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データ・アプリケーションはモミ合い煮詰まり感、23年3月期減益予想だが上振れの可能性
- 2022/12/12 09:16
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
データ・アプリケーション<3848>(東証スタンダード)は、EDIやEAIといったデータ交換・連携用ミドルウェアを中心に展開するDXソリューションカンパニーで、国内EDIミドルウェア市場においてマーケットリーダーとしてのポジションを確立している。リカーリング(サブスクリプション、メンテナンス)への戦略的シフトにより、リカーリングが全体の利益を押し上げる収益構造に転換している。さらなる成長戦略として、データ・インテグレーション領域でのマーケットリーダーを目指して積極投資を推進している。23年3月期は先行投資で減益予想としているが、サブスクリプション売上の拡大が加速していることを勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は反発力が鈍く小幅レンジでモミ合う形だが煮詰まり感を強めている。調整一巡してモミ合いから上放れの展開を期待したい。
■EDIミドルウェア市場のマーケットリーダー
EDIやEAIといったデータ交換・連携用ミドルウェアを中心に展開するDXソリューションカンパニーである。特に国内EDIミドルウェア市場においてマーケットリーダーとしてのポジションを確立し、主力製品のACMSシリーズは2600社・1万3500サイトを超える企業のミッションクリティカルなシステムで稼働している。
ミドルウェアとは、コンピュータを構成する要素の一つで、コンピュータの基本的な制御を行うOSと、具体的な処理を行うアプリケーションとの中間(ミドル)に位置して、それぞれの機能を補完するソフトウェアのことである。代表的なミドルウェアとしてデータベース管理、データ交換・連携、Webサーバ、トランザクションモニターなどの分野に分類される。いずれも企業のシステム開発作業低減や業務コスト低減を実現するための重要なソフトウェアである。EDIは受発注・見積・出荷・入荷・決済など商取引に関する情報を企業間で電子データ交換する仕組みのこと、EAIは企業内の複数のコンピュータにあるデータや業務プロセスを効率的に統合する仕組みのことである。
同社の製品の大半は、大手Sier(システムインテグレータ)を中心とするビジネスパートナー(22年6月末時点で55社)のシステム構築・ソフトウェア開発に組み込まれる形で販売される。このため同社は研究開発型企業として、次世代製品トレンドなど市場動向を把握しながら製品開発・改良できる点が特徴・強みとなっている。
21年11月にはテクノスジャパン<3666>と業務提携した。また技術開発部門の最適化に向けて、23年4月1日付で完全子会社の鹿児島データ・アプリケーションを吸収合併予定である。
■事業環境に対応した戦略製品の開発・拡販を推進
事業環境としては、22年1月施行の電子帳簿保存法改正、23年10月のインボイス制度(適格請求書等保存方式)導入、さらにEDI2024年問題(NTT東日本・西日本が、24年1月から25年1月にかけて固定電話網を順次IP網化することに伴い、INSネットサービスサービスを終了すること)などにより、企業は企業間取引に関わる業務においてさまざまな対応が迫られている。そして、従来型EDIからインターネットEDIへの移行や、ペーパーレス化・デジタル化を目的として、EDIやWeb-EDIの基盤構築に取り組む企業が増加している。同社は、こうした事業環境に対応した戦略製品の開発・拡販を推進している。
戦略製品としては、エンタープライズ・データ連携基盤のACMS Apex、Web-EDIシステム基盤のACMS WebFramer、データハンドリング・プラットフォームのRACCOON、文書データ活用・統合ソリューションのOCRtranなどがある。
ACMS Apexは16年に販売開始し、現在の同社の主力製品となっている。既存の業務アプリケーション資産を生かし、セキュアかつ可用性の高いデータ連携基盤を容易に構築できるソフトウェアである。
ACMS WebFramerは13年に販売を開始した。取引業務を容易にIT化できるWeb-EDIシステム構築のためのシステム基盤で、EDIシステムのデファクトスタンダードとなっているACMSシリーズとの連携も可能である。22年10月には最新版の販売を開始した。そして小売業界向け流通BMS用Web-EDIテンプレート、ローコードツールとしてのオプションであるACMS WebFramer Webアプリケーション構築支援ツールなども最新版の販売を開始した。利便性と適用範囲の向上を図り、ACMS Apexの拡販に貢献することも期待されている。
RACCOONは14年に販売を開始した。データ連携や移行時のデータ加工・変換をノーコードで実現できるソフトウェアである。22年3月にはACMS ApexにRACCOONフル機能版を標準搭載したACMS Apex アドバンストエディションの販売を開始した。今後のフラッグシップモデルとして拡販を推進する方針だ。
OCRtranは20年に販売を開始した。ACMS Apexおよびウイングアーク1st<4432>のSPA Cloudとの連携ソリューションである。AI-OCR技術を活用して紙文書をデジタル化・データ変換し、シームレスに業務システムへ連携できるペーパーレス自動化ソリューションである。
なおACMSシリーズの既存製品としては、あらゆる企業間商取引をカバーするACMS B2Bや、中小規模向けEDIクライアントACMS Lite Neoなどがあり、既存のEDI市場を深耕するための重要な製品と位置付けている。
■リカーリングが利益を押し上げる収益構造に転換
22年3月期売上高の区分別内訳は、リカーリング(サブスクリプション売上、メンテナンス売上)が21年3月期比24。1%増の16億39百万円、ソフトウェア(売り切り、23年3月期から表記をパッケージに変更)が4.7%減の6億42百万円、サービス他が33.8%減の19百万円だった。リカーリングはサブスクリプション型の安定収益源である。ソフトウェアはEDI系製品、EAI統合製品、Any系製品などを売り切り型で販売している。
収益安定性向上に向けて、従来のソフトウェアの売り切り型から、ストック型ビジネスモデルとなるサブスクリプション売上への戦略的シフトを推進している。このため、ソフトウェア売り切り型の売上減少が20年3月期~21年3月期の一時的な業績停滞の主因となっていたが、その後は導入企業数の増加に伴ってリカーリング売上が増加基調となり、リカーリングの売上高構成比は19年3月期の58%から22年3月期には71%まで上昇した。その結果、リカーリングがソフトウェア売り切り型の売上減少を吸収して、全体の利益を押し上げる収益構造に転換している。
■データ・インテグレーション領域でのマーケットリーダーを目指す
中期ビジョンには「変革への挑戦」を掲げ、21年5月に策定した中期経営計画では目標値として最終年度24年3月期売上高25億円、サブスクリプション売上21年3月期比3倍、営業利益3.5億円を掲げている。なお営業利益については、22年3月期に21年3月期比113.6%増の4億42百万円となり、最終年度24年3月期目標値3.5億円を前倒しで達成している。23年3月期については後述のように減益予想としているが、上振れの可能性が高いだろう。株主還元方針としては、DOE(株主資本配当率)3.5%を目安に、長期的・安定的な配当の維持を目指すとしている。
中期経営計画達成に向けた基本戦略としては、戦略製品の開発・拡販やサブスクリプション型のリカーリングビジネスを推進する。重点施策には、既存ビジネスの収益の最大化としてWeb-EDIへの投資、パートナー制度の見直し、価格改定など、新規ビジネス・DX実現への挑戦として新規事業の創出、テクノスジャパンとの協業加速、政府系プロジェクトへの参画、OCRtranの拡販など、コストの最適化として人員増強、スキル向上、アフターコロナでの活動再開への投資など、企業力強化への取り組みとして既存パートナーとの協業深化、新たな協業先の模索、教育訓練体制の整備、働きやすい環境の整備強化などを掲げている。
さらなる中長期成長戦略としては、EDIミドルウェア市場でのマーケットリーダーのポジションを足掛かりに、既存のビジネスパートナーとの協業深化や新たなパートナーの開拓も推進して、市場規模420億円(同社推定)のデータ・インテグレーションマーケットに事業を拡大し、データ・インテグレーション領域でのマーケットリーダーを目指して積極投資を推進する方針としている。
■23年3月期減益予想だが上振れの可能性
23年3月期の連結業績予想は、売上高が22年3月期比2.1%増の23億50百万円、営業利益が25.3%減の3億30百万円、経常利益が24.7%減の3億45百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が25.1%減の2億41百万円としている。配当予想は22年3月期と同額の43円(期末一括)としている。予想配当性向は54.4%となる。
第2四半期累計は、売上高が前年同期比7.2%増の12億14百万円、営業利益が24.9%増の2億55百万円、経常利益が23.7%増の2億66百万円、親会社株主帰属四半期純利益が26.0%増の1億84百万円だった。
サブスクリプション売上の伸長が牽引し、増収効果で研究開発費増加など先行投資を吸収して大幅増益と順調だった。リカーリングの売上高は10.0%増の8億84百万円だった。サブスクリプション売上が順調に拡大した。パッケージ(従来のソフトウェアから表記変更)の売上高は0.2%増の3億21百万円だった。サブスクリプションへの戦略的シフトを推進する中でも前年並みを維持した。サービス他の売上高は5.6%増の7百万円だった。リカーリングの売上構成比は1.8ポイント上昇して72.8%、全体の売上総利益率は1.2ポイント上昇して71.8%、そして売上高営業利益率は3.0ポイント上昇して21.1%となった。
製品別の売上高(パッケージとサブスクリプションの合計)は、戦略製品の合計が37.8%増の2億48百万円(ACMS Apexが45.9%増の2億34百万円、RACCOONが43.4%増の11百万円、ACMS WebFramerが73.0%減の3百万円)で、その他製品の合計(ACMS B2B、AnyTranなど)が2.9%増の2億79百万円だった。戦略製品の拡販が進展していることを示している。また22年9月単月のサブスクリプション売上高は、21年3月単月の売上高の約2.5倍に伸長した。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が5億58百万円で営業利益が82百万円、第2四半期は売上高が6億56百万円で営業利益が1億73百万円だった。四半期ベースでも増収・大幅増益基調である。
通期予想は据え置いている。不透明感や先行投資による費用増加などを考慮して減益予想としている。ただし保守的だろう。通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が51.7%、営業利益が77.3%、経常利益が77.1%、親会社株主帰属当期純利益が76.3%と高水準だった。上期に期ズレとなった一部費用が下期に発生する見込みとしているが、サブスクリプション売上の拡大が加速していることを勘案すれば通期会社予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価はモミ合い煮詰まり感
株価は反発力が鈍く小幅レンジでモミ合う形だが煮詰まり感を強めている。調整一巡してモミ合いから上放れの展開を期待したい。12月9日の終値は1587円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS79円05銭で算出)は約20倍、今期予想配当利回り(会社予想の43円で算出)は約2.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1257円53銭で算出)は約1.3倍、そして時価総額は約59億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)