【アナリスト水田雅展の銘柄分析】翻訳センターはモミ合い上放れて強基調に転換、インバウンド関連として注目

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 翻訳センター<2483>(JQS)は翻訳・通訳事業を展開している。株価は長期モミ合いから上放れて強基調に転換する動きだ。インバウンド関連として注目され、16年3月期の増収増益基調も評価して続伸展開だろう。なお8月10日に第1四半期(4月~6月)の業績発表を予定している。

■企業向け翻訳サービス事業を主力に業容拡大

 特許・医薬・工業・法務・金融分野を中心として企業向け翻訳サービス事業を展開している。また業容拡大に向けて、12年9月に通訳・翻訳・国際会議運営のアイ・エス・エス(ISS)を子会社化、13年6月にアイタスからIT関連のローカライゼーション/マニュアル翻訳事業の一部譲り受けた。14年10月には医薬品承認申請・取得に関するメディカルライティング業務を専門に受託する子会社パナシアを設立した。

 主力の翻訳事業では専門性の高い産業翻訳に特化している。グループ全体で約6200名の登録者を確保し、対応可能言語は約70言語と国内最大規模である。また取引社数は4000社、年間受注件数は5万9000件に達している。

 企業のグローバル展開加速を背景として、翻訳サービスの需要は企業の知的財産権関連、新薬開発関連、新製品開発関連、海外展開関連、IR・ディスクロージャー関連を中心に拡大基調である。

■総合的な言語ソリューションを目指してM&A・アライアンスも積極化

 翻訳だけではなく、通訳、人材派遣、多言語コンタクトセンターなど総合的な言語ソリューションの提供を目指して、M&A・アライアンス戦略も積極化している。

 子会社のISSは国際会議運営の実績も豊富である。外国人旅行客の増加や20年東京夏季五輪開催も背景として、通訳や国際会議の需要増加が期待される。

 14年8月には、多言語対応コンタクトセンターサービスのディー・キュービックと、日本国内におけるマルチランゲージ・コンタクトセンターサービス(在日外国人を顧客とする企業や団体を対象とした通訳・翻訳サービス)に関して業務提携した。

 15年3月にはISSが100%所有する人材紹介事業のISSコンサルティングの全株式を、同社代表取締役関口真由美氏に譲渡すると発表した。協業関係は継続するとしている。

 15年4月には、ディー・キュービックの親会社キューアンドエーと合弁で新会社ランゲージワンを設立した。ディー・キュービックの多言語対応コンタクトセンターサービスを新会社ランゲージワンに移管し、センター運営およびサービスの強化を図る。

 6月19日には、通訳者・翻訳者教育事業を展開するアイ・エス・エス・インスティテュートが、インバウンド需要の増加に対応すべく、7月30日から電話通訳オペレーター養成講座を開設すると発表した。

 また7月15日には、米国の調査会社Commom Senese Advisory社が発表した「世界の語学サービス会社ランキング2015」において、4年連続でアジア1位にランクインしたと発表している。

■16年3月期は増収増益基調

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)21億08百万円、第2四半期(7月~9月)22億53百万円、第3四半期(10月~12月)23億07百万円、第4四半期(1月~3月)25億23百万円、営業利益は第1四半期16百万円、第2四半期1億38百万円、第3四半期1億31百万円、第4四半期2億19百万円だった。第4四半期の構成比が高い収益構造としている。

 また15年3月期の配当性向は28.5%だった。ROEは14年3月期比3.4ポイント上昇して10.4%、自己資本比率は同1.1ポイント低下して62.5%となった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月13日公表)は、売上高が前期比3.3%増の95億円、営業利益が同8.9%増の5億50百万円、経常利益が同9.4%増の5億50百万円、純利益が同13.0%増の3億20百万円としている。

 配当予想は同5円増配の年間53円(期末一括)としている。連続増配で予想配当性向は29.7%となる。主力の翻訳事業や通訳事業が好調に推移し、粗利率の改善も寄与して増収増益基調だろう。

■中期経営計画で18年3月期ROE10%以上目標

 15年5月に発表した第3次中期経営計画(16年3月期~18年3月期)では、目標数値に18年3月期売上高110億円、営業利益7億50百万円、純利益4億50百万円、ROE10%以上を掲げた。営業利益率については中期的に8%を目指すとしている。

 重点施策としては、顧客満足度向上のための分野特化戦略のさらなる推進、ビジネスプロセスの最適化による生産性向上、ランゲージサービスにおけるグループシナジーの最大化を推進する。需要は拡大基調であり、中期的に収益拡大基調だろう。

■株価はモミ合い上放れて強基調に転換、インバウンド関連を注目

 株価の動きを見ると、3500円近辺での長期モミ合い展開から上放れ、さらに4000円近辺での短期モミ合いから上放れて、7月27日の年初来高値5600円まで急伸した。その後は利益確定売りで一旦反落したが、インバウンド関連として注目度を高めているようだ。

 7月29日の終値4835円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS189円96銭で算出)は25~26倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間53円で算出)は1.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1671円18銭で算出)は2.9倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線に対するプラス乖離率が10%を超えて目先的な過熱感を強めているが、週足チャートで見ると長期モミ合いから上放れて、13週移動平均線と26週移動平均線が上向きに転じた。強基調に転換する動きだ。インバウンド関連として注目され、16年3月期の増収増益基調も評価して続伸展開だろう。

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