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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】sMedioは中期成長力を評価して6月の上場来高値試す
- 2015/8/4 12:39
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
sMedio(エスメディオ)<3902>(東マ)はスマートフォンやタブレットなどに組み込まれるソフトウェア開発専業企業である。8月3日の株価はストップ高水準の5060円まで急伸した。調整が一巡して強基調に転換した形だ。
■スマートフォン・タブレットなどに組み込まれるソフトウェア開発専業企業
07年3月の設立で、15年3月東証マザーズに新規上場した。起業時のコンセプトを「開発はアジア、市場は世界へ」として、世界市場で通用するソフトウェア専業企業を目指し、デジタルテレビ、ブルーレイプレイヤー、パソコン、スマートフォン、タブレットなどに組み込まれるソフトウェアの開発を主力としている。
ネットワーク・メディアプレイヤー、無線接続、リモートアクセス関連のソフトウェア開発・品揃えに強みを持ち、主要取引先は東芝<6502>、富士通<6702>、シャープ<6753>、米マイクロソフトなどである。開発拠点は中国・上海(100%子会社)、台湾・台北(支店)、および日本・岡山(100%子会社)である。
■当社ソフトウェア搭載の製品出荷台数に応じたライセンス収入が収益柱
現在の収益柱は、当社開発のソフトウェアが搭載された製品の出荷台数に応じたライセンス・ロイヤリティ収入(ソフトウェアライセンス事業)である。
過去の業績推移を見ると、創業時から11年12月期までの収益を牽引したデジタル家電やブルーレイ機器の市場が12年に急減速したため、12年12月期の業績が一時的に悪化した。
しかし、スマートフォンなどスマートデバイス向けワイヤレス・コネクティビティ(Wireless Connectivity)関連ソフトウェアが急成長して、13年12月期の業績がV字回復した。そして14年12月期は大幅増収増益で売上高、利益とも過去最高を更新した。
ハイレゾ音源対応のメディアプレイヤーで、家庭内ネットワークでテレビ・パソコン・スマートフォンと連携し、ビデオ・音楽・写真の再生・アップロード・ダウンロードが行える「sMedio TrueLink+」などが牽引して成長軌道を回復した形だ。
中期的には、スマートフォン、タブレットなどスマートデバイス向けワイヤレス・コネクティビティ関連分野、および4Kテレビ対応の次世代ブルーレイ関連分野を2本柱として、コンシューマー向け(BtoC)ダウンロード型およびサブリクリプション型課金収入をソフトウェアライセンス事業に次ぐ新たな収益柱に育成して、成長を加速する方針を打ち出している。
■ワイヤレス・コネクティビティ関連の要素技術に強み
ワイヤレス・コネクティビティ搭載製品の市場はスマートフォンやタブレットを中心に急成長が予想されている。ワイヤレス・コネクティビティ関連ソフトウェアというのは、テレビ、パソコン、スマートフォン、タブレットなどを無線で接続してデータ伝送するソフトウェアのことである。
たとえば「スマートフォンの画面をテレビに映し、スマートフォンをゲームコントローラーの代わりにしてテレビ画面でゲームを楽しむ」「リビングに置いたテレビやブルーレイに録画した番組、放送中の番組をベッドルームに持ち込んだタブレットで観る」「パソコンに保存している契約書などのコンテンツを外出先のスマートフォンやタブレットにダウンロードする」といったことを可能にする。
そして当社は、ワイヤレス・コネクティビティ関連ソフトウェアを開発・製品化するための要素技術(メディア処理技術、無線通信技術、著作権保護および認証技術)をすべて習得済みであり、マルチOS(基本ソフト)およびマルチデバイスに対応できる技術力を強みとしている。
また近接接続のコンタクトワイヤレス(NFC)から、ピアツーピアネットワーク、ホームネットワーク、遠隔接続のリモートアクセス(Internet)まで接続距離を幅広くカバーしている技術力や、異なるOSが搭載された端末同士でもデータをスムーズに伝送するソフトウェアの品揃えも強みだ。
なお当社が今後特に注力する分野は、ピアツーピアネットワークおよびホームネットワークの分野としている。
■ワイヤレス・コネクティビティ関連と次世代ブルーレイ関連が2本柱
中期成長戦略として、ブルーレイを中心としたデジタル家電市場、およびワイヤレス・コネクティビティ関連市場を2本柱に、IoT関連・ウェアラブル端末関連市場への展開も強化して、ソフトウェア・サービス事業の成長を加速させる方針だ。中国などアジアの端末メーカーに対する拡販も強化する。
デジタル家電関連では20年東京夏季五輪に向けて、本格普及が期待される4Kテレビに対応した次世代ブルーレイ関連も有望分野となる。15年6月には、米Videon Central社と次世代ブルーレイ・ディスク規格である「ウルトラHDブルーレイ」に準拠した組み込み機器向けソフトウェア群を共同開発し、米Videon Central社が米国および欧州の主要なLSIメーカーや、放送業界向けセットトップボックスに拡販することを目的として業務提携した。
さらに7月15日には、次なる事業および収益の柱を目指して、西本雅一氏および菊池正和氏と共同出資でIoT事業子会社ブイログを設立(8月3日予定、当社出資比率78.6%)すると発表した。
また7月24日には、村田製作所<6981>製Wi-Fi module向けに、Miracast開発ソリューション「sMedio Miracast Solution」の提供開始を発表した。Miracastは無線通信によるディスプレイ伝送技術であり、組み込み機器へのMiracast機能実装を容易にするトータルソリューションとして利用できる。
■コンシューマー向けダウンロード課金収入を新たな収益柱に育成
またメーカー向け(BtoB)組み込み型ソフトウェア開発・提供企業にとどまらず、ソフトウェアライセンス事業に次ぐ新たな収益柱として、ダウンロード型課金収入を新たな収益柱に育成する方針を打ち出している。
ワイヤレス・コネクティビティ関連ソフトウェア分野で、コンシューマー向け(BtoC)サブスクリプションサービスによるダウンロード販売・月額課金型販売モデルを強化する。ダウンロード型課金収入も新たな収益柱に育成して、自社開発ソフトウェアの高付加価値化を推進する戦略だ。
ワイヤレス・コネクティビティ関連ソフトウェアが搭載されていない端末を使っている人も、当社のソフトウェアをダウンロードすることで機能を追加できる。たとえば15年4月発売の新製品「sMedio TV Suite」は、ブルーレイレコーダーに撮りためたTV番組や放送中番組をPCやタブレットで視聴できるデジタルTVアプリで、消費者がダウンロードして購入できる。
15年6月には、コンシューマー向けワイヤレス・スマートフォン管理ソフトの新製品「sMedio pConnect」のダウンロード販売を開始した。スマートフォンに登録された連絡先の編集、写真・音楽・動画の視聴、SNSの送受信や電話の着信などを、ケーブル接続なしでパソコンの大きなスクリーンとキーボードから快適に編集・閲覧できる便利なユーティリティ・アプリである。
7月2日には、パソコンのドライブに入ったDVDを家じゅうどこでも、スマートフォンやタブレットで視聴できる「sMedio TrueDVD Streamer」のダウンロード販売開始を発表した。
また15年6月にはモバイルアプリケーション開発の情報スペースを完全子会社化した。NTTドコモ<9437>のスマートフォンユーザーを中心に、15年3月末時点で300万以上のダウンロードユーザーを獲得している同社のデータバックアップサービスソフト「JSバックアップ」を当社グループの製品構成に取り込み、ダウンロード課金モデルへの展開やモバイル業界への展開を積極推進する。なお今後はNTTドコモが主要取引先に加わるため、取引関係を一段と強化する方針だ。
さらに中期的にはM&Aも積極活用して広告・コンテンツ・認証鍵なども加えたハイブリッド型収益を育成し、中期的に年率20~30%程度の増収、年率30~40%程度の利益成長を目指している。
■15年12月期は第2四半期累計を増額修正、通期も増額余地
7月21日に今期(15年12月期)第2四半期累計(1月~6月)連結業績予想の増額修正を発表した。前回予想(3月27日公表)に対して、売上高は80百万円増額して6億50百万円、営業利益は1百万円増額して1億36百万円、経常利益は28百万円増額して1億48百万円、純利益は3百万円増額して85百万円とした。
売上面では、特に海外向けソフトウェアライセンス収入が想定以上となったようだ。経費面では、管理体制強化費用の増加、子会社経費の増加、本社移転に伴う経費の増加、さらに人員増加に伴う海外経費の増加などで経費も想定を上回ったようだが、増収効果で吸収した。経常利益については円安進行に伴う為替差益も寄与したようだ。
通期の連結業績予想は前回予想(3月27日公表)を据え置いて売上高が前期比25.3%増の12億28百万円、営業利益が同59.3%増の3億16百万円、経常利益が同1.0%減の3億01百万円、純利益が同3.4%減の1億96百万円としている。配当予想は無配継続としている。
国内における新規顧客の獲得、海外販売のための体制整備、サブスクリプションサービスによる課金モデル・ダウンロード販売の強化なども推進する方針だ。
また15年6月に子会社化した情報スペースの本格寄与は16年以降としている。
通期予想に対する修正後の第2四半期累計の進捗率は売上高52.9%、営業利益43.0%、経常利益49.2%、純利益43.4%となる。コンシューマー電子機器市場の消費動向、採用製品の顧客製品搭載率、新規開発案件の進捗率など不確定要素が多いとして通期連結業績の会社予想を据え置いたが、デジタルテレビ4K化に伴って期後半にはブルーレイ機器の買い替え需要増加なども期待される。
■株価は6月高値後の調整が一巡して急伸
株価の動き(初値3月27日4000円)を見ると、6月8日の上場来高値5750円から反落して調整局面だったが、地合い悪化も影響した7月9日の直近安値3515円から切り返し、8月3日には5060円まで急伸した。第2四半期累計業績の増額修正や村田製作所への製品供給などを好感して調整が一巡したようだ。
8月3日の終値5060円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS116円46銭で算出)は43倍近辺、実績連結PBR(15年12月期第1四半期末の連結BPS773円93銭で算出)は6.5倍近辺である。
日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線を突破して上伸した。6月高値後の調整が一巡して強基調に転換した形だ。15年12月期連結業績予想の増額余地や中期成長力を評価して6月高値5750円を試す展開だろう。