52%、会計事務所向けが30%、その他が18%だった。

■M&A・アライアンスも積極活用

 20年4月に組織・人事分野の独立系コンサルティングファームであるトランストラクチャを子会社化、20年5月にフィンテックサービスの企画・開発を行う子会社のMFTがセントラル警備保障(CSP)の子会社で店舗内現金管理・流通効率化を行うスパイスを子会社化、20年11月にリーガルテック企業であるリセと資本業務提携、20年12月にデジタルマーケティング支援のトライベックを子会社化、21年1月に信金中央金庫の「しんきん事業承継コンソーシアム」に参画、ゼロ知識証明を利用したブロックチェーン・プラットフォーム開発のToposWareと資本提携した。

 21年4月には子会社のトライベックとビズオーシャンを合併した。トライベックのデジタルマーケティング事業とビズオーシャンのメディア・広告代理事業を融合して、総合型DXコンサルティング企業として幅広いサービスを提供する。

 21年6月には、税務・会計を中心としたコンテンツ提供や士業事務所の経営支援サービスを提供するKACHIEL(カチエル)と資本業務提携した。21年9月にはアナリティクス・コンサルティングサービスやAI開発・運用を行うセカンドサイト社と資本業務提携した。AIを軸としたDX分野の新製品・サービスの開発を目指す。22年2月には子会社DX Tokyoを設立した。全国の中小企業を対象にIT専門家シェアリング/サブスク事業を展開する。

■クラウドサービス・サブスクモデルへの変革と新規事業の確立を推進

 中期経営計画Vision2025(21年度~25年度)では、経営目標値として26年3月期売上高550億円、経常利益125億円、経常利益率22.7%、ROE20%超を掲げている。内訳は、単体ベース(ERP事業)が売上高360億円で経常利益75億円、グループ会社が売上高150億円で経常利益25億円、グループ新規事業(DX事業)が売上高50億円で経常利益25億円としている。

 基本戦略として会計事務所ネットワークno.1戦略、中堅・中小企業向け総合ソリューション・ビジネス戦略、統合型DXプラットフォーム戦略(新規事業領域)、クラウド・サブスク型ビジネスモデルへの転換、グループ連携強化によるグループ会社の独自成長促進、戦略実現を加速する人材力・経営基盤強化を推進する。

 単体ベース(ERP事業)では、クラウドサービスの拡充とサブスクリプション型収益モデルの比率を高めて、安定的な収益基盤の更なる強化を目指すとともに、価値創造を最大化する総合的なソリューションを展開する。グループ会社では、コンサルティング&技術力の発揮と、グループ再編による生産性の向上を目指す。

 グループ新規事業(DX事業)では、ERPソリューションとデジタルマーケティングを融合した新たな統合型DXプラットフォームを構築し、新たなコミュニケーション&クラウドサービスを展開する。グループとして提供する4つのDXプラットフォーム(マーケティングDX、ビジネスDX、オペレーティングDX、ファイナンスDX)をプラットフォーム上で同時に実現することで、デジタル化時代の中小企業・小規模事業者が抱える4つの経営課題(新規顧客開拓および顧客満足度・ロイヤルティ向上、フロントオフィス系のBtoB取引の効率化、バックオフィス系の管理業務の効率化、資金管理・資金調達)を解決するソリューションを目指す戦略だ。

 22年5月には、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に向けて、サステナビリティ基本方針の策定、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)の特定、サステナビリティ委員会の設置を発表した。サステナビリティ基本方針は、DX推進による地球環境への貢献、会計事務所と中小企業の経営革新や成長・発展を支援、多様なプロフェッショナル人材が活躍する働きがいのある職場づくり、健全成長のためのガバナンスの強化としている。

■社会全体のDXを推進

 なお社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指すことを目的として、SAPジャパン、オービックビジネスコンサルタント、ピー・シー・エー、ミロク情報サービス、弥生の5社で社会的システム・デジタル化研究会を発足し、20年6月には社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言を発表している。また下部組織として電子インボイス推進協議会(EIPA=エイパ)を20年7月に立ち上げている。

 20年12月には電子インボイス推進協議会が、23年10月の適格請求書等保存方式(インボイス制度)開始に向けて、日本の電子インボイス標準仕様を、電子文書をネットワーク上で授受するための国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠して策定することを決定したと発表している。

 22年6月には国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠した電子インボイスの送受信ならびにインボイスの電子化に対応するクラウドサービス「MJS e―Invoice」を22年9月から提供開始すると発表した。

■23年3月期営業・経常横ばい予想だが上振れの可能性

 23年3月期の連結業績予想は売上高が22年3月期比6.0%増の388億円、営業利益が0.2%増の48億円、経常利益が0.6%増の48億円、親会社株主帰属当期純利益が特別利益の剥落で35.8%減の29億円としている。配当予想は特別配当5円を落として22年3月期比5円減配の40円(期末一括)としている。

 品目別売上高は、フロー型のシステム導入契約売上高が2.3%増の207億71百万円(ハードウェアが1.9%増の31億70百万円、ソフトウェアが0.6%増の124億94百万円、ユースウェアが8.4%増の51億06百万円)、サービス収入が8.3%増の140億84百万円(ソフト使用料が40.2%増の38億94百万円、会計事務所向け総合保守サービスTVSが0.3%増の25億24百万円、企業向けソフト運用支援サービスが2.3%増の57億25百万円、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入が5.1%減の14億28百万円、サプライ・オフィス用品が15.7%減の5億11百万円)、その他(子会社等)が17.5%増の39億44百万円としている。

 第1四半期は、売上高が前年同期比11.1%増の97億16百万円、営業利益が60.0%増の15億03百万円、経常利益が64.6%増の15億33百万円、親会社株主帰属四半期純利益が67.4%増の9億65百万円だった。

 新ERPシステム「Galileopt DX」を中心に中堅・中小企業向けの主力ERP製品の売上が好調に推移した。さらに一部製品のサブスクリプション型へのシフトによってソフト使用料収入が大幅伸長するなど、ストック型収益の伸長も寄与して大幅増益だった。

 品目別売上高は、システム導入契約売上高が前年同期比11.5%増の54億86百万円(内訳はハードウェア売上高が1.4%減の8億31百万円、ソフトウェア売上高が14.7%増の32億51百万円、ユースウェア売上高が12.9%増の14億03百万円)で、サービス収入が10.4%増の34億45百万円(内訳は会計事務所向け総合保守サービスTVSが0.9%増の6億30百万円、ソフトウェア使用料収入が46.1%増の8億66百万円、企業向けソフトウェア運用支援サービス収入が3.8%増の14億29百万円、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入が0.0%減の3億75百万円、サプライ・オフィス用品が4.2%減の1億44百万円)だった。

 通期予想は据え置いている。前期低調だった関係会社の業績改善を見込むが、ソフトウェアの提供形態を売り切り型からサブスクリプション型へ徐々に移行することを勘案して単体ベースの売上を小幅増収(2.9%増収)予想にとどめ、さらに新製品発売によるソフトウェア資産償却負担増や積極採用による人件費増加など、先行投資も考慮して営業・経常利益は横ばい予想としている。

 ただし保守的だろう。通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高25.0%、営業利益31.3%、経常利益31.9%、親会社株主帰属当期純利益63.5%と高水準である。通期会社予想が上振れの可能性が高く、クラウドサービスの伸長や積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は戻り歩調

 なお22年8月には「JPX日経中小型株指数」の22年度構成銘柄として、21年度に続いて継続選定された。

 株価は戻り一服となったが、週足チャートで見ると13週移動平均線が26週移動平均線を上抜いて基調転換を確認した形となっている。自律調整一巡して上値を試す展開を期待したい。9月7日の終値は1474円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS97円13銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の40円で算出)は約2.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS743円26銭で算出)は約2.0倍、そして時価総額は約513億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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