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日本エム・ディ・エムは売られ過ぎ感、23年3月期減益予想だが下期挽回期待
- 2022/12/7 09:43
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
日本エム・ディ・エム<7600>(東証プライム)は人工関節製品など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。23年3月期は為替の円安影響や米国における競争激化影響などで減益予想としている。ただし整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があり、業績も下期の構成比が高い季節特性がある。為替の円安進行にもピークアウト感があり、下期の挽回を期待したい。株価は年初来安値を更新する軟調展開だが売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。
■整形外科分野の医療機器メーカー、米国子会社製品が主力
人工関節製品、骨接合材料、脊椎固定器具など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。
22年3月期の売上構成比(収益認識会計基準適用に伴う売上控除前ベース)は、日本が65%(人工関節25%、骨接合材料21%、脊椎固定器具16%、人工骨・その他2%)、米国が37%(人工関節37%、脊椎固定器具0%)だった。自社製品比率は80.5%(21年3月期は79.9%)だった。営業利益構成比(調整前)は日本が69%、米国が31%だった。
収益面の特性として、医療機器償還価格の影響や為替変動の影響を受けるほか、整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があるため、業績も下期の構成比が高い特性があるとしている。
なお22年1月に筆頭株主が異動した。日本特殊陶業が保有する株式を三井化学に譲渡(手続として売り出しによる譲渡)し、三井化学が筆頭株主となった。日本特殊陶業との資本業務提携を解消し、新たに三井化学と資本業務提携した。
■新中期経営計画「MODE2023」
中期経営計画MODE2023では、目標値に24年3月期売上高220億円(日本90億円、米国・オーストラリア132億円)、営業利益35億円、経常利益34億円、親会社株主帰属当期純利益23億円、ROE(自己資本利益率)10.0%、ROIC(投下資本利益率)9.0%を掲げている。想定為替レートは1ドル=108円である。また10年後の目指す姿として、日本内資企業で売上高首位、世界整形外科市場で15位以内を目指すとしている。
中期重点施策として海外ビジネスの拡大、開発・調達力の強化、人材・組織の専門性強化、デジタル化を推進する。そして利益の伴った持続的な成長を実現するとしている。
海外ビジネスの拡大は、米国では販売体制強化と人工関節分野新製品導入による2桁成長を目指す。中国では合弁会社設立による米国ODEV社製品の輸入販売拡大と中国現地生産品の製造・販売開始を目指す。
なお22年9月にオーストラリアの子会社Ortho Developmentを清算(23年3月清算結了予定)すると発表した。海外ビジネス拡大に向けて米国ODEV社の子会社として19年4月に設立したが、コロナ禍も影響してオーストラリアにおける米国ODEV社製品の薬事承認取得に想定以上の時間を要し、設立時の事業見通しから大きな乖離が発生しているため22年3月に事業活動を休止した。そして同市場への再参入時期を合理的に見通せない状況と判明したため清算を決議した。
開発・調達力の強化は、米国ODEV社との日米共同開発による適応症例拡大に向けたインプラント開発、および新素材インプラントや手術支援システムなど外部調達によるビジネス拡大を目指す。
21年3月には米国ODEV社が中国WASTONと、中国現地生産品の製造・販売を目的とした合弁会社を設立した。21年5月には米国ODEV社が米国THINK社と共同で、米国ODEV社の人工関節製品を用いた人工関節全置換手術を、THINK社の手術支援ロボットシステムを用いて行うことができるようにした。
22年7月には、米国ODEV社製造の人工股関節新製品「Promontoryヒップシステム」の日本における薬事承認を取得、米国ODEV社製造の脊椎ケージ「Vusion Ti3D ARCケージ」の日本における薬事承認を取得した。
12月5日には米国ODEV社が、Materialise社(ベルギー)製の患者適合型人口膝関節手術用器械BKS Total PSIを共同開発し、米国医療施設向けに供給開始すると発表した。
■SDGsへの取り組み強化
SDGsへの取り組みも推進している。22年3月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明するとともに、同提言に賛同する企業や金融機関からなるTCFDコンソーシアムに参画した。
22年6月には国際連合が提唱する「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」に署名し、参加企業として登録された。併せて、UNGCに署名している日本企業などで構成される「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」に加入した。
■23年3月期減益予想だが下期挽回期待
23年3月期連結業績予想(22年10月31日付で下方修正)は、売上高が22年3月期比13.6%増の218億円、営業利益が24.9%減の20億円、経常利益が20.9%減の20億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が32.1%減の14億50百万円としている。配当予想は据え置いて1円増配の13円(期末一括)としている。連続増配予想である。
第2四半期累計は売上高が前年同期比12.8%増の99億27百万円、営業利益が12.4%減の9億27百万円、経常利益が12.1%減の9億16百万円、親会社株主帰属四半期純利益が28.1%減の7億21百万円だった。
前回予想(売上高102億円、営業利益11億円、経常利益10億50百万円、親会社株主帰属四半期純利益7億円)に対して、売上高は2億10百万円、営業利益は1億72百万円、経常利益は1億33百万円それぞれ下回った。親会社株主帰属四半期純利益は特別利益の計上で21百万円上回った。
売上面はコロナ禍の影響が和らいで2桁増収となり過去最高だったが、計画を下回った。米国における外部ベンダーを含むサプライチェーン上の構造問題が発生して米国の新規顧客との取引開始を一時的に延期したこと、一部の既存顧客について医療スタッフ不足で症例数計画を下回ったこと、競合他社による人工股関節新製品投入によって販売競争が激化したことなどが影響した。利益面は自社製品売上高比率が想定を下回ったことや、想定以上の為替の円安に伴う原価率上昇により減益着地した。
セグメント別(調整前)に見ると、日本国内は売上高が6.2%増の58億05百万円で営業利益が30.6%減の4億63百万円、そして米国は売上高が12.6%増の58億89百万円で営業利益が8.6%減の3億89百万円だった。なお米国の外部顧客向け売上高は米ドルベースで1.9%増、為替換算後で23.3%増となった。
医療機器類の分野別売上高は人工関節分野が15.7%増の63億93百万円(日本国内が3.7%増、米国が23.3%増)、骨接合材料分野(日本国内)が8.5%増の19億22百万円、脊椎固定器具分野が9.7%増の16億14百万円だった。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が50億27百万円で営業利益が4億98百万円、第2四半期は売上高が49億62百万円で営業利益が4億29百万円だった。
通期の連結業績予想については、下期の想定為替レートを1米ドル=150円(前回予想は1米ドル=128円)として、前回予想(売上高220億円、営業利益28億円、経常利益27億円、親会社株主帰属当期純利益18億50百万円)に対して、売上高を2億円、営業利益を8億円、経常利益を6億50百万円、親会社株主帰属四半期純利益を4億円それぞれ下方修正した。
売上面では日本国内が堅調に推移し、上期に発生した米国の新規顧客との取引開始延期は既に解消しているが、引き続き一部の既存顧客について医療スタッフ不足で症例数計画を下回っていること、競合他社による人工股関節新製品投入によって販売競争が激化していることなどが影響し、利益面では想定以上の為替の円安による仕入原価上昇や、インフレによる物流費の増加などが影響する見込みとしている。
修正後の売上高計画(収益認識会計基準適用に伴う売上控除前ベース、日本国内売上が5.7%増の131億円、米国売上が26.9%増の89億70百万円、売上控除が2億70百万円)で、内訳は日本の人工関節分野が4.3%増の49億20百万円、骨接合材料分野が6.2%増の43億70百万円、椎固定器具分野が10.1%増の34億40百万円、その他が17.4%減の3億70百万円、米国人工関節分野が26.9%増の89億40百万円、脊椎固定器具分野が15.4%増の30百万円としている。自社製品比率の計画は81.2%(22年3月期は80.5%)としている。
ただし整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があり、業績も下期の構成比が高い季節特性がある。為替の円安進行にもピークアウト感があり、下期の挽回を期待したい。
■株価は売られ過ぎ感
株価は年初来安値を更新する軟調展開だが売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。12月6日の終値は978円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS54円96銭で算出)は約18倍、今期予想配当利回り(会社予想の13円で算出)は約1.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS810円59銭で算出)は約1.2倍、そして時価総額は約259億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)