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インテリジェントウェイブは調整一巡、23年6月期1Q大幅増収増益で通期大幅増収増益予想据え置き
- 2022/11/21 08:43
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
インテリジェントウェイブ<4847>(東証プライム)はシステムソリューションを展開している。クレジットカード決済のフロント業務関連システム分野に強みを持ち、さらに新製品・サービスの強化やクラウドサービスを中心としたストックビジネスへの転換を推進している。23年6月期第1四半期は、既存顧客のFEPシステム更改に伴うハードウェア販売の増加、クレジットカード会社向けシステム開発の大型案件、クラウドサービスの伸長などで大幅増収増益だった。そして通期の大幅増収増益予想を据え置いた。積極的な先行投資を継続するが、システム開発や保守が堅調に推移し、クラウドサービスが本格化する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は上値を切り下げる形だが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。
■金融システムや情報セキュリティ分野のソリューションが主力
大日本印刷<7912>(DNP)の連結子会社でシステムソリューションを展開している。
高度な専門性が要求されるクレジットカード決済のフロント業務関連システム分野に強みを持ち、クレジットカード会社、ネット銀行、証券会社など金融関連のシステム開発受託・ハードウェア販売・保守サービスを収益柱としている。さらにクレジット決済システムの開発会社にとどまらず、決済・金融・セキュリティ分野を含む企業のビジネスリライアビリティを支えるITサービス会社を目指している。22年7月には、医療業界におけるランサムウェア対策・ヘルスケアIoT機器のセキュリティソリューションを開始した。
22年6月期のカテゴリ別売上高は、システム開発が21年6月期比1.6%増の53億57百万円、保守が10.7%増の15億02百万円、当社製品が5.7%増の3億54百万円、クラウドサービスが24.5%増の11億73百万円、ハードウェアが7.1%増の17億55百万円、他社製品が31.2%減の3億50百万円、セキュリティ対策製品が11.8%減の9億98百万円だった。ストック/フロー別売上比率はフロー売上が54.7%、ストック売上が45.3%だった。顧客別売上高上位はDNP、カード会社、システム開発会社である。金融業界のシステム投資や案件ごとの採算性が影響し、下期の構成比が高い特性もある。
■25年6月期営業利益率15.2%目指す
中期事業計画(ローリング方式で22年8月3日公表、23年5月期~25年6月期)では、最終年度25年6月期の数値目標として売上高165億円(決済・金融が118億円、クラウドサービスが30億円、セキュリティが17億円、ストック比率53.9%)、営業利益25億円、営業利益率15.2%を掲げている。主要製品・サービスの年平均成長率は決済・金融が8.2%、クラウドサービスが36.7%、セキュリティが19.4%としている。
事業基盤の強化・拡大に向けた重点施策としては、クラウドサービスを中心としたストックビジネスの拡大、クラウドサービスのさらなる利用ユーザー増加を見据えたインフラ環境と運用体制の整備、決済・金融事業におけるFEP(Front End Processing)システムのクラウド対応と顧客のIT戦略支援、決済・金融事業で培った技術と経験を活用した新製品開発と事業領域拡大、セキュリティ事業におけるプロダクト販売からセキュリティサービス提供へのモデル転換、システム運用体制の整備と運用品質のさらなる向上を推進する。さらに、持続的成長に向けて人財基盤の確立と共創基盤の確立も推進する。
なお21年3月には、社会の持続可能な発展に貢献しつつ、事業活動の持続可能性を高めていくことを前提として、具体的な施策を通じて全社的な取り組みを進めるためにサステナビリティ委員会を設置した。また21年5月にはサステナビリティ委員会が「健康経営宣言」を策定した。21年12月にはコーポレート・ガバナンスの充実に向けて、支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引や行為について審議・検討を行う機関として特別委員会(独立社外取締役と独立社外監査役で構成)を発足した。
22年1月には環境保全に係る取り組みの一環として、不要機器の廃棄処理を通じて子どもたちの教育支援を行うピープルポートの「こども支援プロジェクト」に参加した。22年3月には経済産業省の健康経営優良法人認定制度により、健康経営優良法人2022(大規模法人部門)に認定された。
22年5月には一般社団法人日本経済団体連合会会長、日本商工会議所会頭、日本労働組合総連合会会長、および関係大臣(内閣府、経済産業省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省)をメンバーとする「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」の趣旨に賛同して「パートナーシップ構築宣言」を公表した。22年9月には、災害発生時用に備蓄していた非常用食品4800食分を、フードバンクであるセカンドハーベスト・ジャパンに寄贈した。
■クラウドサービスを強化
クラウドサービスは、加盟店契約(アクワイアリング)業務をサポートするIOASIS、ポイント管理システムのIPRETS、自社製品NET+1のクラウド版となる国内外各種決済ネットワーク24時間365日接続システムのIGATES、自社製品ACEPlusのクラウド版となるクレジット決済不正検知システムのIFINDS、IFINDSにAIスコアリング機能を搭載したFARISがある。
22年6月期末時点の稼働社数はIOASISが10社、IFINDSが3社、IGATESが6社、IPRETSが1社となった。23年6月期末の計画は、IOASISが1社増加の11社、IFINDSが5社増加の8社、IGATESが3社増加の9社、IPRETSが1社としている。なおクラウドサービスの22年6月期の受注高は大型案件の複数受注で21年6月期比350.7%増の34億61百万円、期末受注残高は41億41百万円となっている。IOASISは大手カード会社、通信事業会社、小売事業会社で新規案件を受注した。IGATESは大手カード会社の大型案件を受注した。
AI関連の新規開発案件では、SMBC日興証券「AI株価見守りサービス」に、CEP(Complex Event Processing)エンジンであるFES(Fast Event Streamer)が採用されている。また新規事業としては、放送分野でIPフロー監視ソリューション「EoM」の拡販、放送マスターシステム全体のネットワーク監視や制御を行う「SmartOrchestrator(仮称)」の開発も推進している。
22年10月には、JCBとセキュリティーコンソーシアムを立ち上げ、業界全体の不正利用対策を推進する仕組みの構築に向けた基本合意書を締結した。23年度中の実用化を目指すとしている。22年11月にはPKSHA Technologyと、カード不正データシェアリングによって不正を防止できる「FARIS共同スコアリングサービス」を共同開発した。23年6月の本格稼働を目指すとしている。また22年11月には、自然言語処理技術を用いた社会課題の解決を目指し、AIによる日本語校正ツール「IWI日本語校正ツール」(α版)を開発した。正式版リリースに向けて開発を継続する。
■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書
22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示している。
中期事業計画の達成、株主還元の強化、コーポレート・ガバナンスの充実、ESG課題への対応などを通じた継続的な取り組みによって、企業価値の向上(時価総額の増大)に努め、24年6月末を目途にプライム市場上場維持基準適合を目指すとしている。
22年9月には計画書に基づく進捗状況を開示した。22年6月末時点で流通株式時価総額がプライム市場上場維持基準を充たしていないため、3ヶ年中期事業計画で掲げた業績目標の達成を中心に、企業価値の向上に向けて各種取り組みを推進するとしている。
■23年6月期1Q大幅増収増益と順調、通期大幅増収増益予想据え置き
23年6月期業績(非連結)予想は売上高が22年6月期比17.5%増の135億円、営業利益が18.4%増の18億円、経常利益が18.2%増の18億40百万円、当期純利益が21.2%増の12億80百万円としている。配当予想は22年6月期比3円増配の20円(期末一括)としている。連続増配予想となる。
第1四半期は、売上高が前年同期比61.9%増の36億46百万円、営業利益が3.8倍の4億83百万円、経常利益が3.8倍の4億56百万円、四半期純利益が3.9倍の3億24百万円だった。
売上面では、既存顧客のFEP(Front End Processing)システム更改に伴ってハードウェア販売が増加した。さらにクレジットカード会社向けシステム開発の大型案件や、クラウドサービスの伸長(売上高は78.7%増の4億34百万円)も寄与した。利益面では、クラウドサービスの利用ユーザー数拡大に対応するためのインフラ構築と運用体制強化に伴って収益性が一時的に低下したが、大幅増収効果で吸収した。クラウドサービスの新規受注はIOASISが2社、IFINDSが1社、IGATESが3社だった。
なお売上高の内訳は決済・金融が66.3%増の29億72百万円(システム開発が18.1%増の12億78百万円、保守が10.3%増の3億95百万円、自社製品およびサービスが26.9%減の1億36百万円、他社製品(ハードウェア等)が7.3倍の11億62百万円、クラウドサービスが78.6%増の4億34百万円、セキュリティが8.1%増の2億39百万円だった。またフロー/ストック別では、フローが2.1倍の21億75百万円、ストックが22.9%増の14億70百万円だった。
通期の売上高計画は、決済・金融が10.0%増の101億50百万円、クラウドサービスが70.5%増の20億円、セキュリティが23.9%増の13億50百万円としている。なおクラウドサービスの23年6月期第1四半期末時点の受注残高は42億14百万円となっている。これらの受注の売上計画は23年6月期20億円、24年6月期25億円としている。
通期の業績予想は据え置いている。積極的な先行投資を継続するが、システム開発や保守が堅調に推移し、クラウドサービスが本格化する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は調整一巡
株価は第1四半期業績に対してややネガティブ反応となり、上値を切り下げる形だが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。11月18日の終値は734円、今期予想PER(会社予想のEPS48円70銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の20円で算出)は約2.7%、前期実績PBR(前期実績のBPS305円87銭で算出)は約2.4倍、そして時価総額は約193億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)