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JSPは調整一巡、23年3月期営業・経常減益予想だが上振れ余地
- 2022/10/25 09:42
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
JSP<7942>(東証プライム)は発泡プラスチック製品の大手である。成長ドライバーとして自動車部品用ピーブロックなどの拡販を推進するとともに、製品ライフサイクル全体における環境負荷軽減に貢献する製品や製造技術の開発など、サステナビリティ経営の推進も強化している。22年11月には、梱包資材用途ミラブロック(発泡ポリエチレンビーズ成形品)シリーズの新製品として、バイオマス原料を配合したミラブロック-Bioの販売を開始する。23年3月期は原材料価格高騰の影響で営業・経常減益予想としている。ただし需要は堅調であり、高付加価値製品の販売増加や販売価格改定効果などを勘案すれば、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化も影響して年初来安値に接近する場面があったが、その後は徐々に下値を切り上げて反発の動きを強めている。高配当利回りや低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。
■発泡プラスチック製品の大手
発泡プラスチック製品の大手で、押出発泡技術をベースとするポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンシートなどの押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレー材、住宅用断熱材など)、ビーズ発泡技術をベースとする発泡ポリプロピレン・発泡ポリエチレン・発泡性ポリスチレン製品などのビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他(一般包材など)を展開している。
22年3月期のセグメント別売上高構成比は押出事業34%、ビーズ事業60%、その他6%、営業利益構成比(調整前)は押出事業50%、ビーズ事業47%、その他4%だった。収益は販売数量、為替、原油価格、原料価格と販売価格の差であるスプレッド、プロダクトミックスなどが影響する。
■成長ドライバーとして自動車部品用ピーブロック拡販などを推進
長期ビジョン「VISION2027」では目標値に28年3月期売上高1800億円、営業利益180億円、営業利益率10%を掲げている。
長期ビジョン達成に向けた3ヶ年中期経営計画(21年度~23年度)では目標値に24年3月期売上高1200億円、営業利益77億円、営業利益率6.4%以上、経常利益79億円、親会社株主帰属当期純利益52億円、ROA5.6%以上を掲げている。セグメント別計画は押出事業が売上高418億円で営業利益28億円、ビーズ事業が売上高724億円で営業利益60億円、その他が売上高58億円で営業利益1億円、営業利益調整額が▲12億円としている。
基本方針は変革戦略として、循環性の高いビジネスモデルへのシフト、組織の活性化・効率化を推進する。4つの成長エンジンについては23年度に19年度比で、自動車部品の販売数量23%増、建築住宅断熱材の販売数量12%増、FPD関連保護材の販売数量20%増、新たな事業領域の売上高30億円の達成を目指す。3年間の設備投資額は235億円の計画としている。
自動車部品用発泡ポリプロピレンのピーブロック(英名ARPRO)は、自動車メーカーの軽量化要求に対応する製品として、自動車シートコア材としての採用が拡大している。SDGsへの取り組みとして欧州の自動車メーカーからはリサイクル原料使用の要求が強く、原料にリサイクルポリプロピレンを用いたARPRO REの採用が始まっている。さらにEV用バッテリー梱包材、住宅用空気清浄システム構造部材、水力発電所の発電機の発熱を遮断する断熱材などにも採用が広がっている。中期成長ドライバーとして期待される。
省エネ基準適合義務化対象拡大で需要拡大している「ミラフォーム」については、関西工場(兵庫県たつの市)の隣接地に新工場が完成(19年1月)して東西2大生産拠点体制を構築している。
22年1月には、新規事業創出を目的としてフランスの子会社がイタリアのGHEPI社に出資(株式35%取得)した。射出成形市場に参入し、発泡技術と射出技術の複合化で技術優位性を構築して事業拡大を推進する方針だ。
■サステナビリティ経営やコーポレート・ガバナンスを強化
製品ライフサイクル全体における環境負荷軽減に貢献する製品や製造技術の開発などサステナビリティ経営の推進も強化するとともに、コーポレート・ガバナンスも強化している。
21年4月にはサステナビリティ推進室を新設し、21年12月にはホームページに「JSPのサステナビリティ経営とマテリアリティ」を掲載した。同社の発泡技術を活用して、経済価値だけでなく、顧客や社会の課題解決などの社会的価値へと、提供価値の拡大を推進する方針だ。
21年12月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同を表明し、22年7月にはTCFD提言に基づく情報開示(詳細は会社HP参照)を行っている。
22年4月にはガバナンス特別委員会を設置した。親会社である三菱瓦斯化学<4182>およびその子会社との取引において、公正性・透明性・客観性を確保することで少数株主の利益を適切に保護し、コーポレート・ガバナンスの充実を図る。
22年9月には労働施策総合推進法に基づいて、直近3事業年度において採用した正規雇用労働者の中途採用比率を公表した。19年度は54%、20年度は41%、21年度は67%だった。
22年11月には、梱包資材用途ミラブロック(発泡ポリエチレンビーズ成形品)シリーズの新製品として、バイオマス原料を配合したミラブロック-Bioの販売を開始する。バイオマスポリエチレンを25.0重量%以上配合するため、日本バイオプラスチック協会のバイオマスプラシンボルマークの認定を受けた。従来品ミラブロック-Eをミラブロック-Bioに切り替えることにより、環境負荷軽減や気候変動緩和に貢献できる製品として、サステナブルな社会づくりに貢献する。
■23年3月期営業・経常減益予想だが上振れ余地
23年3月期の連結業績予想は、売上高が22年3月期比12.2%増の1280億円、営業利益が6.3%減の43億円、経常利益が7.6%減の45億円、親会社株主帰属当期純利益が7.1%増の31億円としている。配当予想は22年3月期と同額の50円(第2四半期末25円、期末25円)としている。
需要が高水準に推移して2桁増収だが、原材料価格高騰の影響を考慮して営業・経常減益予想としている。営業利益2億89百万円減益の要因別増減分析(予想)は、増益要因が数量増加による限界利益増加21億80百万円、販売単価上昇32億30百万円、為替等1億71百万円、減益要因が変動費単価上昇45億90百万円、固定費増加(活動費、製造労務費、減価償却費の増加)12億80百万円としている。
押出事業は売上高が6.2%増の415億円で、利益(全社費用調整前営業利益)が24.5%減の21億円の計画としている。販売数量の増加と製品価格改定効果で増収だが、原材料価格高騰の影響をカバーできず減益見込みとしている。ビーズ事業は売上高が17.5%増の805億円で、利益が22.1%増の32億円の計画としている。ピーブロックや機能性製品を中心に販売が増加し、原材料価格高騰に伴う製品価格改定効果も寄与して増収増益見込みとしている。その他は売上高が8.2%減の60億円で、利益が52.8%減の1億円の計画としている。一般包材や自動車部品関連包材が減少する見込みだ。
第1四半期は売上高が前年同期比14.8%増の309億77百万円、営業利益が51.3%減の7億64百万円、経常利益が30.7%減の10億80百万円、親会社株主帰属四半期純利益が30.3%減の7億63百万円だった。高付加価値製品の販売増加などで2桁増収だが、原材料価格高騰の影響で大幅減益だった。
押出事業は売上高が14.1%増の102億65百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が9.0%減の6億13百万円だった。食品トレー向け製品、産業資材製品、土木分野向け製品など、高付加価値製品の販売増加や販売価格改定効果などで2桁増収だが、原材料価格高騰の影響をカバーできず減益だった。
ビーズ事業は売上高が15.7%増の191億38百万円、利益が66.8%減の3億75百万円だった。ピーブロックが非自動車分野を中心に増加し、製品価格改定も寄与して2桁増収だが、原材料価格高騰の影響をカバーできず大幅減益だった。
その他は売上高が9.4%増の15億72百万円、利益が98.0%増の38百万円だった。自動車部品輸送関連など一般包材の需要が好調に推移した。
通期予想に対する第1四半期の進捗率は売上高24.2%、営業利益17.8%、経常利益24.0%、親会社株主帰属当期純利益24.6%である。需要は堅調であり、高付加価値製品の販売増加や販売価格改定効果などを勘案すれば通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。
なお22年4月には押出発泡ポリスチレン「スチレンペーパー製品全般」の販売価格改定(22年5月1日出荷分から現行価格より21円/kg以上値上げ)を発表、22年5月にはポリスチレンフォーム断熱材「ミラフォーム・関連製品」の販売価格改定(22年6月21日出荷分から30%値上げ)を発表、22年6月には押出発泡ポリスチレン「スチレンペーパー製品全般」の販売価格改定(22年7月1日出荷分から現行価格より48円/kg以上値上げ)を発表している。
■株主優待制度は毎年3月末対象
株主優待制度は、毎年3月31日時点の1単元(100株)以上保有株主を対象として、一律3000円相当の社会貢献寄付金附きオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は調整一巡
株価は地合い悪化も影響して年初来安値に接近する場面があったが、その後は徐々に下値を切り上げて反発の動きを強めている。高配当利回りや低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。10月24日の終値は1451円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS104円00銭で算出)は約14倍、今期予想配当利回り(会社予想の50円で算出)は約3.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2884円93銭で算出)は約0.5倍、そして時価総額は約456億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)