【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本エンタープライズは調整の最終局面、16年5月期の収益改善基調を評価して反発期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 日本エンタープライズ<4829>(東1)はコンテンツ制作・配信や店頭アフィリエイト広告ビジネスなどを展開している。株価は動意付く場面もあるが買いが続かず年初来安値圏の330円~340円近辺でモミ合う展開だ。ただし下値も限定的で調整の最終局面のようだ。16年5月期の収益改善基調を評価して反発展開が期待される。

■コンテンツサービス事業とソリューション事業を展開

 交通情報、ライフスタイル、電子書籍、ゲーム、メール、音楽などのコンテンツを制作してキャリアの定額制サービスで配信するコンテンツサービス事業と、店頭アフィリエイト(広告販売)や企業向けソリューション(システム受託開発)などのソリューション事業を展開している。

 また中国では、チャイナテレコムの携帯電話販売店運営と電子コミック配信サービスを手掛けている。中国・上海の携帯電話販売事業については、キャリアの販売施策変更に影響されない収益構造構築を目指し、大口法人への営業強化、付属品販売強化、徹底的なコスト削減などの収益改善策を推進している。

■ネイティブアプリと法人向け業務支援サービスを収益柱に育成方針

 配信コンテンツを自社制作して「権利を自社保有する」ビジネスモデルを基本戦略としている。そしてアライアンスも活用して事業領域を広げ、ネイティブアプリや法人向け業務支援サービスを新たな収益柱に育成する方針だ。

 ネイティブアプリの開発力強化、ゲームコンテンツ市場への本格参入、法人向け業務支援サービスの早期収益化に向けて、13年3月に音声通信関連ソフトウェア開発のandOneを子会社化、14年4月に子会社HighLabを設立、14年11月にアプリ開発の会津ラボを子会社化した。

 コンテンツ配信のグローバル展開では14年6月、インドネシア大手移動体通信キャリアのXL Axiata社が運営するアプリストア内のアプリ取り放題サービス向けに、スマートフォンアプリの提供を開始した。ローカライズした自社アプリを世界の各種プラットフォームに配信し、自社コンテンツ資産の2次利用を推進する戦略だ。

 法人向け事業では14年8月、スマートフォンを活用して企業の内線電話網を構築するアプリケーション「AplosOneソフトフォン」を開発した。従業員のデスク上のビジネスフォン(固定電話)が不要となり、スマートフォンを内線電話として使用できるアプリケーションだ。14年10月にはビジネス専用メッセンジャーアプリ「BizTalk」を発表した。

 子会社HighLabは、15年3月パズルゲーム「ハニープラス」および旦那育成ゲーム「ウチの旦那はイケてない」配信、15年5月戦うネズミのシューティングゲーム「PasteLius(パステリウス)」配信、美少女キャラクターと対局するスマートフォン向け麻雀ゲームアプリ「爽快麻雀!イーシャンテン」配信を開始した。15年6月には新機能「お絵かき通話」を搭載したスマートフォン向け無料チャットアプリ「Fivetalk」最新版を公開した。

 15年4月には集英社コミック約1700作品・8800冊を、スマートフォン・タブレット向け総合電子書籍サービス「BOOKSMART」にて配信開始した。

 15年5月にはスマートコミュニティ事業への参入、および太陽光発電・販売を行う合弁子会社として山口再エネ・ファクトリー設立(15年6月)を発表した。また子会社の会津ラボが、会津若松市「桜咲く会津プロジェクト実行委員会」が実施する「次世代型食品生産トライアル事業」へ、農作物の高品質化・高付加価値化を実現するアプリケーションならびにシステムを開発して提供すると発表した。ICTを活用してスマート農業を支援する。

 15年6月には子会社アットザラウンジが、ソフトバンクモバイルが運営するスマートフォン向けアプリ取り放題サービス「App Pass」にて、音楽配信サービス「SOUNDSMART for App Pass」の配信を開始した。またIDCフロンティアとクラウド分野で業務提携し、クラウド型統合運用監視サービス「プレミアクラウド」サービスの提供を開始した。

 6月25日には、トヨタ自動車<7203>の次世代テレマティクスサービス「T-Connect」の主要サービスであるアプリストア「Apps(アップス)」にて、車載用チャットアプリ「Fivetalk」を公開した。

 7月22日にはプロモートが実施する第三者割当増資を引き受けて子会社化すると発表した。拡大する受託開発案件への対応力強化、業務効率化ソリューションの販売促進などで事業領域拡大に繋げる方針だ。

■16年5月期は大幅増収増益予想で収益改善基調

 7月10日に発表した前期(15年5月期)の連結業績(11月28日に売上高と利益を減額修正、1月9日に税金費用減少で純利益を増額修正)は、売上高が前々期比13.5%増の51億16百万円、営業利益が同43.4%減の1億89百万円、経常利益が同39.9%減の2億04百万円、純利益が同59.4%減の1億77百万円だった。

 コンテンツサービス事業における広告宣伝費の増加、ソリューション事業における原価率上昇などで減益だった。配当予想は前々期と同額だが普通配当で年間3円(期末一括)としている。予想配当性向は64.8%となる。

 セグメント別(全社費用等調整前)に見ると、コンテンツサービス事業は交通情報やゲームが好調で、売上高が同1.5%増の25億06百万円と順調だったが、広告宣伝費増加などで営業利益が同19.6%減の6億16百万円だった。ソリューション事業は広告ビジネス「店頭アフィリエイト」が大幅伸長して、売上高が同28.0%増の26億09百万円、営業利益が同9.9%増の1億90百万円と好調に推移した。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)13億16百万円、第2四半期(9月~11月)11億98百万円、第3四半期(12月~2月)12億26百万円、第4四半期(3月~5月)13億76百万円、営業利益は第1四半期52百万円、第2四半期10百万円、第3四半期52百万円、第4四半期75百万円だった。

 今期(16年5月期)の連結業績予想(7月10日公表)は売上高が前期比19.2%増の61億円、営業利益が同2.4倍の4億50百万円、経常利益が同2.3倍の4億70百万円、純利益が同7.0%増の1億90百万円としている。配当予想は前期と同額の年間3円(期末一括)としている。予想配当性向は64.0%となる。

 コンテンツサービス事業では交通情報やゲームなど、ソリューション事業では「店頭アフィリエイト」や法人向けソリューションが好調に推移する。営業損益改善基調だろう。

■株価は安値圏モミ合いだが調整の最終局面

 株価の動きを見ると、動意付く場面もあるが買いが続かず、年初来安値圏の330円~340円近辺でモミ合う展開だ。ただし全般地合い悪化の影響を受けた7月9日の年初来安値293円から素早く切り返した。下値も限定的のようだ。調整の最終局面だろう。

 7月30日の終値334円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS4円69銭で算出)は71倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間3円で算出)は0.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS126円65銭で算出)は2.6倍近辺である。

 週足チャートで見ると戻りを押さえていた13週移動平均線と26週移動平均線が徐々に横向きに転じてきた。調整の最終局面のようだ。下値固めが完了し、16年5月期の収益改善基調を評価して反発展開が期待される。

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