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朝日ラバーは反発の動き、23年3月期減益予想だが上振れの可能性
- 2022/10/26 08:55
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
朝日ラバー<5162>(東証スタンダード)は自動車内装LED照明光源カラーキャップを主力として、医療・ライフサイエンスや通信分野の事業拡大も推進している。23年3月期は原材料価格高騰などで減益予想としているが、生産性改善やコスト削減効果で第2四半期累計利益予想を上方修正している。通期も原材料価格高騰の販売価格への転嫁や原価改善効果などで上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新する展開だったが、売り一巡して反発の動きを強めている。指標面の割安感も評価して出直りを期待したい。なお11月11日に23年3月期第2四半期決算発表を予定している。
■自動車内装LED照明の光源カラーキャップが主力
シリコーンゴムや分子接着技術をコア技術として、自動車内装照明関連、卓球ラケット用ラバー、RFIDタグ用ゴム製品などの工業用ゴム事業、およびディスポーザブル用ゴム製品などの医療・衛生用ゴム事業を展開している。車載用LED照明の光源カラーキャップASA COLOR LEDなどを主力としている。
22年3月期のセグメント別構成比は、売上高が工業用ゴム事業83%、医療・衛生用ゴム事業17%、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が工業用ゴム事業84%、医療・衛生用ゴム事業16%だった。
■重点分野は光学、医療・ライフサイエンス、機能、通信
2030年を見据えた長期ビジョンを「AR-2030VISION」として、SDGs・ESG経営を意識して経営基盤強化を目指している。
中期事業分野を、光学事業(ASA COLOR LEDなど)、医療・ライフサイエンス事業(薬液混注用ゴム栓、プレフィルドシリンジ用ガスケットなど)、機能事業(車載スイッチ用ラバー、卓球ラケット用ラバーなど)、通信事業(RFIDタグ用ゴム製品、ビーコンなど)として、それぞれの製品群を成長させるコア技術や工場の役割を整理し、これまで整えてきた生産環境を最大限に生かす取り組みを推進する。
そして最初のステージとなる第13次三カ年中期経営計画では、数値目標に23年3月期売上高80~90億円、営業利益率8%以上を掲げ、設備投資額は約10億円としている。
光学事業(23年3月期売上高計画約40億円)では、自動車の内装照明市場から外装照明、アンビエント照明に向けた技術開発を推進する。医療・ライフサイエンス事業(約15億円)では、診断・治療分野、理化学機器分野、介護・予防分野に向けて制御技術と感性技術を磨く。機能事業(約21億円)では、ビークル分野、エネルギー分野、環境発電分野、スポーツ分野において制御技術、触覚・熱・振動・光関連技術、感性技術を磨く。通信事業(約12億円)では、自動認識分野、通信機器分野、センシング分野において、センシング技術、触覚・熱・振動・光関連技術、感性技術を磨く。
22年3月期の中期事業分野別売上高は、光学事業が21年3月期比7.4%増の31億03百万円、医療・ライフサイエンス事業が2.1%増の12億32百万円、機能事業が22.5%増の21億55百万円、通信事業が15.7%減の5億32百万円だった。主要製品の売上高は、ASA COLOR LEDが5.6%増の28億64百万円、ディスポーザブル用ゴム製品が3.7%増の11億80百万円、卓球ラケット用ラバーが36.2%増の4億21百万円、そしてRFIDタグ用ゴム製品が34.5%減の3億12百万円だった。
技術開発では、簡易睡眠ポリグラフ検査用着衣型ウェアラブルシステム、風車用プラズマ気流制御用電極、視認性に優れ疲労低減特性のある自動車内装照明用LED、超親水性シリコーンゴム、ウイルス不活性化のための深紫外線LEDシステムなどの開発を推進している。
20年1月には、切り紙構造とゴムの複合により低応力で伸長し、耐久性に優れた新しい伸縮配線の開発を発表した。ゴムの復元力と立体的な構造によって生体センシング分野での活用が見込まれ、早稲田大学と北里大学の共同研究で発表されたウェアラブル筋電計測デバイスの一部に採用された。20年10月にはレンズの光学設計受託ビジネス開始を発表した。
20年11月には独自の配合技術と表面改質およびマイクロ加工技術を活かして、シリコーンゴムに親水性に優れた処理を施す技術の開発を発表した。またウイルス不活性化のための深紫外線LEDシステムの研究開発および実証実験が、さいたま市令和2年度イノベーション技術創出支援補助金に採択された。
また20年11月には、白河工場が自動車産業の国際的な品質マネジメントシステム規格であるIATF16949の認証を取得した。認証取得も武器として、グローバルな新規顧客開拓と継続した品質改善を加速させる。
さらに22年7月には、白河第2工場で医療機器に関する国際的な品質マネジメントシステム規格であるISO13485の認証を取得した。医療品質を高めて事業拡大を加速させる方針だ。
■SDGsへの取り組みを強化
21年8月には「サステナビリティビジョン2030」を策定した。SDGsへの取り組みを強化し、持続可能な社会の実現に貢献する。
21年12月には、福島県にある生産4拠点の購入電力をCO2フリー電力に転換した。年間約3000tの温室効果ガス排出削減を見込んでいる。また、みずほ銀行のホームページに、SDGs推進サポートローン実行事例として、同社の取り組みが紹介された。
■23年3月期減益予想だが上振れの可能性
23年3月期の連結業績予想は、売上高が22年3月期比6.1%増の74億54百万円、営業利益が12.5%減の2億55百万円、経常利益が19.8%減の2億51百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が21.6%減の1億87百万円としている。配当予想は22年3月期と同額の20円(期末一括)としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比2.4%減の17億54百万円で、営業利益が9.8%減の70百万円、経常利益が2.6%減の80百万円、親会社株主帰属四半期純利益が12.7%増の69百万円だった。自動車減産による自動車向けゴム製品の受注回復遅れで営業・経常減益だった。親会社株主帰属四半期純利益は特別利益に受取保険金を計上して増益だった。
工業用ゴム事業は売上高が6.0%減の14億20百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が7.6%減の1億24百万円だった。卓球ラケット用ラバーの好調が続いたが、ASA COLOR LEDやスイッチ製品などの自動車向けゴム製品が中国のロックダウンや半導体不足などの影響で減少した。RFIDタグ用ゴム製品も最終需要地である米国での需要低迷で減少した。
医療・衛生用ゴム事業は売上高が16.9%増の3億34百万円、セグメント利益が16.1%増の28百万円だった。経済活動の緩やかな回復に伴ってプレフィルドシリンジガスケット製品や採血用・薬液混注用ゴム栓の売上が増加した。
なお中期事業分野別売上高は、光学事業が19.5%減の6億62百万円、医療・ライフサイエンス事業が20.9%増の3億52百万円、機能事業が12.1%増の5億95百万円、通信事業が5.2%減の1億44百万円だった。
第1四半期は営業・経常減益だったが、生産性改善やコスト削減効果で各利益が計画を上回ったため、第2四半期累計予想については売上高を下方修正し、利益予想を上方修正した。修正後の第2四半期累計予想は売上高が前年同期比3.1%減の35億19百万円、営業利益が37.5%減の1億10百万円、経常利益が32.1%減の1億21百万円、親会社株主帰属四半期純利益が26.3%減の1億00百万円としている。前回予想に対して売上高を91百万円下方修正したが、営業利益を51百万円、経常利益を64百万円、親会社株主帰属四半期純利益を63百万円それぞれ上方修正して減益幅が縮小する見込みとした。
通期の連結業績予想は据え置いている。ただし売上高の計画は内訳を見直して、セグメント別には工業用ゴム事業が6.0%増の61億80百万円、医療・衛生用ゴム事業が6.7%増の12億74百万円、中期事業分野別には光学事業が2.2%減の30億36百万円、医療・ライフサイエンス事業が6.6%増の13億14百万円、機能事業が20.4%増の25億94百万円、通信事業が4.2%減の5億10百万円とした。ASA COLOR LEDが減収見込みだが、医療用ゴム製品、卓球ラケット用ラバーが好調に推移し、RFIDタグ用ゴム製品も回復に向かう見込みとしている。
通期は自動車減産、原材料価格高騰、withコロナ環境下で活動を広げるための販管費増加などを考慮して減益予想としている。ただし、原材料価格高騰の販売価格への転嫁や原価改善効果などで、通期も上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。
■株価は反発の動き
株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新する展開だったが、売り一巡して反発の動きを強めている。指標面の割安感も評価して出直りを期待したい。10月25日の終値は538円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS41円22銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の20円で算出)は約3.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1030円86銭で算出)は約0.5倍、そして時価総額は約25億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)