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カナモトは調整一巡、23年10月期収益拡大期待
- 2022/9/30 08:58
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
カナモト<9678>(東証プライム)は建設機械レンタルの大手である。成長に向けた重点施策として国内営業基盤拡充、海外展開、内部オペレーション最適化によるレンタルビジネスの収益力向上を推進している。また環境対策機への資産シフトなどによってサステナビリティへの取り組みも強化している。22年10月期は建設機械レンタル需要の本格回復が遅れ、先行投資も影響して減益予想だが、災害復旧・防減災・老朽化インフラ更新など国土強靭化関連工事で需要が堅調であり、23年10月期の収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化も影響して戻り一服の形だが、大きく下押す動きも見られない。指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。
■建設機械レンタルの大手
建設機械レンタルの大手で、海外向け中古建設機械販売、土木・建築工事用鉄鋼製品販売、IT機器・イベント関連レンタル、福祉用具レンタルなども展開している。M&Aも活用し、北海道を地盤として全国展開と業容拡大を加速している。
21年10月期の売上高構成比は建設関連事業が90.3%、その他(鉄鋼関連事業、情報通信関連事業、福祉関連事業など)が9.7%、営業利益構成比(連結調整前)は建設関連事業が92.2%、その他が7.8%だった。なお22年4月末時点の営業拠点数は単体ベース215拠点、グループ合計541拠点となっている。海外は7ヶ国に拠点展開している。
21年4月には子会社アシストが、19年12月に子会社化した什器備品・ウォーターサーバーレンタルのコムサプライを吸収合併した。21年5月にはシステムソリューション商社の岩崎(札幌市)と業務提携した。21年9月には子会社のニシケンが子会社の九州建産を吸収合併した。22年6月には道東・道北を中心に建設機械レンタル・販売を行う子会社のサンワ機械リース(18年8月子会社化)を吸収合併した。
なお子会社のNEK(岩手県奥州市)は、22年6月30日付でセントラル(岩手県奥州市)から建設機械等リース・レンタル・販売事業を譲り受け、22年7月1日付で社名をセントラルに変更して事業開始した。
収益面では建設工事の影響を受けやすく、売上高が第4四半期(8~10月)から第1四半期(11月~1月)にかけてピークとなり、第2四半期(2~4月)および第3四半期(5~7月)は減少する季節特性がある。なお収益認識会計基準適用に伴って建設機械等レンタル基本約款の改定を行い、21年11月から売上認識の始点を従来の出荷日基準から引渡日基準に変更した。
■中期経営計画で24年10月期営業利益230億円目標
中期経営計画「Creative 60」では、目標値として24年10月期売上高2280億円、営業利益230億円、営業利益率10.1%などを掲げ、重点施策として国内営業基盤拡充、海外展開、内部オペレーション最適化によるレンタルビジネスの収益力向上を推進している。
国内営業基盤拡充では、グループ総力を結集して既存エリアの深掘り、未進出エリア・低シェア領域の開拓、非建設分野への進出を推進している。さらに今後の強化分野として、維持補修分野への参入強化、再生可能エネルギー分野への参入強化、ICT・IoTソリューションの開発、地方再強化などを推進する。
海外展開では、海外戦略2.0(Next Generation)へのバージョンアップによって、グローバルポートフォリオの最適化、カナモト版グローバルプラットフォームの確立、ノンオーガニック戦略(海外でのM&Aの取り組み)、海外売上比率10%への布石を推進している。
内部オペレーション最適化では、レンタルビジネスの収益性向上に向けた営業戦略とITの融合、商品企画・研究開発への資源投資、工事現場に必要な技術・システムの開発、業務効率向上、原価コントロール、長期的な安定稼働、人財の確保・育成などを推進している。
また環境対策機への資産シフトなどによって、サステナビリティへの取り組みも強化している。21年7月には、ESG経営に基づくガバナンス強化に向けて、金融安定理事会(FSB)によって設置された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明するとともに、TCFDコンソーシアムに参画した。21年12月には自社HPにサステナビリティページを開設した。
■22年10月期減益予想だが23年10月期収益拡大期待
22年10月期連結業績予想(収益認識会計基準適用のため売上高の前期比増減率非記載、利益への影響軽微、9月2日付で下方修正)は、売上高が1869億円、営業利益が21年10月期比7.7%減の135億円、経常利益が9.0%減の140億円、親会社株主帰属当期純利益が3.4%減の86億円としている。配当予想は5円増配の75円(第2四半期末35円、期末40円)としている。
前回予想に対して売上高は42億円、営業利益は21億円、経常利益は18億円、親会社株主帰属当期純利益は11億円、それぞれ下回る見込みとなった。建設機械レンタル需要の本格回復が遅れ、先行投資も影響する見込みだ。
第3四半期累計は売上高が1388億28百万円、営業利益が15.2%減の91億62百万円、経常利益が15.6%減の96億79百万円、親会社株主帰属四半期純利益が13.2%減の59億27百万円だった。
収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が27億92百万円減少、売上原価が27億91百万円減少、営業利益、経常利益および税金等調整前四半期純利益がそれぞれ0百万円減少している。収益認識会計基準適用前の前年同期の売上高は1414億55百万円だった。公共投資が堅調に推移したが、建設需要の地域間格差が一部で顕在化し、建設機械レンタル需要の本格回復が遅れた。さらに将来を見据えた人材投資など積極的な先行投資で販管費が増加したため減益だった。
建設関連事業は売上高が1258億79百万円で営業利益が17.7%減の79億29百万円だった。中古建機販売はレンタル用資産の運用期間延長を進めているため16.0%減収だった。その他事業は、鉄鋼関連、情報関連、福祉関連とも堅調に推移して、売上高が129億49百万円で営業利益が4.4%増の8億65百万円だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高467億30百万円で営業利益33億11百万円、第2四半期は売上高469億85百万円で営業利益37億87百万円、第3四半期は売上高451億13百万円で営業利益20億64百万円だった。なお季節要因として、売上高は第4四半期(8~10月)から第1四半期(11月~1月)にかけてピークとなり、第2四半期(2~4月)および第3四半期(5~7月)は減少する傾向がある。
22年10月期は下方修正して減益予想となったが、災害復旧・防減災・老朽化インフラ更新など国土強靭化関連工事で需要が堅調であり、23年10月期の収益拡大を期待したい。
■株主優待制度は毎年10月末対象、優待内容を変更
株主優待制度は毎年10月末時点の株主を対象として実施(詳細は会社HP参照)している。なお22年10月末対象から、保有株式数および継続保有期間に応じて優待品(北海道商品)を贈呈する方法に変更する。
■株価は調整一巡
株価は地合い悪化も影響して戻り一服の形だが、大きく下押す動きも見られない。指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。9月29日の終値は2074円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS231円07銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想の75円で算出)は約3.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3357円10銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約804億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)