【どう見るこの株】山王は23年7月期1Q大幅増収増益、通期減益予想据え置きだが上振れの可能性
- 2022/12/15 09:54
- どう見るこの株
山王<3441>(東証スタンダード)は貴金属表面処理加工のリーディングカンパニーで、12月14日に発表した23年7月期第1四半期の連結業績は大幅増収増益だった。フィリピンは受注回復が遅れたが、日本では受注が好調に推移し、設備増強効果なども寄与した。通期は電力料金高騰の影響などを考慮して減益予想を据え置いているが、第1四半期の進捗率が高水準だったことを勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高いだろう。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。株価は年初来安値圏でモミ合う形だが下値固め完了感を強めている。第1四半期業績を評価して出直りを期待したい。
■貴金属表面処理加工のリーディングカンパニー
貴金属表面処理加工(めっき加工)のリーディングカンパニーである。コネクターを中心とする電子部品の貴金属表面処理加工を主力として、精密プレス加工なども展開している。60余年の歴史で培われた「めっき加工」技術の蓄積を強みとして、日本およびフィリピンに事業展開し、国内主要顧客数十社の安定顧客基盤を構築している。
22年7月期のセグメント別業績(売上高はセグメント間取引消去前、営業利益は全社費用等調整前)は、日本が売上高78億60百万円で営業利益3億61百万円、フィリピンが売上高16億33百万円で営業利益67百万円だった。用途別売上構成比(国内+フィリピン)は通信30.0%、自動車23.3%、産業26.6%、民生10.1%、遊技5.1%、医療その他4.9%だった。
成長戦略として、新規開発品(水素透過膜、銀めっきアクリル粒子)の事業化、プレス・めっき一貫生産強化やコスト対応強化に向けた生産拠点再編を推進し、国内では東北事業部(工場)の生産能力増強・基幹工場化投資、フィリピンではコスト構造改革を推進している。
■23年7月期1Q大幅増収増益、通期減益予想だが上振れの可能性
23年7月期第1四半期の連結業績は、売上高が前年同期比19.0%増の26億82百万円、営業利益が73.2%増の2億57百万円、経常利益が58.2%増の2億47百万円、親会社株主帰属四半期純利益が10.5%増の2億01百万円だった。
大幅増収増益だった。フィリピンでは受注回復が遅れたが、日本では受注が好調に推移し、設備増強効果なども寄与した。営業外収益では前期計上の補助金収入20百万円が剥落、特別利益では前期計上の投資有価証券売却益53百万円が剥落した。
日本は売上高が20.9%増の22億30百万円、営業利益が121.5%増の2億34百万円だった。通信分野、産業機器分野、自動車分野を中心に受注が好調に推移し、設備増強による生産体制拡充なども寄与した。
フィリピンは売上高が9.6%増の4億63百万円、営業利益が81.3%減の5百万円だった。円安による円換算額の増加により日本円ベースでは増収だが、車載関連を中心とした受注回復遅れにより米ドルベースでは微減収となり、人員の先行採用による人件費増加や、エネルギー価格高騰の影響で減益だった。
通期連結業績予想は据え置いて、売上高が22年7月期比2.6%増の97億円、営業利益が40.2%減の3億円、経常利益が35.0%減の3億30百万円、親会社株主帰属当期純利益が19.9%減の2億85百万円としている。配当予想は22年7月期と同額の10円(期末一括)としている。
売上面は需要が堅調に推移して増収(日本が設備増強による生産性向上なども寄与して1.8%増の80億円、フィリピンが車載用の堅調推移などで4.1%増の17億円)を見込むが、電力料金高騰の影響、東北事業部(工場)新ライン建設など積極的な設備投資に伴う減価償却費の増加など、コスト増加を考慮して大幅減益予想としている。なお特別損益は想定していない。
通期の減益予想を据え置いたが、第1四半期の進捗率は売上高27.6%、営業利益85.7%、経常利益74.8%、親会社株主帰属当期純利益70.5%と高水準だったことを勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性が高いだろう。積極的な事業展開で収益拡大基調を期待したい。
■株価は下値固め完了
株価は年初来安値圏でモミ合う形だが下値固め完了感を強めている。第1四半期業績を評価して出直りを期待したい。12月14日の終値は903円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS61円74銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の10円で算出)は約1.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1217円94銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約45億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)