- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- マーケットエンタープライズは調整一巡、23年6月期1Q赤字縮小、通期黒字転換予想で収益回復基調
マーケットエンタープライズは調整一巡、23年6月期1Q赤字縮小、通期黒字転換予想で収益回復基調
- 2022/11/30 09:31
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
マーケットエンタープライズ<3135>(東証プライム)は、持続可能な社会を実現する最適化商社を目指してネット型リユース事業、メディア事業、モバイル通信事業を展開している。主力の個人向けリユースの成長回帰、マシナリー(農機具・建機)および「おいくら」の成長加速などにより、中期経営計画の目標値(24年6月期売上高200億円、営業利益12億円)達成を目指し、23年6月期は黒字転換予想としている。第1四半期は成長に向けた広告・採用投資を継続しているため赤字だったが、前年同期比では各事業が好調に推移して大幅増収となり、粗利率改善効果も寄与して赤字縮小した。そして通期黒字転換予想を据え置いた。中期経営計画が順調に進捗して収益回復基調だろう。株価は戻り一服の形となったが大きく反落する動きも見られない。調整一巡して上値を試す展開を期待したい。
■持続可能な社会を実現する最適化商社
持続可能な社会を実現する最適化商社を目指して、ITとリアルを融合させたリユース事業を中心に事業領域拡大戦略を推進している。セグメント区分はインターネットに特化してリユース品を買取・販売するネット型リユース事業、消費者に対して有益な情報をインターネットメディアで提供するメディア事業、低価格通信サービスのモバイル通信事業としている。
22年6月期のセグメント別(連結調整前)の売上構成比はネット型リユース事業が55%、メディア事業が5%、モバイル通信事業が40%、営業利益構成比はネット型リユース事業が19%、メディア事業が58%、モバイル通信事業が23%だった。22年6月期はネット型リユース事業が成長投資の影響で大幅減益、メディア事業が送客収入の回復で大幅増益、モバイル通信事業が獲得コスト増加で小幅減益だった。
なお、大株主だったYJ1号投資事業組合から信託期間満了により保有株式売却の意向が寄せられたことに伴い、市場売却による株価形成への影響を避けるため、22年9月14日付でSBI証券と差金決済型自社株価先渡取引に係る契約を締結した。そして22年9月15日付の立会外終値取引(ToSTNeT―2)によって、YJ1号投資事業組合が保有していた同社株式40万株をSBI証券が取得した。今後の会計上の取り扱いとしては、各四半期末時点で時価評価を実施し、前四半期末との差額を営業外収益または費用に計上する。
■「高く売れるドットコム」と「おいくら」
ネット型リユース事業は販売店舗を保有せずに、インターネットに特化して買取・販売サービスを展開している。買取総合窓口サイト「高く売れるドットコム」をフラッグシップサイトとして、商材別に分類された30カテゴリーに及ぶ幅広い対応で自社WEB買取サイトを運営し、コンタクトセンターにおける事前査定、リユースセンターにおける買取・在庫一括管理・商品化、複数の主要Eマーケットプレイス(ヤフオク、楽天市場、Amazon、Ebayなど)に出店した自社運営サイトでの販売という、一気通貫のオペレーションシステムを特徴としている。
20年7月には「高く売れるドットコム」と、19年2月に事業を譲り受けた日本最大級のリユースプラットフォーム「おいくら」のシステム連携・送客を開始した。21年6月には内閣府が運営する「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」に参画した。21年10月には「高く売れるドットコム」が、特定非営利法人・一般社団法人ハウスキーピング協会主催「シンプルスタイル大賞2021」のサービス・空間部門で特別賞を受賞している。
なお買取・物流拠点のリユースセンターについては、22年10月に千葉リユースセンター(千葉県千葉市)を開設し、全国13拠点(うち関東エリア6拠点)となった。
地域社会における課題解決を目的として地方自治体との取り組みを推進しており、21年6月には北海道絵恵庭市と「おいくら」を活用した持続可能な循環型社会に関する連携協定を締結、21年7月には三重県いなべ市と持続可能な循環型社会に関する包括協定を締結、22年4月には川崎市および東京都墨田区における粗大ごみリユース事業として「おいくら」が本格導入された。22年7月には埼玉県川越市と、地域社会における課題解決を目的とした連携による楽器寄附ふるさと納税の取り組みを開始した。
22年10月にはリユースプラットフォーム「おいくら」を導入した不用品リユース事業が、東京都東村山市、兵庫県神戸市、茨城県ひたちなか市、埼玉県坂戸市、大阪府大阪市で導入された。22年11月には兵庫県西宮市と不要品リユース事業の連携を開始、埼玉県所沢市および静岡県藤枝市で「おいくら」を導入した不用品リユース事業が導入された。
■中古農機具
中古農機具、中古建機、中古医療機器など法人向け大型商材の取り扱いを拡大している。子会社MEトレーディングは20年5月に中古農機具事業を譲り受けて、中古農機具の買取代行、国内および海外販売・輸出代行を展開している。
21年10月にはマシナリー(中古農機具)ビジネス加速に向けて北関東リユースセンター(茨城県結城市)を開設し、グループ全体のリユースセンターは12拠点となった。そして21年11月には北関東リユースセンターから中古農機具のEU向け輸出を開始した。中古農機具の取扱量拡大・EUへの輸出強化、拠点での対面販売による新規就農者支援などを推進する。22年4月にはファーマリーが展開する中古農機具の買取・販売事業を譲り受けた。
■メディア事業とモバイル通信事業
メディア事業は賢い消費を求める消費者に対して、その消費行動に資する有益な情報をインターネットメディアで提供するサービスを展開している。広告収入が収益柱となる。
モバイル通信関連のメディア「iPhone格安SIM通信」「SIMチェンジ」、モノ売却・処分関連のメディア「高く売れるドットコムMAGAZINE」「おいくらマガジン」、モノ修理関連のメディア「最安修理ドットコム」、中古農機具買取・販売プラットフォーム「中古農機市場UMM」、農業に特化した「農業とつながる情報メディアUMM」などを運営している。
なお「中古農機市場UMM」は、20年4月設立した子会社UMMが、20年5月国内最大級のインターネット中古農機具売買事業「JUM全国中古農機市場」を譲り受け、20年6月に名称を「中古農機市場UMM」に変更した。
モバイル通信事業は、子会社のMEモバイルがMVNO事業者として、通信費の削減に資する低価格かつシンプルで分かりやすい通信サービスを展開している。主力は「カシモ」ブランドのモバイルデータ通信サービスである。
■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書
22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を作成・開示している。21年8月公表の中期経営計画に掲げた積極投資を経て、目標値を達成して安定的な収益基盤を構築した後、26年6月期までにプライム市場上場維持基準に適合できる体制の構築に取り組むとしている。
21年8月公表の中期経営計画では目標として24年6月期売上高200億円、営業利益12億円を掲げている。主力の個人向けリユースの成長回帰、マシナリー(農機具・建機)および「おいくら」の成長加速などの売上成長により、まずは中期経営計画の達成を目指し、さらに25年6月期も含めて2期合計営業利益25億円を稼ぐ収益構造を構築する。
24年6月期売上高計画の内訳は、ネット型リユース事業137億44百万円(個人向けリユース100億円、マシナリー30億円、「おいくら」7億44百万円)、メディア事業8億円、モバイル通信事業55億円としている。さらに25年6月期以降は、リユースの継続的成長に加えて、「おいくら」およびモバイルのストック収益を中心に持続的な収益拡大を目指すとしている。
22年9月には計画の進捗状況をリリースした。中期経営計画の初年度22年6月期が想定どおりの進捗だったため、基本方針および計画期間等に変更はないとしている。
■23年6月期1Q赤字縮小、通期黒字転換予想で収益回復基調
23年6月期の連結業績予想は、売上高が22年6月期比25.1%増の150億円、営業利益が3億円の黒字(22年6月期は3億19百万円の赤字)、経常利益が2億75百万円の黒字(同3億28百万円の赤字)、そして親会社株主帰属当期純利益が1億67百万円の黒字(同4億04百万円の赤字)としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比40.8%増の36億71百万円、営業利益が57百万円の赤字(前年同期は1億65百万円の赤字)、経常利益が70百万円の赤字(同1億61百万円の赤字)、親会社株主帰属四半期純利益が1億01百万円の赤字(同1億21百万円の赤字)だった。
成長に向けた広告・採用投資を継続しているため赤字だったが、前年同期比では各事業が好調に推移して大幅増収となり、粗利率改善(2.8ポイント上昇)効果も寄与して赤字縮小した。
ネット型リユース事業は、売上高が31.6%増の19億36百万円(個人向けリユースが21.0%増の14億55百万円、マシナリーが87.3%増の4億44百万円、おいくらが12.5%増の36百万円)で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が48百万円の黒字(前年同期は4百万円の赤字)だった。3領域とも増収となり、過去最高の四半期売上高となった。利益面は増収効果で損益改善した。
メディア事業は売上高が65.9%増の2億09百万円、利益が91.6%増の1億28百万円だった。収益性の高いキーワードにおける検索ランキングが堅調に推移し、モバイル通信に関するメディアへの送客収入が増加した。
モバイル通信事業は売上高が53.8%増の15億77百万円、利益が28百万円の黒字(前年同期は7百万円の赤字)だった。自社通信メディアからの送客が堅調に推移して新規回線獲得数が増加した。
通期連結業績予想は据え置いている。部門別売上高(調整前)計画は、ネット型リユース事業が47.9%増の98億04百万円(個人向けリユースが45.9%増の75億円、マシナリーが46.5%増の20億円、おいくらが2.4倍の3億04百万円)、メディア事業が16.9%増の7億円、モバイル通信事業が2.9%増の50億円としている。
個人向けリユースを中心に成長戦略を加速し、出張買取人員採用強化などの先行投資を継続するが、事業を譲り受けたファミリーの中古農機具買取・販売事業とのシナジー効果なども寄与して大幅増収・黒字転換予想としている。中期経営計画(21年8月13日公表)の最終年度24年6月期の目標値である売上高200億円、営業利益12億円の達成に向けて、成長戦略再構築の進捗は順調としている。収益回復基調だろう。
■株価は調整一巡
株価は戻り一服の形となったが大きく反落する動きも見られない。調整一巡して上値を試す展開を期待したい。11月29日の終値は1015円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS31円39銭で算出)は約32倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS197円95銭で算出)は約5.1倍、そして時価総額は約54億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)