クレスコは売られ過ぎ感、23年3月期増収増益予想、さらに上振れの可能性

 クレスコ<4674>(東証プライム)は独立系のシステムインテグレータで、ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力としている。成長戦略として顧客のDXを実現するデジタルソリューションも強化している。23年3月期は増収増益予想としている。不透明感を考慮して小幅増益にとどまる予想としているが、企業のDX投資は高水準に推移する見込みであり、第1四半期が順調だったことも勘案すれば通期予想は上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新したが売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。なお11月7日に23年3月期第2四半期決算発表を予定している。

■ITサービスを主力としてデジタルソリューションも強化

 独立系のシステムインテグレータで、ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力としている。さらに成長戦略として顧客のDXを実現するデジタルソリューションも強化している。

 セグメント区分(22年3月期から変更)は、ITサービス(エンタープライズ、金融、製造の各分野のコンサルティング・開発・保守の総合サービス)と、デジタルソリューション(自社製品Creage、インテリジェントフォルダなど、顧客のDXを実現する製品・サービスからなるソリューション群)としている。

 22年3月期セグメント別構成比は、売上高がITサービス事業95%(エンタープライズ41%、金融31%、製造23%)、デジタルソリューション事業5%、セグメント利益構成比(全社費用等調整前)がITサービス事業98%(エンタープライズ38%、金融29%、製造30%)、デジタルソリューション事業2%だった。

 収益面では案件別の採算性が影響し、企業のIT投資関連のため年度末にあたる第4四半期の構成比が高くなる特性がある。配当方針は、連結経常利益をもとに特別損益を零とした場合に算出される親会社株主帰属当期純利益の30%相当を目途に、継続的に実現することを目指すとしている。

■働き方改革や健康経営を推進

 中期経営計画では24年3月期の目標値として売上高500億円、営業利益50億円、ROE15%以上を掲げている。新たなビジネスの柱を生み出すための重点戦略として、デジタルソリューションの強化、機動的経営の進化、人間中心経営の深化、コアビジネス領域をより強固なものにするための基本戦略として、ITサービスの拡大、品質の強化、技術の強化を推進している。なお22年4月から第2創業期として会社ロゴを変更した。

 20年9月には社内デジタル変革(DX)を加速させるため「ニューノーマルな働き方」に舵を切ると発表した。テレワーク体制を強化して社員の生産性向上を目指すとともに、本社や開発センターのオフィススペースの最適化、在宅勤務手当新設や通勤手当見直しなどにより、コスト削減も推進する。

 健康経営関連では、21年6月に新型コロナウイルス感染症に係る支援(1億円の寄付)が評価されて日本赤十字社から「金色有功章」の楯を拝受した。21年11月には、働き方改革を通じて生産性革命に挑む先進企業を選定する日本経済新聞社「第5回 日経スマートワーク経営調査」で3つ星の評価を獲得した。22年3月には、経済産業省が共同で主催する健康経営優良法人認定制度に基づく「健康経営優良法人2022」に選定された。22年4月には、株式会社ワーク・ライフバランスが主催する「男性育休100%宣言」に賛同すると発表した。22年6月には、さらなる健康経営の促進に向けて、社員642名に「健康増進手当」を初支給した。9月16日にはスポーツ庁「FUN+WALK PROJECT」に参画したとリリースしている。

 社会貢献関連では、22年7月に公益社団法人計測自動制御学会システムインテグレーション部門とソニーセミコンダクターソリューションズが主催する「Sensing Solution アイデアソン・ハッカソン 2022」に協賛しているとリリースしている。また9月26日には、一般社団法人全国高等専門学校連合会主催の「第33回 全国高等専門学校プログラミングコンテスト」に協賛しているとリリースしている。今後も、さまざまな活動を通じて社会の発展に貢献する方針だ。

■M&Aや自社オリジナル製品でデジタルソリューションを拡大

 デジタルソリューション拡大に向けてM&A・アライアンスも積極活用している。20年2月には北海道大学公認AIベンチャーの調和技研と資本業務提携、20年4月にはシステムインテグレータのエニシアスを子会社化、21年7月には組込型ソフトウェア開発に強みを持つOECを子会社化した。

 子会社再編では、22年5月1日付でクリエイティブジャパンの商号をクレスコ・デジタルテクノロジーズに変更した。また22年7月1日付で子会社のアルスが、子会社のエヌシステムおよびネクサスを吸収合併し、商号をクレスコ・ジェイキューブに変更した。3社のノウハウおよびリソースを統合してビジネスの拡大を推進する。

 オリジナル製品・サービスでは、IoTのKEYAKI、AIのMinervae、クラウドのCreageを3大ブランドと定義し、ソフトウェア開発・システム開発の需要喚起を推進している。21年7月にはCreageをマイクロソフトのAzure対応にバージョンアップした。

 21年8月には、東京都教育委員会および一般財団法人東京学校支援機構(TEPRO)と協定を締結して、都内の公立小中学校のデジタル活用支援に参画(22年1月~3月)した。また、画像処理AI学習データ作成時のアノテーション(データに対して関連する情報を付加すること)作業負荷を軽減する手法の特許を取得した。

 21年9月には、子会社のクリエイティブジャパンが、大学・高専・研究所での研究・開発用として、低価格の「ELTRESアドオンIoT開発キット」の提供を開始した。コロナ過で厳しい研究・教育環境への貢献でIoT普及を推進する。

 21年12月には、日本眼科AI学会主催「第2回日本眼科AI学会総会」内のプログラム「眼科AIコンテスト」において、同社技術研究所に所属する社員2名が上位入賞した。

 22年4月にはUiPath社の認定リセラー「ゴールドパートナー」に認定された。UiPath製品の教育・トレーニングにおいても豊富な実績と評価の高いコンテンツを有している。

 22年8月には、サイバー攻撃の兆候を検知・分析し、その情報をもとに専門家による対策支援を提供するサービス「マネージドセキュリティサービス for SIEM」の販売を開始した。

■23年3月期増収増益予想、さらに上振れの可能性

 23年3月期の連結業績予想は売上高が22年3月期比6.9%増の475億円、営業利益が6.6%増の47億50百万円、経常利益が7.7%増の51億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が3.5%増の33億50百万円としている。配当予想は22年3月期比2円増配の46円(第2四半期末23円、期末23円)としている。

 第1四半期は、売上高が前年同期比15.3%増の113億81百万円、営業利益が11.6%増の8億91百万円、経常利益が36.2%減の5億63百万円、親会社株主帰属四半期純利益が54.4%減の3億20百万円だった。営業外費用でのデリバティブ評価損4億84百万円の計上や、特別損失でのコーポレートロゴ変更費用1億12百万円の計上などで経常・最終大幅減益だったが、需要が高水準に推移して2桁増収・2桁営業増益と順調だった。

 ITサービス事業は売上高が14.5%増の108億63百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が14.9%増の13億05百万円だった。

 このうちエンタープライズ区分は売上高が2.1%減の41億91百万円、営業利益が7.4%減の4億51百万円だった。人材紹介・人材派遣分野や運輸分野での大型案件収束、一部不採算案件発生などが影響した。金融区分は売上高が21.3%増の36億54百万円、営業利益が20.1%増の4億16百万円だった。銀行・保険分野での基盤構築・移行案件の増加に加えて、証券・カード等分野でも案件が増加した。製造区分は売上高が37.7%増の30億17百万円、営業利益が44.9%増の4億38百万円だった。機械・エレクトロニクス分野や自動車・輸送機器分野での新規顧客からの受注、21年7月1日付でOECを子会社化した新規連結効果に加えて、前期に子会社で発生した不採算案件が解消したことも寄与した。

 デジタルソリューション事業は、売上高が34.1%増の5億18百万円、営業利益が8.0倍の11百万円だった。クラウドサービス「Creage」やRPAライセンス販売が増加した。

 通期予想は据え置いている。引き続き受注が好調に推移して増収増益・連続増配予想としている。不透明感を考慮して小幅増益にとどまる予想としているが保守的だろう。企業のDX投資は高水準に推移する見込みであり、第1四半期が順調だったことも勘案すれば通期予想は上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は売られ過ぎ感

 株価は第1四半期決算発表を機に年初来高値圏から急反落し、さらに地合い悪化も影響して年初来安値を更新したが売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。9月26日の終値は1642円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS159円22銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の46円で算出)は約2.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1051円97銭で算出)は約1.6倍、そして時価総額は約378億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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