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エスプールは22年11月期2桁増収増益予想、23年11月期も収益拡大基調
- 2022/12/13 08:51
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
エスプール<2471>(東証プライム)は、障がい者雇用支援やコールセンター向け派遣などの人材サービス事業を主力として、環境経営支援サービスや広域行政BPOサービスなどの新規事業にも積極展開している。22年11月期は障がい者雇用支援サービスが牽引して2桁増収増益予想としている。さらに新規事業も含めて利益上振れを目指すとしている。通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。そして積極的な事業展開で23年11月期も収益拡大基調だろう。株価は反発力が鈍く年初来安値圏で軟調展開だが、調整一巡し、好業績を再評価して出直りを期待したい。なお1月12日に22年11月期決算発表を予定している。
■人材サービス事業を展開
ビジネスソリューション事業(障がい者雇用支援サービス、ロジスティクスアウトソーシング、セールスサポート、採用支援、新規事業)、および人材ソリューション事業(コールセンター向け派遣、販売・営業スタッフ派遣、人材紹介)を展開している。さらに新たな収益柱構築に向けた新規事業として、環境経営支援サービスおよび広域行政BPOサービスを開始している。エスプール本体で新規事業開発を行い、事業規模や収益化に応じて、子会社として分社化する戦略としている。
21年11月期のセグメント別(調整前)構成比は、売上高がビジネスソリューション事業31%、人材ソリューション事業69%、営業利益がビジネスソリューション事業53%、人材ソリューション事業47%だった。
21年10月には子会社エスプールリンクが、女性の活躍推進に関する取り組みが優れている企業に対して厚生労働大臣が認定する「えるぼし」の最高位となる「3段階目」を取得した。グループにおける「えるぼし」取得はエスプール、エスプールヒューマンソリューションズ、エスプールプラスに続く4社目である。22年2月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明した。22年3月には経済産業省と日本健康会議が認定する健康経営優良法人2022に3年連続で選定された。
■ビジネスソリューションは障がい者雇用支援が主力
ビジネスソリューション事業は、障がい者雇用支援サービスを主力として、ロジスティクスアウトソーシングサービス(EC通販発送代行サービス、物流センター運営代行)、対面型会員獲得・販売促進のセールスサポートサービス、アルバイト・パート求人応募受付代行の採用支援サービス「OMUSUBI」なども展開している。
障がい者雇用支援サービスの「わーくはぴねす農園」は、障がい者雇用を希望する企業に対して農園を貸し出し、企業が主に知的障がい者を直接雇用する。障がい者の職業的自立および社会参加の支援を通じてノーマライゼーション社会の実現に貢献する事業である。
20年8月には東京都板橋区に初の屋内型農園を開設した。従来型の農園はビニールハウス型で概ね3000坪を超える敷地を必要としていたが、台風など自然災害の影響を踏まえ、屋外作業に適さない方にも就労機会を提供することを目的として屋内型を開設した。屋内型は倉庫や建物の活用を前提としているため立地面において柔軟性が高い。
21年11月期は7施設(屋外4施設、屋内3施設)を新規開設し、21年11月期末時点の施設数は30施設、顧客数は417社、管理区画数は4951区画、就業者数は2475名となった。関西エリア(大阪府枚方市と摂津市)にも進出した。なお22年4月に神奈川県横浜市(屋内型)と埼玉県川越市(屋外型)に開設、22年6月に大阪府大阪市(屋内型)を開設、22年8月に埼玉県さいたま市(屋外型)を開設、22年9月に愛知県小牧市(屋外型)を開設、そして10月11日に埼玉県越谷市に開設して合計36施設となった。
さらに、障がい者の個性やキャリアを活かした雇用環境を構築し、それぞれのフィールドで活躍するパラスペシャリストの支援に取り組んでいる。21年12月には障がいのある芸術家(パラアーティスト)が制作活動を行う組織「COLORS」を立ち上げた。障がい者の個性を活かしたキャリア支援は「パラアスリート」に続き2事例目となる。さらに22年5月には共同印刷と連携し、パラアーティストの認知度向上と理解促進に向けて、パラアーティスト組織「COLORS」に所属する障がいのある芸術家の作品をモチーフにした商品の販売を開始すると発表した。
ロジスティクスアウトソーシングでは、巣ごもり消費を背景としてEC通販発送代行サービスが拡大している。21年12月に浦安センターを開設し、品川センター、つくばセンターとの3センター体制とした。
なおネット通販発送代行サービスを展開する子会社のエスプールロジスティクスは21年8月、環境省が策定する日本独自の環境マネジメントシステム「エコアクション21」の認証を取得した。21年9月には越境ECサービス支援のアジアンブリッジと資本業務提携した。ASEAN諸国への越境ECサービスを通じて既存顧客との取引拡大や新規顧客の獲得を推進する。
採用支援サービスのOMUSUBIは飲食・小売業を中心に求人応募受付業務を行っている。20年3月には採用支援サービスのZENKIGENに出資、健康経営支援サービスのメンタルヘルステクノロジーズに出資、20年5月にはZENKIGEN、ワークスタイルテック、およびイレブンと4社合同で、企業間が期間限定で従業員をシェアし合うプラットフォーム「超企業 従業員プラットフォーム」を開設した。
20年9月には適性診断サービス「Talentgram」を開始、20年11月にはWEB面接代行サービス「Faceview」を開始、21年2月にはオンライン接客サービス開発・提供に向けてピアズと業務提携、サービス業を中心に人材の過不足解消を目的とした人材紹介サービスを開始、21年5月にはアルバイト・パートの入退職手続代行サービスを開始した。
プロフェッショナル人材バンク(顧問派遣サービス)では21年12月に、企業とプロ人材をマッチングするスマートフォンアプリ「PivottA(ピボッタ)」β版の提供を発表した。
■人材ソリューション事業はコールセンター派遣が主力
人材ソリューション事業はコールセンター業務の派遣を主力として、販売支援業務や介護系業務の派遣・紹介なども展開している。22年5月には子会社エスプールヒューマンソリューションズが、人材派遣サービスの更なる拡大を目指し、東京エリア5拠点目となる丸の内支店を開設した。全国では19の支店ネットワークとなる。
■新規事業
新たな収益柱構築に向けた新規事業としては、環境経営支援サービス、広域行政BPOサービスなどを積極展開している。
環境経営支援サービスについては、市場拡大が期待できる環境ビジネス分野での新たな収益柱の構築を目指し、20年6月にエコノス<3136>からカーボンオフセット事業を展開するブルードットグリーンの株式を取得して子会社化(22年4月に株式追加取得して完全子会社化)した。CO2排出量算定支援から、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)関連の排出量削減コンサルティング、クレジット仲介支援まで、ワンストップサービスの展開を推進する。
広域行政BPOサービス(21年12月にBPO事業を新設の子会社エスプールグローカルに承継)については、人口10万人以下の地方都市を中心に隣接する複数の自治体業務を受託する地方自治体向けシェアード型BPOサービスを全国展開する。シェアード型BPOセンターは22年10月に北海道札幌市、22年11月に福島県南相馬市と石川県小松市に開設した。22年12月には高知県高知市に開設し、さらに23年3月には滋賀県長浜市、鹿児島県日置市、和歌山県田辺市、23年4月には三重県志摩市、23年5月には佐賀県武雄市、福岡県飯塚市、岩手県大船渡市、島根県浜田市、富山県魚津市に開設を予定している。中期的には全国30拠点体制の早期実現を目指す方針だ。
22年11月には大分県中津市と行政手続きオンライン窓口の実証実験を開始(23年5月31日まで)した。12月1日には滋賀県5市(草津市、守山市、甲賀市、湖南市、東近江市)と共同で県内26ヶ所にオンライン窓口を設置し、専用オペレーターによるリモートによるマイナンバーカード申請/マイナポイント設定支援の実証実験を開始すると発表した。
なお、22年7月には子会社エスプールグローカルが情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格ISO27001の認証を取得した。22年10月には、全国の自治体向けにスマート見守りプラットフォーム「otto見守りサービス」を開発・運営するotta(福岡県)に出資した。22年11月には石川県かほく市と包括連携協定を締結し、デジタル技術を活用した行政サービス向上に取り組みを開始した。
その他分野では、21年10月に宮崎県日南市およびココホレジャパン(岡山県岡山市)と3者包括連携協定を締結し、日南市内の後継者不在事業者の調査、移住者とのマッチング、事業再生支援等による後継者課題解決に取り組むと発表した。第一弾として、ココホレジャパンが運営するプラットフォームを活用した「宮崎県日南市継業バンク」を開設して地域の維持活性化を図る。また22年7月には、宮崎県日南市とゼロカーボンシティ推進に向けた包括的連携協定を締結した。
■25年11月期営業利益50億円目標
中期経営計画(ローリング形式で21年1月公表、好調な障がい者雇用支援サービスの売上を増額、既存事業の計画を保守的に見直し)では、目標値に25年11月期売上高410億円(人材アウトソーシングサービス252億円、障がい者雇用支援サービス81億円、その他既存サービス43億40百万円、新規事業35億円、内部取引▲1億40百万円)、営業利益50億円、連結配当性向30%以上、高水準のROE維持を掲げている。
基本戦略として、既存事業の深掘りによるオーガニック成長、新たな事業領域における成長機会の獲得、ESGを軸とした経営基盤の強化を推進する。
オーガニック成長としては、人材派遣サービスではコールセンター派遣におけるトップシェアの獲得、新たな派遣領域の発掘、障がい者雇用支援サービスでは農園サービスにおける圧倒的NO.1の確立、障がい者の個性に合わせた多様な働き方メニューの開発、ロジスティクスアウトソーシングではEC通販を軸とした事業拡大、日本発のゼロ・エミッションを実現した自社センターの開設、採用支援サービスのOMUSUBIではアルバイト・パート採用支援業務でのトップシェア獲得、採用から定着化までの総合的サービスの提供を推進する。
新たな事業領域における成長機会の獲得としては、ベンチャー投資も活用して、CO2削減を中心とする環境ビジネス領域、企業の「持たざる経営」へのシフトを支援するBPOビジネス領域への展開を加速する方針だ。
なお22年7月には、ESG投資指数「MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」構成銘柄に初選定されたと発表している。
■22年11月期2桁増収増益予想、23年11月期も収益拡大基調
22年11月期連結業績予想(収益認識基準適用だが損益への影響なし)は、売上高が21年11月期比15.7%増の287億70百万円、営業利益が19.9%増の32億円、経常利益が18.8%増の31億76百万円、親会社株主帰属当期純利益が13.4%増の21億33百万円としている。配当予想は21年11月期比2円増配の8円(期末一括)としている。
第3四半期期累計は、売上高が前年同期比11.0%増の200億19百万円、営業利益が17.7%増の22億74百万円、経常利益が16.7%増の22億72百万円、親会社株主帰属四半期純利益が14.0%増の14億44百万円だった。
人材ソリューション事業がやや苦戦したが、ビジネスソリューション事業の障がい者雇用支援サービスが牽引し、新規事業も寄与して2桁増収増益と順調だった。売上総利益率は3.0ポイント上昇した。
ビジネスソリューション事業は売上高が35.5%増の72億43百万円でセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が48.0%増の20億53百万円だった。障がい者雇用支援サービスの売上高は31.8%増の39億37百万円だった。設備販売の多くは農園開設が集中する第4四半期となるが、ストック収入となる管理料が順調に増加した。なお期末時点の農園数は34施設、顧客数は482社、管理区画数は5773区画、就業者数は2886名となった。ロジスティクスアウトソーシングサービスの売上高は6.2%増の9億84百万円だった。低採算案件の整理など事業基盤再構築に取り組み、顧客の入れ替えを進める中で増収を確保した。採用支援サービスOMUSUBIの売上高は11.8%減の4億22百万円だった。コロナ禍の影響で減収だった。新規事業の広域行政BPOサービスの売上高は6億05百万円、環境経営支援サービス(ブルードットグリーン)の売上高は6億39百万円だった。広域行政BPOサービスはセンター開設が進展し、通期売上計画にほぼ到達した。環境経営支援サービスは環境情報開示の重要性の高まりを背景に、コンサルティング業務が急拡大して通期計画を大幅に上回った。
人材ソリューション事業は売上高が1.1%増の128億73百万円で、営業利益が11.2%減の13億22百万円だった。コールセンター業務の売上高は6.4%増の112億71百万円だった。累計ベースでは増収だったが、第3四半期は新型コロナ感染対策関連のスポット案件の縮小、新規案件獲得の遅れ、新型コロナ感染再拡大による欠勤急増などにより14.5%減と落ち込んだ。販売支援の売上高は携帯販売業務の回復遅れで29.7%減の9億34百万円だった。
四半期別に見ると、第1四半期売上高が65億20百万円で営業利益が6億71百万円、第2四半期は売上高が71億45百万円で営業利益が8億94百万円、第3四半期は売上高が63億54百万円で営業利益が7億09百万円だった。なお第2四半期は売上高、営業利益とも過去最高だった。
通期連結業績予想は据え置いている。主力事業が好調に推移して、売上高は10期連続、営業利益は7期連続で過去最高更新を目指す。なお11月11日に特別損失の計上を発表した。出資先の投資有価証券について、投資時における事業計画と実績値が乖離しているため、減損処理による投資有価証券評価損1億93百万円を計上する見込みだ。
ビジネスソリューション事業は売上高が25.4%増の96億50百万円で営業利益が22.2%増の25億92百万円の計画としている。売上高の内訳は、障がい者雇用支援サービスが20.1%増の55億円、ロジスティクス分野が13.1%増の14億27百万円、採用支援サービス「OMUSUBI」が4.0%増の6億41百万円、新規事業の広域行政BPOサービスが6億65百万円、環境経営支援サービスが3億84百万円としている。
障がい者雇用支援サービスは通期ベースでの新規開設が8農園(屋外5、屋内3)で、設備販売は1250区画の計画としている。さらなる経営資源投下によって計画上振れを目指す。ロジスティクス分野では再成長に向けた事業基盤構築を推進し、小型低採算案件の整理に着手する。採用支援サービス「OMUSUBI」では業務量回復を見据えて応募受付システムを一新し、生産性向上を図る。広域行政BPOサービスと環境経営支援サービスは、来期に向けて営業強化・案件積み上げに注力する。
人材ソリューション事業は売上高が11.6%増の192億40百万円で営業利益が11.9%増の21億37百万円の計画としている。売上高の内訳は、コールセンター業務が13.3%増の164億50百万円、販売支援が9.6%増の18億30百万円、その他が9.2%減の9億60百万円としている。コールセンター業務におけるスポット案件の一巡で売上面は苦戦するが、支店統廃合などのコスト削減や継続的成長に向けた体制整備を推進する。
第3四半期累計の進捗率は売上高が69.6%、営業利益が71.1%、経常利益が71.5%、親会社株主帰属当期純利益が67.7%だった。期初時点で下期偏重の計画だったことを勘案すれば概ね順調な進捗である。第4四半期については人材ソリューション事業がやや苦戦する見込みだが、障がい者雇用支援サービスにおいて設備販売が第4四半期に集中する計画であり、新規事業も含めたビジネスソリューション事業の拡大によって利益上振れを目指すとしている。通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。そして積極的な事業展開で23年11月期も収益拡大基調だろう。
■株価は調整一巡
株価は反発力が鈍く年初来安値圏で軟調展開だが、調整一巡し、好業績を再評価して出直りを期待したい。12月12日の終値は915円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS27円01銭で算出)は約34倍、前期推定配当利回り(会社予想の8円で算出)は約0.9%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS76円94銭で算出)は約12倍、そして時価総額は約723億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)