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ミロク情報サービスは調整一巡、23年3月期予想を上方修正
- 2022/11/24 10:28
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ミロク情報サービス<9928>(東証プライム)は財務・会計ソフトを主力として、ERPソリューションとデジタルマーケティングを融合した統合型DXプラットフォームの構築を目指している。23年3月期第2四半期累計は前年の特別利益の反動で最終減益だが、計画を上回る増収、大幅営業・経常増益だった。新規顧客開拓などで主力のERP製品が好調に推移した。各種クラウドサービスの拡販や一部ERP製品のサブスクリプション型への意向によるストック型サービス収入の伸長も寄与した。そして通期予想も上方修正し、先行投資を吸収して大幅増益予想とした。クラウドサービスの伸長や積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は戻り高値圏から反落して上げ一服の形となったが、調整一巡して反発の動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。
■財務・会計ソフトの開発・販売およびサービス
会計事務所(税理士・公認会計士事務所)と、その顧問先企業である中堅・中小企業向けに、財務・会計ソフトなどの業務用アプリケーションソフト開発・販売、汎用サーバ・パソコン・サプライ用品販売、運用支援・保守サービス、経営情報・コンサルティングサービスなどを展開している。
会計事務所が抱えている課題を解決することで中堅・中小企業の支援にも繋がるトータルソリューションを強みとして、全国約8400の会計事務所ユーザー、および約10万社の中堅・中小企業ユーザーを有している。中堅・中小企業向けERP「MJSLINKシリーズ」は、矢野経済研究所「2022ERP市場の実態と展望」における年商50億円未満の企業向け財務会計管理ソリューションのライセンス売上高シェアで09年から13年連続売上高シェアNo.1、およびデロイト トーマツ ミック経済研究所「基幹業務パッケージソフトの市場展望2021年度版」の中規模企業向けERPシステム部門で売上高シェアNo.1となり、ダブルでNo.1を獲得している。
21年3月に中堅・中小企業向けクラウド型ERPシステム「MJSLINK DX」を提供開始、21年9月にクラウド型ワークフローサービス「MJS DX Workflow」を提供開始、22年4月に中堅企業向け新ERPシステム「Galileopt DX」を提供開始、22年6月にクラウド型電子契約サービス「MJS e-ドキュメントCloudサイン」を提供開始した。
22年3月期売上高構成比は、フロー型のシステム導入契約売上高が55%(システム導入契約時のハードウェアが9%、ソフトウェアが34%、システム導入支援サービスなどのユースウェアが13%)、ストック型のサービス収入が36%(会計事務所向け総合保守サービスTVSが7%、ソフト使用料が8%、企業向けソフトウェア運用支援サービスが15%、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入が4%、サプライ・オフィス用品が2%)、その他が9%だった。
収益はソフト保守サービス契約率上昇などでサービス収入が拡大するストック型収益構造である。なおシステム導入契約売上高の販売先別売上高構成比は、企業向けが52%、会計事務所向けが30%、その他が18%だった。
■M&A・アライアンスも積極活用
20年4月に組織・人事分野の独立系コンサルティングファームであるトランストラクチャを子会社化、20年5月にフィンテックサービスの企画・開発を行う子会社のMFTがセントラル警備保障(CSP)の子会社で店舗内現金管理・流通効率化を行うスパイスを子会社化、20年11月にリーガルテック企業であるリセと資本業務提携、20年12月にデジタルマーケティング支援のトライベックを子会社化した。
21年1月に信金中央金庫の「しんきん事業承継コンソーシアム」に参画、ゼロ知識証明を利用したブロックチェーン・プラットフォーム開発のToposWareと資本提携した。21年4月には子会社のトライベックとビズオーシャンを合併した。トライベックのデジタルマーケティング事業とビズオーシャンのメディア・広告代理事業を融合し、総合型DXコンサルティング企業として幅広いサービスを提供する。21年6月に税務・会計を中心としたコンテンツ提供や士業事務所の経営支援サービスを提供するKACHIEL(カチエル)と資本業務提携、21年9月にアナリティクス・コンサルティングサービスやAI開発・運用を行うセカンドサイト社と資本業務提携した。
22年2月には子会社DX Tokyoを設立した。全国の中小企業を対象にIT専門家シェアリング/サブスク事業を展開する。22年9月には顧客管理・営業支援システム開発・販売のBizMagicを子会社化した。
■クラウドサービス・サブスクモデルへの変革と新規事業の確立を推進
中期経営計画Vision2025(21年度~25年度)では、経営目標値として26年3月期売上高550億円、経常利益125億円、経常利益率22.7%、ROE20%超を掲げている。内訳は、単体ベース(ERP事業)が売上高360億円で経常利益75億円、グループ会社が売上高150億円で経常利益25億円、グループ新規事業(DX事業)が売上高50億円で経常利益25億円としている。
基本戦略として会計事務所ネットワークno.1戦略、中堅・中小企業向け総合ソリューション・ビジネス戦略、統合型DXプラットフォーム戦略(新規事業領域)、クラウド・サブスク型ビジネスモデルへの転換、グループ連携強化によるグループ会社の独自成長促進、戦略実現を加速する人材力・経営基盤強化を推進する。
単体ベース(ERP事業)では、クラウドサービスの拡充とサブスクリプション型収益モデルの比率を高めて、安定的な収益基盤の更なる強化を目指すとともに、価値創造を最大化する総合的なソリューションを展開する。グループ会社では、コンサルティング&技術力の発揮と、グループ再編による生産性の向上を目指す。
グループ新規事業(DX事業)では、ERPソリューションとデジタルマーケティングを融合した新たな統合型DXプラットフォームを構築し、新たなコミュニケーション&クラウドサービスを展開する。グループとして提供する4つのDXプラットフォーム(マーケティングDX、ビジネスDX、オペレーティングDX、ファイナンスDX)をプラットフォーム上で同時に実現することで、デジタル化時代の中小企業・小規模事業者が抱える4つの経営課題(新規顧客開拓および顧客満足度・ロイヤルティ向上、フロントオフィス系のBtoB取引の効率化、バックオフィス系の管理業務の効率化、資金管理・資金調達)を解決するソリューションを目指す戦略だ。
22年5月には、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に向けて、サステナビリティ基本方針の策定、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)の特定、サステナビリティ委員会の設置を発表した。サステナビリティ基本方針は、DX推進による地球環境への貢献、会計事務所と中小企業の経営革新や成長・発展を支援、多様なプロフェッショナル人材が活躍する働きがいのある職場づくり、健全成長のためのガバナンスの強化としている。
■社会全体のDXを推進
なお社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指すことを目的として、SAPジャパン、オービックビジネスコンサルタント、ピー・シー・エー、ミロク情報サービス、弥生の5社で社会的システム・デジタル化研究会を発足し、20年6月には社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言を発表している。また下部組織として電子インボイス推進協議会(EIPA=エイパ)を20年7月に立ち上げている。
20年12月には電子インボイス推進協議会が、23年10月の適格請求書等保存方式(インボイス制度)開始に向けて、日本の電子インボイス標準仕様を、電子文書をネットワーク上で授受するための国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠して策定することを決定したと発表している。
22年9月には国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠した電子インボイスの送受信ならびにインボイスの電子化に対応するクラウドサービス「MJS e―Invoice」を提供開始した。
■23年3月期2Q累計が計画超の大幅営業・経常増益で通期予想も上方修正
23年3月期の連結業績予想(10月31日付で上方修正)は、売上高が22年3月期比11.5%増の408億円、営業利益が21.1%増の58億円、経常利益が17.4%増の56億円、親会社株主帰属当期純利益が20.3%減の36億円としている。配当予想は22年3月期比5円減配(前期は特別配当5円を実施)の40円(期末一括)としている。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比11.8%増の198億81百万円、営業利益が31.3%増の31億02百万円、経常利益が19.1%増の28億27百万円だった。親会社株主帰属四半期純利益は前期計上の特別利益(関係会社株式売却益20億87百万円)の剥落で36.1%減の19億35百万円だった。
期初計画(売上高188億50百万円、営業利益23億70百万円、経常利益23億80百万円、親会社株主帰属四半期純利益15億20百万円)に対して、売上高は10億31百万円、営業利益は7億32百万円、経常利益は4億47百万円、親会社株主帰属四半期純利益は4億15百万円それぞれ上回り、大幅営業・経常増益で着地した。親会社株主帰属四半期純利益は減益幅が縮小した。
中堅企業向け新ERPシステム「Galileopt DX」を中心に、新規顧客開拓などで主力のERP製品が好調に推移した。システム導入契約売上高のうち、企業向け売上高に占める新規企業向け売上高比率は26.3%だった。既存顧客における追加・リプレイス需要も増加した。さらに、各種クラウドサービスの拡販や一部ERP製品の売り切り型からサブスクリプション型への移行によるストック型サービス収入の伸長も寄与して、ソフトウェア資産償却負担増や、83名の新卒社員を含む人件費増などを吸収した。なお営業外費用では持分法投資損失が増加(前年同期32百万円、今期3億43百万円)した。
品目別の売上高は、システム導入契約売上高が前年同期比12.9%増の112億07百万円(内訳はハードウェア売上高が12.0%増の18億46百万円、ソフトウェア売上高が9.9%増の65億73百万円、ユースウェア売上高が21.2%増の27億87百万円)で、サービス収入が10.3%増の69億74百万円(内訳は会計事務所向け総合保守サービスTVSが0.7%増の12億64百万円、ソフトウェア使用料収入が45.0%増の18億27百万円、企業向けソフトウェア運用支援サービス収入が2.8%増の28億39百万円、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入が0.0%増の7億53百万円、サプライ・オフィス用品が1.7%減の2億89百万円)だった。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が97億16百万円で営業利益が15億03百万円、第2四半期は売上高が101億65百万円で営業利益が15億99百万円だった。
通期予想は、前回予想に対して売上高を20億円、営業利益を10億円、経常利益を8億円、親会社株主帰属四半期純利益を7億円それぞれ上方修正した。下期に賃金引き上げ等を考慮した従業員への還元策の拡充、先行投資となる広告宣伝費の増額、関係会社の業績下振れリスクなどを想定するが、主力ERP製品やサービス収入の好調などで吸収して大幅営業・経常増益予想としている。親会社株主帰属四半期純利益は前期計上の特別利益が剥落するが、減益幅が縮小する見込みだ。
修正後の通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が48.7%、営業利益が53.5%、経常利益が50.5%、親会社株主帰属当期純利益が53.8%となる。クラウドサービスの伸長や積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は調整一巡
なお22年8月には「JPX日経中小型株指数」の22年度構成銘柄として、21年度に続いて継続選定された。
株価は戻り高値圏から反落して上げ一服の形となったが、調整一巡して反発の動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。11月22日の終値は1459円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS120円57銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の40円で算出)は約2.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS743円26銭で算出)は約2.0倍、時価総額は約508億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)