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ジャパンフーズは売られ過ぎ感、23年3月期最終大幅増益予想、低PBRも見直し材料
- 2022/9/30 08:54
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ジャパンフーズ<2599>(東証スタンダード)は飲料受託製造の国内最大手である。成長戦略として品質・生産性の向上、新製品の積極受注、新たな販売領域の創出などで収益の最大化と財務体質の改善を図るとともに、環境・人権に配慮したSDGs目標の設定と達成により、経済価値と社会価値を両立させた「100年企業」を目指している。23年3月期は営業・経常黒字転換、最終大幅増益予想としている。第2四半期以降は猛暑も背景として受託製造数が増加基調であり、低重心経営による生産性向上も寄与する見込みだ。積極的な事業展開で収益改善基調だろう。株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新する展開だが、売られ過ぎ感を強めている。低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。
■飲料受託生産の国内最大手
伊藤忠商事<8001>系で、飲料受託製造の国内最大手である。主要得意先はサントリー食品インターナショナル<2587>、伊藤園<2593>、アサヒ飲料などの大手飲料メーカーである。品目別では炭酸飲料と茶系飲料、容器別ではペットボトル飲料を主力としている。
新規ビジネス分野として、連結子会社のJFウォーターサービスが水宅配・ウォーターサーバーメンテナンス事業を展開している。また国内で水宅配フランチャイズ事業を展開するウォーターネット、および中国で清涼飲料受託製造事業を展開する東洋飲料(東洋製罐と合弁)を持分法適用関連会社としている。
収益面の特性として個人消費や天候などの影響を受けやすい。また飲料業界全体において、夏場の上期(4~9月)は繁忙期となって生産量が増加するのに対して、冬場の下期(10~3月)は閑散期となって生産量が減少する。このため同社も下期は生産量減少で営業損益が赤字となる収益構造だ。
本社工場の炭酸・非炭酸兼用無菌充填ラインは、市場環境や顧客ニーズの変化に対応したフレキシブルで効率的な生産体制が強みだ。飲料受託生産の最大手として、高品質でフレキシブルな生産対応が可能な強みを発揮している。
■飲料受託生産の役割や存在感が一段と高まる
飲料業界全体が天候の影響を受けやすいことに加えて、大手飲料メーカーの再編や内製拡大による受託製造量減少を懸念する見方もあるが、夏場の繁忙期と冬場の閑散期という季節間の需要格差が大きい業界のため、大手飲料メーカーにとって内製拡大は設備投資や固定費負担の面でリスクが大きい。
また飲料メーカーは経営効率化の観点からも、経営資源の重点をマーケティング分野にシフトする動きを強めている。このため飲料受託生産の役割や存在感が一段と高まっている。
■経済価値と社会価値を両立させた「100年企業」目指す
21年12月に中長期経営目標を公表し、5年後目途の定量目標値として営業利益10億円、経常利益14億円、当期純利益10億円(単体/コア7億円、事業取込等3億円)、株主資本比率50%以上、ROE10%以上、営業キャッシュ・フロー30億円、1株当たり配当金52円、連結配当性向25.0%などを掲げた。
そして22年5月に公表した新・中期経営計画「JUMP+++2024 品質経営とサステナビリティ」(23年3月期~25年3月期)では、主要経営目標値を最終年度25年3月期売上高109億円、営業利益7億円、経常利益9億50百万円、当期純利益7億50百万円(単体/コア4億50百万円、事業取込等3億円)、株主資本比率45%、ROE9.3%、営業キャッシュ・フロー26億円を掲げている。配当に関しては安定配当27円を継続する方針としている。
品質・生産性の向上、新製品の積極受注、新たな販売領域の創出などで収益の最大化と財務体質の改善を図るとともに、環境・人権に配慮したSDGs目標の設定と達成により、経済価値と社会価値を両立させた「100年企業」を目指すとしている。
基本方針には、2つのセグメントの継続成長(コアセグメント=本社工場、新規セグメント=事業会社および新ビジネス)、環境配慮・SDGsへの貢献と持続可能な総合S&B(スクラップ&ビルド)計画の実行、人材の更なる活性化(最適配置、育成強化)、キャッシュ・フロー極大化と財務体質の改善を掲げている。
品質経営に関しては、前・中期経営計画で推進してきた「ふかけ(ふ=防ぐ、け=削る、か=稼ぐ)」の更なる進化に取り組み、製品・サービスと業務プロセスの品質強化を推進する。
コアセグメントに関しては、日本最大級の製造能力を誇る生産面の強みを活かすとともに、更なる品質の向上、生産性の向上およびサステナビリティへの取り組みによる「ものづくり」の付加価値創出を推進する。新規セグメントに関しては、連結子会社および持分法適用会社の業績伸長を目指すとともに、新たなビジネスとして東南アジアでの技術支援やアルコールビジネスなども検討する方針だ。
サステナビリティに関しては、気候変動(脱炭素)関連での温室効果ガス排出量削減2013年比▲30%や、人権尊重関連での女性管理職割合13%などの目標を掲げている。
■23年3月期最終大幅増益予想
23年3月期連結業績予想は売上高が22年3月期比9.6%増の105億円、営業利益が4億円の黒字(22年3月期は3億87百万円の赤字)、経常利益が5億50百万円の黒字(同1億71百万円の赤字)、親会社株主帰属当期純利益が26.3%増の4億50百万円(単体/コアが1億63百万円増加の2億70百万円、事業取込利益等が69百万円減少の1億80百万円)としている。配当予想は22年3月期と同額の27円(第2四半期末10円、期末17円)としている。
前期計上の一過性利益(特別利益に投資有価証券売却益3億16百万円、固定資産撤去費用引当金戻入額4億35百万円を計上)の反動はあるが、コロナ禍の影響が和らぎ、新営業戦略による受注の増加(営業利益4億90百万円増益要因)、生産性向上や減価償却費減少(営業利益90百万円増益要因)などで営業・経常黒字転換、最終大幅増益予想としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比10.2%減の27億97百万円、営業利益が36.7%減の3億47百万円、経常利益が32.8%減の3億88百万円、親会社株主帰属四半期純利益が31.3%減の2億87百万円だった。なお純利益(前年同期比▲1億30百万円)の増減分析は、受注減少で▲1億10百万円、エネルギーコスト上昇で▲1億40百万円、生産性向上・コスト改善で+1億00百万円、事業取込利益で+20百万円だった。
国内飲料受託製造事業は受託製造数が減少(7.6%減の1106.9万ケース)した。期前半(特に4月)にコロナ禍の影響が残った。セグメント利益(調整前経常利益)は38.1%減の3億32百万円だった。受注減少に加えて、エネルギーコストが想定以上に高騰し、生産性向上・コスト改善効果でカバーできなかった。海外飲料受託製造事業(中国の持分法適用会社、連結対象期間22年1月~3月期)の利益は全般的に好調に推移して38.9%増の48百万円、その他事業(水宅配事業および水宅配フランチャイズ事業)の利益は価格改定も寄与して37.3%増の8百万円だった。
通期予想は据え置いている。受託製造数は14.0%増の4150.0万ケースの計画としている。純利益(22年3月期比+94百万円)の増減分析は、前期の一過性利益(特別利益)の反動減で▲4億10百万円、受注増加で+4億90百万円、生産性向上・コスト改善で+90百万円、事業取込利益で▲70百万円の計画としている。第1四半期は受託製造数の減少や想定以上のエネルギーコスト上昇などで減収減益だったが、第2四半期以降は猛暑も背景として受託製造数が増加基調であり、低重心経営による生産性向上も寄与する見込みだ。積極的な事業展開で収益改善基調だろう。
■株主優待制度は毎年3月末の株主対象
株主優待制度は、毎年3月31日時点の1単元(100株)以上所有株主を対象として、自社製品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は売られ過ぎ感
株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新する展開だが、売られ過ぎ感を強めている。低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。9月29日の終値は1095円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS93円31銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の27円で算出)は約2.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1511円93銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約56億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)