ジャパンフーズは23年3月期営業・経常黒字転換、最終大幅増益予想

 ジャパンフーズ<2599>(東証スタンダード)は飲料受託製造の国内最大手である。成長戦略として品質・生産性の向上、新製品の積極受注、新たな販売領域の創出などで収益の最大化と財務体質の改善を図るとともに、環境・人権に配慮したSDGs目標の設定と達成により、経済価値と社会価値を両立させた「100年企業」を目指している。23年3月期は国内受託製造数の増加や低重心経営による生産性向上効果により、営業・経常黒字転換、最終大幅増益予想としている。積極的な事業展開で収益改善基調だろう。株価は反発力が鈍く年初来安値圏だが、徐々に下値を切り上げている。低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。

■飲料受託生産の国内最大手

 伊藤忠商事<8001>系で、飲料受託製造の国内最大手である。主要得意先はサントリー食品インターナショナル<2587>、伊藤園<2593>、アサヒ飲料などの大手飲料メーカーである。品目別では炭酸飲料と茶系飲料、容器別ではペットボトル飲料を主力としている。

 新規ビジネス分野として、連結子会社のJFウォーターサービスが水宅配・ウォーターサーバーメンテナンス事業を展開している。また国内で水宅配フランチャイズ事業を展開するウォーターネット、および中国で清涼飲料受託製造事業を展開する東洋飲料(東洋製罐と合弁)を持分法適用関連会社としている。

 収益面の特性として個人消費や天候などの影響を受けやすい。また飲料業界全体において、夏場の上期(4~9月)は繁忙期となって生産量が増加するのに対して、冬場の下期(10~3月)は閑散期となって生産量が減少する。このため同社も下期は生産量減少で営業損益が赤字となる収益構造だ。

 本社工場の炭酸・非炭酸兼用無菌充填ラインは、市場環境や顧客ニーズの変化に対応したフレキシブルで効率的な生産体制が強みだ。飲料受託生産の最大手として、高品質でフレキシブルな生産対応が可能な強みを発揮している。

■飲料受託生産の役割や存在感が一段と高まる

 飲料業界全体が天候の影響を受けやすいことに加えて、大手飲料メーカーの再編や内製拡大による受託製造量減少を懸念する見方もあるが、夏場の繁忙期と冬場の閑散期という季節間の需要格差が大きい業界のため、大手飲料メーカーにとって内製拡大は設備投資や固定費負担の面でリスクが大きい。

 また飲料メーカーは経営効率化の観点からも、経営資源の重点をマーケティング分野にシフトする動きを強めている。このため飲料受託生産の役割や存在感が一段と高まっている。

■経済価値と社会価値を両立させた「100年企業」目指す

 21年12月に公表した中長期経営目標では、5年後目途の定量目標値として、製造数4500万ケース、営業利益10億円、経常利益14億円、連結純利益10億円(単体/コア7億円、事業取込等3億円)、株主資本比率50%以上、ROE10%以上、営業CF30億円、1株当たり配当金52円、連結配当性向25.0%などを掲げている。

 そして22年5月に公表した新・中期経営計画「JUMP+++2024 品質経営とサステナビリティ」(23年3月期~25年3月期)では、主要経営目標値を最終年度25年3月期製造数4250万ケース、営業利益7億円、経常利益9億50百万円、連結純利益7億50百万円(単体/コア4億50百万円、事業取込等3億円)、株主資本比率45%、ROE9.3%、営業CF26億円、1株当たり配当金27円、連結配当性向20%を掲げている。引き続き安定したキャッシュを確保する。設備投資は厳選し、借入金返済の促進により財務体質改善を推進する。配当に関しては安定配当27円を継続する方針としている。

 品質・生産性の向上、新製品の積極受注、新規顧客の獲得や新たな販売領域の創出などで収益の最大化と財務体質の改善を図るとともに、環境・人権に配慮したSDGs目標の設定と達成により、経済価値と社会価値を両立させた「100年企業」を目指すとしている。

 基本方針には、2つのセグメントの継続成長(コアセグメント=本社工場、新規セグメント=事業会社および新ビジネス)、環境配慮・SDGsへの貢献と持続可能な総合S&B(スクラップ&ビルド)計画の実行、人材の更なる活性化(最適配置、育成強化)、キャッシュ・フロー極大化と財務体質の改善を掲げている。

 品質経営に関しては、前・中期経営計画で推進してきた「ふかけ(ふ=防ぐ、け=削る、か=稼ぐ)」の更なる進化に取り組み、安全・安心な製品の安定供給、顧客の品質評価の向上、マーケットイン志向による新たなニーズへの対応の強化、人材教育と改善活動の活性化、設備総合効率の追求、環境負荷の軽減、予防保全の徹底によるトラブル防止、生産・物流の効率化によるコスト改善など、製品・サービスと業務プロセスの品質強化を推進する。

 コアセグメントに関しては、日本最大級の製造能力を誇る生産面の強みを活かすとともに、更なる品質の向上、生産性の向上およびサステナビリティへの取り組みによる「ものづくり」の付加価値創出を推進する。新規セグメントに関しては、連結子会社および持分法適用会社の業績伸長を目指すとともに、新たなビジネスとして東南アジアでの技術支援やアルコールビジネスなども検討する方針だ。

 サステナビリティに関しては、気候変動(脱炭素)関連での温室効果ガス排出量削減2013年比▲30%や、人権尊重関連での女性管理職割合13%などの目標を掲げている。

■23年3月期営業・経常黒字転換、最終大幅増益予想

 23年3月期連結業績予想は売上高が22年3月期比9.6%増の105億円、営業利益が4億円の黒字(22年3月期は3億87百万円の赤字)、経常利益が5億50百万円の黒字(同1億71百万円の赤字)、親会社株主帰属当期純利益が26.3%増の4億50百万円(単体/コアが1億63百万円増加の2億70百万円、事業取込利益等が69百万円減少の1億80百万円)としている。配当予想は22年3月期と同額の27円(第2四半期末10円、期末17円)としている。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比4.6%増の59億52百万円、営業利益が14.9%増の8億32百万円、経常利益が17.3%増の9億70百万円、親会社株主帰属四半期純利益が14.4%増の7億11百万円だった。

 コロナ禍も影響して第1四半期の受託製造数が減少したことに加えて、想定以上のエネルギーコスト高騰の影響で計画(売上高65億円、営業利益13億円、経常利益14億円、親会社株主帰属四半期純利益10億円)を下回ったが、第2四半期に猛暑も背景として国内受託製造数が大幅増加したことに加えて、生産性向上効果なども寄与して前年同期比では2桁増益で着地した。

 国内飲料受託製造事業のセグメント利益(調整前経常利益)は25.4%増の8億60百万円だった。想定以上のエネルギーコスト高騰が影響したが、受託製造数増加に伴う増収効果や生産性向上効果で吸収して大幅増益だった。受託製造数は5.2%増の2264.5万ケース(第1四半期が7.6%減の1106.9万ケース、第2四半期が21.3%増の1157.6万ケース)だった。第1四半期はコロナ禍に伴う行動制限の余波で減少したが、第2四半期は猛暑効果も押し上げ要因となって大幅増加に転じた。

 海外飲料受託製造事業(中国の持分法適用会社、連結対象期間22年1~6月)は需要が順調だったが、利益は新ライン増設に伴うコスト増加で30.0%増の87百万円だった。その他事業(水宅配事業および水宅配フランチャイズ事業)の利益は、価格改定も寄与して39.4%増の23百万円だった。

 親会社株主帰属四半期純利益(前年同期比+89百万円)の要因別増減分析は、受注増加で+1億30百万円、生産性向上等(コスト改善)で+2億25百万円、エネルギーコスト上昇で▲2億30百万円、事業取込利益で▲35百万円としている。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が27億97百万円、経常利益が3億88百万円、親会社株主帰属四半期純利益が2億87百万円、第2四半期は売上高が31億55百万円、経常利益が5億82百万円、親会社株主帰属四半期純利益が4億24百万円だった。

 通期連結業績予想は据え置いている。前期計上の一過性利益(特別利益に投資有価証券売却益3億16百万円、固定資産撤去費用引当金戻入額4億35百万円を計上)の反動はあるが、コロナ禍の影響が和らぐとともに、新製品および新たな販売領域の受注、製造スペースを最大限活用した受注の促進、生産性向上のさらなる進展、減価償却費の減少などで営業・経常黒字転換、最終大幅増益予想としている。国内受託製造数の計画は14.0%増の4150.0万ケースとしている。

 親会社株主帰属当期純利益(22年3月期比+94百万円)の要因別増減分析は、前期の一過性利益(特別利益)の反動減で▲4億10百万円、受注増加で+5億50百万円、生産性向上等(コスト改善)で+4億80百万円、エネルギーコスト上昇で▲4億60百万円、事業取込利益で▲70百万円の計画としている。

 飲料業界は夏場が需要期、冬場が不需要期のため、同社の業績も上期偏重の季節特性があるが、通期ベースで増収、営業・経常黒字転換、最終大幅増益予想としている。第2四半期以降の国内受託製造数はコロナ禍影響の緩和、猛暑効果、新営業戦略の成果などで増加基調である。利益面は、低重心経営による生産性向上がさらに進捗し、エネルギーコスト高騰の影響が和らぐ見込みとしている。積極的な事業展開で収益改善基調だろう。

■株主優待制度は毎年3月末の株主対象

 株主優待制度は、毎年3月31日時点の1単元(100株)以上所有株主を対象として、自社製品詰め合わせセットなどを贈呈(詳細は会社HP参照)している。

■株価は調整一巡

 株価は反発力が鈍く年初来安値圏だが、徐々に下値を切り上げている。低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。12月12日の終値は1062円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS93円31銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の27円で算出)は約2.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1511円93銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約54億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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