【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本エンタープライズは調整一巡、企業向メッセンジャーアプリ開発を材料視して再動意、8月高値目指す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 コンテンツ制作・配信の日本エンタープライズ<4829>(東1)の株価は、企業向け通話アプリ「AplosOneソフトフォン」を材料視して急騰した8月高値858円から反落して400円近辺まで調整したが、企業向メッセンジャーアプリ「BizTalk」を材料視して10月28日の539円まで急伸した。調整一巡感も強めて再動意のようだ。8月高値を目指す展開だろう。

 コンテンツ配信などのコンテンツサービス事業と、店頭アフィリエイト(広告販売)や企業向けソリューション(システム受託開発)などのソリューション事業を展開し、中国ではチャイナテレコムの携帯電話販売店運営と電子コミック配信サービスを手掛けている。

 配信コンテンツを自社制作して「権利を自社保有する」ビジネスモデルが基本戦略で、13年3月に音声通信関連ソフトウェア開発のandOneを子会社化し、14年4月にネイティブアプリを主としたモバイルコンテンツ事業を積極推進するため子会社HighLabを設立した。今後の展開としてHighLabはネイティブゲーム開発を、andOneは企業向け通話アプリ「AplosOneソフトフォン」の技術支援を強化する。

 14年6月には、インドネシア大手移動体通信キャリアのXL Axiata社が運営するアプリストア内のアプリ取り放題サービス向けに、スマートフォンアプリの提供を開始した。ローカライズした自社アプリを世界の各種プラットフォームに配信して自社コンテンツ資産の2次利用を推進する方針だ。

 法人向け事業展開では14年8月、スマートフォンを活用して企業の内線電話網を構築するアプリケーション「AplosOneソフトフォン」を開発した。従業員のデスク上のビジネスフォン(固定電話)が不要となり、スマートフォンを内線電話として使用できるアプリケーションだ。

 10月27日にはビジネス専用メッセンジャーアプリ「BizTalk」を発表した。メッセンジャーアプリが持つ利便性はそのままで、企業のセキュリティ管理を徹底した業務用ソリューションとして11月から販売開始する。また10月27日には、子会社HighLabが10月21日から配信開始したゲームアプリ「ひっぱれ!ネコPingプラネット」が20万ダウンロードを突破したと発表している。

 9月30日に発表した今期(15年5月期)第1四半期(6月~8月)の連結業績は、売上高が前年同期比15.6%増の13億16百万円、営業利益が同12.4%減の52百万円、経常利益が同5.1%減の57百万円、純利益が同2.6倍の2億12百万円だった。コンテンツサービス事業への積極投資で広告宣伝費が増加したため営業減益、経常減益だったが、売上高は2桁増収と好調に推移し、売上原価率も前年同期との比較で2.0ポイント改善した。純利益は投資有価証券売却益3億31百万円が寄与した。

 セグメント別の動向を見ると、コンテンツサービス事業は同11.7%増収だった。交通情報、ゲーム、ライフスタイルなどキャリアの定額制サービス向けが順調に拡大した。無料チャットアプリ「Fivetoak」は100万ダウンロードを突破した。ソリューション事業は同19.6%増収だった。店頭アフィリエイト広告販売が大幅増収だった。また千葉県から少子化対策強化事業「ChibaWomanDiary」を受託し、企業向け通話アプリ「AplosOneソフトフォン」の販売を開始した。

 通期の連結業績見通しは前回予想(7月9日公表)を据え置いて売上高が前期比15.6%増の52億10百万円、営業利益が同23.7%増の4億15百万円、経常利益が同26.4%増の4億30百万円、純利益が同19.9%減の3億50百万円、配当予想は前期と同額だが普通配当で年間3円(期末一括)としている。

 コンテンツサービス事業では、高収益のキャリア定額制サービス向けコンテンツが交通情報、ゲーム、ライフスタイルを中心に拡大する。子会社HighLabが配信開始したゲームアプリ「ひっぱれ!ネコPingプラネット」も寄与する。自社コンテンツ資産の2次利用も順次寄与する見込みだ。

 ソリューション事業では、店頭アフィリエイト広告販売が前期第2四半期(9月~11月)をボトムとして回復基調だ。法人向け通話アプリ「AplosOneソフトフォン」やビジネス専用メッセンジャーアプリ「BizTalk」の寄与も期待される。

 中国・上海の携帯電話販売については、キャリアの販売施策変更に影響されない収益構造の構築を目指し、大口法人への営業強化、付属品販売強化、徹底的なコスト削減などの施策を推進して早期の黒字化を目指している。収益改善が期待されるだろう。

 株価の動き(14年2月28日付で東証2部から東証1部へ指定替え)を見ると、企業向け通話アプリ「AplosOneソフトフォン」を材料視して急騰した8月高値858円から反落して400円近辺まで調整したが、ビジネス専用メッセンジャーアプリ「BizTalk」を材料視して10月28日には539円まで急伸した。調整一巡感も強めて再動意のようだ。

 10月28日の終値510円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS9円28銭で算出)は55倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間3円で算出)は0.6%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS111円20銭で算出)は4.6倍近辺である。日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線を回復して強基調へ転換の動きを強めている。8月高値858円を目指す展開だろう。

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