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トレジャー・ファクトリーは上値試す、23年2月期大幅増収増益予想、既存店好調で3回目の上振れの可能性
- 2022/11/11 08:53
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
トレジャー・ファクトリー<3093>(東証プライム)はリユースショップを複数業態で全国展開し、成長戦略として生活に密着したリユースの総合プラットフォーム構築を目指している。23年2月期は既存店が好調に推移し、新規出店も寄与して大幅増収増益予想(10月12日付で2回目の上方修正)としている。22年10月の売上は全店が前年比129.9%、既存店が119.0%と好調に推移している。下期は新規出店費用の増加などを考慮しているが、既存店が好調に推移し、売上総利益率改善も寄与して通期予想は3回目の上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は好業績を評価して上場来高値を更新している。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。
■リユースショップを複数業態で全国展開
総合リユース業態トレジャー・ファクトリーや服飾専門リユース業態トレファクスタイルを主力として、リユースショップを複数業態で首都圏・直営店中心に全国展開している。
さらに周辺事業・新規事業としてBtoBライブネットオークション事業、引越・買取サービスのトレファク引越事業、不用品買取だけでなく不動産売買・仲介も行うトレファク不動産事業、終活・生前整理サービスのレガシー事業、ドレスやブラックフォーマルをレンタルするECレンタル事業「Cariru」なども展開している。生活に密着したリユースの総合プラットフォーム構築を目指し、マルチブランドの業態展開による販売力やマルチチャネルによる仕入力を強みとしている。
19年1月にはシステム開発のデジタルクエストを子会社化、20年2月にはAIアプリのXZ(クローゼット)運営のSTANDING OVATIONと資本業務提携、20年10月には静岡県内でリユースショップ直営店12店舗を展開するピックアップジャパンを子会社化した。22年2月には子会社トレファクテクノロジーズを設立してデジタルクエストのシステム開発受託事業を承継した。メディアコンテンツ事業が残るデジタルクエストについては外部第三者への株式売却を検討する。
海外はタイ(16年3月進出)のバンコクで直営店3店舗を展開し、22年2月期に単年度黒字化した。21年4月には台湾に現地法人を設立した。台湾では23年2月期に1号店を出店し、台湾でのリユース事業のモデル確立を目指す。
22年10月末時点の店舗数は、グループ合計235店舗(タイ3店舗を含むトレジャー・ファクトリーが78店舗、トレファクスタイルが70店舗、トレファクスポーツが7店舗、ユーズレットが8店舗、トレファクマーケットが1店舗、ブランドコレクトが6店舗、子会社のカインドオルが37店舗、ゴルフキッズが15店舗、ピックアップが13店舗)となっている。このうち直営店は202店舗である。
なお収益面では引越シーズンで単価の高い生活家電や家具の構成比が高まる第1四半期(3月~5月)の利益率が高くなり、単価の低い夏物衣料が主力となる第2四半期(6月~8月)の利益率が低くなる季節特性がある。
■新規出店やM&Aで成長加速
中期経営計画では最終年度25年2月期の目標値(22年10月12日付で上方修正)として、売上高315億円、経常利益24.4億円、経常利益率7.8%、親会社株主帰属当期純利益15.9億円、1株当たり配当金40円を掲げている。24年2月期以降の既存店売上については概ね前年並み、新規出店は25店舗~30店舗の想定としている。また、当面の配当性向目標は30%以上としている。
基本方針はリユース事業の成長、新規事業への投資、海外市場での成長、M&Aによる成長、DX投資による成長を掲げている。SDGsを推進するとともに、さらなる成長が見込まれるリユース市場において、グループ一体となってリユース・ネットワークの拡大を推進する。
リユース事業の成長では、グループ全体で複数業態を組み合わせて年間20~30店ペースの出店を継続し、リユースのネットワークを拡大する。さらに多店舗体制構築に向けた採用・教育の強化、更なる新業態開発、グループのリユース会社の収益改善を推進する。
新規事業への投資では、物流拠点拡張によるBtoBライブネットオークション事業の本格展開、買取と引越をセットで行う独自の買取引越事業の成長加速、レンタル事業への継続投資を推進する。
海外事業では、タイ事業(21年11月期に単年度黒字化)の利益体制の構築と新規出店、および台湾への進出を推進する。M&Aでは、既存事業とのシナジー効果や新たな収益事業につながるM&Aを積極的に検討する。DX投資では、自社システム部門およびシステム子会社の開発力を活用し、業務効率化、査定効率化、新たな買取機会・販売機会創出などを推進する。
22年2月期は過去最高となる17店舗を新規出店した。総合リユース業態トレジャー・ファクトリーは関東・関西・中部にバランス良く出店している。服飾専門リユース業態トレファクスタイルは大型商業施設からの誘致が増加しており、21年10月にはイオンモールNagoya Noritake Garden(名古屋市)に名古屋則武新町店をオープンした。さらに初の買取専門店(東京都・買取センター広尾店、東京都・表参道2号店)も出店して高額アイテムの仕入を強化している。
リアル×WEBによる深化では、自社ECサイトの出品数増加に伴ってEC売上比率が上昇基調である。22年2月期のEC売上比率(連結ベース)は14.5%となり、21年2月期比1.1ポイント上昇した。さらにBtoBライブネットオークション事業を、店頭、ECに続く第3の販売チャネルに育成する方針で、店舗数拡大やオークション事業強化に対応した物流機能強化のため関東および関西の物流センターを増設する。
M&A・アライアンスでは、22年2月に終活・生前整理分野「Regacy」において、相続対策プラットフォームの「はなまる手帳」を運営するはなまる手帳と業務提携した。22年3月にはALBERT<3906>と共同で、EC出品のために撮影した衣類画像から必要な情報をAIが自動入力する「クロスキャナ」を開発し、トレファク店舗での本格導入を開始した。EC出品業務にかかる「ささげ作業」の大幅な効率化を図り、システム導入前との比較でEC出品点数の10%増加を目指す。22年9月には東急コミュニティーの住み替えサービス「たくす」との連携を開始した。
■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書
22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示している。中期経営計画で掲げた各種取組を推進し、業績目標の達成、株主還元の拡充、コーポレートガバナンスの充実などによって継続的に企業価値の向上(時価総額の増大)を図り、25年2月期末までにプライム市場上場維持基準への適合を目指すとしている。
22年5月開催の第27回定時株主総会から、東京証券取引所の関連会社であるICJが運営する「機関投資家向け議決権電子行使プラットフォーム」に参加した。第26回定時株主総会から個人株主の議決権行使の選択肢を増やすためインターネットを利用した議決権行使を導入しており、国内外の機関投資家に対しても議決権を行使しやすい環境を整備した。また定款を変更し、将来的に株主総会の開催方法の選択肢の一つとしてバーチャルオンリー株主総会の開催も可能にした。
なお22年10月には中間および期末の「株主通信」を廃止すると発表している。地球環境に配慮して紙の使用量削減を含む省資源化を推進する。一方で、自社HPのコーポレートサイトにおけるIR情報の充実を推進する。
■23年2月期大幅増収増益予想、既存店好調で3回目の上振れの可能性
23年2月期連結業績予想(22年7月13日付で上方修正、22年10月12日付で2回目の上方修正)は、売上高が22年2月期比13.7%増の265億14百万円、営業利益が95.2%増の19億43百万円、経常利益が87.6%増の19億77百万円、親会社株主帰属当期純利益が73.4%増の12億20百万円としている。また配当予想(22年8月10日付で第2四半期末2円上方修正、22年10月12日付で期末5円上方修正)は、22年2月期比10円増配の27円(第2四半期末12円、期末15円)としている。予想配当性向は24.6%となる。
第2四半期累計は売上高が前年同期比19.5%増の128億25百万円、営業利益が6.5倍の10億02百万円、経常利益が5.7倍の10億32百万円、親会社株主帰属四半期純利益が14.8倍の6億65百万円だった。
リユース意識の高まりや外出需要の回復などで既存店売上が想定以上に好調に推移し、新規出店も寄与して前回予想(22年7月13日付で上方修正)を上回る大幅増収増益だった。仕入高(買取)は多様なチャネルを生かし、連結ベースで19.9%増加、単体ベースで18.0%増加と大幅に伸長した。連結ベースの売上総利益率は62.7%で1.0ポイント上昇した。カインドオルやピックアップジャパンなどリユース事業を行うグループ会社の損益改善も寄与した。新規出店は年間20~25店舗の計画に対して8月末時点で7店舗、さらに10月末時点で14店舗の出店を完了した。
単体ベースの既存店売上高は109.2%、販売件数は107.5%、1件あたり販売単価は101.6%だった。売上総利益率は66.6%で1.1ポイント上昇した。値下げや廃棄の抑制も寄与した。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が67億33百万円で営業利益が7億66百万円、第2四半期は売上高が60億91百万円で営業利益が2億36百万円だった。引越シーズンで単価の高い生活家電や家具の構成比が高まる第1四半期(3月~5月)の利益率が高くなり、単価の低い夏物衣料が主力となる第2四半期(6月~8月)の利益率が低くなる季節特性があるが、第2四半期の営業利益は連結決算移行(17年2月期)後初の黒字を達成した。
第2四半期累計が計画を大幅に上回ったことを受けて、通期連結業績予想を上方修正し、前回予想に対して売上高を4億76百万円、営業利益を5億43百万円、経常利益を5億47百万円、親会社株主帰属当期純利益を3億34百万円それぞれ増額した。下期の単体ベースの既存店売上高の想定は101%(期初時点では前期並みの想定)とした。新規出店に関しては期初時点の計画(20店舗~25店舗)に概ね変更はなく、22年12月末時点で20店舗(海外1店舗、FC1店舗含む)の出店完了見込みとしている。コスト面では、昨今の物価上昇に対応して従業員給与のベースアップを進めるとともに、電気代の上昇などにより販管費の増加を見込むが、大幅増収効果や売上総利益率改善効果で吸収する見込みだ。
修正後の通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が48.4%、営業利益が51.6%、経常利益が52.2%、親会社株主帰属当期純利益が54.5%となる。下期は新規出店費用の増加などを考慮しているが、既存店が好調に推移し、売上総利益率改善も寄与して通期予想は3回目の上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
なお月次売上(単体直営店の店舗売上、前年同月比速報値)を見ると、22年10月は全店が129.9%、既存店が119.0%だった。気温の低下に伴って秋冬衣料の販売が大幅に伸長し、キャンペーン効果で生活家電、生活雑貨、ホビー用品、ブランド品なども好調に推移した。既存店売上は21年9月から14ヶ月連続の前年比プラスと好調が続いている。なお3~10月の新規出店は14店舗となった。
■株主優待制度は2月末の株主対象
株主優待制度は毎年2月末時点の1単元(100株)以上保有株主を対象として実施(詳細は会社HP参照)している。
■株価は上値試す
株価は好業績を評価して上場来高値を更新している。目先的には日柄調整の可能性もあるが、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。11月10日の終値は2182円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS109円56銭で算出)は約20倍、今期予想配当利回り(会社予想の27円で算出)は約1.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS424円66銭で算出)は約5.1倍、時価総額は約254億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)