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建設技術研究所は上値試す、22年12月期は上振れの可能性
- 2022/10/28 09:12
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
建設技術研究所<9621>(東証プライム)は総合建設コンサルタント大手である。グローバルインフラソリューショングループとしての飛躍を目指すとともに、インフラ整備を通じた「サステナビリティ」の実現にも取り組んでいる。10月25日にはグリーンスローモビリティ・MaaSの実証実験、10月27日には流域の渇水リスクをリアルタイムで評価する水循環予測情報システムの開発を発表した。22年12月期は事業拡大に向けた積極投資で減益予想としているが、第2四半期累計が順調だったことを勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性がありそうだ。防災・減災対策やインフラ老朽化対策など国土強靭化政策関連で事業環境は良好である。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合いが悪化する状況でも高値圏で堅調に推移している。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。
■総合建設コンサルタント大手
総合建設コンサルタントの大手である。河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持っている。20年8月には連結子会社の建設技研インターナショナルの株式を追加取得して完全子会社化した。海外では英国Waterman Group Plc(ロンドン証券取引所上場)を連結子会社としている。
21年12月期のセグメント別構成比は、売上高が国内建設コンサルティング事業72%、海外建設コンサルティング事業28%、利益(調整前営業利益)が国内建設コンサルティング事業86%、海外建設コンサルティング事業14%だった。収益面では公共事業への依存度が高い。
■グローバルインフラソリューショングループ目指す
グローバルインフラソリューショングループとして飛躍することを目指し、CTIグループ中長期ビジョン「SPRONG2030」では、目標数値として30年度の売上高1000億円(単体600億円、主要グループ会社400億円)(国内720億円、海外280億円)、営業利益率9%(単体10%、主要グループ会社7%)、社員数5000人を掲げている。
そして中長期ビジョン目標達成に向けた第1ステップとなる中期経営計画2024では、目標数値として24年12月期の受注高850億円、売上高850億円、営業利益68億円、営業利益率8%、ROE10%以上、および建設技術研究所単体ベースの売上高550億円、営業利益率10%、社員数2300人を掲げている。
セグメント別には、国内建設コンサルティング事業の受注高が630億円、売上高が630億円、営業利益が60億円、営業利益率が9.5%、海外建設コンサルティング事業の受注高が220億円、売上高が220億円、営業利益が8億円、営業利益率が3.6%の計画としている。
CTIグループ全体の重点施策として、グループ協業の推進による事業拡大、主要グループ会社の安定経営と収益性の改善、グループガバナンスの強化、グループ全体でのサステナビリティ経営の推進に取り組む。社会の課題に応じた重点事業分野(防災・減災、都市・建築、土壌・地盤・地質、環境マネジメント、エネルギー、PPP事業など)を設定し、その売上高伸長を目指す方針としている。
21年12月にはサステナビリティ委員会を設置した。さらに、健康経営、ダイバーシティ&インクルージョン、従業員の成長と自律を縫合した「CTIウェルビーイング」に取り組むため、社内宣言ならびにCTIウェルビーイング基本方針を策定した。22年1月には、企業活動を通じて次世代育成に貢献するため一般事業主行動計画を策定した。
22年6月には「知的財産に関する基本方針」を策定した。また、インフラ整備を通じた「サステナビリティ」の実現に向けて、さまざまな提案に取り組むための方針として「CTIグループ・サステナブルチャレンジ」を策定した。22年7月にはAIを適切に活用していくことを社内外に宣言することを目的として「CTIグループAI倫理指針」を策定した。また22年7月には、女性活躍推進法に基づく優良企業として、厚生労働大臣から「えるぼし」認定の二つ星(2段階目)を取得した。
22年9月には23年12月期の研究開発投資の基本方針を公表した。事業展開の加速や持続可能な社会の構築を目的に総額を12億円(22年12月期は11億円)とした。このうち社会のサステナビリティを実現するための投資(グリーン関連研究揮発)の予算を2億円とした。
■新分野・新事業への展開を加速
22年1月には新分野や新事業への展開を加速するため、SBIホールディングス<8473>の子会社SBIインベストメントが運営する「SBI4+5ファンド」に出資した。本ファンドが出資するスタートアップ企業を支援するとともに、スタートアップ企業との連携による技術開発や事業開発に取り組む。また、京成バス、損害保険ジャパン、アイサンテクノロジー<4667>および埼玉工業大学との5者共同で、千葉市未来技術等社会実装促進事業の自動運転車社会実装サポート事業に採択された。
22年2月には陸地コンサルタント(広島県東広島市)と業務提携した。また、東京都豊島区が実施するPPP事業(公民連携事業)である旧第十中学校跡地への野外スポーツ施設整備・管理運営事業において、地域企業を含むコンソーシアムの代表企業として事業を実施すると発表した。
22年3月には、22年1月に公表した「次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画」について、よりスピード感をもって達成するために、計画期間を従来の「22年1月1日~24年12月31日の3ヶ年」から「22年1月1日~23年12月31日の2ヶ年」に短縮した。また、大分県由布市と「地域自治を大切にした住み良さ日本一のまち・由布市」の実現に向けて、交通・都市・地域活性・防災をテーマに地域の課題解決を推進することを目的に包括連携協定を締結した。
22年8月には、下水管内の以上を早期に検知するためのリアルタイム水位監視および微生物調査・分析に関する技術を開発したとリリースしている。また、AIによる高潮・越波予測システムを開発し、情報提供サービスを開始したとリリースしている。
22年9月には、AIを用いた再現性の高い大気汚染予測モデルを作成し、これに基づく局地的、短期的な大気汚染物質濃度の情報提供サービスを開始した。また、大阪府四条畷市田原地域において自動運転車やデマンド交通の移動支援サービスの実証実験(10月1日~10月30日)を実施すると発表した。22年10月には長野技研コンサルタント(長野県長野市)と業務提携した。
10月25日には、関東バスおよび東日本電信電話と、東京都杉並区荻窪地域(荻窪駅南側エリア)において、グリーンスローモビリティの実証運行およびスマートフォンアプリを活用したMaaSの実証実験を実施(11月3日~13日の間)すると発表した。10月27日には、流域の渇水リスクをリアルタイムで評価する水循環予測情報システムの開発と技術サービス開始を発表した。
■22年12月期減益予想だが上振れの可能性
22年12月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため前期比増減率は非記載、環境総合リサーチを新規連結)は売上高が780億円、営業利益が64億円、経常利益が65億円、親会社株主帰属当期純利益が43億円としている。収益認識会計基準適用前の21年12月期実績との単純比較で売上高は4.8%増収、営業利益は8.5%減益、経常利益は8.7%減益、親会社株主帰属当期純利益は3.8%減益の形となる。配当予想は21年12月期と同額の60円(期末一括)としている。
セグメント別には、国内建設コンサルティング事業の受注高が3.9%減の564億円、売上高が3.9%増の558億円、営業利益が3.9%減の58億円、海外建設コンサルティング事業の受注高が12.4%減の226億円、売上高が7.2%増の222億円、営業利益が37.0%減の6億円の計画としている。
グループ合計の受注高は6.5%減の790億円の計画としている。22年12月期の受注環境としては、海外におけるコロナ禍を含む不安定な情勢が継続し、事業の中断・遅延や新規業務発注の見送り・延期などの不透明感があり、さらにグループ全体としてのエネルギー分野など新事業・分野への展開の注力、労働時間削減などを考慮して、受注を抑制する方針としている。
なお22年3月にはグループ会社の建設技研インターナショナルが、クボタ建設、神鋼環境ソリューション、北九州ウォーターサービス、TECインターナショナルと構成するコンソーシアムで、カンボジア王国カンダール州タクマウ市におけるタクウマ上水道拡張計画を受注している。
売上高については増収を見込んでいる。収益認識会計基準適用の影響としては、従来方法(完成基準)に比べて第1四半期(1~3月)の売上構成比が高まる見込みとしている。営業利益については、事業拡大に向けた積極投資で研究開発費や人件費が増加するため減益予想としている。
第2四半期累計は、売上高が418億44百万円、営業利益が54億62百万円、経常利益が56億01百万円、親会社株主帰属四半期純利益が37億96百万円だった。収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高が70億73百万円増加、売上原価が43億31百万円増加、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ27億41百万円増加している。収益認識会計基準適用前の前年同期実績は売上高が352億22百万円、営業利益が35億65百万円、経常利益が36億27百万円、親会社株主帰属四半期純利益が23億55百万円だった。
グループ合計の受注高は前年同期比10.1%増の527億85百万円だった。国内建設コンサルティング事業は防災・減災対策の強化やインフラ老朽化対策の推進など国土強靭化関連で堅調に推移した。海外建設コンサルティング事業もコロナ禍に伴う制限解除で正常化に向かった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が235億38百万円で営業利益が34億90百万円、第2四半期は売上高が183億06百万円で営業利益が19億72百万円だった。
通期予想は据え置いている。第2四半期累計の進捗率は売上高が53.6%、営業利益が85.3%、経常利益が86.2%、親会社株主帰属当期純利益が88.3%と順調だった。第3四半期以降に事業拡大に伴う積極的な人材確保および賃金上昇による人件費の増加が見込まれるとしているが、第2四半期累計が順調だったことを勘案すれば、第通期会社予想は上振れの可能性がありそうだ。防災・減災対策やインフラ老朽化対策など国土強靭化政策関連で事業環境は良好である。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は上値試す
株価は地合いが悪化する状況でも高値圏で堅調に推移している。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。10月27日の終値は2961円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS304円11銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の60円で算出)は約2.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2734円99銭で算出)は約1.1倍、そして時価総額は約419億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)