ネオジャパンは下値固め完了、23年1月期3Q累計小幅減益だが進捗率高水準で通期上振れ余地

 ネオジャパン<3921>(東証プライム)は自社開発グループウェアのクラウドサービスを主力として、製品ラインアップ拡充による市場シェア拡大戦略、アライアンス戦略、東南アジア市場開拓戦略などを推進している。12月20日には神奈川県鎌倉市の市区局共通の情報共有基盤として、グループウェアdesknet‘s NEO、ビジネスチャットChatLuck、業務アプリ作成ツールAppSuiteの3製品の採用が決定したと発表している。23年1月期第3四半期累計はクラウドサービスが牽引したが、販管費増加などで小幅減益となり、通期減益予想を据え置いた。ただし第3四半期累計の利益進捗率は高水準だった。第4四半期にCM動画の費用が発生する見込みとしているが、この点を考慮しても通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。さらに24年1月期も積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は地合い悪化も影響して安値圏でモミ合う形だが、下値固め完了して出直りを期待したい。

■自社開発グループウェアのクラウドサービスが主力

 ビジネス・ITコミュニケーションツール開発企業である。自社開発グループウェアdesknet‘s NEOのクラウドサービス(月額課金収入)を主力として、大企業向け中心のプロダクト(パッケージソフト販売のライセンス収入およびサポートサービス収入)も展開している。

 19年8月には、システム開発のPro-Spireを子会社化した。21年8月には、DX推進のスピードアップや製品開発のプロセス強化などを目的としてプロセス改革部を新設した。22年10月には、現代ビジネスパーソンのコミュニケーション実態を把握・研究すべくNEOビズコミ研究所を新設した。

 海外展開は19年6月米国子会社DELCUIを設立、19年12月マレーシアに合弁会社NEOREKA ASIAを設立、21年2月タイに子会社Neo Thai Asiaを設立した。当面は投資が先行する見込みだが、ASEAN全域においてグループウェアdesknet‘s NEOブランドの確立を目指す。

 22年1月期(連結調整前)の売上構成比は、グループウェアを中心とするビジネスICTツールのソフトウェア事業が66%(クラウドサービスが41%、プロダクトが24%、技術開発が1%)、子会社Pro-Spireのシステム開発サービス事業が34%、海外事業が0%、営業利益構成比はソフトウェア事業が93%、システム開発サービス事業が10%、海外事業が▲4%だった。ソフトウェア事業のストック型売上比率は73.1%(21年1月期は72.5%)だった。なお収益面では下期(特に第4四半期)の構成比が高い傾向がある。

 22年3月には経済産業省と日本健康会議が進める健康経営優良法人認定制度「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)」に3年連続で選定された。22年4月にはバスケットボール女子日本リーグ(Wリーグ)に所属する東京羽田ヴィッキーズとスポンサーシップ契約を締結した。

 22年11月にはクラウドサービス情報開示認定機関ASPISより、クラウドサービスにおける信頼・安全性の推進に多大なる貢献をしたサービス・事業者として、最優秀・資格継続賞を受賞した。08年7月に7番目の事業会社として情報開示認定企業に認定されて以来、この資格を14年維持している。

■グループウェアdesknet‘s NEOは使いやすさが強み

 グループウェアdesknet‘s NEOは、ローカライゼーション(日本語、日本の商習慣やビジネス習慣など)に対応した27の基本機能を備え、多機能・使いやすさ・高品質・低価格を強みとしている。22年9月には最新バージョン7.1の提供を開始した。

 グループウェアdesknet‘s NEOの累計ユーザー数(クラウド版契約ユーザー数とパッケージ版販売ユーザー数の合計)は、22年1月期末時点で前年同期比24.2万ユーザー増加の462.6万ユーザーとなっている。業種・業態・規模を問わず幅広く企業・官公庁・自治体に採用され、1000以上の自治体・政府機関(都道府県庁17を含めて自治体536、政府機関526)に導入されている。中長期的には累計ユーザー数1000万ユーザーを目指すとしている。なおクラウドユーザー数は前年同期比7.1万人増加の45.2万人となった。解約率は概ね0.2%~0.5%程度で推移している。

 大規模導入事例として、21年7月にはカー用品専門店チェーンのイエローハット<9882>に、グループが運営する全国740店舗の従業員・スタッフをつなぐ情報共有基盤として、グループウェアdesknet‘s NEO大規模パッケージ版(3000ライセンス)が採用された。22年7月には、神奈川県横浜市が整備する最大6万人が利用する市区局共通グループウェアとして、desknet‘s NEOが全面的に採用(東芝デジタルソリューションズが市区局共通グループウェア構築事業を受託)された。

■製品ラインアップ拡充戦略

 成長戦略として、国内累計販売ユーザー数1000万ユーザー、グループウェア国内トップシェア、売上高100億円を目指し、グループウェアdesknet‘s NEOを核とするエンタープライズ向け製品ラインアップ拡充戦略、市場シェア拡大戦略、シナジーが見込めるアライアンスへの戦略投資、マレーシアの合弁会社を拠点とするクラウドサービスの東南アジア市場開拓戦略などを推進している。

 製品ラインアップ拡充戦略としては、カスタムメイド型業務アプリ作成ツールAppSuite、新しいコミュニケーションツールとしてのビジネスチャットChatLuckを提供し、グループウェアdesknet‘s NEOとの連携も強化している。

 22年9月には、経済産業省の「IT補助金2022」においてIT導入支援事業者として採択され、グループウェアdesknet‘s NEO、業務アプリ作成ツールAppSuite、ビジネスチャットChatLuckが補助金の対象ツールとして認定された。

 22年10月には、アイティクラウドのIT製品比較・レビューサイト「ITreview」の「ITreview Grid Awaed 2022 FALL」において、desknet‘s NEOがグループウェア部門とワークフロー部門のLeaderを受賞、ChatLuckがビジネスチャット部門のLeaderを受賞した。

 12月6日には、スマートキャンプが表彰する「BOXIL SaaS AWARD Winter 2022」のSFA(営業支援システム)部門において、AppSuiteが機能満足度NO.1およびサービスの安定性NO.1を受賞し、グループウェア部門においてdesknet‘s NEOがGood Serviceを受賞したと発表している。

■市場シェア拡大を推進

 21年3月には、横浜商工会議所が開設したデジタル化相談窓口に協力会社として参加した。デジタル化支援コンソーシアム協力事業者として中小企業のDX推進をサポートする。21年6月には、アイネット<9600>が提供する教育現場でのDX推進のための学校保護者間あんしん連絡サービスChatLuck SCを開発提供した。ビジネスチャットChatLuckをベースとして開発した。2社の共同事業として全国の国公立小中学校に販売する。

 21年12月には、茨城県つくば市のワクチン配送におけるDX化実現のために、desknet‘s NEOとAppSuiteで作成したアプリケーション「つくば市新型コロナワクチン配送システム」および「ワクチン数量管理表」を開発して提供した。また22年1月には、つくば市で導入されたワクチン配送システムのテンプレートを、同じ課題を持つ自治体に向けて無償提供開始すると発表している。

 22年3月には、東京都多摩市が実施した「令和3年度多摩市民間提案制度」において、desknet‘s NEOとAppSuiteで作成した「ワクチン接種記録等の効率化と工数削減に向けた管理向上」事業が採用候補に認定された。ワクチン関連の行政の業務効率化において採用された事例としては、茨城県つくば市「つくば市新型コロナワクチン配送システム」に続く2例目となる。

 22年5月には、中小企業のDXを支援するAppSuiteアプリ集「ネコの手アプリ」シリーズを提供するシステムアプローチ(愛知県名古屋市)と、AppSuiteアプリの開発・販売活動で連携した。

 22年11月には、横浜市が募集した民間企業のデジタル技術を活用して行政サービスのDX化を進めるプロジェクト「YOKOHAMA Hack!」の第1回実証実験事業者に選定され、横浜市と共同で「要配慮施設利用者の安全を守る避難確保計画の取組強化」の実証実験を開始した。AppSuiteとdesknet‘s NEOを活用する。

 12月20日には、神奈川県鎌倉市の市区局共通の情報共有基盤として、グループウェアdesknet‘s NEO、ビジネスチャットChatLuck、業務アプリ作成ツールAppSuiteの3製品が、実証実験を終えて採用決定したと発表している。

■23年1月期3Q累計小幅減益だが進捗率高水準で通期上振れ余地

 23年1月期連結業績予想(収益認識会計基準適用だが損益への影響軽微、22年9月14日付で下方修正)は、売上高が22年1月期比1.2%増の59億89百万円、営業利益が12.3%減の10億94百万円、経常利益が13.1%減の11億82百万円、親会社株主帰属当期純利益が9.7%減の7億82百万円としている。

 配当予想は12月13日付で上方修正(6月10日付の期末3円上方修正に続いて2回目)した。期末に創立30周年記念配当1円を実施して、22年1月期比6円増配の20円(期末一括=普通配当19円+記念配当1円)とする。8期連続増配予想で予想配当性向は38.1%となる。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比1.9%増の44億62百万円、営業利益が3.0%減の9億60百万円、経常利益が3.3%減の10億52百万円、親会社株主帰属四半期純利益が4.6%減の7億07百万円だった。

 ソフトウェア事業はクラウドサービスが牽引して順調だったが、システム開発サービス事業の売上減少や販管費の増加などで小幅減益だった。売上総利益は5.2%増加して売上総利益率は1.7ポイント上昇、販管費は11.7%増加して販管費比率は2.7ポイント上昇した。なお収益認識会計基準適用の影響額として、従来方法に比べて売上高は21百万円増加、売上原価は7百万円増加、営業利益、経常利益および税金等調整前四半期純利益はそれぞれ14百万円増加している。

 ソフトウェア事業は売上高が9.1%増の31億48百万円、セグメント利益(調整前営業利益)が6.6%増の9億85百万円だった。売上面で見ると、クラウドサービスは利用ユーザー数の増加で13.0%増の19億97百万円(グループウェアdesknet‘s NEOクラウドが11.9%増の16億56百万円、業務アプリ作成ツールAppSuiteクラウドが51.2%増の97百万円など)と順調に拡大した。プロダクトは2.4%増の10億94百万円だった。サポートサービスは12.2%増の5億96百万円と順調だった。大規模ユーザー向けdesknet‘s NEOエンタープライズライセンス売上は追加ライセンスの減少で5.7%減の1億36百万円だった。技術開発は従来からの継続案件が堅調に推移して14.4%増の56百万円だった。利益面では、販売目的ソフトウェアの減価償却費が増加したが、増収効果で増益と概ね順調だった。

 なおクラウドサービスやサポートサービスの売上拡大により、ソフトウェア事業におけるストック型売上比率は2.8ポイント上昇して76.3%となった。また22年10月末時点のクラウドユーザー数は、desknet‘s NEOが45千ユーザー増加して480千ユーザー、AppSuiteが12千ユーザー増加して41千ユーザーとなった。パッケージ版を含めたdesknet‘s NEO全体の累計販売実績は477万6千ユーザーとなった。

 システム開発サービス事業(子会社Pro-SPIRE)は、主要顧客の体制縮小の影響で売上高が12.3%減の13億28百万円、販管費の増加も影響してセグメント利益が51.9%減の48百万円だった。海外事業はコロナ禍による営業活動制約などで売上高が61.0%減の7百万円、セグメント利益が72百万円の赤字(前年同期は34百万円の赤字)だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が14億96百万円で営業利益が3億09百万円、第2四半期は売上高が14億40百万円で営業利益が3億01百万円、第3四半期は売上高が15億26百万円で営業利益が3億50百万円だった。

 通期連結業績予想は据え置いている。売上面はソフトウェア事業が拡大してシステム開発サービス事業の減収影響をカバーする見込みだが、利益面は人件費や広告宣伝費などの増加で減益予想としている。

 ただし第3四半期累計の進捗率は売上高が74.5%、営業利益が87.8%、経常利益が89.1%、親会社株主帰属当期純利益が90.5%と利益進捗率が高水準だった。第4四半期に、ソフトウェア事業においてdesknet‘s NEOの認知度向上に向けたCM動画放映に伴う費用の発生を見込んでいるが、この点を考慮しても通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。さらに24年1月期も積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は1月末と7月末の年2回

 株主優待は年2回、毎年1月末と7月末の株主を対象として、保有株式数に応じてQUOカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。

■株価は下値固め完了

 株価は地合い悪化も影響して安値圏でモミ合う形だが、下値固め完了して出直りを期待したい。12月22日の終値は963円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS52円48銭で算出)は約18倍、今期予想配当利回り(会社予想の20円で算出)は約2.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS345円53銭で算出)は約2.8倍、そして時価総額は約144億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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