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巴工業は上値試す、22年10月期2桁増益予想、さらに再上振れの可能性
- 2022/9/26 09:16
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
巴工業<6309>(東証プライム)は遠心分離機械などの機械製造販売事業、および合成樹脂などの化学工業製品販売事業を展開し、成長戦略として海外事業拡大などを推進している。22年10月期は化学工業製品販売事業の好調が牽引して2桁増益予想(9月2日付で上方修正)としている。さらに再上振れの可能性もあり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は好業績を評価して年初来高値を更新する場面があった。その後は利益確定売りが一旦優勢になったが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。21年の高値を突破すれば06年の上場来高値が視野に入るだろう。
■機械製造販売事業と化学工業製品販売事業を展開
遠心分離機械などを中心とする機械製造販売事業、および合成樹脂や化学工業薬品などを中心とする化学工業製品販売事業を展開している。
21年10月期のセグメント別売上構成比は、機械製造販売事業が27%(機械が8%、装置・工事が3%、部品・修理が16%)で、化学工業製品販売事業が73%(合成樹脂関連が19%、工業材料関連が21%、化成品関連が16%、機能材料関連が8%、電子材料関連が9%、その他が1%)だった。営業利益構成比は機械製造販売事業が31%、化学工業製品販売事業が69%だった。22年10月期より化学工業製品事業の工業材料関連から新たに鉱産関連を分離して表示する。
欧州市場における各種化学工業製品の卸売を展開する100%子会社として、22年4月にはTOMOE Advanced Materilsを設立した。
収益面の特性として、機械製造販売事業は設備投資関連のため、第2四半期(2月~4月)および第4四半期(8月~10月)の構成比が高い傾向がある。
■22年10月期営業利益26億円目標
中期経営計画(第12回中期経営計画Change For The Future)では目標値として、22年10月期の売上高490億円(機械140億円、化学品350億円)、営業利益26億円(機械9億円、化学品17億円)、経常利益26億円、EBITDA30億円、純利益17億円、ROE(純資産利益率)5.7%を掲げている。
重点施策として、海外事業拡大の継続、さらなる収益性向上、環境負荷軽減、資本効率改善、成長に向けた積極投資、働き甲斐のある職場環境の構築と人材育成、SDGsへの取り組み強化を推進する方針だ。
21年7月には、AIが自律的に遠心分離機の運転制御を行う新しいデカンタ自動運転制御システム「セントニオ(CentNIO)」の販売を開始した。
なお22年4月にはサステナビリティ経営推進基本方針に基づき、脱炭素・循環型社会の実現に向けて主力のサガミ工場(神奈川県大和市)で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力に切り替えた。
■22年10月期3Q累計小幅営業・経常増益、通期2桁増益予想
22年10月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため売上高の増減率は非掲載、利益への影響軽微、22年9月2日付で上方修正)は、売上高が451億50百万円、営業利益が21年10月期比10.8%増の31億50百万円、経常利益が11.2%増の32億30百万円、親会社株主帰属当期純利益が19.0%増の25億10百万円としている。配当予想(22年9月2日付で期末3円上方修正)は21年10月期比3円増配の53円(第2四半期末25円、期末28円)としている。
第3四半期累計は、売上高が327億46百万円、営業利益が前年同期比1.9%増の22億30百万円、経常利益が4.7%増の23億40百万円だった。機械製造販売事業がやや低調だったが、化学工業製品販売事業の好調が牽引し、全体として小幅営業・経常増益だった。親会社株主帰属四半期純利益は特別利益(固定資産売却益4億60百万円)を計上して14.5%増の19億13百万円だった。
収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が50億98百万円減少、売上原価が50億91百万円減少、営業利益が6百万円減少、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ0百万円増加している。
機械製造販売事業は、売上高が75億44百万円(収益認識会計基準適用の影響額として1億18百万円減少、旧基準ベースでは前年同期比16.9%減の76億63百万円)で、営業利益が36.9%減の4億09百万円だった。国内官需向け部品・修理や海外向け機械・部品・修理が低調だった。
化学工業製品販売は売上高が252億02百万円(収益認識会計基準適用の影響額として49億79百万円減少、旧基準ベースでは前年同期比37.9%増の301億81百万円)で、営業利益が18.1%増の18億21百万円だった。工業材料関連および鉱産関連の建材・耐火物用途向けを中心とした材料、化成品関連の塗料・インキ用途向けの材料、電子材料関連の半導体製造用途向け材料を中心に、全分野が伸長した。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が99億60百万円で営業利益が5億28百万円、第2四半期は売上高が120億12百万円で営業利益が12億74百万円、第3四半期は売上高が107億74百万円で営業利益が4億28百万円だった。なお機械製造販売事業は設備投資関連のため、第2四半期(2月~4月)および第4四半期(8月~10月)の構成比が高い傾向がある。
通期は従来の減益予想から一転して増益予想としている。従来予想に対して、売上高を55億円、営業利益を7億60百万円、経常利益を8億30百万円、親会社株主帰属当期純利益を5億50百万円、それぞれ上方修正した。売上高は、機械製造販売事業が海外向けの一部案件繰り延べなどで従来予想(128億円)を12.5億円下回るが、化学工業製品販売事業は好調に推移して従来予想(265億80百万円)を67.5億円上回る見込みだ。利益面は化学工業製品販売事業の好調が牽引する。
22年10月期は第12回中期経営計画の最終年度にあたり、世界経済の緩やかな回復を想定し、海外ビジネス拡大を推進する方針としている。第3四半期累計の進捗率は売上高が72.5%、営業利益が70.8%、経常利益が72.4%、親会社株主帰属当期純利益が76.2%である。第4四半期の構成比が高い傾向があることを勘案すれば、通期会社予想はさらに再上振れの可能性もあり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は10月末の株主対象
株主優待制度は、毎年10月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して、ワイン(当社関連会社取扱商品)1本を贈呈する。
■株価は上値試す、06年の上場来高値も視野
株価は好業績を評価して年初来高値を更新する場面があった。その後は利益確定売りが一旦優勢になったが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。21年の高値を突破すれば06年の上場来高値が視野に入るだろう。9月22日の終値は2492円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS251円55銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の53円で算出)は約2.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3191円07銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約262億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)