【どう見るこの株】MORESCOは戻り歩調、23年2月期は原材料価格高騰で減益予想だが、24年2月期収益拡大期待
- 2022/12/20 16:17
- どう見るこの株
MORESCO<5018>(東証プライム)は、過酷な環境や特殊な環境で使われる特殊潤滑剤などを展開する独立系の化学品メーカーである。成長戦略としてサステナビリティ経営を強化し、地球に優しい環境対応製品の開発・販売強化、エネルギーおよびライフサイエンス分野への進出などを推進している。23年2月期は原材料価格高騰の影響で減益予想としているが、下期以降は販売価格是正が進展する見込みであり、24年2月期の収益拡大を期待したい。株価は10月の年初来安値圏から急反発して戻り歩調だ。23年2月期減益予想の織り込みが完了して基調転換を確認した形であり、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■特殊潤滑剤などを展開する独立系の化学品メーカー
独立系の化学品メーカーである。自動車関連を中心に過酷な環境や特殊な環境で使われる特殊潤滑剤部門を主力として、精密機器や過酷な環境で使われる合成潤滑油部門、紙おむつや粘着ラベルなどに使われるホットメルト接着剤部門、化粧品原料などに使われる素材部門なども展開している。
22年2月期の事業別売上高構成比は、特殊潤滑油部門が48%、合成潤滑油部門が7%、素材部門が13%、ホットメルト接着剤部門が25%、デバイス材料部門が1%、その他部門が7%だった。用途別売上高構成比は自動車関連が44%、衛生材料が18%、情報機器が3%、その他接着が6%、真空機器が3%、化粧品・トイレタリーが3%、ポリスチレンが4%、冷熱媒体が2%、鉄鋼が3%、その他が15%だった。
■EV向け製品や環境対応製品の開発を強化
第9次中期経営計画(22年2月に上方修正)では、目標値に24年2月期売上高325億円、営業利益23億円、経常利益26億50百万円、親会社株主帰属当期純利益16億50百万円を掲げている。
成長戦略としてサステナビリティ経営を強化し、EV自動車向け製品の開発・販売強化、地球に優しい環境対応製品の開発・販売強化、エネルギーおよびライフサイエンス分野への進出、社会課題解決に向けたR&Dの強化を掲げている。
EV自動車向け製品の開発・販売強化では、自動車の電動化の流れに対応した製品の開発・拡販を推進する。特に新エネルギー車(EV、PHV、FCV)市場を牽引する中国において、軽量化部材向け新製品の開発を推進し、さらにグローバル展開を図る。
地球に優しい環境対応製品の開発・販売強化では、極小量塗布によって廃液削減と金型長寿命化に貢献する水溶性少量塗布型ダイカスト離型剤、植物由来樹脂を配合したバイオマスマーク認定のホットメルト接着剤、使用後の粉体離型剤を再利用するリサイクル原料潤滑油などの開発・拡販を推進している。また、有機ELパネルの長寿命化に貢献する高バリア性封止材料の採用拡大に注力している。OPV(有機薄膜太陽電池)に関しては、大学との連携によって発電効率向上の材料を開発中である。
エネルギーおよびライフサイエンス分野への進出では、極限環境で機能する耐放射線潤滑油の開発・拡販を推進している。耐放射線性潤滑剤が世界有数の加速器施設や福島第一原発の廃炉工程に採用され、放射線・重量子線医療内部可動機器など先端医療分野での採用拡大も期待されている。ライフサイエンス分野では、人体に対して非常に有効な物質をナノエマルジョン化して化粧品や食品等に応用する新ビジネスの展開を推進する方針だ。また、大学発ベンチャーと創薬の共同開発を推進しており、23年に第一弾の特許を出願予定としている。
社会課題解決に向けたR&Dの強化では、事業部を横断し、社内間および産官学と連携した開発会議を新設した。さらに、水素社会の実現に貢献すべく、水素透過度測定装置や、各メーカー装置で正確な測定を導き出せる校正用フィルムなどにより、水素用物質開発のプラットフォーマーを目指すとしている。
サステナビリティ経営については、サステナビリティ委員会を新設し、30年に向けて7つのマテリアリティ(重要課題)を掲げている。さらに22年11月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明した。
■23年2月期は原材料価格高騰で減益予想だが24年2月期収益拡大期待
23年2月期の連結業績予想(10月13日付で売上高を上方修正、利益を下方修正)は、売上高が22年2月期比15.4%増の315億円、営業利益が22.6%減の11億10百万円、経常利益が15.5%減の17億円、親会社株主帰属当期純利益が44.7%減の10億円としている。配当予想は22年2月期と同額の40円(第2四半期末20円、期末20円)としている。
原材料価格が想定以上に高騰し、販売価格是正に一定のタイムラグが生じるため、前回予想に対して売上高を10億円上方修正、営業利益を7億40百万円、経常利益を5億円、親会社株主帰属当期純利益を3億円それぞれ下方修正した。
なお第2四半期累計は売上高が前年同期比8.7%増の145億23百万円、営業利益が68.0%減の2億95百万円、経常利益が27.3%減の8億46百万円、親会社株主帰属四半期純利益が62.9%減の5億04百万円だった。
売上面は国内販売数量増加、販売価格是正、為替の円安効果などで増収だが、利益面は原材料価格の想定を上回る上昇で利益率が低下して減益だった。売上総利益率は27.8%で6.2ポイント低下した。営業外収益では為替差益が増加(前年同期は1億07百万円、今期は4億54百万円)した。特別利益では前年同期に計上した固定資産売却益8億33百万円が剥落した。
部門別売上高は、特殊潤滑油部門がダイカスト用油剤数量減少を販売価格是正や切削油剤新規拡販などでカバーして10.8%増の70億27百万円、合成潤滑油部門が4.1%減の9億91百万円(高温用潤滑油が自動車生産台数減少で減収、HD表面潤滑剤は円安も寄与して増収)、素材部門が流動パラフィンの好調などで11.0%増の18億55百万円、ホットメルト接着剤部門が販売価格是正や衛生材料・粘着用途数量増などで12.9%増の37億54百万円、その他が9.2%減の8億96百万円だった。なお海外売上高比率は39.7%だった。
報告セグメント別に見ると、日本は売上高(外部顧客への売上高)が6.3%増の96億24百万円で利益(調整前営業利益)が74.3%減の1億43百万円、中国は売上高が3.6%増の17億37百万円で利益が59.6%減の95百万円、東南/南アジアは売上高が23.6%増の27億26百万円で利益が35.1%減の41百万円、北米は売上高が1.0%増の4億36百万円で利益が57.9%減の32百万円だった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が70億50百万円で営業利益が2億01百万円、第2四半期は売上高が74億73百万円で営業利益が94百万円だった。
23年2月期は原材料価格高騰の影響で減益予想となったが、下期以降は販売価格是正が進展する見込みであり、24年2月期の収益拡大を期待したい。
■株価は戻り歩調
株主優待制度(23年2月末対象から対象株主および優待内容を変更、詳細は会社HP参照)は、毎年毎年2月末現在で300株以上保有株主を対象として、継続保有期間に応じてクオカードを贈呈している。
株価は10月の年初来安値圏から急反発して戻り歩調だ。週足チャートで見ると、13週移動平均線に続いて26週移動平均線を突破した。23年2月期減益予想の織り込みが完了して基調転換を確認した形であり、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。12月19日の終値は1141円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS107円71銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の40円で算出)は約3.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1914円94銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約111億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)