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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】エスプールは15年11月期は先行投資負担だが、16年11月期は成長軌道へ回帰
- 2015/7/31 07:51
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
人材サービスのエスプール<2471>(JQS)はロジスティクス、障がい者雇用支援、スマートメーター、コールセンター業務などを中心に人材サービス事業を展開している。株価は地合い悪化も影響して7月9日に849円まで下押す場面があったが、その後は切り返しの動きを強めている。15年11月期業績予想減額修正を嫌気した売りは一巡したようだ。15年11月期は先行投資負担が影響するが、16年11月期は成長軌道への回帰が期待される。水準切り上げの展開だろう。
■ロジスティクス、障がい者雇用支援、コールセンターなどの人材サービス事業
ビジネスソリューション事業(ロジスティクスアウトソーシング、障がい者雇用支援・就労移行支援サービス、フィールドマーケティングサービス、マーチャンダイジングサービス、販売促進支援業務、顧問派遣サービスなど)、人材ソリューション事業(コールセンター向け派遣、携帯電話販売員派遣、ストアスタッフ派遣など)を展開している。
■ロジスティクス分野はネット通販市場拡大が追い風
ロジスティクスアウトソーシングサービスはネット通販市場拡大が追い風であり、子会社エスプールロジスティクスが、ECサイト出店企業などの物流センター運営・発送代行サービスで新規顧客獲得を推進している。
■障がい者雇用支援サービスを拡大
障がい者雇用支援サービスは、障がい者雇用促進法に基づいて大企業の障がい者雇用をサポートしている。子会社エスプールプラスが運営する企業向け賃貸農園「わーくはぴねす農園」の栽培設備販売収入と農園運営管理収入を収益柱としている。高付加価値サービスとして千葉県を中心に事業規模を拡大する方針だ。
千葉県市原市「わーくはぴねす農園 市原ファーム」では23社の企業がサービスを利用し、14年6月新設の千葉県長南町「わーくはぴねす農園 茂原ファーム」も完売した。15年2月には第3農園となる山武農園を開設した。また15年4月には、知的障がい者の雇用を促進するため、年内に「わーくはぴねす農園」を3ヶ所増設すると発表した。
15年2月には就労移行支援事業所「障がい者就職塾」千葉校を開設すると発表している。千葉校開設で「障がい者就職塾」のネットワークは5拠点となる。これまで4年間で約150名の知的障がい者が就職し、退職率が1%未満という高い定着率を誇っている。
■新規分野で電力会社のスマートメーター関連業務を育成
フィールドマーケティングサービスでは、新規分野として電力会社が推進するスマートメーター関連業務を育成する。14年9月に子会社エスプールエコロジーが一般建設業(電気工事業、電気通信工事業)の許可を取得し、移動通信キャリアの通信・ネットワーク機器の設置業務、電力計のスマートメーター化に関連したサポート業務の事業拡大を推進している。
また15年3月には子会社エスプールエンジニアリングの設立と、大規模な工事を請け負うことができる特定建設業(電気工事業、管工事業)の許可取得を発表した。新会社設立に伴ってエスプールエコロジーが行っていた業務についても新会社に順次移管する。
15年5月には、エスプールエンジニアリングが東京電力<9501>からスマートメーター設置業務を受注した。東京電力は20年度までに約2700万台のスマートメーター設置を予定し、このうちの約540万台分の入札で約24億円分の業務(工事履行期間15年7月1日~17年3月20日)の受注が決定した。今回の受注を皮切りに、確実に実績を積み上げて全国各地域での受注を目指す。
■販売促進支援分野は収益性向上目指す
人材ソリューション事業(子会社エスプールヒューマンソリューションズ)では、ファミリーマート<8028>のFC店舗向けに人材提供を一括で行う「人材サポートセンター」を設立し、コンビニエンスストア向けストアスタッフサービスを強化している。
また14年11月には販売促進支援業務に特化した子会社エスプールセールスサポートを設立した。マーチャンダイジング業務、クレジットカードなどの会員獲得業務、販売イベントブースの運営業務など、複数の事業部や子会社で提供していた販売促進支援業務を集約して、事業拡大と収益性向上を目指す戦略だ。
6月22日にはフルキャストホールディングス<4848>との業務提携を発表した。大規模アウトソーシング案件の受注に向けて営業協力を開始することに合意した。当社の各種アウトソーシングノウハウとフルキャストの全国規模での採用力を組み合わせることで競争力のあるサービスを提供し、調査・キャンペーン業務、セールスプロモーション業務の分野を中心に初年度10社の受注を目指すとしている。
■先行投資負担で15年11月期業績予想を減額、16年11月期は成長軌道
今期(15年11月期)第2四半期累計(12月~5月)の連結業績は、売上高が前年同期比6.2%増の34億38百万円、営業利益が同74.3%減の31百万円、経常利益が同76.8%減の27百万円、純利益が14百万円の赤字(前年同期は99百万円の利益)だった。
人材ソリューション事業のコールセンター業務、ビジネスソリューション事業のロジスティクスアウトソーシングサービスが順調に推移したが、障がい者雇用支援サービスにおける新農園の開設遅れ、15年7月業務開始するスマートメーター設置業務に係る先行費用の発生、本社移転費用28百万円の特別損失計上で、売上高・利益とも計画を下回った。
なおセグメント別(全社費用等調整前)に見ると、ビジネスソリューション事業は売上高が同6.4%増の14億03百万円、営業利益が同29.3%減の87百万円、人材ソリューション事業は売上高が同4.1%増の20億54百万円、営業利益が同5.1%減の1億61百万円だった。
また四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(12月~2月)16億61百万円、第2四半期(3月~5月)17億77百万円、営業利益は第1四半期22百万円の赤字、第2四半期53百万円だった。
通期の連結業績予想は7月2日に売上高を増額、利益を減額修正して、売上高が前期比13.8%増の75億18百万円、営業利益が同27.2%減の1億50百万円、経常利益が同26.8%減の1億40百万円、そして純利益が同59.7%減の66百万円とした。
スマートメーター設置業務を15年7月開始するため売上高を増額修正したが、スマートメーター設置業務の本格的な利益貢献は16年11月期となり、15年11月期は業務開始前に発生する人件費、採用費、教育訓練費、拠点整備に係る費用負担が先行する。
またスマートメーター設置業務以外の新事業についても、計画を前倒しして人員補強などの先行投資を実施するため、各利益を減額修正した。本社移転費用の特別損失について通期では41百万円計上する予定だ。
なお配当予想は前回予想を据え置いて前期と同額の年間10円(期末一括)としている。予想配当性向は16.6%となる。
修正後のセグメント別(全社費用等調整前)計画は、ビジネスソリューション事業の売上高が同30.8%増の35億38百万円、営業利益が同3.0%減の2億72百万円、人材ソリューション事業の売上高が同2.9%増の40億94百万円、営業利益が同3.4%増の3億20百万円としている。
15年11月期は先行投資負担で減額修正・減益予想となったが、ロジスティクス関連は拡大基調であり、スマートメーター設置業務が収益化する16年11月期は成長軌道への回帰が期待される。
■中期経営計画で「NO.1アウトソーシング・プロバイダー」目指す
15年1月に発表した新中期経営計画「Next2020-変化への挑戦」では、中期ビジョンとして「NO.1アウトソーシング・プロバイダー」を掲げている。
社会貢献性・成長性の高い分野での事業展開、ニッチな分野・参入障壁の高い分野での事業展開を推進し、経営目標値は営業利益率5%の早期達成と20年度までに業界最高水準10%の達成、安定的かつ継続的な配当の実施、ROE最低5%堅持としている。高付加価値サービスが牽引して中期的に収益拡大基調だろう。
■株価は15年11月期減額を嫌気した売り一巡
株価の動きを見ると、5月の年初来高値1350円、そして6月の戻り高値1195円から反落して水準を切り下げる展開だ。全般地合い悪化も影響して7月9日に849円まで下押す場面があった。ただしその後は切り返しの動きを強めている。15年11月期業績予想減額修正を嫌気した売りは一巡したようだ。
7月30日の終値946円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS22円21銭で算出)は43倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS251円66銭で算出)は3.8倍近辺である。
週足チャートで見ると上値を切り下げ、13週移動平均線と26週移動平均線を挟んでモミ合う展開だが、下値も限定的のようだ。15年11月期は先行投資負担が影響するが、16年11月期は成長軌道への回帰が期待される。水準切り上げの展開だろう。