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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】山下医科器械は指標面に割安感、16年5月期業績の会社予想に増額余地
- 2015/7/31 07:56
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
山下医科器械<3022>(東1)は九州を地盤とする医療機器専門商社である。株価は急伸した5月高値2194円から反落して1800円近辺でモミ合う展開だ。15年5月期業績、16年5月期業績予想、そして中期経営計画発表に対する反応は限定的で、急伸後の調整局面のようだ。ただし指標面には割安感があり、16年5月期業績の会社予想の増額余地を評価して出直り展開が期待される。
■九州を地盤とする医療機器専門商社
九州を地盤とする医療機器専門商社である。医療機器の販売・メンテナンスおよび医療材料・消耗品などの販売を主力として、子会社イーピーメディックは整形インプラントを製造販売している。
中期成長に向けて、九州最大の需要地である福岡県での市場シェア拡大を最重点戦略としている。医療機関向けSPD(病院医療材料管理業務)の契約施設数増加に対応するため、13年7月に福岡SPDセンター(福岡県福岡市)を新設し、鳥栖SPDセンター(佐賀県鳥栖市)との2拠点体制とした。
15年1月には、西諫早産業団地(長崎県諫早市)への進出に向けて諫早市との協定を締結した。長崎物流センター・SPDセンター(仮称)として物流体制を強化する方針だ。総投資額は約17億円で15年7月着工、16年6月稼働を予定している。
15年6月には、パナソニックヘルスケアとの合弁会社メディコムネットワークス九州の設立を発表した。電子カルテやレセコンなどのメディコム製品および関連機器の販売・サービスを展開する。15年8月1日設立、10月1日営業開始予定で、出資比率はパナソニックヘルスケア51%、当社49%である。
13年12月に判明した従業員による不正行為に関して、14年2月28日に独立行政法人国立病院機構から指名停止(14年2月28日~14年11月27日)および一般競争参加資格降格(14年11月28日~15年8月27日)の処分を受けた。当該処分の対象となる施設の13年5月期売上高は全社売上高の1割強としている。
不正行為の再発防止策に関して4月17日再発防止策実施状況その1、5月16日再発防止策実施状況その2、6月13日再発防止策実施状況その3、8月18日再発防止策実施状況その4を発表している。再発防止と信頼回復に向けて今後も実施状況を随時報告する方針だ。なお14年11月27日を以って指名停止期間満了となり、14年11月28日から一般競争参加資格の降格措置期間に入った。
■16年5月期は営業微減益予想だが、保守的で増額余地
前期(15年5月期)連結業績(5月20日に増額修正)は売上高が前々期比1.4%減の503億10百万円、営業利益が同35.7%減の5億38百万円、経常利益が同25.4%減の6億16百万円、純利益が同35.1%減の3億59百万円だった。
配当予想(5月20日に増額修正)は年間43円(期末一括)とした。前期との比較では13円減配だが、予想配当性向は30.6%となる。またROEは14年5月期比3.9ポイント低下して6.3%、自己資本比率は同1.9ポイント上昇して32.0%となった。
病院建て替えなど大型設備更新案件の減少、消費増税後の需要減少、指名停止措置の影響で減収減益だった。ただし期後半の一般機器分野などの売上回復が想定以上となり、前回予想に比べて減収幅、減益幅とも縮小した。
医療機器販売事業の売上高を見ると、一般機器分野は大型案件が減少して同18.2%減の100億19百万円、一般消耗品分野はSPD契約施設数増加で同3.5%増の187億22百万円、低侵襲治療分野は腹腔鏡システムのサージカル備品や内視鏡処置用消耗品が増加して同7.9%増の129億70百万円、専門分野は理化学備品や整形消耗品の減少で同4.1%減の64億43百万円、情報・サービス分野は医療ガス設備工事が増加して同10.5%増の18億62百万円、合計は同1.5%減の500億17百万円だった。医療モール事業(主として賃料収入)は同24.0%増の68百万円だった。
なお15年5月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)105億82百万円、第2四半期(9月~11月)126億55百万円、第3四半期(12月~2月)118億52百万円、第4四半期(3月~5月)152億21百万円で、営業利益は第1四半期45百万円の赤字、第2四半期2億21百万円、第3四半期50百万円、第4四半期3億12百万円だった。
今期(16年5月期)の連結業績予想(7月8日公表)は、売上高が前期比2.9%増の517億74百万円、営業利益が同2.5%減の5億25百万円、経常利益が同2.5%減の6億円、純利益が同2.1%増の3億66百万円としている。
配当予想は同1円増配の年間44円(期末一括)としている。予想配当性向は30.6%となる。安定的な配当の継続を基本方針とし、配当水準として連結配当性向30%を基準としている。
SPD契約施設数増加で一般消耗品分野が堅調に推移し、国立病院機構の一般競争参加資格の降格措置が第1四半期(6月~8月)で終了することも寄与して増収予想だ。
利益面では新物流センター設立に伴う先行費用の発生、営業人員増加による人件費の増加などで営業減益・経常減益予想としている。純利益については法人税等の実効税率低下で増益予想としている。期初時点では保守的な会社予想を公表する傾向が強いため増額余地があるだろう。
■中期経営計画で18年5月期売上高580億円目標
7月14日に新中期経営計画を発表した。基本戦略として、さらなる基盤事業の強化と推進体制の構築、地域医療構想に即した新規事業の創出、グループ統制とガバナンス強化に即した経営体制の刷新、積極的な人材確保と教育、コンプライアンス・内部統制の徹底と経営理念経営を推進する。
そして経営目標数値には、18年5月期の売上高580億円、経常利益8億50百万円を掲げている。中期的に収益拡大基調が期待される。
■株価は急伸後の調整局面だが下げ渋り
株主優待制度については、毎年11月30日および5月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して実施している。100株~999株保有株主に対して500円相当のクオカード、1000株~1999株保有株主に対して1000円相当のクオカード、2000株以上保有株主に対して1500円相当のクオカードを贈呈する。
株価の動きを見ると、急伸した5月高値2194円から反落して1800円近辺でモミ合う展開だ。15年5月期業績、16年5月期業績予想、そして中期経営計画発表に対する反応は限定的で、急伸後の調整局面のようだ。
7月30日の終値1775円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS143円56銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間44円で算出)は2.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2302円20銭で算出)は0.8倍近辺である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形となった。ただし一方では26週移動平均線が下値を支えて下げ渋る動きだ。指標面には割安感があり、16年5月期業績の会社予想の増額余地を評価して出直り展開が期待される。