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WOW WORLD GROUPは上値試す、23年3月期減益予想だが下期回復基調
- 2022/12/7 09:43
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
WOW WORLD GROUP<5128>(東証プライム)(WOW WORLDが設立した持株会社が22年10月3日付で新規上場)は、自社開発e-CRMシステムのWEBCASシリーズを中心に企業のCRM運用支援を展開している。23年3月期はWOW WORLDの22年3月期実績(IFRS適用のための監査実施後の実績値)との比較で減益予想としている。ただしクラウドサービスが牽引し、先行投資の成果で下期は収益回復基調だろう。株価は持株会社として上場後の高値圏で堅調に推移している。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。
■持株会社WOW WORLD GROUPが22年10月3日付で新規上場
旧エイジアが21年7月1日付で商号をWOW WORLDに変更し、さらにM&A推進などグループ成長に向けて設立した持株会社WOW WORLD GROUPが22年10月3日付で新規上場した。
M&A・アライアンス関連では、18年9月にハモンズからベビー服ECサイト事業「べびちゅ」を譲り受けた。19年11月には暗号資産関連を展開するデジタルアセットマーケッツに出資した。20年10月には国産クラウドCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)のトップベンダーであるコネクティを子会社化した。22年5月にはデータ分析サービス開発のデータビークルが実施する第三者割当増資を引き受けて資本業務提携(出資比率9.13%)した。22年8月にはスペースシップが設立したデジタル・マーケティング支援の新会社ニューストリームに出資して子会社化した。
■e-CRMシステム「WEBCAS」シリーズが主力
22年3月期のセグメント別構成比(22年3月期からセグメント区分変更、消去・全社費用等調整前)は、売上高がエンタープライズ・ソフトウェア事業67%、デジタル・マーケティング運用支援事業28%、EC事業4%、その他0%、営業利益がエンタープライズ・ソフトウェア事業107%、デジタル・マーケティング運用支援事業▲5%、EC事業▲2%、その他0%だった。
エンタープライズ・ソフトウェア事業は、マーケティングプラットフォームWEBCASシリーズの開発・販売、および子会社コネクティが展開するエンタープライズCMSのConnecty CMS onDemandの開発・販売である。
自社開発e-CRMシステムのWEBCASシリーズをベースとして企業のCRM運用支援を展開している。WEBCASシリーズは、メール配信システムWEBCAS e-mailを中心とするe-CRMアプリケーションシリーズである。国内メール送信パッケージ市場シェア1位で、導入企業数は22年3月末時点で8000社を突破している。メール配信システムWEBCAS e-mailは、顧客の嗜好、属性、購買履歴などに基づいたOne to Oneメールを、世界トップレベルの最高300万通/時で送信することが可能な超高速性を強みとしている。
22年3月にはメール配信システムWEBCAS e-mailの最新バージョンを発売、22年6月にはWEBCAS SMSの新バージョンを発売した。22年8月には、CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)ソリューションの新製品WOW engageを発売した。
デジタル・マーケティング運用支援事業は、WEBCASシリーズをより効果的に活用するためのコンサルティング、Webサイト制作支援・コンサルティング、および子会社コネクティのCMS(Connecty CMS onDemand)運用である。なお11月7日には、アイ・ティ・アール(ITR)発行の市場調査レポート「ITR Market View:ECサイト構築/CMS/SMS送信サービス/電子契約サービス市場2022」のCMS市場・製造業において、子会社コネクティの大企業向け国産クラウドCMS「Conncty CMS on Demamd」が3年連続でシェア1位(市場シェア12.0%)を獲得したと発表している。
12月6日には、スマートキャンプが表彰する「BOXIL SaaS AWARD 2022」のメール配信システム部門においてWEBCAS e-mailが4つのNO.1を獲得、Webアンケートツール・システム部門において9つのNO.1を獲得したと発表している。
EC事業はベビー服ECサイト「べびちゅ」を運営している。製品開発を強化するため、ECのマーケティングノウハウを吸収して製品開発のヒントを得る研究的位置付けとして展開している。その他のオーダーメイド開発事業は新規受注を積極的に展開せず、既存の利益率の高い案件のみを継続している。
21年7月にはベビー服ECサイト「べびちゅ」において、世界125ヶ国に向けて多言語対応の越境ECを開始した。21年10月には、子会社コネクティが開発したCDPサービスのConnecty CDPの販売を開始した。
なお、23年3月期からセグメント区分を変更し、エンタープライズ・ソフトウェア事業(コミュニケーションプラットフォームがWOWのSaaS・オンプレ、CMS・CGPがコネクティのCMS・CDP)、大規模Web開発事業(コネクティの構築・運用)、コミュニケーション支援・コンサルティング事業(コミュニケーションがWOWのメール運用支援・コンサルティング、子会社FUCA、子会社ニューストリーム、CDPがコネクティのCDP運用・コンサルティング)、その他(受託開発、ベビー服EC販売)とした。
■クラウドサービスやM&Aで中期成長目指す
中期経営計画の目標値は、最終年度23年3月期の売上高38億円、EBITDA11億円としている。顧客のマーケティング活動に対する横断的なソリューションの提供を目指し、M&Aを積極活用して、クラウドサービスを中心とする既存事業の飛躍的成長、グループシナジーの創出、財務戦略の最適化などを推進する。
22年3月には従業員のキャリア形成を目的として、新しい働き方「兼業制度」を導入した。従業員の多様な働き方を推進し、さらなる組織の活性化と顧客価値の創造を目指す。また22年4月には一部の部門を対象に、日本全国どこでも居住が可能なフルタイム在宅勤務制度を導入した。
■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書
22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編については、WOW WORLDとしてプライム市場を選択し、21年12月15日付でプライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示した。
その後のコロナ禍も背景とする事業環境の変化や計画外の費用の発生などにより、22年5月10日公表の23年3月期連結業績予想が21年5月11日公表の中期経営計画で掲げた目標値(20年5月公表の従来計画に対して目標値を上方修正)を下回る見込みとなったため、22年6月15日付で計画書の更新(変更)を発表し、従来は23年3月期までとしていた計画達成期間を25年3月期まで延長した。
さらに22年10月3日付でWOW WORLD GROUPとして東証プライム市場に新規上場したため、22年10月3日付で新たにプライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示した。WOW WORLDとしての適合計画書を引き継いでいるため、22年6月15日付の計画書更新(変更)の内容に大きな変更はないとしている。
経営計画達成に向けた各種施策を着実に遂行するとともに、情報開示およびコーポレートガバナンスの充実、株主還元などの取り組みによって企業価値の向上(時価総額の増大)を図り、プライム市場の上場維持基準適合を目指すとしている。
■23年3月期減益予想だが下期回復基調
23年3月期の連結業績予想(持株会社WOW WORLD GROUPとしての予想を22年10月3日付で公表、WOW WORLDが22年8月5日付で下方修正した業績予想と同じ数値、IFRS任意適用のため前期比増減率非記載)は、売上収益が30億円、EBITDAが6億20百万円、営業利益が3億30百万円、親会社所有者帰属当期純利益が2億円としている。配当予想は22年3月期比3円増配の33円(期末一括)としている。連続増配予想となる。
第2四半期累計(上場廃止となったWOW WORLDの実績、22年8月5日付で下方修正)は、売上収益が前年同期比2.0%増の14億15百万円、EBITDAが33.6%減の2億40百万円、営業利益が63.4%減の86百万円、親会社株主帰属四半期純利益が63.9%減の51百万円だった。
積極的な先行投資(マーケティングや開発体制の強化)や、一過性特殊費用の発生(官公庁取引継続のために必要なISMAP認証取得費用、持株会社移行対応費用など)などの影響で減益だった。ただし、クラウドサービスの伸長(8.9%増の8億36百万円)が牽引し、前回予想(8月5日付で下方修正、売上収益14億10百万円、EBITDA2億円、営業利益60百万円、親会社株主帰属四半期純利益30百万円)に対して、売上収益は5百万円、EBITDAは40百万円、営業利益は26百万円、親会社株主帰属四半期純利益は21百万円それぞれ上回り、減益幅が縮小して着地した。
エンタープライズ・ソフトウェア事業の売上高は2.1%増の9億64百万円だった。WEBCASオンプレミスが減収だが、クラウドサービスWEBCAS SaaSが伸長し、子会社コネクティのCMSも寄与した。売上高総利益率は65.5%で2.6ポイント低下した。
大規模Web開発事業の売上高は14.1%増の2億90百万円だった。売上高総利益率は14.3%で15.5ポイント低下した。子会社コネクティのCMSを活用したウェブサイト構築案件の増加などで増収だが、外注費の増加で減益だった。
コミュニケーション支援・コンサルティング事業の売上高は8.3%減の1億15百万円だった。売上高総利益率は19.8%で5.0ポイント上昇した。採算重視の方針に転換したため減収だが、収益性が改善した。
その他(子会社ままちゅによるベビー服ECサイト「べびちゅ」運営など)の売上高は3.2%増の45百万円だった。売上総利益率は40.2%で2.5ポイント低下した。
四半期別に見ると、第1四半期は売上収益が6億79百万円、EBITDAが78百万円、営業利益が4百万円の赤字、第2四半期は売上収益が7億36百万円、EBITDAが1億62百万円、営業利益が90百万円の黒字だった。クラウドサービスの伸長などで収益回復傾向を強めている。
通期予想(22年8月5日付で下方修正、従来予想に比べて売上収益を4億40百万円、EBITDAを1億10百万円、営業利益を1億80百万円、親会社所有者帰属当期純利益を1億20百万円それぞれ下方修正)は据え置いている。22年3月期のIFRS適用のための監査実施後の実績値との比較で売上高は5.9%増収、EBITDAは7.0%減益、営業利益は17.3%減益、親会社所有者帰属当期純利益は18.2%減益となる。
セグメント別売上収益の計画は、エンタープライズ・ソフトウェア事業のコミュニケーションプラットフォームが1.6%減の16億47百万円(クラウドが7.1%増の14億47百万円、オンプレミスが38.2%減の2億円)、CMSが22.5%増の2億87百万円、CDP(新規)が11百万円、大規模Web開発事業の構築が6.2%減の3億54百万円、運用が19.0%増の2億27百万円、コミュニケーション支援・コンサルティング事業のコミュニケーションが42.2%増の3億23百万円、CDPが9.6倍の52百万円、その他が20.7%減の95百万円としている。
クラウドサービスが伸長して増収だが、積極的な先行投資や一過性費用の発生などの影響で減益予想としている。ただし売上拡大に向けて新規顧客獲得に向けた営業強化、既存顧客向けのクロスセル・アップセル、新サービス「WOW engage」の拡販などを推進している。さらにコスト面では外注費や不要不急の経費の抑制などを推進する。なおEBITDAについては、前回予想では使用権資産に係る償却費を含めていなかったが、今回予想では含めて算出している。
第2四半期累計の進捗率は売上収益が47.2%、EBITDAが38.7%、営業利益が26.1%、親会社所有者帰属当期純利益が25.5%と低水準の形だが、クラウドサービスが牽引し、先行投資の成果で下期は収益回復基調だろう。
■株主優待制度は3月末と9月末の2単元以上保有株主対象
株主優待制度については、WOW WORLDとしての株主優待制度を引き継ぎ、毎年3月31日および9月30日時点の2単元(200株)以上保有株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じて株主優待ポイントを進呈(詳細は会社HP参照)する。
■株価は上値試す
株価は持株会社として上場後の高値圏で堅調に推移している。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。12月6日の終値は1060円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS50円00銭で算出)は約21倍、今期予想配当利回り(会社予想の33円で算出)は約3.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS385円57銭で算出)は約2.7倍、時価総額は約43億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)