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トーセは上値試す、22年8月期大幅増益予想、23年8月期も収益拡大基調
- 2022/9/8 09:17
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
トーセ<4728>(東証スタンダード)は家庭用ゲームソフト開発・制作請負の専業最大手である。成長戦略として開発体制の充実・強化、成長性の高い事業と様々なIPを活用した事業への取り組みなどを推進し、さらにメタバース関連にも進出する方針としている。22年8月期は大幅増益予想としている。家庭用ゲームソフト大型開発案件の順調な進捗などで利益率が回復傾向である。家庭用ゲームソフト関連が牽引し、積極的な事業展開で23年8月期も収益拡大基調だろう。株価は戻り一服の形となったが着実に下値を切り上げている。自律調整が一巡して上値を試す展開を期待したい。
■家庭用ゲームソフト開発・制作請負の専業最大手
家庭用ゲームソフト開発・制作請負の専業最大手で、デジタルエンタテインメント事業(ゲームソフト関連、モバイルコンテンツ関連、パチンコ・パチスロ関連などデジタルコンテンツの企画・開発・運営の受託)、その他事業(SI事業、家庭用カラオケ楽曲配信事業、新規事業の創出)を展開している。
21年8月期の売上高構成比はデジタルエンタテインメント事業が92%、その他事業が8%、営業利益構成比はデジタルエンタテインメント事業が84%、その他事業が16%だった。
収益は、開発業務の進行に合わせて受け取る開発売上、コンテンツ配信後の運営に伴う運営売上、コンテンツ販売数量に基づくロイヤリティ売上である。複雑化・多様化するゲーム市場において、豊富なパイプライン展開を可能とする多彩な技術ポートフォリオ、長年の実績とノウハウに基づく信用力、開発売上とストック型の運営売上を持つ安定的なビジネスモデルを特徴としている。
バンダイナムコスタジオと共同開発(21年6月発売)した家庭用ゲームソフトの「SCARLET NEXUS」については、21年11月にThe Game Awards 2021のBest Role Playing部門にノミネートされた。22年4月には世界累計出荷・ダウンロード販売本数が100万本、累計プレイヤー人数が200万人を突破した。さらに22年6月には国際ゲーム開発者協会(IGDA)主催のGlobal Industry Game Awardsの作曲部門にノミネートされた。
最近の開発実績としてはスクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジー ピクセルリマスター シリーズ」や、ブシロードのスマホアプリ「虹ケ咲学園スクールアイドル同好会 TOKIMEKI RunRuns」などがある。また22年7月には、スクウェア・エニックスが22年12月9日に発売を予定しているNintendo Switch向けゲームソフト「ドラゴンクエスト トレジャーズ 蒼き瞳と大空の羅針盤」を開発中とリリースしている。
■開発体制強化や成長性の高い事業への取り組み強化
成長戦略として大規模・高度化する開発に対応した開発体制の充実・強化、成長性の高い事業と様々なIPを活用した事業への取り組みを推進し、人事・教育・採用の改革も継続している。
大規模・高度化する開発に対応した開発体制の充実・強化では、各スタジオが獲得した開発技術やノウハウの全社展開、プロジェクト運営の品質向上、データ分析チームの強化を推進する。
成長性の高い事業と様々なIPを活用した事業への取り組みでは、ゲーム開発とビジネス系SIの技術の連携を強化して、デジタル社会に対応した新規事業やゲームに限らないエンタテインメント事業に挑戦する。
22年4月には、京都市、ANA NEO、およびANAホールディングス<9202>と、メタバース事業等に係る連携協定を締結した。4者で公民連携して京都市のメタバース関連の事業開発を推進する。
人事・教育・採用の改革では、職場環境整備や人材教育など積極的な人材投資を継続して実行する。
なお、こどもたちの命を守りたいと願う企業・団体が一体となり、京都のこどもの交通事故防止を目的に生まれた「京のこどもを守るプロジェクト」に協賛している。21年1月には令和2年度京都市輝く地域企業表彰「地域企業輝き賞」および「地域企業輝き特別賞」を受賞している。
■22年8月期大幅増益予想、23年8月期も収益拡大基調
22年8月期の連結業績予想(収益認識基準を適用だが、21年3月以降に進行していた大型案件については工事進行基準にて進捗に応じて収益を認識していたため、収益認識基準変更による22年8月期業績への影響なし)は、売上高が21年8月期比4.7%増の62億42百万円、営業利益が80.3%増の4億80百万円、経常利益が71.7%増の4億88百万円、親会社株主帰属当期純利益が93.0%増の2億86百万円としている。配当予想は21年8月期と同額の25円(第2四半期末12円50銭、期末12円50銭)としている。
第3四半期累計は売上高が前年同期比4.6%減の40億05百万円、営業利益が2.4倍の2億64百万円、経常利益が2.4倍の2億80百万円、親会社株主帰属四半期純利益が6.3倍の1億69百万円だった。
売上面では、モバイルコンテンツ関連における顧客都合による開発中止案件(スマートフォン向けゲーム案件)の発生、運営売上の減少(前期中に運営終了となったタイトルあり)などで全体として小幅減収だったが、利益面では、家庭用ゲームソフトの複数の大型開発案件の順調な進捗、前期発生した大規模改修費用の縮小、取引価格の改善、開発の合理化などで大幅増益だった。
デジタルエンタテインメント事業は売上高が2.6%減の37億20百万円、セグメント利益(営業利益)が2.7倍の1億84百万円だった。売上高の内訳は、ゲームソフト関連が家庭用ゲームソフトの複数の大型開発案件の順調な進捗で7.6%増の22億42百万円、モバイルコンテンツ関連が運営売上の減少で9.9%減の14億66百万円、パチンコ・パチスロ関連がゲームソフト関連やモバイルコンテンツ関連への開発人員シフトで88.7%減の12百万円だった。
その他事業は、売上高が25.2%減の2億84百万円、利益が2.0倍の80百万円だった。SI事業が自社の業務システム開発にシフトしているため減収だが、家庭用カラオケ楽曲配信事業のロイヤリティ売上が高水準に推移した。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が13億70百万円で営業利益が1億20百万円、第2四半期は売上高が12億68百万円で営業利益が24百万円、第3四半期は売上高が13億67百万円で営業利益が1億20百万円だった。
通期の連結業績予想は据え置いている。セグメント別売上高の計画は、デジタルエンタテインメント事業が7.2%増の58億70百万円(内訳はゲームソフト関連が28.7%増の41億11百万円、モバイルコンテンツ関連が19.1%減の17億46百万円、パチンコ・パチスロ関連が89.7%減の12百万円)で、その他事業が22.6%減の3億72百万円としている。その他事業は、家庭用カラオケ楽曲配信事業のロイヤリティ売上が堅調だが、新規事業模索の活動を進めるため減収見込みとしている。
第3四半期累計の進捗率は、売上高が64.2%、営業利益が55.1%、経常利益が57.4%、親会社株主帰属当期純利益が59.1%だった。やや低水準の形だが、家庭用ゲームソフトの複数の大型開発案件の順調な進捗などで第3四半期から利益率が回復傾向であり、第4四半期にはゲームソフト関連において当初想定していなかった開発案件の内容充実などで売上増加も見込んでいる。家庭用ゲームソフト関連が牽引し、積極的な事業展開で23年8月期も収益拡大基調だろう。
■株価は上値試す
株価は戻り一服の形となったが着実に下値を切り上げている。週足チャートで見ると13週移動平均線が支持線となっている。自律調整が一巡して上値を試す展開を期待したい。9月7日の終値は783円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS37円74銭で算出)は約21倍、前期推定配当利回り(会社予想の25円で算出)は約3.2%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS790円51銭で算出)は約1.0倍、そして時価総額は約61億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)