- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 京写は調整一巡、23年3月期大幅増益予想、さらに上振れの可能性
京写は調整一巡、23年3月期大幅増益予想、さらに上振れの可能性
- 2022/10/25 09:41
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
京写<6837>(東証スタンダード)はプリント配線板の大手メーカーで、片面プリント配線板については世界最大の生産量を誇っている。成長戦略としては電子部品の微細化ニーズに対応した新製品によるシェア拡大戦略など、独自のスクリーン印刷技術を活用してグローバルニッチトップメーカーを目指すとしている。23年3月期は需要が高水準に推移し、ベトナム子会社の生産拡大なども寄与して大幅増益予想としている。第1四半期が大幅増益で進捗率も順調だったことを勘案すれば、通期会社予想に上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新する場面があったが、その後は調整一巡して反発の動きを強めている。低PBRも評価して出直りを期待したい。なお10月28日に23年3月期第2四半期決算発表を予定している。
■プリント配線板の大手メーカー
プリント配線板の大手メーカーである。世界最大の生産能力を誇る片面プリント配線板、および両面プリント配線板を柱として、実装治具関連事業も展開している。
プリント配線板は独自のスクリーン印刷技術をベースとして、防塵対策基板、熱伝導放熱基板、ファイン回路片面基板などに技術的な強みを持っている。そして高温工程で繰り返し使用可能なノンシリコーンタイプ粘着キャリア、電子部品の急速な小型化に対応した業界初のスクリーン印刷法による0603チップ部品対応片面配線板、伸縮性のある材料にスクリーン印刷で直接回路を形成するストレッチャブル基板(プリンタブル基板)などの受注拡大が期待されている。
22年3月期セグメント別売上高は日本が96億47百万円、中国が114億03百万円、インドネシアが20億34百万円、メキシコが85百万円、ベトナムが5億88百万円、営業利益は日本が2億39百万円、中国が6億44百万円、インドネシアが14百万円、メキシコが5百万円、ベトナムが▲4億22百万円だった。
製品別の売上高は片面版が104億89百万円、両面板が82億09百万円、実装関連が17億69百万円、その他が8億69百万円だった。用途別の売上高は自動車関連(ライト、電装品、カーオーディオなど)が69億55百万円、家電製品(LED照明、エアコンなど)が50億74百万円、事務機(複写機、プリンターなど)が28億02百万円、電子部品・電子機器(電源、モーター、制御装置など)が19億04百万円、映像関連(薄型テレビなど)が12億55百万円、アミューズメント(家庭用ゲーム機など)が2億77百万円、その他(音響機器、通信機器など)が30億65百万円だった。幅広い顧客層(国内1000口座、海外300口座)を獲得している。
プリント配線板の生産は国内、および中国、インドネシア、ベトナムに展開している。片面プリント配線板は世界最大の生産量を誇っている。18年5月には中国で両面配線板および多層配線板の生産を委託しているサンティス香港、およびその子会社のサンティス南沙と資本・業務提携した。メキシコ子会社では実装搬送治具を製造している。
ベトナム子会社は両面配線板の新たな生産拠点として21年1月販売開始し、自動車向け製品を中心に生産している。なおベトナム子会社には自動車関連電子部品実装のエヌビーシー(岐阜県大垣市、05年から資本業務提携して協力関係)が6.7%出資している。
また21年5月にはメイコー<6787>と資本業務提携した。ともにプリント配線板事業を主力としているが、得意とする製品が異なるため棲み分けができている。中国やベトナムで事業拡大を進めるなど共通点が多く、グローバルに協業することで相互補完が可能な状況にあるとしている。経営資源の相互活用などでシナジー創出を図る方針だ。
■独自の印刷技術を活用してグローバルニッチトップメーカー目指す
中期経営計画では目標値として、最終年度26年3月期売上高300億円、営業利益16億円、営業利益率5.3%、ROE10%、配当性向25%を掲げている。
製品別売上高の計画は片面板が101億円、両面板が127億円、金属基板が26億円、実装関連が32億円、新事業が10億円(超厚銅基板が8億円、プリンタブル基板が2億円)、その他が4億円としている。また地域別の売上構成比の計画は日本が41%、中国が22%、ASEANが26%、北米その他が11%としている。製品別では両面板と金属基板の拡大、地域別ではASEAN(ベトナム)の売上拡大を図る方針だ。
6つの重点戦略(グローバル生産・販売戦略、企業間連携戦略、効率化戦略、技術戦略、財務戦略、人財戦略)を推進し、独自のスクリーン印刷技術を活用してグローバルニッチトップメーカーを目指すとしている。
グローバル生産・販売戦略では最適な供給網の再構築(ベトナム工場第1期フル稼働、両面事業・営業拠点の再編)や片面シェア拡大による利益確保など、企業間連携戦略ではEMSメーカー・商社との連携マーケティングによる製品開発・販路拡大や同業他社との相互補完関係構築など、効率化戦略では自働化・IT化による生産効率向上やDX活用による業務効率化推進など、技術戦略ではプリンタブル関連基板の事業化や0603対応微細基板の技術提案など、財務戦略では自己資本強化や持続的・積極的な株主還元など、人財戦略ではマネジメント人材の育成やESG・SDGsへの取り組みなどを推進する方針だ。
なお22年7月には「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」に登録した。自社の保有する技術を用いて環境への貢献を目指す。
■23年3月期大幅増益予想、さらに上振れの可能性
23年3月期の連結業績予想は売上高が22年3月期比7.8%増の230億円、営業利益が46.2%増の7億円、経常利益が22.7%増の6億30百万円、親会社株主帰属当期純利益が24.5%増の3億60百万円としている。配当予想は1円増配の6円(期末一括)としている。
コロナ禍影響の長期化、世界的な半導体不足による自動車等の減産、物流の混乱、原材料価格の高騰など先行き不透明感が強いが、需要が高水準に推移し、さらにベトナム子会社の生産拡大・赤字縮小なども寄与して大幅増益予想、そして増配予想としている。
なおベトナム子会社については、第1生産ラインで自動車向けを中心に両面プリント配線板を生産している。そして23年3月期中に第2生産ラインの稼働を予定している。生産拡大によって24年3月期黒字化を目指す計画だ。
第1四半期は、売上高が前年同期比21.3%増の59億09百万円、営業利益が116.3%増の1億83百万円、経常利益が99.0%増の1億91百万円、親会社株主帰属四半期純利益が367.4%増の1億15百万円だった。
売上面では国内において自動車生産調整の影響で国内プリント配線板事業が減収となり、利益面では原燃料価格高騰の影響を受けたが、海外での需要回復や新規顧客開拓、前期第1四半期に稼働したベトナム子会社の順調な立ち上がり、実装関連事業の堅調推移などで大幅増収増益だった。
通期予想は据え置いている。ただし第1四半期の進捗率は売上高25.7%、営業利益26.1%、経常利益30.3%、親会社株主帰属当期純利益31.9%と順調だった。第1四半期が大幅増益で進捗率も順調だったことを勘案すれば、通期会社予想に上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は調整一巡
株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新する場面があったが、その後は調整一巡して反発の動きを強めている。低PBRも評価して出直りを期待したい。10月24日の終値は296円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS25円12銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の6円で算出)は約2.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS501円72銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約43億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)