【アナリスト水田雅展の銘柄分析】パシフィックネットはモミ合い煮詰まり感、16年5月期増収増益基調や高配当利回りを評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 パシフィックネット<3021>(東マ)は中古パソコン・モバイル機器のリユース・データ消去を展開するセキュリティサービス提供企業である。株価は550円~600円近辺でモミ合う展開だが煮詰まり感を強めている。16年5月期の増収増益基調や3%台の高配当利回りを評価してモミ合い上放れの展開だろう。マイナンバー制度関連、サイバーセキュリティ関連、インバウンド需要関連のテーマ性も注目点だ。

■中古情報機器の引取回収・販売などリユース・データ消去事業を展開

 中古パソコン・モバイル機器のリユース・データ消去を展開するセキュリティサービス提供企業である。パソコン、タブレット端末、スマートフォンなど中古情報機器の引取回収・販売事業を主力として、レンタル事業も展開している。

 13年10月に旗艦店としてオープンした「PC-NETアキバ本店」など全国主要都市に9店舗を展開し、主要仕入先のリース・レンタル会社や一般企業からの引取回収強化、生産性向上、業務プロセス効率化などで収益力を高めている。

 なおインバウンド需要に対応して、15年5月期に9店舗中7店舗を免税店化した。また7月11日に10店舗目となる「PCNET秋葉原ジャンク通り店」をオープンした。

 全国主要都市8箇所の引取回収拠点や、ISO27001(ISMS)およびプライバシーマークに準拠した情報漏洩防止のためのセキュリティ体制に強みを持っている。IT機器のデータ消去・処分サービスはマイナンバー制度のガイドラインに完全対応し、データ消去証明書発行サービスも行っている。

 企業や官公庁のセキュリティ意識やコンプライアンス意識の向上に伴って中古情報機器の入荷台数が大幅に増加している。データ消去サービスなども奏功して顧客カバー率が一段と広がり、大手金融機関からの中古情報機器引取回収も本格化している。

 14年10月には企業・官公庁・自治体での使用済みIT機器の回収からデータ消去までの一連の作業を大幅に効率化する日本初のWebサービス「P-Bridge」の無償提供を開始した。IT資産管理ソフト大手エムオーテックス社とデータ連携し、当社の引取回収サービスの提供価値を高める戦略だ。

 15年2月には「P-Bridge」に関して特許出願した。今後は「P-Bridge」をソリューション・プラットフォームと位置付けて新たなサービスも投入する方針だ。

 15年5月には、電子記録メディア破壊機メーカーの日東造機から、オンサイト・オフサイトデータ物理破壊消去サービスの最優秀会社として「Crush Box プラチナサービスリセラー」の第1号に認定された。

■リユースの社会的取り組みを強化

 14年11月には、Windowsクラスルーム協議会の「Windowsクラスルーム包括プログラム」のサービスメニューとして「教育機関のお客様向けECOサービス」を展開すると発表した。教育現場におけるICT機器導入時・処分時のコスト削減サービスや、ICT機器処分時の情報漏洩などセキュリティリスクを軽減するサービスを教育機関向けに提供する。

 15年4月にはイオンリテールとApple製品等の下取りサービスにおいて協業した。イオンリテールが運営するApple製品専門店「NEWCOM(ニューコム)イオンレイクタウン店」(埼玉県越谷市)における下取りサービスを協業で展開して仕入強化に繋げる。

 15年5月に開催された「第6回教育ITソリューションEXPO」では、サービス面で補完関係にある指紋認証ソリューションのディー・ディー・エス<3782>と、マイナンバー制度に対応した情報漏洩対策を共同で特別展示する新たな取り組みも行った。

 7月27日には特定非営利活動法人.sopa.jpと共に、子どもの学習支援と企業の使用済みパソコンの最活用を行うCSRプログラム「リユースforキッズ」の開始を発表した。なお「リユースforキッズ」の取り組みは環境省の「平成27年度使用済製品等のリユースに関するモデル事業」として採択された。

■15年5月期は減益だったが、16年5月期は大幅増益予想

 7月15日に発表した前期(15年5月期)の連結業績は売上高が前々期比10.7%増の44億91百万円、営業利益が同20.3%減の2億27百万円、経常利益が同20.2%減の2億45百万円、純利益が同0.6%減の1億82百万円だった。

 配当予想は前期と同額の年間16円(期末一括)で配当性向は45.4%となる。またROEは14年5月期比0.8ポイント低下して9.7%、自己資本比率は同6.1ポイント低下して62.8%となった。

 セグメント別に見ると、引取回収・販売事業は売上高が同8.3%増の38億85百万円、営業利益が同29.5%減の1億98百万円、レンタル事業は売上高が同28.7%増の6億05百万円、営業利益が同7.0倍の28百万円だった。

 パソコンはWindowsXPサポート終了に伴う入れ替え需要一巡で減少したが、中古スマートフォン・タブレットなど中古モバイル市場が拡大した。営業やプロモーションの強化、免税店の拡大などの積極施策が奏功し、引取回収・販売事業において中古モバイル機器の入荷台数が増加して業者向け卸販売が好調に推移した。レンタル事業における大手企業向けノートPC4000台超の大型案件なども寄与して計画を上回る2桁増収だった。

 利益面では人件費の増加、大型案件受注に伴うレンタル資産の先行償却や一時経費の増加、IT化推進に向けたシステム投資に伴う償却費の増加などで計画を下回り減益だった。純利益は投資有価証券売却益の計上および法人税等の減少で小幅減益だった。

 15年5月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)11億50百万円、第2四半期(9月~11月)10億86百万円、第3四半期(12月~2月)10億52百万円、第4四半期(3月~5月)12億03百万円、営業利益は第1四半期1億19百万円、第2四半期32百万円、第3四半期36百万円、第4四半期40百万円だった。

 今期(16年5月期)の連結業績予想(7月15日公表)は売上高が前期比11.3%増の50億円、営業利益が同36.3%増の3億10百万円、経常利益が同29.9%増の3億18百万円、純利益が同16.7%増の2億12百万円としている。

 配当予想は同3円増配の年間19円(期末一括)としている。予想配当性向は46.2%となる。配当については、継続的な利益還元を基本としたうえで業績連動型の配当方式を採用し、当期純利益の30%以上を配当性向の目安として決定することを基本方針としている。

 パソコンはWindowsXPサポート終了に伴う入れ替え需要反動減の状況が続くが、中古スマートフォン・タブレットなど中古モバイル市場は拡大基調であり、顧客数の拡大、中古モバイル機器の取扱台数増加、関連サービス投入が寄与する。

 官公庁・企業におけるセキュリティ意識の高まりに、顧客対応強化策も奏功して中古モバイル機器の引取回収・販売、レンタル、さらにデータ消去サービスなどが順調に推移して増収増益基調だろう。マイナンバー制度関連やインバウンド関連の需要も期待される。

■中期経営計画で18年5月期営業利益6億円目標

 7月15日に中期経営計画「VISION2018」を発表した。次の3ヶ年を「持続的成長・高い収益性を可能とする新たな事業モデルへのステップ」と位置付けた。また東証1部への市場変更も目指すとしている。

 成長への基本戦略は、競争優位の確立と営業マーケティング強化による顧客拡大、モバイル・IoT・マイナンバーなど技術革新・社会的要請に対応した新たなレンタル市場・リユース市場・周辺事業の創出と展開、レンタル事業の拡大とリユース事業との相乗効果の発揮、戦略実行力の強化と自律型組織・人財への変革としている。

 そして経営目標値には18年5月期売上高65億円、営業利益6億円、営業利益率9.2%、ROE10.0%以上を掲げている。リユース市場の拡大も背景として収益拡大基調が期待される。

■株価はモミ合い煮詰まり感、16年5月期増収増益基調を評価して上放れ

 株価の動きを見ると、概ね550円~600円近辺でのモミ合い展開だ。全般地合い悪化の影響を受けて7月9日に年初来安値456円まで調整する場面があったが、素早くモミ合いレンジに切り返している。15年5月期減益および16年5月期増益予想に対する反応は限定的のようだ。

 7月30日の終値561円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS41円15銭で算出)は13~14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間19円で算出)は3.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS371円92銭で算出)は1.5倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線を挟んでモミ合う展開だ。ただし下値は限定的でありモミ合い煮詰まり感を強めている。16年5月期の増収増益基調や3%台の高配当利回りを評価してモミ合い上放れの展開だろう。マイナンバー制度関連、サイバーセキュリティ関連、インバウンド需要関連のテーマ性も注目点だ。

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