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JSPは反発の動き、23年3月期利益予想下方修正だが下期挽回期待
- 2022/11/28 09:32
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
JSP<7942>(東証プライム)は発泡プラスチック製品の大手である。成長ドライバーとして自動車部品用ピーブロックなどの拡販を推進するとともに、製品ライフサイクル全体における環境負荷軽減に貢献する製品や製造技術の開発など、サステナビリティ経営の推進も強化している。23年3月期第2四半期累計は原材料価格高騰の影響で減益だった。通期予想は売上高を上方修正、利益を下方修正した。製品価格改定も寄与して売上高は前回予想を上回るが、利益面は自動車生産調整や原材料価格高騰の影響により減益幅が拡大する見込みとした。原材料価格高騰の落ち着きや販売価格改定の浸透などにより下期の挽回を期待したい。株価は下値固め完了して反発の動きを強めている。23年3月期利益下方修正の織り込みが完了し、高配当利回りや低PBRも評価して出直りを期待したい。
■発泡プラスチック製品の大手
発泡プラスチック製品の大手で、押出発泡技術をベースとするポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンシートなどの押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレー材、住宅用断熱材など)、ビーズ発泡技術をベースとする発泡ポリプロピレン・発泡ポリエチレン・発泡性ポリスチレン製品などのビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他(一般包材など)を展開している。
22年3月期のセグメント別売上高構成比は押出事業34%、ビーズ事業60%、その他6%、営業利益構成比(調整前)は押出事業50%、ビーズ事業47%、その他4%だった。収益は販売数量、為替、原油価格、原料価格と販売価格の差であるスプレッド、プロダクトミックスなどが影響する。
■成長ドライバーとして自動車部品用ピーブロック拡販などを推進
長期ビジョン「VISION2027」では目標値に28年3月期売上高1800億円、営業利益180億円、営業利益率10%を掲げている。
長期ビジョン達成に向けた3ヶ年中期経営計画(21年度~23年度)では目標値に24年3月期売上高1200億円、営業利益77億円、営業利益率6.4%以上、経常利益79億円、親会社株主帰属当期純利益52億円、ROA5.6%以上を掲げている。セグメント別計画は押出事業が売上高418億円で営業利益28億円、ビーズ事業が売上高724億円で営業利益60億円、その他が売上高58億円で営業利益1億円、営業利益調整額が▲12億円としている。
基本方針は変革戦略として、循環性の高いビジネスモデルへのシフト、組織の活性化・効率化を推進する。4つの成長エンジンについては23年度に19年度比で、自動車部品の販売数量23%増、建築住宅断熱材の販売数量12%増、FPD関連保護材の販売数量20%増、新たな事業領域の売上高30億円の達成を目指す。3年間の設備投資額は235億円の計画としている。
自動車部品用発泡ポリプロピレンのピーブロック(英名ARPRO)は、自動車メーカーの軽量化要求に対応する製品として、自動車シートコア材としての採用が拡大している。SDGsへの取り組みとして自動車メーカーからはリサイクル原料使用の要求が強く、原料にリサイクルポリプロピレンを用いたARPRO REの採用が拡大している。さらにEV用バッテリー梱包材、住宅用空気清浄システム構造部材、水力発電所の発電機の発熱を遮断する断熱材などにも採用が広がっている。中期成長ドライバーとして期待される。
省エネ基準適合義務化対象拡大で需要拡大している「ミラフォーム」については、関西工場(兵庫県たつの市)の隣接地に新工場が完成(19年1月)して東西2大生産拠点体制を構築している。
22年1月には、新規事業創出を目的としてフランスの子会社がイタリアのGHEPI社に出資(株式35%取得)した。射出成形市場に参入し、発泡技術と射出技術の複合化で技術優位性を構築して事業拡大を推進する方針だ。
22年11月には、梱包資材用途ミラブロック(発泡ポリエチレンビーズ成形品)シリーズの新製品として、バイオマス原料を配合したミラブロック-Bioの販売を開始した。バイオマスポリエチレンを25.0重量%以上配合するため、日本バイオプラスチック協会のバイオマスプラシンボルマークの認定を受けた。従来品ミラブロック-Eをミラブロック-Bioに切り替えることにより、環境負荷軽減や気候変動緩和に貢献できる製品として、サステナブルな社会づくりに貢献する。
さらに、冷凍用途から電子レンジ対応でリサイクル性に優れた高性能食品容器用シート「PパールF」や、アウトドア等に手軽に持ち運べるクッション用途として採用された「ARGILIX」など、新製品の開発・拡販を推進している。
■サステナビリティ経営やコーポレート・ガバナンスを強化
製品ライフサイクル全体における環境負荷軽減に貢献する製品や製造技術の開発などサステナビリティ経営の推進も強化するとともに、コーポレート・ガバナンスも強化している。
21年4月にはサステナビリティ推進室を新設し、21年12月にはホームページに「JSPのサステナビリティ経営とマテリアリティ」を掲載した。同社の発泡技術を活用して、経済価値だけでなく、顧客や社会の課題解決などの社会的価値へと、提供価値の拡大を推進する方針だ。
21年12月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同を表明し、22年7月にはTCFD提言に基づく情報開示(詳細は会社HP参照)を行っている。
22年4月にはガバナンス特別委員会を設置した。親会社である三菱瓦斯化学<4182>およびその子会社との取引において、公正性・透明性・客観性を確保することで少数株主の利益を適切に保護し、コーポレート・ガバナンスの充実を図る。
22年9月には労働施策総合推進法に基づいて、直近3事業年度において採用した正規雇用労働者の中途採用比率を公表した。19年度は54%、20年度は41%、21年度は67%だった。
■23年3月期2Q累計大幅減益、通期利益予想を下方修正
23年3月期の連結業績予想(10月31日付で売上高予想を上方修正、利益予想を下方修正)は、売上高が22年3月期比14.8%増の1310億円、営業利益が30.3%減の32億円、経常利益が24.0%減の37億円、親会社株主帰属当期純利益が6.7%減の27億円としている。配当予想は22年3月期と同額の50円(第2四半期末25円、期末25円)としている。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比15.4%増の642億52百万円、営業利益が53.0%減の14億04百万円、経常利益が39.6%減の18億60百万円、親会社株主帰属四半期純利益が39.5%減の13億78百万円だった。
高付加価値製品拡販や販売価格改定効果などで2桁増収だが、原材料価格高騰に対する販売価格改定遅れなどで減益だった。営業利益15億81百万円減益の要因別分析は、数量増加・限界利益で+2億04百万円、販売単価で+51億96百万円、変動費単価で▲66億04百万円、固定費増加で▲4億52百万円、為替要因で+76百万円だった。
押出事業は売上高が10.8%増の208億57百万円、利益(全社費用等調整前営業利益)が27.8%減の10億61百万円だった。食品トレー向け製品、広告宣伝用ディスプレー材、土木分野向け製品など、高付加価値製品拡販や販売価格改定効果などで2桁増収だが、原材料価格高騰の影響で減益だった。
ビーズ事業は売上高が19.0%増の402億20百万円、利益が61.2%減の7億58百万円だった。主力のピーブロックは自動車分野において自動車生産調整の影響を受けたが、非自動車分野が増加した。製品価格改定効果も寄与して大幅増収だったが、原材料価格高騰の影響で大幅減益だった。
その他は売上高が4.5%増の31億73百万円、利益が34.8%増の84百万円だった。自動車部品輸送関連など一般包材の需要が好調に推移した。
なお四半期別に見ると、第1四半期売上高が309億77百万円で営業利益が7億64百万円、第2四半期は売上高が332億75百万円で営業利益が6億40百万円だった。
通期予想は、前回予想(売上高1280億円、営業利益43億円、経常利益45億円、親会社株主帰属当期純利益31億円)に対して、売上高を30億円上方修正、営業利益を11億円下方修正、経常利益を8億円下方修正、親会社株主帰属当期純利益を4億円下方修正した。製品価格改定も寄与して売上高は前回予想を上回るが、利益面は自動車生産調整や原材料価格高騰の影響により減益幅が拡大する見込みとした。景気減速の影響なども考慮した。
通期営業利益の前回予想比11億円下方修正の要因別分析見込みは、数量減少・限界利益で▲16億円、販売単価で+32億90百万円、変動費単価で▲33億60百万円、固定費減少で+4億50百万円、為替要因で+1億20百万円としている。
また、通期営業利益の前期比13億89百万円減益の要因別分析見込みは、数量増加・限界利益で+5億80百万円、販売単価で+65億20百万円、変動費単価で▲79億50百万円、固定費増加で▲8億30百万円、為替要因で+2億91百万円としている。
修正後の通期セグメント別計画は、押出事業の売上高が前期比7.5%増の420億円で利益(全社費用等調整前営業利益)が24.5%減の21億円、ビーズ事業の売上高が21.1%増の830億円で利益が23.7%減の20億円、その他の売上高が8.2%減の60億円で利益が29.2%減の1億50百万円としている。
23年3月期は原材料価格高騰の影響で利益を下方修正の形となったが、原材料価格高騰の落ち着きや販売価格改定の浸透などにより下期の挽回を期待したい。なお販売価格改定については、押出発泡ポリスチレン「スチレンペーパー製品全般」について22年5月1日出荷分から、ポリスチレンフォーム断熱材「ミラフォーム・関連製品」について22年6月21日出荷分から、押出発泡ポリスチレン「スチレンペーパー製品全般」について22年7月1日出荷分から実施している。
■株主優待制度は毎年3月末対象
株主優待制度は、毎年3月31日時点の1単元(100株)以上保有株主を対象として、一律3000円相当の社会貢献寄付金附きオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は反発の動き
株価は下値固め完了して反発の動きを強めている。週足チャートで見ると抵抗線となっていた26週移動平均線を突破した。23年3月期利益下方修正の織り込みが完了し、高配当利回りや低PBRも評価して出直りを期待したい。11月25日の終値は1514円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS90円58銭で算出)は約17倍、今期予想配当利回り(会社予想の50円で算出)は約3.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2884円93銭で算出)は約0.5倍、そして時価総額は約476億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)