【アナリスト水田雅展の銘柄分析】東洋ドライルーブは6月高値から一旦反落したが、低PERと低PBRも評価して上値試す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 東洋ドライルーブ<4976>(JQS)はドライルーブ製品のコーティング加工事業を展開している。株価は6月25日の年初来高値1789円から全般地合い悪化も影響して一旦反落したが、徐々に水準を切り上げる流れに変化はないようだ。1桁台の低PER、0.4倍近辺の低PBRという指標面の割安感も評価して上値を試す展開だろう。

■ドライルーブ製品のコーティング加工が主力

 ドライルーブ(固体皮膜潤滑剤)製品のコーティング加工を主力として、その他事業ではナノカーボン製品の製造も展開している。海外は中国、タイ、ベトナムに展開している。

 ドライルーブとは二硫化モリブデン、フッ素樹脂、グラファイトなどの潤滑物質と各種特殊バインダーをハイブリッド配合し、各種溶剤または水に分散させた有機結合型の多機能皮膜である。

 ドライルーブでコーティング加工することにより各種素材の摩擦係数を大幅に低減できるなど、耐摩耗性に優れているため自動車機器、デジタル家電、デジタルカメラなどの駆動伝達部で、オイルやグリースなどの液体潤滑剤を使用できない部位にコーティング皮膜として使用される。

 中期成長に向けた事業戦略では新製品・新加工技術の開発、アジア地域を中心としたグローバル展開、海外連結子会社の生産性改善を積極推進する方針を掲げている。そして新製品では発熱皮膜、放熱皮膜、撥油皮膜、超撥水皮膜、DLC皮膜、LUBICKシリーズなどの開発を強化している。

■16年6月期は増収増益基調を期待

 前期(15年6月期)の連結業績予想(8月8日公表)は売上高が前々期比1.9%減の50億30百万円で、営業利益が同21.9%減の3億06百万円、経常利益が同9.1%減の3億68百万円、そして純利益が同17.9%減の2億47百万円としている。

 自動車機器業界向けは海外が底堅く推移するが、電気・電子機器業界向けがやや低調となり、利益面では販売価格引き下げ要請などが影響するとして、会社予想は減収減益見込みとしている。ただし為替差益を織り込んでいないため保守的な会社予想だ。

 第3四半期累計(7月~3月)は前年同期比9.2%減収で、営業利益は同33.7%減益だったが、経常利益は同34.1%増益、純利益は同51.4%増益だった。セグメント別売上はドライルーブ事業が同9.1%減収(自動車機器向けが同11.4%減収、光学機器向けが同6.2%減収、電子部品関連が同0.7%減収)で、その他事業が同29.9%減収だった。

 国内の消費増税反動による最終製品の在庫調整長期化の影響で減収営業減益だった。しかし海外が好調に推移して、売上高と営業利益は概ね計画水準だった。

 また経常利益と純利益は、為替差益の増加(同1億52百万円増加の1億77百万円)や、持分法投資損益の改善(前年同期の持分法投資損失6百万円から持分法投資利益66百万円に改善)が寄与して、計画を上回る大幅増益だった。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(7月~9月)12億08百万円、第2四半期(10月~12月)12億07百万円、第3四半期(1月~3月)11億99百万円で、営業利益は第1四半期81百万円、第2四半期70百万円、第3四半期72百万円だった。

 そして通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高71.9%、営業利益72.9%、経常利益127.2%、純利益117.4%である。売上高と営業利益は概ね順調な水準で、経常利益と純利益は為替差益や持分法投資損益改善が寄与して通期会社予想を超過達成している。

 通期ベースでも海外が好調に推移し、国内も期後半には自動車関連を中心に生産増加が期待される。コスト低減効果も寄与する。そしてドル高・円安進行を考慮すれば通期ベースでも為替差益が期待される。

 さらに今期(16年6月期)は、自動車機器業界や電気・電子機器業界の生産が増加傾向を強めて増収増益基調が期待される。

 なお15年6月期の配当予想については6月16日に増額修正を発表した。前回予想(8月8日公表)に対して期末2円増額して年間32円(第2四半期末15円、期末17円)とする。予想配当性向は17.2%となる。前期との比較でも2円増配となる。

 配当方針については、経営体質を強化するための必要な内部留保と成果配分のバランスを勘案したうえで、安定的な配当を継続していくことを基本方針としている。

■株価は水準切り上げの流れに変化なし

 なお5月18日に、コーポレート・ガバナンスの一層の充実の観点から、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行すると発表した。9月25日開催予定の第53回定時株主総会に付議する。

 株価の動きを見ると、6月25日の年初来高値1789円から全般地合い悪化も影響して一旦反落したが、大きく下押す動きは見られない。徐々に水準を切り上げる流れに変化はないようだ。

 7月29日の終値1672円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS186円55銭で算出)は9倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間32円で算出)は1.9%近辺、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS4276円42銭で算出)は0.4倍近辺である。

 週足チャートで見ると、6月高値からの反落局面では26週移動平均線が下値を支えている。また徐々に下値を切り上げて1500円~1700円近辺のボックスレンジから上放れる動きも見せている。1桁台の低PER、0.4倍近辺の低PBRという指標面の割安感も評価して上値を試す展開だろう。

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